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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2011年 9月 No.311

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■トピックス:産学連携活動の推進
■私の提言:統計リテラシーの普及が日本を救う
・PDF版はこちらをクリックしてください →news311.pdf

トピックス
産学連携活動の推進

産学連携推進ワーキンググループ主査・学会理事 皆川 昭一

 東日本大震災が日本の産業界を大きく変えようとしています。日本企業の強みを持続するための品質管理の重要性に変わりはありませんが、新たに産と学が連携して今回の震災で判明したリスク管理状況の変化に対応した新しい技術体系を構築する必要があります。
 従来、産学連携活動が日本の品質技術を発展させてきましたが、国内経済の長期低迷で新たな取り組みが沈滞化しています。このため日本品質管理学会では40周年を機に産学連携をさらに活性化することを狙った活動を進めており、その一環として今年10月の年次大会においてポスターセッション形式での大学の研究室紹介を実施する準備を進めています。

 東日本大震災によるサプライチェーンの混乱、原発事故による放射能被害、発電能力減によるエネルギー問題、自粛風潮による需要減少など、日本の製造業に大きな逆風となっており、企業は生き残りを賭けた経営判断を余儀なくされています。さらに復興に向けた財政問題や円高による輸出企業の収益減などがさらなるグローバル化を加速させており、国内製造業の空洞化が懸念されています。
 日本品質管理学会として、今回の未曾有の大災害に対して日本の底力を発揮するために何をなすべきかの議論が進められており、JSQCニューズ5月号で鈴木会長が予告した「震災支援懇談会」を応用統計学会との共催で5月28日に開催しました。多方面から集まった参加者による意見交換の結果を踏まえて具体的な提言をまとめる作業を進め、原発問題などの緊急事態が落ち着いた後、学会としてタイムリーな発信を行っていく予定ですが,これらのテーマの中には産業界と大学との連携で研究すべき課題がいくつか含まれています。
 産学連携共同研究などの活動は実学による社会貢献を目指している日本品質管理学会の基本機能の一つであり、日本企業の強みの原点としての品質技術の発展に大きな寄与をしてきたものです。しかし、世の中の状況変化を反映した実データに裏付けられた活動は、残念ながら日本経済の停滞状況から現在は過去に比べ活発に行われているとは言えません。賛助会員企業へのアンケートの結果でも産学連携共同研究への潜在的なニーズはあるものの、産と学が直接的に交流する機会が少なく相互に理解が不足しているとの結果になっています。
 このため第38期からの第二期中期計画において、学会主導での産学連携推進活動が継続されており、すでに5件の共同研究が実績を挙げていますが、本学会の40周年を機会に、より積極的なプロモーション活動を志向し、総合企画委員会の下部組織である産学連携推進ワーキンググループを中心に、現在活動を進めています。
 まず、本年1月に実施した賛助会員アンケートにより産学連携に対する産の期待と要望が明らかになりました。また、大学側からは100件余の共同研究テーマの提案を頂き、そのうち25件分の説明資料を掲載した小冊子を制作し40周年記念シンポジウム資料の一部として参加者に配布しました。今後さらに相互の情報交換の場を重ねる予定です。
 具体的には、10月29日に名古屋工業大学で開催予定の今年度の年次大会の場で、産学連携活動を見据えた大学の研究室紹介ポスターセッションを新規に企画し、実施することを計画中です。本企画は5月の研究発表会にて実施予定でしたが、大震災後の企業状況を踏まえ、開催を秋に延期したものです。また、同時に研究発表会の特別ストリームとして産学連携推進事例紹介を発表する企画も計画していましたが中止となりました。これについては来期に独立したシンポジウムとして実施する方向で検討を進めています。

以上、本学会としては産学連携活動の活発化による新しい品質管理技術の構築を目指し、産業界の期待に応える所存ですので、積極的にこの活動にご参加頂ける方が増えることを期待しております。



私の提言
統計リテラシーの普及が日本を救う

成蹊大学理工学部 岩崎 学

 統計的検定(仮説検定)では、判断の誤り(過誤)を2種類に分け(第1種の過誤および第2種の過誤)、第1種の過誤確率αをある値(たとえば0.05)とした上で第2種の過誤確率βを小さくするよう検定を設計する。これらは品質管理の世界でも「消費者危険」と「生産者危険」と呼ばれ(それらの定義は現在では多少異なっているかもしれないが)、抜き取り検査法の設計には重要な概念となっている。これらの2つの過誤確率は互いに相反する関係にあり、片方を減らそうとすれば片方が増えてしまう。したがって実際問題では、過誤を犯した場合のコストを十分見極めた上で過誤確率αとβのバランスをうまくとらなければならない。
 というのは、品質管理に限らずあらゆるシステム作りでのイロハのイであると私は思うし、この一文をお読みの方々にも賛同していただけよう。私の専門とする統計学の立場から我田引水的に言うならば統計リテラシーの基礎的部分でもある。
 しかし、3月11日の大震災と大津波そしてそれに伴う原発事故関連の報道を見る限り、統計リテラシーの欠如はまさに目を覆わんばかりであり、ほぼ毎日、内田百闢Iに腹を立てて過ごしてきている。
 不良品を1つも出さないための唯一の方法は製品を一切出荷しないこと。当たり前だけどそれでいいのか?テレビで見かけた「今後この地区で30年以内に活断層が動く確率は0.2%から16%」という専門家の言葉に対するレポーターの反応「16%もあるんですか!」。この種の実例には事欠かない。
 商売柄、手に取る文献は統計関係が多いのであるが、それらを読むと欧米ではいわゆるquantitative reasoningが教育の大きな柱となっている。その内容はまさに統計的ものの見方考え方であり、合理的判断とは何かが初等中等教育から大学・大学院教育に至るまで繰り返し問われ続けている。日本も負けてはいられない。我が国における統計リテラシーの普及の更なる推進のため、2011年秋から品質管理学会のお知恵を拝借しつつ「統計検定」が開始される。これを皆で盛り立てていこうではないか。


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