信頼性・安全性計画研究会は、品質と安全性に関するトラブルが様々な分野で発生してきた社会情勢を踏まえ、2006年に発足したものである。参加メンバーは、品質管理、信頼性工学、ヒューマンファクター、等々様々な分野から産学の技術者、研究者が集結している。会合はほぼ月に1回、定期的に開催し、信頼性・安全性を確保するための活動の体系化と具体的な方法論の開発などについて取り組んでいて、第1期の成果は品質誌38巻第4号において特集記事としてまとめられている。現在、2期目の最終年度である。
第2期では、次世代品質信頼性情報システム(Quality and Reliability Information System :QRIS)のフレームワークの体系化と、具体的な方法論の構築に重点を置いて2009年11月より活動を開始した。基本的な考え方については、活動報告の第1報として第92回研究発表会で報告しているが、概略としては、製品の稼働状況をリアルタイムにモニタリングし、シミュレーションに基づいて故障の予測を行い、顧客別にきめの細かいリスクコミュニケーションや保全を行おうとする、次世代型の品質・信頼性確保のフレームワークである。
ところが、活動を開始して早々、製品の安全性に関するリコール問題が様々な分野で顕在化するところとなった。これをうけて、グローバル化が進む企業活動の中で信頼性・安全性を確保するために取り組むべき課題について、本研究会として見解をまとめておくべきであるとの認識に至り、そのための検討を行った。その結果は、研究会活動報告第2報として、第40回年次大会にて報告をしている。論点はいくつかあるが、大事なポイントとしては、新技術の導入に伴い発生しうるトラブルをしっかりと予測するとともに、どのように製品が使われているのか、文化的な背景も踏まえつつ市場のモニタリングに注力することが重要である。こうしたことを実践していくためには、やはりQRISが有効であると考えられる。
リコール問題に対する取り組みがおおむねひと段落し、元の活動に戻り始めたところで、2011年3月の震災が発生した。伊藤の所属する大学も、比較的軽度ではあるが被害を受け、研究会としての活動は一時ストップした。なお、研究会の活動は行えていなかったものの、本学会ウェブサイトに設置された震災支援情報のページの立ち上げには、本研究会の主力メンバーが多数参画したことを述べておきたい。その間、2011年5月に本学会と応用統計学会の共催による「震災支援懇談会」が開催され、本研究会に対して、巨大インフラ(高速鉄道・高速道路等)への未然防止、ならびに、太陽光発電システムの信頼性と保全性について検討することが要望として挙げられた。応急的な対応を終えたころから研究会の活動を再開した。そこで討議されたテーマは、災害に負けずに、信頼性と安全性を確保するにはどうすればよいかというものである。本研究会としては、起きてしまったことへの批判ではなく、未然防止こそ重要であるとの視点に立ち、次に備えるための基本的な考え方の再構築などに取り組んできた。その検討状況の一端は、研究会活動報告第3報として第41回年次大会で発表してあるほか、2012年5月の第98回研究発表会でも、続編を第4報として発表している。ただし、取り組まなければならないことはまだ山積している。なお、学会を横断する組織である「横幹連合」でも、震災克服研究に関する取り組みが最近始まった。本研究会は、横幹連合の取り組みにも積極的に参画し、貢献していこうと考えている。
振り返ってみると、さまざまな情勢に振り回されて、常に後手後手となってしまっている点が残念でならないが、学会員の皆様、ひいては社会全体に貢献できるよう、微力ながら今後も活動を継続していく所存である。会員の皆様のご協力が得られれば幸いで ある。