1.第143回シンポジウムの概要
QMS有効活用及び審査研究部会は、「品質マネジメントシステムの監査技法の向上とISO 9001の活用」というテーマで、第4期研究活動の成果報告会を2012年7月21日に日科技連千駄ヶ谷本部において127名の参加者のもとで開催した。
今回は東京大学の飯塚先生から「MSS認証の社会的意義」について特別講演が行われ、この中で強調されたのが、「ISO9001認証のブランド価値向上」や「認証基準としてのQMSモデルの意義」であった。審査員として改めて考えさせられる内容であった。
第4期研究活動の途中経過を含む成果について、6つのWGから発表を行った。その中でも、WG1は適合性を証明する審査に関する研究として、JABとの共同研究を行っており、この研究成果に基づいて、第三者審査登録機関で試行実施した結果に関する3事例について発表を行った。この方法は、今後の審査のあり方の一つとして考慮すべき方法であるという結果であった。
これ以外の特徴としては、WG5とWG7が行っている研究活動結果に関して、JSQC規格化に向けた報告を行った。これは、今後の他の研究部会などへJSQC規格の開発推進に影響を与えるものと考えられる。
各WGの発表の後に質疑応答を行い、各課題に関して今後の検討課題も浮き彫りになった。今後は、これらの意見を踏まえて研究活動を展開させる予定である。
2.QMS審査技術及び有効活用
本部会は2005年に設立し、今期で第4期研究活動を実施中である。部会員は現時点で145名であり、研究活動に常時参画しているメンバーは約50名程度である。今後はこの人数を増加させることが課題である。一方、その他の部会員は、シンポジウムへの参加や講演会などに参加しており、このような場で議論を行っている。
研究テーマは、リーダー会議、各WGの意見、およびシンポジウムでの意見・要望を参考にして決定している。なお、研究活動は原則として毎月1回土曜日の午後に行っている。これにより、WGメンバーがそれぞれの知見や経験をもとに議論を重ね、成果へとつなげている。
今期は次のテーマで活動を行っているが、一部第3期からの継続テーマも含まれている。
WG1「適合性を証明する審査の研究2」
WG2「WG1の研究内容の検証」
WG3「ビジネスプロセスにおけるQMSの位置付け」
WG4「経営に役立つ『自己適合宣言』の研究」
WG5「次世代対応の第二者監査技法の研究」
WG6「経営に貢献するISO9001 推進の研究2」
WG7「有効性を高める審査活動のための審査ツールの標準化」
今後はシンポジウムでの意見をもとに継続して研究活動を推進する予定である。研究成果のアウトプットは、研究成果報告書やJSQC規格として発行する予定である。また、JSQC規格として制定された場合には、規格制定説明会を開催する予定である。
3.ISO9001改正動向
ISO9001は、2011年10月15日〜2012年3月15日の期間で行われた定期見直し投票の結果が「追補又は改正」となったので、作業グループを設置し、6月から追補又は改正作業が開始された。
マネジメントシステム規格における利用のための上位構造、共通の中核となるテキスト並びに共通用語及び中核となる定義が示されたISOガイド83の規格が制定されたことにより、これに基づいて改正作業が行われることになる。なお、改正目標時期は現時点では2015年としている。
これに伴って、ISO9000も改正作業が開始される。改正の主な内容は、ISO9000:2005以降に発行されたISO 9000ファミリー規格の用語定義、ISO9004:2009の概念、及び改訂版の品質マネジメントの原則をISO9000に規定することになる。
2015年に向けた改正活動が行われるので、その内容については日本規格協会のホームページを確認して欲しい。