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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2011年 12月 No.313

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■トピックス:中部支部の活動紹介
■私の提言:産官学が連携する人材育成のためのPDCAサイクル
・PDF版はこちらをクリックしてください →news313.pdf

トピックス
中部支部の活動紹介

中部支部長 山内 康仁

 昨今起きている企業の品質問題を振り返ると、幅広い分野で‘品質問題’や‘安全・安心を脅かす問題’など、日本の「Qの確保」の基盤が揺ぎつつあるのではないか。
 「Qの確保」のためには、ものづくりの現場で、今、何が起こっているのか、現地・現物で確認し、ものづくり現場で役に立つ活動を、産と学で実行ある形で展開することが重要と考える。
 このため、中部支部では、2007年度より「実践的Qの確保」をスローガンに掲げて、支部活動を展開している。
 この活動の基盤は研究会活動にある。ものづくり現場で役に立つ「仕掛け」や「仕組み」を‘産’と‘学’で研究するためである。

■中部支部の研究会活動と研究発表会
 現場に起きている問題提起から、産と学で解決策を、それぞれの研究会で議論し、その成果を研究発表している。
(1)産学連携現地現物研究会

開発・設計の分野を主体に、企業と大学の先生が一体となり、‘品質確保の新しい手法’や‘活用できる方法論’の確立を研究。

(2)東海地区若手研究会
(3)北陸地区若手研究会
東海と北陸、それぞれの企業人と大学研究者が共同で現場の課題を研究し、解決策を追及している。
(4)中部医療の質管理研究会
病院現場の問題を研究し、シンポジウムで研究発表をするとともに、講演などを併催している。
 これらの研究会では、下部に部会を設けて活動している研究会もあるが、いずれも1回/2〜3ヵ月の頻度で研究会を開催している。
 これらの成果については、毎年3、8月の北陸地区研究発表会と8月の中部支部研究発表会などで、学会員以外にも参加を呼びかけ、発表している。
 また名古屋工業大学、金沢工業大学では、産学連携製造中核人材育成として、企業のシニア人材活用、ものづくり職場での実践などを取り入れた教育プログラムを用い、社会人と学生が一緒になった実践的工学教育も盛んである。

■シンポジウムの開催
 近年のシンポジウムでは、「実践的Qの確保」に繋がるパネル討論を企画してきた。具体的には、‘未然防止の実践活動’‘品質工学との融合’‘源流からの未然防止’など毎年テーマを選んで展開している。

 昨今の中部地区の企業環境は、中々閉塞感から抜け出すことができない状況が続いている。支部では、このような環境を踏まえ、より魅力ある活動を展開することが、正会員や賛助会員の増加にも繋がり、学会がより活発化すると考える。このため、昨年より支部テーマを『新たな時代を見据えた、新たな成長力の確保』と置き、学会員以外にも魅力あるテーマを選び、講演会やシンポジウムの開催を通じ、会員以外の人にも学会の魅力を伝えている。

■講演会の開催
 毎年1回、支部の方針に沿ったテーマで展開している。昨年から、昨今の企業環境を捉えて、‘企業の持続的成長に向けた品質経営’に関するテーマで講演を企画している。

■事業所見学会の開催
 毎年2〜3回、アンケートの見学希望会社を主体に、中部地区の特色ある活動を展開している企業を選び、開催している。

■幹事研修会の開催
 これらの活動を展開するため、中部支部では、毎年、22名の幹事を産・学から選出し、幹事会を毎月開催し、行事や研究会の企画・展開を図っている。また幹事のレベルアップのために、2回/年、幹事研修会を実施している。

以上が、中部支部の活動概要であるが、今後とも、産と学の連携により、現場で抱えている問題を掘り起こし、‘SQCの活用’や‘仕組み・仕掛け’の議論を深め、具体的な解決策を発信すると共に、中部支部が品質管理を通じ、社会に貢献できればと考える。



私の提言
産官学が連携する人材育成のためのPDCAサイクル

東洋大学経済学部 渡辺 美智子

 1990年代後半からISIなどの国際会議で、専門の研究セッションに比べて教育セッションの盛り上がり方が尋常ではないことに驚かされた。ドイツを例に挙げると、『教育で社会・産業界の構造改革を起こす』という大きなフレーズで、New Media in Educationプロジェクトが政府の大規模予算で進められ、インターネット上にショッピングモールならぬエデュケーションモールを各専門学協会が構築するという。対象は、児童・生徒から大学生・教師・職業人そして社会人とレベルに応じた系統的な各分野の教育教材を開発し無料で公開することで、国民の自ら学ぶ環境を支援するというものである。統計教育はとくに支援が大きく、ドイツ統計学会は拠点11大学の協働で、マルチメディアを活用したNew Statisticsプロジェクトを億の予算で進め、その成果を会長が報告していた。
 ドイツに限らず、来るべき21世紀に向かって世界の多くの国がイノベーションによる経済成長を目指し、そのための長期的視野に立った産官学連携の人材育成のスキームを90年代から構築し実践している。具体的には、「集団での学び」・「課題発見と問題解決」・「イノベーション」の力を国民にコンピテンシー(行動特性)として身に付けるため、学校教育の早期よりの教育改革とその質保証を産官学が連携して回すPDCAサイクルである。
 先ず産業界を代表する各企業は10年後20年後を見据えた21世紀型のワークスキルを明示しそれを教育界に伝え、国はそれぞれの専門の学協会と連携し21世紀型人材育成の目標に照らし、各分野・教科の教育のガイドラインを作成し教育界を指導する、教育界はガイドラインに従って教育サービスを実践する、ただし、教師はそのための研修機会や教材・授業案を容易に入手する権利があり、ガイドラインを作成した国や学協会は教員の研修の機会や教材・授業案を提供する社会的責任があると、既に92年の米国政府レポートに明記されている。
 とくに、教育効果のアセスメントを重視し、国や学協会・産業界によるガイドラインに沿った質の高い全国レベルの統一試験(検定)の必要性が説かれている。
 品質管理検定は産学との連携で職業人の学びを支えているが、コンピテンシーは一朝一夕では身に付かない。初等中等教育での品質管理的思考の育成が求められている。


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