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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2012年 2月 No.314

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■トピックス:日本品質管理学会規格「品質管理用語」発行に当たって
■私の提言:再発防止と未然防止
・PDF版はこちらをクリックしてください →news314.pdf

トピックス
日本品質管理学会規格「品質管理用語」発行に当たって

標準委員会・委員長 中條 武志

 2011年10月29日に、日本品質管理学会規格JSQC-Std 00-001「品質管理用語」が発行されました。

日本品質管理学会規格
 (社)日本品質管理学会は、2006年以来、“品質の確保”、“品質の展開”、“品質の創造”及び“共通”を4本柱とする中期計画を策定し、従来の枠を超えた活動の展開を目指してきました。
 このうち、“共通”については、(1)品質管理の専門分野を確立する上で基幹となる書籍・資料を刊行していくこと、(2)品質管理に関する国内外の規格の検討・発行に深く係わっていくことなどが重点となっています。これまでも、「TQMの基本」「新版品質保証ガイドブック」「JSQC選書」の発行などに取り組んできました。今回の日本品質管理学会規格の発行も、このような取り組みの一環です。

日本の風土・文化に根ざした定義
 日本の品質管理は、1950年代に米国より導入されましたが、以降、日本の風土・文化に根ざした独自の発展をしてきました。他方、取引のグローバル化に伴い、欧米流の品質管理をもとにしたISO 9000シリーズが1987年に制定され、日本の品質管理に少なからぬ影響を与えました。旧JIS Z 8101(品質管理用語)から統計用語以外の定義が廃止されたこともその一つです。
 ISO 9000シリーズの普及に伴い、サービス業やソフトウェア産業など、従来あまり興味を持っていなかった業種が品質管理に取り組むようになったのは大変喜ばしいことです。反面、ISO規格の用語・概念が従来の用語・概念と必ずしも整合するものでなかったため、品質管理に熱心に取り組んできた製造業で多くの混乱を生み出しました。
 JSQC-Std 00-001は、「用語の定義は、その領域の研究・実践・応用の根幹を成すものであり、使用する人の感性に馴染んでいることが欠かせない」との認識に立ち、日本品質管理学会に属する専門家が集まり、3年余りの時間をかけて作り上げた品質管理用語147語の定義を収録したものです。
 品質・質にかかわる基本用語および総合的品質管理の実践にかかわる用語を選定した上で、定義の作成に当たっては、ISO、JIS、用語辞典、多くの専門書からの主張・要点を抜き出し、これらを横並びにして共通性・相違点を調べました。また、定義案に対して学会員や社会から広く意見を求めました。

国際規格や他分野との整合化
 用語の定義においては、国際規格や他分野の用語との整合を図ることが欠かせません。しかし、特定の規格の要求事項や指針を明確にするために定められた定義と品質管理の考え方や方法を一般的に論ずるための定義とは自ずと違いが出てきます。ISO・JIS規格においても、同じ用語が異なって定義されていることが少なくありません。また、ISO規格をJIS規格に翻訳する際に、従来の日本語の用法を十分考慮しなかったという問題もあります。
 このような事情を考慮し、一部の用語では、敢えてISO・JIS規格と異なった定義を行った上で、相違点および異なった定義をした理由を一覧表にまとめてあります(付録C)。今後、これらの相違点を可能な限り解消するよう国内外の議論を促進していくことは、日本品質管理学会の役割です。

品質管理のさらなる深耕を目指して
 JSQC-Std 00-001は、その大部分をJSQC選書「日本の品質を論ずるための品質管理用語」「同Part 2」および標準委員会報告書「日本の品質を論ずるための品質管理用語の定義と解説(PartT)」「同(PartU)」に依っています。
 選書では、定義の背景や相互関係、定義に含まれている考え方・方法の実践に関する「コンパクトでわかりやすい解説」がなされています。また、報告書では、定義や解説を導く上で元になった「様々な文献における定義や解説」が整理されています。合わせてご活用いただければと思います。
 本規格が品質管理を深耕していく上で、多くの方々に役立てば幸いです。

JSQC規格申込書
http://www.jsqc.org/ja/oshirase/kikaku.html



私の提言
再発防止と未然防止

杭州東忠科技有限公司 河合 清博

 この数年、私は日科技連ISO審査登録センターの判定会議の委員だったり、情報サービス産業協会審査業務部の審査員として200数十社を審査してきたりした。それらを通じて、実に悔しく、悲しく思うことがある。
 ISO規格はじめ様々な規格における正常なマネジメントシステム(MS:Management System)とは、管理された状態にあることで、管理された状態とはPDCAが十分に回っていることであろう。各規格は、基本方針・計画(P)→実施(D)→測定・点検(C)→代表者の見直し(A)と、大きくPDCAを回している。しかし、PDCAは、それぞれの実施事項においても、例えばリスク管理、教育研修、内部監査などにおいてもPDCAが必要である。
 そこで私が悔しく思うのは、内部監査である。内部監査のPDCAを回すと言うことは、指摘事項の真の原因(真因)を突き止めて排除し、二度と起きないよう再発防止をすることである。ところが、再発防止に関しては、ほとんどの企業において、真因に辿り着いていない。なぜなぜ分析の精度が悪いからである。真因ではなくて現象に対策を打っているので応急処置であって、再発防止にはなっていない。私が見てきた中で十分に再発防止が出来ている企業は5社程度しかなかった。
 未然防止に関しては、再発防止の是正措置を水平展開することと誤解していることが多い。是正措置の水平展開は、是正措置の徹底であり未然防止ではない。アクシデントの前に必ずヒヤリハット、うっかりぼんやりなどのインシデントがある。未然防止とは、インシデントを、たとえばFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)を用いて分析をして、エラープルーフ化(ポカヨケ)することである。私の見てきたところ、この未然防止が十分に出来ていると言える企業は1社しかなかった。
 各企業は、多大な工数と時間を投入して内部監査を実施(PD)している。それなのに詰め(CA)が甘いばっかりに成果が得られず、投入した資源が無駄になっている。勿体ない限りである。もし、日本の企業において、再発防止や未然防止が完全に実施されたら、日本経済はあっという間に回復するだろうと、真剣に思ってしまうのは私一人だけではあるまい。


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