2011年10月29日に、日本品質管理学会規格JSQC-Std 00-001「品質管理用語」が発行されました。
日本品質管理学会規格
(社)日本品質管理学会は、2006年以来、“品質の確保”、“品質の展開”、“品質の創造”及び“共通”を4本柱とする中期計画を策定し、従来の枠を超えた活動の展開を目指してきました。
このうち、“共通”については、(1)品質管理の専門分野を確立する上で基幹となる書籍・資料を刊行していくこと、(2)品質管理に関する国内外の規格の検討・発行に深く係わっていくことなどが重点となっています。これまでも、「TQMの基本」「新版品質保証ガイドブック」「JSQC選書」の発行などに取り組んできました。今回の日本品質管理学会規格の発行も、このような取り組みの一環です。
日本の風土・文化に根ざした定義
日本の品質管理は、1950年代に米国より導入されましたが、以降、日本の風土・文化に根ざした独自の発展をしてきました。他方、取引のグローバル化に伴い、欧米流の品質管理をもとにしたISO 9000シリーズが1987年に制定され、日本の品質管理に少なからぬ影響を与えました。旧JIS Z 8101(品質管理用語)から統計用語以外の定義が廃止されたこともその一つです。
ISO 9000シリーズの普及に伴い、サービス業やソフトウェア産業など、従来あまり興味を持っていなかった業種が品質管理に取り組むようになったのは大変喜ばしいことです。反面、ISO規格の用語・概念が従来の用語・概念と必ずしも整合するものでなかったため、品質管理に熱心に取り組んできた製造業で多くの混乱を生み出しました。
JSQC-Std 00-001は、「用語の定義は、その領域の研究・実践・応用の根幹を成すものであり、使用する人の感性に馴染んでいることが欠かせない」との認識に立ち、日本品質管理学会に属する専門家が集まり、3年余りの時間をかけて作り上げた品質管理用語147語の定義を収録したものです。
品質・質にかかわる基本用語および総合的品質管理の実践にかかわる用語を選定した上で、定義の作成に当たっては、ISO、JIS、用語辞典、多くの専門書からの主張・要点を抜き出し、これらを横並びにして共通性・相違点を調べました。また、定義案に対して学会員や社会から広く意見を求めました。
国際規格や他分野との整合化
用語の定義においては、国際規格や他分野の用語との整合を図ることが欠かせません。しかし、特定の規格の要求事項や指針を明確にするために定められた定義と品質管理の考え方や方法を一般的に論ずるための定義とは自ずと違いが出てきます。ISO・JIS規格においても、同じ用語が異なって定義されていることが少なくありません。また、ISO規格をJIS規格に翻訳する際に、従来の日本語の用法を十分考慮しなかったという問題もあります。
このような事情を考慮し、一部の用語では、敢えてISO・JIS規格と異なった定義を行った上で、相違点および異なった定義をした理由を一覧表にまとめてあります(付録C)。今後、これらの相違点を可能な限り解消するよう国内外の議論を促進していくことは、日本品質管理学会の役割です。
品質管理のさらなる深耕を目指して
JSQC-Std 00-001は、その大部分をJSQC選書「日本の品質を論ずるための品質管理用語」「同Part 2」および標準委員会報告書「日本の品質を論ずるための品質管理用語の定義と解説(PartT)」「同(PartU)」に依っています。
選書では、定義の背景や相互関係、定義に含まれている考え方・方法の実践に関する「コンパクトでわかりやすい解説」がなされています。また、報告書では、定義や解説を導く上で元になった「様々な文献における定義や解説」が整理されています。合わせてご活用いただければと思います。
本規格が品質管理を深耕していく上で、多くの方々に役立てば幸いです。
JSQC規格申込書
http://www.jsqc.org/ja/oshirase/kikaku.html