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JSQCニューズ 2014年 2月 No.330

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■トピックス:反転授業
■私の提言:研究者と実務者のあいだから
・PDF版はこちらをクリックしてください →news330.pdf

トピックス
反転授業

副会長/玉川大学 大藤 正

油売りの話
 昔々、とある村の油商人の話です。電気も無い時代ですが、各家々にランプを無料で配り歩き、そして油を売って儲けたという話です。これって今流にはフリーです。
 白黒のテレビが市場に投入された頃、高価な白黒テレビを家庭に設置し、自由に視聴するサービスで浸透させていきました。富山の薬売りと同じです。デスクトップ・コンピュータも同様の方法で世の中に浸透させました。本学にもコンピュータ・メーカーから当時30台の寄贈がありました。
 スマートホンにおける無料アプリは、同様の販売方法で顧客への浸透が図られています。電子ブックも音楽の配信も、映画も同じです。まず、無料のもので顧客に体験して頂き、その後の購入に誘導しているのです。
 教育でも同様の方法が試みられています。ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学でも行われているそうです。それがMOOC(ムーク:Massive Open Online Courses)です。

MOOC
 2013年12月25日に「ルポMOOC革命−無料オンライン授業の衝撃−」という本が出版されました。金成隆一氏が現場取材してまとめたものです。MOOCの誕生、MOOCを提供する大学、教育の形を変えた男−サルマン・カーン−など、取材してのルポで、MOOCのことが本当に理解できます。
 インドのカーン氏は親戚の子供の家庭教師をするために、短い10分程度の教育ビデオを作成し、それをユーチューブにアップしました。このビデオがわかりやすいことから再生回数が増加し、世界中の学問を志す人達に見られ話題になりました。
 このビデオクリップは無料のオンライン授業ですが、カーン・アカデミィはフリーのような収入を目的としないボランティアな活動です。
 世界中に、貧困であるとか差別社会であるとかの理由により、勉強をしたくてもできない人達が大勢いるのです。授業をビデオクリップで無料で提供する時代になっているのです。
 日本でもMOOCについては議論されています。私立大学情報教育協会発行の「大学教育と情報」では、2013年度のNo.1、No.2、No.3でMOOCを取り上げています。

反転授業
 2014年1月10日の朝のニュース番組で、一般視聴者に「予習をしてから学校に行っていたか」という調査結果が報告されていました。

 この放送で取り上げられていたテーマが「反転授業」でした。従来の授業は学校で授業を受けてから、家で復習するという形式が主流でしたが、家でビデオクリップの授業を視聴して予習してから、学校でさらに理解を深めるという形式に変わろうとしているのです。
 2014年1月4日の朝日新聞の1面でも、「『教わる』からの卒業」という見出しで記事が掲載されていました。同年同月17日に同紙で「『反転授業』大学でも」という見出しで、「動画で予習→教室では実習」という記事が掲載されていました。
 ビデオクリップは、理解できないところを幾度でも再生して視聴することができますし、早回しして視聴することもできます。当然、教員の負担増は考えられますが、反転授業の教育効果はさまざま報告されています。
 最近のノートパソコンには、ディスプレーの上にカメラが組み込まれています。パワーポイントのスライドの下にあるノートの部分を音声再生して、スライドをタイマーを使って操作する教材も考えられます。
 新QC七つ道具のPDPC法を活用して、RPGのような講義クリップを作成する方法もあると思います。利用者のログから、わかりにくい部分を特定することなどもできるのではないでしょうか。
 品質管理は「教育に始まり、教育に終わる」といわれますが、品質管理学の教育についても反転授業ができる、質の高い教材製作を始めるべきではないでしょうか。


私の提言
研究者と実務者のあいだから

 
(株)日本科学技術研修所 数理事業部 犬伏 秀生

 私は統計解析ソフトウェアの開発・サポート業務に従事しています。統計解析ソフトウェアの提供者である私どもは、統計手法に関して、研究者と実務者とを繋ぐ役割も担っていると考えています。そのような研究者と実務者のあいだに位置する立場から、僭越ながら、統計手法の研究・活用に関して研究者、実務者双方に対して日頃感じていることを述べてみたいと思います。
 まず研究者の方々には、実務者が今日・近い将来に遭遇する課題の研究、ならびに、課題に対する方法論の教育・普及のますますの充実をお願いしたいと思います。私どもが実務者から話として聞く課題を思いつくままに列挙すれば、コンピュータシミュレーションで実験を行う場合の計画と解析、より少ない実験回数で精度良く効果を推定するための実験計画、観察データに基づく因果関係の同定、ppmオーダーの不信頼度に対する故障時間の推定などが挙げられます。
 また、近年のスマホやタブレットなどの携帯情報端末の普及や情報基盤の整備などにより、市場や工程などから画像や音声、動画などを得られやすい環境が整ってきていますが、ある先生から、これらの画像や音声、動画を現場の問題解決に生かすための有効な統計処理方法(分類など)を検討すべきであるとのご指導を頂いています。私自身もこの点は今後の重要な研究課題の一つであることに気付かされました。
 一方、実務者の方々には、品質管理学会をもっと積極的に活用することを提案したいと思います。まずは研究発表会やクオリティトークなどに聞き手として参加するだけでも、ご自分の業務に関する何らかのヒントを得られることと思います。そして、社内の情報統制や業務の多忙さが増している昨今ではありますが、事例の発表を行うと更に有益だと思います。情報を出して共有することは、結果的に、より良い情報を得られることに繋がります。
 以上、好き勝手なことを述べました。しかし、私が最も問題だと思っている点は、多くの方々からご支援を頂いているにもかかわらず、私どもが橋渡し役を十分に果たせていないことです。産学連携は品質管理学会の重要なテーマの一つですが、私どももその中で今まで以上に課された役割を果たせるよう努めていきたいと思います。


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