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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2011年 11月 No.312

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■トピックス:ANQベトナム大会報告と今後のアジア展開
■私の提言:市場確保のためのグローバルなTQM活動の強化
・PDF版はこちらをクリックしてください →news312.pdf

トピックス
ANQベトナム大会報告と今後のアジア展開

国際委員会委員長 鈴木 知道

ANQベトナム大会報告
 ANQ(Asian Network for Quality: アジア品質ネットワーク)として第9回目となる、ANQ Congress Ho Chi Minh City 2011が2011年9月27日(火)〜30日(金)にベトナムのホーチミン市で行われた。プログラムが発表されたのが大会直前になるなど、事前の大会準備状況に関して懸念が持たれていたが、無事に大会が開催された。参加者は昨年のインド大会よりは少なかったものの、海外からは約220名を超え、全体では400名を超えた。
 初日の27日(火)にはWelcome Receptionが行われた。広い会場に多くの参加者が集まり旧交を温めた。翌28日(水)には開会式が行われた。主催者からの歓迎の辞などに引き続き、JSQC鈴木和幸会長から日本の震災へのお見舞いに対するお礼を含む挨拶が行われた。そして昨年に続き第2回目となるIKA(Ishikawa-Kano Award)の授賞式が行われた。本年は中国の品質管理に長年貢献したLiu Yuan Zhang博士とSiam Cement Group会長のタイのMr. Kan Trakulhoon氏の2名が受賞した。そして3件の基調講演が行われた。
 引き続いて研究発表会が行われた。97件のオーラル発表、60件のポスター発表の計157件の発表が行われた。JSQCからは延べ39件の発表があった。狩野紀昭元会長による基調講演、飯塚悦功元会長による特別セッション、ARE-QP受賞者の金子憲治氏による招待講演なども行われた。ポスターセッションの質向上がANQ大会の一つの課題であったが、今回はポスター発表賞が創設され、そして発表形式もANQ Congress委員会の安藤之裕委員長の運営で、多くの聴衆を得た。今後も是非継続を期待したい。
 29日(木)午後に閉会式があり、閉会式においても3件の基調講演が行われた。今回初めて創設されたARE-QP(ANQ Recognition for Excellence in Quality Practice)の表彰も行われた。この賞は優れた品質管理の実践に対して贈られる賞で、ANQ Award Committee の山田秀委員長の主導で創設されたものである。実行委員長のVQAHのNhon氏の大会報告、そして最後は来年7月31日(火)〜8月3日(金)に香港で行われる大会の予告をもって閉会となった。
 夜のFarewell Banquetでは恒例の各組織からの出し物などを参加者全員で楽しんだ。30日(金)には工場見学会が開催され、参加者はホーチミン工業大学、繊維会社のVICOTEX社、陶器のMinh Long Ceramic社の3つのコースから選択し、貴重な体験を得た。
 大会を通して、JSQCからの参加者は、不測の事態に備えて、若手研究者を中心に、初日の受付の補助を含めてプログラムが正常にこなされていくかを影からサポートした。空いたスロットにはスタンバイ発表者を送り込み、座長がいなければまずは進行し代役をあてる、など、多大な貢献を行った。

ANQの最近の動向と今後のアジア展開
 ANQは年に2回の理事会を各2日間の日程で開催しており、ANQ大会の開催やその他のANQ運営に関する議題を議論している。最近の重要課題は大きく二つであり、一つは各種品質賞の創設であり大会報告で紹介した。もう一つはアジア品質管理検定(ANQ-CEC)である。
 アジア品質管理検定(ANQ-CEC)は、数年前からANQの理事会で議論されている議題であり、最近その実施が急激に現実味を帯びてきた。担当しているのはANQ-CEC(Certification and Examination Committee)であり、委員長はSQI(シンガポール)のLiang氏でJSQCからは、飯塚悦功氏と鈴木知道が参加している。
 委員長のLiang氏は検定実施に非常に前向きであり、前回のANQ理事会時から、理事会に先立ち前日に追加でANQ-CEC会議を行っている。今回は検定の言語、出題内容や形式、そして検定料などの具体的な運営面などを多角的に議論した。
 日本の国内では品質管理検定が定着し、受験者数も1回あたり約4万人と認知度も向上している。ANQ理事会でも日本の品質管理検定の成功は把握されており、協力が期待されている。JSQCとして、積極的に支援するかも含めて、ANQ-CECに対してどのように対応していくのか岐路に立っている。



私の提言
市場確保のためのグローバルなTQM活動の強化

アイシン精機株式会社 伊藤 要蔵

 2011年度の品質管理分野で特筆すべき事実として、TQM活動を実践し大きな成果をあげている企業に授与される日本品質管理賞ならびにデミング賞実施賞の受賞会社に日本企業が無く、全て海外企業であるということが挙げられる。今年は日本品質管理賞をインドの企業が1社受賞し、デミング賞はインド、タイ、台湾の企業がそれぞれ1社、合計3社が受賞した。
 最近、日本の製造業の空洞化が叫ばれているが、デミング賞受賞企業の国内外比率を見ると1990年代は日本企業が42社中40社(95%)と圧倒的に多かった。しかし、2001年以降は海外企業が41社中34社83%とその比率は逆転し大きく様変わりしている。
 日本で発展し、日本の製造業を強くしてきたTQM活動を海外企業が導入し、グローバルにTQM活動が普及したことは、世界中の人々の生活を豊かにしているという観点では喜ばしいと言える。しかし、日本の経済収支の悪化や製造業の空洞化による雇用減少などという点で言えば、海外企業のTQM活動の隆盛は、日本のTQM活動の進め方を考える一つの契機ととらえることができる。
 私は、企業で働く者にとってのTQM活動とは「顧客志向・継続的改善・全員参加」というTQMの考え方をベースに、企業体質を改善・改革し、自社の経営目標を達成するための全社的な活動であると思っている。
 日本をはじめとする欧米諸国などの先進国は成熟社会になり、自動車や家電商品などの需要増加が望めない一方、BRICs諸国やタイ、インドネシアを代表とするアセアン諸国は価値ある商品が売れる市場として急成長している。こうした世界の成長市場の変化に対応し、海外法人を生産機能として活用するだけでなく、成長市場の獲得に貢献できる海外法人に改革する必要があると思う。そのためには、現地特有の消費者ニーズの把握、現地に合わせた仕様設定、そして現地での製品設計、生産準備、調達、生産、販売、さらにそれを実現するための人材育成など、市場獲得のための全ての機能強化をねらったTQM活動の実践強化が必要である。
 こうした本社と海外法人が連携したグローバルなTQM活動により、海外企業を圧倒する[品質経営立国日本]の復活を提案したい。


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