JSQC 一般社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2013年 6月 No.325

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス:品質管理検定制度の改訂について
■私の提言:「品質指向ソフトウェアマネジメント」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news325.pdf

トピックス
品質管理検定制度の改訂について

品質管理検定運営委員会 委員長(統計数理研究所) 椿 広計

品質管理検定に久々に大きな制度改訂が実施され、それに伴い各級レベル表の改訂作業も開始される。
 新たな仕組みは、2級を中心とした繰り返し受験の推奨と、今一歩の努力で昇級する受検者のための情報開示である。

 品質管理検定(以下、QC検定)は、2005年4月に創設され、同年12月第1回が実施され、3,601名が受検した。ほぼ右上がりの成長を続け、2013年3月実施の第15回検定では、過去最高の43,062人が受検し、これまでの累積受験者数353,943名、合格者数230,598名を数えるに至った3級以上では、品質管理の実践と統計的方法を中心とした品質管理手法の2分野を評価することで、わが国競争力の源泉の一つである管理・改善活動に資する知識や力量を保証する検定制度を目指している。現在、15の協賛団体、33の協賛企業の支援を受け、わが国産業競争力の基盤たり得る人材の育成・評価のためのユニークな検定に育ちつつある。
 創設以来、大きな制度見直しは、2回あった。一つは、立ち上げ当初、年1回実施であった検定を、2007年度から年2回実施としたこと。もう一つは、産業界ステークホルダー、特に協賛企業との1年近い品質管理で求められる知識・能力に関する議論と、認定団体であるJSQC理事会の承認の下で、2008年10月に各級のレベル表を大幅改定したことである。
 QC検定運営委員会では、検定の社会的価値、利用的価値を高めるために2012年4月より産業界の運営委員を中心に制度見直しを開始した。運営委員会が危惧した点は、QC検定2級と1級とのギャップであり、QC検定2級合格者が、1級にチャレンジすることなく、品質管理技能の維持・改善を終了してしまうという制度的問題である。世界の多くの専門職団体が、実務専門家に対して、不断の力量の維持・改善を社会責任として求めている。品質管理検定を教養活動として受検されるのならばともかく、実務の中で専門家として責任ある活動を行う可能性が高い職業人受検生の場合には、検定がその力量改善・維持の自己評価・点検の一助となる仕組みとならなければならない。
 以下では、平成25年度から実施した仕組みの見直しの概要を紹介する。
 先ず、これまで受検者に勧めてきた上位級チャレンジのみならず、合格級への繰り返し受検も推奨することとした。これは、上で述べたように主として2級合格者に対する推奨である。もちろん、既存の合格実績は永久に保証されるが、ボランタリーな力量の維持と時代に即した知識の習得に努力する個人や組織を評価する仕組み、すなわち、繰り返し受検に対する経済的支援と繰り返し合格履歴の希望者に対する公表などを実施することとした。また、再受検の正当性をより強く示すべきというJSQC理事会の要請に応え、QC検定レベル表の定期的な見直しを行い、品質管理の基本理念を維持した上で、時代に即した品質管理専門家の力量を定期的に発信することとした。既に2013年4月の運営委員会で、JSQC代表委員に対して、本作業への協力を依頼した。
 第2に、検定受検者に公開する情報を大幅に多くし、自身の力量がどの程度にあるかをより明らかにする措置を講じた。特に、2級と最難関とされる1級との力量のギャップを埋め1級への力量改善を促進するため、1級の一次試験(手法・実践分野の知識を問う選択式試験)合格者を準1級合格とし、論述式試験(実務への活用力を問う2次試験)を合格すれば1級合格となる力量であることを情報開示することとした。同様に2級試験不合格者に対してもあと一歩で合格する水準である状況か否かを開示することとした。
 これら、新制度の導入により、検定の自己点検機能は強化され、社会的期待に応えるものになると運営委員会では信じているが、その根幹にあるのは品質管理専門家がどのような社会的機能を果たすべきかというレベル表の内容であり、この定期見直しは、重要な位置づけとなっており、ここに本来あるべき姿が計画されていなければならず、その司令塔としてのJSQCの貢献は重大と言わざるを得ない。

私の提言
「品質指向ソフトウェアマネジメント」

鳥取大学大学院工学研究科社会経営工学講座 教授 山田 茂
 昨今、社会基盤を支える情報システムのコンピュータソフトやデジタル製品の組込みソフトなどのソフトウェアに潜在する人為的誤りや欠陥、いわゆるバグに起因するシステムや製品の不適合やトラブルの発生は後が絶えません。ソフトウェア開発者としては、開発期間の短縮化も図りつつ、顧客ニーズに合致した高品質ソフトウェアを効率的に開発できるように、その開発プロジェクトを成功裡に導いていく必要性にいつも迫られています。
 品質の高いソフトウェア製品を開発出来るようにプロジェクトを確実に成功させるためには、QCDに関わる問題を含む開発プロセスを持続的に改善していくことを意識しながら、開発スケジュールを詳細に計画し、開発プロセスの各局面での成果物をしっかりと定義し、開発プロセスの状態の是非を判定できる定量的基準を持つ必要があります。そのために、企業の実践的研究者も含む筆者の研究グループでは、ソフトウェア品質の持続的向上という課題に取り組む中で、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)とCMM(開発能力成熟度モデル)に基づくマネジメントプロセスの標準化と定着化のために、プロジェクトマネジメント技術を導入して、その効果の評価と検証を行ってきました。これらの実践的研究を踏まえて導き出されたのが「品質指向ソフトウェアマネジメント」であり、品質を重視したプロジェクトマネジメントを徹底し、それに関わる技術の持続的向上を図っていくということになります。すなわち、開発プロセスの計測・制御およびソフトウェア製品(成果物)品質の予測・評価を、プロジェクトマネジメントの中で実践しながら、
製品品質向上のためのマネジメント技術の獲得
獲得したマネジメント技術(プロセス品質向上のためのプロセス改善技術)の定着
プロジェクトの定量的評価に基づく定着したマネジメント技術の改善
といったマネジメント技術の獲得・定着・改善のサイクルを絶えず回して行く必要性を強調したいと思います。
 実際のソフトウェア開発現場において、「品質指向ソフトウェアマネジメント」の考え方が取り込まれ、高品質ソフトウェア製品の生産につながることを切望する次第です。


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--