油売りの話
昔々、とある村の油商人の話です。電気も無い時代ですが、各家々にランプを無料で配り歩き、そして油を売って儲けたという話です。これって今流にはフリーです。
白黒のテレビが市場に投入された頃、高価な白黒テレビを家庭に設置し、自由に視聴するサービスで浸透させていきました。富山の薬売りと同じです。デスクトップ・コンピュータも同様の方法で世の中に浸透させました。本学にもコンピュータ・メーカーから当時30台の寄贈がありました。
スマートホンにおける無料アプリは、同様の販売方法で顧客への浸透が図られています。電子ブックも音楽の配信も、映画も同じです。まず、無料のもので顧客に体験して頂き、その後の購入に誘導しているのです。
教育でも同様の方法が試みられています。ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学でも行われているそうです。それがMOOC(ムーク:Massive Open Online Courses)です。
MOOC
2013年12月25日に「ルポMOOC革命−無料オンライン授業の衝撃−」という本が出版されました。金成隆一氏が現場取材してまとめたものです。MOOCの誕生、MOOCを提供する大学、教育の形を変えた男−サルマン・カーン−など、取材してのルポで、MOOCのことが本当に理解できます。
インドのカーン氏は親戚の子供の家庭教師をするために、短い10分程度の教育ビデオを作成し、それをユーチューブにアップしました。このビデオがわかりやすいことから再生回数が増加し、世界中の学問を志す人達に見られ話題になりました。
このビデオクリップは無料のオンライン授業ですが、カーン・アカデミィはフリーのような収入を目的としないボランティアな活動です。
世界中に、貧困であるとか差別社会であるとかの理由により、勉強をしたくてもできない人達が大勢いるのです。授業をビデオクリップで無料で提供する時代になっているのです。
日本でもMOOCについては議論されています。私立大学情報教育協会発行の「大学教育と情報」では、2013年度のNo.1、No.2、No.3でMOOCを取り上げています。
反転授業
2014年1月10日の朝のニュース番組で、一般視聴者に「予習をしてから学校に行っていたか」という調査結果が報告されていました。
この放送で取り上げられていたテーマが「反転授業」でした。従来の授業は学校で授業を受けてから、家で復習するという形式が主流でしたが、家でビデオクリップの授業を視聴して予習してから、学校でさらに理解を深めるという形式に変わろうとしているのです。
2014年1月4日の朝日新聞の1面でも、「『教わる』からの卒業」という見出しで記事が掲載されていました。同年同月17日に同紙で「『反転授業』大学でも」という見出しで、「動画で予習→教室では実習」という記事が掲載されていました。
ビデオクリップは、理解できないところを幾度でも再生して視聴することができますし、早回しして視聴することもできます。当然、教員の負担増は考えられますが、反転授業の教育効果はさまざま報告されています。
最近のノートパソコンには、ディスプレーの上にカメラが組み込まれています。パワーポイントのスライドの下にあるノートの部分を音声再生して、スライドをタイマーを使って操作する教材も考えられます。
新QC七つ道具のPDPC法を活用して、RPGのような講義クリップを作成する方法もあると思います。利用者のログから、わかりにくい部分を特定することなどもできるのではないでしょうか。
品質管理は「教育に始まり、教育に終わる」といわれますが、品質管理学の教育についても反転授業ができる、質の高い教材製作を始めるべきではないでしょうか。