昨年12月、SQuBOKの中国語版完成を機会に、SQuBOKの宣伝および日本のソフトウェア品質管理の普及・展開を目的に、中国・上海で開催されたソフトウェア品質関連のシンポジウムへ参加するとともに、日科技連SQiPで提供している「ソフトウェア品質技術者初級セミナー」を開催してきました。
SQuBOKガイド(Guide to the Software Quality Body of Knowledge:スクボックと読む)は、ソフトウェア品質に焦点をあてた、これらの概念と方法論に関わる知識体系へのアクセス手段となっています。これは、日科技連SQiP(Software Quality Profession)と日本品質管理学会ソフトウェア部会との合同部会の形で活動が進められ、多くの方々の協力を得て、2007年に発行されました。
SQiPでは、このSQuBOKを日本だけにとどまらず、世界に広げるという目的を持って活動を続けています。それは、日本におけるソフトウェア品質技術を広く知ってもらい、活用してもらうことによって、高品質なソフトウェア開発に貢献できると考えているからです。
このSQuBOKですが、世界に発信する最初の一歩として、今まで以上にパートナーシップを強固にして進んでいかなければいけない中国で発行しました。
訪中1日目、2日目のシンポジウムでは、東京大学の飯塚悦功氏による「プロセス改善の基本」と電気通信大学の西康晴氏による「SQuBOKでビジネスに勝つ!」の2つの講演を行いました。
参加者は約300名で、満員札止めという状態でした。これは、中国におけるソフトウェア品質管理に対する意識の高まりを現していると思います。
また、このシンポジウムの期間中、上海地区での1年間の取り組みに対する表彰や優秀論文の表彰も行われていました。配布されたプロシーディングスは中国語だったので詳細な内容は理解できませんでしたが、章構成や図表を見ると、ソフトウェア品質管理に対する活動がかなり積極的に行われており、データによる分析なども着実に進んでいるという印象を受けました。
訪中3日目、4日目は、SQiPで提供している「ソフトウェア品質技術者初級セミナー」を開催しました。当初、人が集まるのかと心配しましたが、有料セミナーにもかかわらず、定員一杯の約30名の参加がありました。
セミナーでは、マネジメント概論、レビュー技法、テスト技法、メトリクスの講義を実施しました。すべてのセッションで活発な質疑応答がありました。最後の講義が終わったあと、セミナー全般をとおした質疑応答の中で、「ソフトウェアの品質管理に未来はありますか?」という質問がありました。ソフトウェア品質管理活動に悩み、苦戦し、実践していることの裏返しの質問だろうと思い、とても印象的でした。
この質問に対しては、西氏が、開発プロセスに関する基本的な考え方や日本における品質管理の歴史などを説明したうえで、自分たちの開発プロセスをさらに進化・発展をさせるためには「ソフトウェアの品質管理こそ未来です」と回答しました。この回答には、多くの出席者が大きくうなずいていました。何かを持ち帰ってもらえたセミナーになったと思います。
シンポジウムへの参加、セミナー開催をとおして、中国におけるソフトウェア品質管理に対する意識の高さを実感しました。世界に対し、アジアにおけるソフトウェア開発能力の高さを示すためにも、日本と中国は今まで以上に密接な取り組みをしなければいけないと思います。我々の経験を伝え、お互いに学び、成長・発展していきましょう。
ここで紹介した概要は、以下のサイトから参照できます。
SQiP:ソフトウェア品質のホンネ
http://www.juse-sqip.jp/honne/index.html