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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2013年 12月 No.329

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■トピックス:世界の顧客ニーズ把握法の動向!
■私の提言:学会の仲間を増やして、学会活動から、日本の再生を!
・PDF版はこちらをクリックしてください →news329.pdf

トピックス
世界の顧客ニーズ把握法の動向!

広報委員会 委員長 大藤 正

 かつて「買い手の要求にあった製品やサービスを……」という定義があったが、顧客の要求を把握することは何時の世にも必要なことである。従来、顧客ニーズを把握する方法としては、アンケート調査や意見カードなどが使われていた。グループ・インタビューという顧客行動調査という方法も用いられていたが、収集した情報は言語データとして扱われてきた。
 品質機能展開(QFD)における要求品質展開表は、その代表的な方法である。顧客の生の声(Voice of Customer)を収集して、これを原始情報として要求品質に変換して階層構造化する。この一連の操作は言語データの解析であり、VOCから顧客の潜在ニーズを探る行為である。このような言語データの解析には限界があり、グローバル化の進展と相まって新たな顧客ニーズの把握方法が模索されている。
☆ITを活用した顧客ニーズの把握☆
 日本のコンビニエンス・ストアで初められたPOSシステムは物流業界に変化をもたらした。このシステムも顧客のニーズを把握する方法であるが、顧客に要求を聞くのではなく、顧客の購買行動データから顧客ニーズを把握する方法である。
 米国の書籍通信販売でも顧客の過去の購入履歴データを解析して販売促進に使用しているが、これも顧客に要求を聞くのではなく、顧客のニーズを推測する方法である。同じように日本の建設機械を製造販売している企業では、機械に組み込んだ情報発信装置を活用して使用状況を監視して収集データを解析することによって顧客のニーズに応えている。
 つまり、製品を売ってしまえばそれで終わりという適合品質の保証だけでなく、使用の品質まで保証するという生涯価値保証がなされているのである。品質の定義として「使用への適合(fitness for use)」があるが、製品品質の保証から、使われ方の調査をして使用品質を保証し、生涯価値保証することが当たり前になってきているのである。
☆VOCの2種類のV☆
 2013年9月に米国のサンタフェで18回目となる品質機能展開の国際シンポジウムが開催された。参加国は米国のみならず、ドイツ、香港、トルコ、オランダ、タイ、日本など全世界ではないが、赤尾洋二先生のキーノートを含めて7カ国11件の発表があった。
 顧客ニーズの把握はQFDのお家芸であるが、各国の発表を聞くと、VOCのVは大きく2つに分けられることがわかった。一つは従来の言葉によるVであり、もう一つは行動によるVである。後者は顧客行動を観察することによって、つまり顧客が行為として発信している情報から顧客のニーズを把握するという方法である。
 顧客のニーズを把握するためには、顧客とのコミュニケーションが必要だが、言語によるコミュニケーションと非言語(ノンバーバル)によるコミュニケーションがあり、後者のコミュニケーションの方法を採用しようとしている。ノンバーバル・コミュニケーションの中でも、顧客ニーズの把握には、顧客の表情や態度から読み取る方法が試みられている。
 この研究は、過去にはボディーランゲージともいわれているが、日本科学技術連盟の品質機能展開研究会でも始められている。
☆生涯価値保証に向けて☆
 多くの企業が新製品を次から次へと世の中に送り出しているが、実は強制的陳腐化という行為をしているのではないだろうか。新製品の販売は、まだまた使える製品の使用をやめてもらうことである。製品品質を保証することは重要であるが、製品の生涯価値を保証することへの転換が必要なのではないだろうか。
 新製品の開発設計者は、自分の作ったものが市場に出たとき、どのように使われているか、知りたいはずである。楽しそうに使われているか、喜んで使っているか、自慢しているか、知りたいはずである。そのような光景を見たとき、設計者はこの上ない喜びを感じ、更なる新たな設計に取り組むのではないだろうか。そのような至福の時間を他人に渡していいのだろうか。


私の提言
学会の仲間を増やして、学会活動から、日本の再生を!

東海大学 綾野 克俊
 昨年度から、品質管理学会の事業委員会の委員長を仰せつかっております。事業委員会は、本部主催の行事である研究発表会、シンポジウム、講習会、講演会、事業所見学会、クオリティ・トークの企画・運営を行っています。
 このうち、多くのシンポジウム、講習会は、学会に設置されている各研究会・部会等の研究成果の社会還元の場として、また、JSQC規格の普及の場として、各研究会・部会・委員会の要請に基づいて広報・運営を行いますが、他の独自のシンポジウムと、講演会、事業所見学会、クオリティ・トークは、事業委員会として企画・運営を行っております。本年度も魅力的な行事を企画してまいりますので、多くの会員の方々の参加を期待いたします。
 ところで、昨今のメディアの話題になっている有名ホテルや百貨店のレストランの食材の「誤表示」問題をみると、日本社会でも、品質管理の基本的考え方が浸透していない分野がまだまだあることに、危機感を感じられた方々も多いのではないかと思います。
 振り返ってみますと、日本が戦後の荒廃のなかから世界第2の経済大国にまで復興してきた秘訣が日本の品質管理のやり方であるとした1980年のNBCの“If Japan can, why can't we?(日本が出来てなぜアメリカが?)”というタイトルのテレビ番組をきっかけとして、多くの国が日本的品質管理・経営のやり方を導入し、国を挙げての品質管理・品質経営の推進を行っていることは皆様もご存知のことと思います。
 一方、日本では、1991年のバブル経済崩壊後の長くつづいたデフレ経済で、品質重視の経営が忘れられてしまっているように思えます。消費者の安心・安全をないがしろにするような様々な偽装問題、品質問題は、その現れではないでしょうか。品質管理学会の会員の減少も企業経営における品質管理活動の低迷を表しているのかもしれません。
 日本経済の再生には、改めて、品質重視の経営の普及・浸透が必要だと思います。
 日本品質管理学会の仲間を増やし、学会の活動を通じて、真に消費者の喜ぶ品質の製品・サービスの提供による企業経営を普及することにより、日本の再生をしていきたいものです。
 皆様の会員の勧誘と、学会活動への参加を期待いたします。


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