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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2013年 8月 No.326

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■トピックス:─「日常管理の指針 JSQC-Std 32-001:2013」制定について─
■私の提言:「品質」のグローバル化と言語力向上の必要性
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トピックス
─「日常管理の指針 JSQC-Std 32-001:2013」制定について─
日常管理の意義、重要性を広く社会に発信しよう!

トヨタ自動車(株)/原案作成および審議委員 古谷 健夫

 標記規格の制定に際しては、日本品質管理学会(以下、学会)の会長である中條先生が原案作成委員会の委員長として全体のとりまとめをされた。筆者も委員の一人に加えていただいたことから制定の経緯と要点を紹介する。

 品質管理に必須な要素を規格化し、社会に広く発信することは、学会の重要な使命と言える。今回「日常管理の指針」が、「品質管理用語」(2011年10月制定)に次ぐ2つ目の規格として制定された。学会として日常管理の重要性を改めて多くの企業、組織に発信したということに、大きな意義があると考えている。
 原案作成委員会の第1回会合は2012年3月25日(日)に中央大学キャンパスで開催された。委員長である中條先生と8名の委員(専門家4名、企業4名)という構成であった。その後、ほぼ月1回(ほとんどが日曜日)のペースで開催、内容についての議論を重ね2012年12月の第9回会合をもって原案がほぼ完成した。
 審議委員会は学会標準委員会の委員長である平林委員長のもと10名の委員で構成され2013年の5月までに計3回開催されている。この間パブリックコメントの募集も行われ、1か月間に31項目のコメントが寄せられた。
 これらへの対応を協議するため第10回の原案作成委員会が2013年5月4日に開催され、その直後の同月7日の第3回審議委員会にてすべての審議が終了した。そして検討開始から約1年2ヶ月を経て、2013年5月22日に学会規格として正式に制定されたのである。

 日常管理(SDCAサイクル)の意義および重要性については、論を俟たないであろう。ところが日常管理の理解についてはさまざまである。特に、「日常業務」と「日常管理」の違いを説明することは難しい。どちらも普段当たり前に使っている言葉のため、明確な使い分けがなされず同じ意味合いで用いられてしまうことが多い。
 例えば営業部門では、新規顧客への訪問、販促イベントの開催、代金回収など、さまざまな業務があるが、一般的には業務の標準化は困難とされている。実際は少なからず標準(取り決め)があるはずなのだが・・・・・・。同様に、企画部門、開発・設計部門、サービス部門などでも、必ずしも標準を正しく理解しているとは限らないのである。
 また多くの組織では、仕事のプロセスが定められている。それぞれが、「品質は工程でつくり込む(自工程完結)」「プロセス保証」を目指して取り組んでいる。こうしたことをより効果的・効率的に行う管理のシステムこそが日常管理なのであるが、そのように認識している人も少ない。
 多くの人にとって、日常の業務は認識できても、日常管理が意識されることはあまりないのである。

 また、日常管理では異常への気づきと対応が重要となる。このため、「異常」と「不適合」の違いを正しく認識しなければならない。本規格では、管理限界の意味するところを解説している。ここに品質管理の本質があり、問題発見(改善)につながる考え方が凝縮されている。また、異常の発生をすぐに共有するためには、何でも言える職場風土でなければならない。SDCAのサイクルを回すのは第一線のメンバーであり、人材育成と職場風土づくりに取り組まなければ、このサイクルは回らないのである。

 「標準なくして改善なし」と言われるように、日常管理はすべての基本である。多くの企業、組織が、本規格を活用して、日常管理を一層充実、徹底させることで、パフォーマンスレベルの維持向上を図り、持続的成長を実現されることを願っている。微力ではあるが、本規格の制定に携わった一人として、その実現は密かな喜びとするところである。

 学会では本規格の講習会を以下のとおり計画している。
・日時:9月18日(水)13:00〜17:00
・会場:日本科学技術連盟千駄ヶ谷本部3号館2階講堂
 多くの方が日常管理への理解を深めていただければ幸いである。


私の提言
「品質」のグローバル化と言語力向上の必要性

富士ゼロックスアドバンストテクノロジー(株) 原田 文明
 我が国の品質管理が製品の品質改善だけでなく、企業競争力の中核が「品質」であることを実証してきたことは世界に誇るべきことである。
 「品質」とはお客様の潜在的、或いは無意識な期待を含む要求である。企業活動のグローバル化に伴い、「品質」の範囲は拡大し、それを実現する為の努力が常に求められることになる。
 新製品開発に関わる調査、研究、教育、国際標準化など様々な分野で海外とのコミュニケーションが必要とされ、管理職資格や採用条件にTOEICの点数を設けるところも多い。品質管理の分野も例外ではない。
 コミュニケーションの基本は言語である。人は自分の言語でものを考え、想像し、主張し、意思を伝える。人の感性や悟性、知性の伝達力は言語能力によって決まるものでTOEICなどの語学能力で測れるものではない。「品質」の改善には多くの知識を積み上げて体系化することで新たな価値を生みだすことが必要とされる。とりわけグローバル化の中では個々の技術や感性、知性を磨くだけでなく、それを伝える言語能力の向上が求められる。
 品質管理に限らず海外との折衝や討議で、特に欧米人の膨大な言語量、明晰な表現力と論理性に驚いた人は多い。筆者も幾つかの国際標準制定の合議に参画したが、その主張の強引さや討論の激しさに辟易とした経験がある。その折に痛感するのが、語学力の問題もあるが、それ以前に言語力(国語力と言って良い)の弱さである。日本人が奥ゆかしいのではなく、それだけの言語量や表現能力がないのである。言語力とは単に「腹が空いた」という事実を伝える能力ではなく、何故、どのように「腹が空いて」、その合理性と重要度を伝えることであると考えている。
 一般生活は数百の単語で事が足りるとのことだが、単語だけで意思疎通できる環境では言語力は不要である。グローバル化の下での「品質」の継続的改善とは相互の考え方や要求を正確に伝達しつつ、言語により叡智を刺激して新たな知識を生み出していくことである。その為には単なる語学力とは違い、厳格な用語の定義や専門知識や文化や歴史に対する理解など広い分野の知識が求められる。
 我が国の品質管理が今後も世界をリードしていくためにも、教育として言語能力の強化を本格的に検討する時期ではないかと考えている。


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