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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2013年 2月 No.322

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■トピックス:グローバル品質管理教育研究会スタート
■私の提言:個人のやる気が組織のやる気に
・PDF版はこちらをクリックしてください →news322.pdf

トピックス
グローバル品質管理教育研究会スタート

研究会主査 大滝 厚

 ものづくりがグローバル化する中で「Qの確保・展開・創造」の一環としての品質管理教育のあり方を産と学が協力して事例研究やアンケート調査によって明らかにして課題を整理し、解決策を議論して会員間で成果を共有できるよう昨年11月より活動を開始した。

問題の認識:昨年暮の政権交代前まで続いた長期にわたる超円高基調や東日本大震災の影響を受け、コスト問題を改善するために、大企業から中小零細企業に至る日本企業のグローバル生産・販売の展開が加速し、海外での生産比率が右肩上がりに増加していった。その一方で、“日本ブランド=品質”のイメージを守るために、海外で生産されるものも国内生産と同一品質を維持することが必須となっている。そのために、海外に生産拠点を持つ日本企業の多くは個別努力のもとでさまざまな困難を抱えながらも、日本ブランド維持のための現地従業員に対する作業訓練と品質管理教育を実施している。そうした困難の中には、例えば講師の調達、現地語の教育テキストの不足など、各社に共通する問題が多く存在する。

目的:グローバル化に対応した自社の顧客重視のものづくりに対する方針を明確にし、品質に関する一般的な知識に加え、品質管理手法の活用方法を徹底理解し、確立した全社的品質保証に関するしくみや自社の品質不具合の事例を通して問題・課題解決に対する能力や再発防止と未然防止の高い能力を身につけ実践できる人財開発プログラムを開発する。

目標と研究対象、実施項目:最終目標は「品質管理教育プログラムの標準化」にある。具体的には、参加企業の事例研究を通して、グローバル化に対応できる人材像(コンピテンシー)を明確にした上で、品質管理教育プログラムの共通要求事項と個々の企業が求める要求事項に分け、前者を中心に学会標準を開発・提案する。このために、事例研究のほかに、質問紙やインタビューによるアンケート調査、シンポジウムなどを通して広く会員や会員外から情報収集を行い、標準の開発とそれに対応した教育テキストの編纂等を考えている。

研究会メンバーと活動期間:メンバーはJSQCの賛助会員と個人からなり、現在の構成は、賛助会員企業6社、個人メンバー7名で構成している。そのほかに賛助会員企業や研修団体の協力を得て体制を整備し活動を開始した。当面の研究期間は2年間と定め、精力的に活動を展開する予定である。

研究会への期待:活動を開始したばかりであるが、海外進出している中小企業(正社員60名、派遣や契約社員、グループ外注を含めて約200名)の経営者に研究会活動について話したところ下記のようなコメントが寄せられた。この中には日本のものづくりと海外でのものづくりの狭間で悶々としている多くの企業の縮図が見えるようであり、こうした難問にも応えられるように研究を進めたいと考えている。

 私どもも海外(韓国、中国、米国に現地法人、インドネシア、マレーシア、インドに業務提携会社)に進出しておりますが、上手く行かないことだらけで、悩みが尽きません。
 新興国では(1)品質が上がらない、(2)協力会社への不信感、(3)資金回収が出来ないという悩み、米国においては(1)コストが合わない、(2)機械構造の差異、(3)寸法等の単位の差異、(4)協力姿勢の4点において悩みが尽きません。米国では特に(1)と(4)の問題で会社として利益を生む状況に至っておりません。
 我々が扱っている製品は特注品機械装置ですが、日本では摺合せ技術を駆使した構造になるのに対し、米国では組み合わせ技術を組み合わせて同じ機能を発揮するようにしないと、アメリカ人は上手く作れません。ところが、我々のお客様である日系の自動車メーカーは、『機械装置は世界共通』というコンセプトで海外進出をしていることから、特定の国だけに通用する特殊構造にするわけにはいかず、結果として上手くいかないわけです。
 研究会で何かこんな悩みを解決するヒントが掴める糸口を示してくれることを期待しています。

 


私の提言
個人のやる気が組織のやる気に
〜感情がもたらすものとは〜

一般財団法人日本科学技術連盟 茂田 宏和

人は感情の動物
 人は理論や理屈だけでは動かない感情の動物です。感情は人の行動に大きな影響を与えています。仕事や私生活において、頭で分かっていても、行動が変わらない・変えられない背景には感情があるのです。
個人のやる気が組織のやる気に
 多くの組織は、組織全体の高いパフォーマンスを求めています。高いパフォーマンスは組織全体のやる気に起因していますが、先ずは個人のやる気ある行動を引き出すことから始まります。行動は感情に影響を受けていますから、感情の大切さを理解したうえで組織をマネジメントできるリーダーが必要です。例えば、朝上司が職場にやってきて怒っていると、そのマイナスの感情は組織全体に広がります。重要なのは感情は伝播するという認識を持つことです。
 また、ある調査結果では、ポジティブな感情を共有し上手く活用したトップマネジメントチームは、そうでないチームより業績が4〜6%高いという結果も出ているようです。抑圧的なマネジメントでは短期的な結果が出ることはあっても、永続的に結果を出し続ける、やる気のある自律した組織風土を作ることはとても困難と言えるでしょう。
感情のあり方は人生の質をも決める
 東京学芸大学の相川教授は「感情を上手に扱う能力が人生の質を決めている」と言います。我々は感情が強くなったり弱くなったりしながら1日を過ごし、その積み重ねが一生ですから、行動に大きな影響を与えている感情のあり方が人生の質を決めていると言っても良いと思います。「変わりにくい性格」よりも「変えやすい感情」に注目し、その感情を賢く上手に扱う。その能力を高めることで、自分や組織そして人生の質をも自ら変える(変革する)ことが出来る人間に成長すると思います。私も、約9年前にEQ(Emotional Intelligence Quotient:心の知能指数)やコーチングに出会い、上述のような感情の大切さや感情が人の行動に与える影響について知りました。皆様も改めて感情というものに正面から向き合ってみてはいかがでしょうか。


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