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JSQCニューズ 2012年 9月 No.319

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■トピックス:QMSの監査技術研究とISO9001の改正動向
■私の提言:「Qの創造」を改めて考える、モノを造るから価値を生むへ
・PDF版はこちらをクリックしてください →news319.pdf

トピックス
QMSの監査技術研究とISO9001の改正動向

QMS有効活用及び審査研究部会 部会長 福丸 典芳

1.第143回シンポジウムの概要
 QMS有効活用及び審査研究部会は、「品質マネジメントシステムの監査技法の向上とISO 9001の活用」というテーマで、第4期研究活動の成果報告会を2012年7月21日に日科技連千駄ヶ谷本部において127名の参加者のもとで開催した。
 今回は東京大学の飯塚先生から「MSS認証の社会的意義」について特別講演が行われ、この中で強調されたのが、「ISO9001認証のブランド価値向上」や「認証基準としてのQMSモデルの意義」であった。審査員として改めて考えさせられる内容であった。
 第4期研究活動の途中経過を含む成果について、6つのWGから発表を行った。その中でも、WG1は適合性を証明する審査に関する研究として、JABとの共同研究を行っており、この研究成果に基づいて、第三者審査登録機関で試行実施した結果に関する3事例について発表を行った。この方法は、今後の審査のあり方の一つとして考慮すべき方法であるという結果であった。
 これ以外の特徴としては、WG5とWG7が行っている研究活動結果に関して、JSQC規格化に向けた報告を行った。これは、今後の他の研究部会などへJSQC規格の開発推進に影響を与えるものと考えられる。
 各WGの発表の後に質疑応答を行い、各課題に関して今後の検討課題も浮き彫りになった。今後は、これらの意見を踏まえて研究活動を展開させる予定である。

2.QMS審査技術及び有効活用
 本部会は2005年に設立し、今期で第4期研究活動を実施中である。部会員は現時点で145名であり、研究活動に常時参画しているメンバーは約50名程度である。今後はこの人数を増加させることが課題である。一方、その他の部会員は、シンポジウムへの参加や講演会などに参加しており、このような場で議論を行っている。
 研究テーマは、リーダー会議、各WGの意見、およびシンポジウムでの意見・要望を参考にして決定している。なお、研究活動は原則として毎月1回土曜日の午後に行っている。これにより、WGメンバーがそれぞれの知見や経験をもとに議論を重ね、成果へとつなげている。
 今期は次のテーマで活動を行っているが、一部第3期からの継続テーマも含まれている。
WG1「適合性を証明する審査の研究2」
WG2「WG1の研究内容の検証」
WG3「ビジネスプロセスにおけるQMSの位置付け」
WG4「経営に役立つ『自己適合宣言』の研究」
WG5「次世代対応の第二者監査技法の研究」
WG6「経営に貢献するISO9001 推進の研究2」
WG7「有効性を高める審査活動のための審査ツールの標準化」
 今後はシンポジウムでの意見をもとに継続して研究活動を推進する予定である。研究成果のアウトプットは、研究成果報告書やJSQC規格として発行する予定である。また、JSQC規格として制定された場合には、規格制定説明会を開催する予定である。

3.ISO9001改正動向
 ISO9001は、2011年10月15日〜2012年3月15日の期間で行われた定期見直し投票の結果が「追補又は改正」となったので、作業グループを設置し、6月から追補又は改正作業が開始された。
 マネジメントシステム規格における利用のための上位構造、共通の中核となるテキスト並びに共通用語及び中核となる定義が示されたISOガイド83の規格が制定されたことにより、これに基づいて改正作業が行われることになる。なお、改正目標時期は現時点では2015年としている。
 これに伴って、ISO9000も改正作業が開始される。改正の主な内容は、ISO9000:2005以降に発行されたISO 9000ファミリー規格の用語定義、ISO9004:2009の概念、及び改訂版の品質マネジメントの原則をISO9000に規定することになる。
 2015年に向けた改正活動が行われるので、その内容については日本規格協会のホームページを確認して欲しい。


私の提言
「Qの創造」を改めて考える、モノを造るから価値を生むへ

株式会社リコー NA事業部ECS事業センタ 事業戦略室 廣野 元久

 私事で恐縮ですが、本社の品質部門を離れて、新規事業開発に従事して1年半が経過したところです。事業を起こす側から改めて「品質」を考えると、大きなパラダイムシフトをはっきりと感じます。それは、いままで経験した事がない恐怖の感覚です。表層的には、自由経済の破綻に起因する為替政策の二重遭難、世界各地で起きた大きな災害、中東紛争による燃料の高騰、急激に巨大化した新興国マーケット、等マクロ的な事柄が沢山連想できます。これらは、日本の製造業への痛手を加速させた要因であるにせよ、根源的な因子ではないと思います。
 見逃せない点は、顧客が感じる価値が大きく変化した事だと考えます。「所有」が価値と考えた個体的な閉じた社会から、「機能利用」が価値となるネットワークで繋がったグローバルに開かれた社会が始まっています(スマートフォンを使ったビジネスモデルが与えたイノベーションが最たる例でしょう)。モノだけでなく、解決手段、経験、映像、言葉、文字など自由に好きな時に好きな相手とシェアする事が可能な時代になったと実感します。顧客は、コストを掛けて新しい機器やサービスを必要以上に所有することに疲れを感じているのではないでしょうか。
 ところで、企業を評価するひとつの指標に、獲得した市場シェアがあります。大きなシェアを獲得するには、今までにない価値を提供し、且つ、優れた機能の製品を均一に安く、沢山提供することが必要です。国際競争時代では、提供価値の寿命は短く、直ぐにコモディティ化します。大きなシェアを獲得するにはコモディティ化は避けられそうにありません。会社単位、或いは国単位で新たなビジネスモデルを構築する事が難しい時代と言われています。1社ですべてのバリュー・チェーンを賄うことができる時代ではなく、コモディティ化を生き抜くには徹底したコスト制御が必要です。関係の深い協力工場と一緒になって、絶えざる改善を愚直に進めるよりも、国際的で巨大なEMS企業グループに生産のすべてを委託する方が、スケール効果が大きい場合があります。モノ造りの価値がスケール効果によるコスト抑制に移ってきていると感じます。
 新しい時代の今こそ、ユニークで価値のある機能を提供し続ける事、それにはモノの提供に留まらず、クラウドを使った機能利用の品質と人が介在するサポートの品質を総合的に創り込むために、創り手・造り手・売り手、そして使い手の皆がネットワークで繋がり、価値を享受できる、日本ならではの「Qの創造」こそが、働く人々、日本企業、日本市場を元気にする源ではないかと考えます。


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