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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2011年 5月 No.308

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■トピックス:震災からの復旧・復興に向けて
■私の提言:日本の復興、「現場力」を信じて
・PDF版はこちらをクリックしてください →news308.pdf

■ 震災からの復旧・復興に向けて

日本品質管理学会会長 鈴木 和幸

 当学会では、3月25日に東日本大震災に対する品質関連支援情報サイト http://www.jsqc.org/0311.html を開設した。目的は被災した企業、被災した企業とサプライチェインでつながっている企業、そして広く日本のものづくりに関与する方々への情報発信である。“知らないことは思いつかない”、“予測できないことは防げない”、これらを原点とする非常時における当学会よりの情報発信である。

 4月7日には品質関連支援マップを同サイトに掲載した。これは先の企業の分類を縦軸に、横軸に“短期的・中期的・長期的な視点”の区分を行い、品質・安全性問題の未然防止への提言マップである。是非とも活用頂きたい。また至らぬ点、追記、修正等を全会員で行ない共有財産としたい。
 本稿執筆時点(4/27)において福島第一原子力発電プラントが非常事態にある状況下、この安定化をはかることが第一である。また、工程表の策定や対策立案に対し、PDPC(Process Decision Program Chart)あるいはETA(Event Tree Analysis)の十分なる活用が期待される。これらとともに有用となるのが信頼性ブロック図であり、またこれに基づくFTAである。これらは、我が国では今日までFMEAとともに開発設計の源流段階にて品質保証を行うために充分活用されてきたが、問題が生じた後の対策を検討するときも有用である。これらにより全体像をとらえ、強力なリーダーシップの下、1日も早い安定化が期待される。
 また、現在多くの企業では、部品調達が問題となっている。車で言えば、二次、三次、四次の協力企業の方々からの供給に支障が出ていると聞く。二社購買を行っている部品も、その原材料まで遡ると同一の被災した企業の場合もあり得る。そこで既存の契約二社以外よりの代替品を使うとき、その規格適合だけでなく、信頼性を含む妥当性確認(Validation)が大切となる。当学会では、試験時間が制約されたときの温度・湿度などの加速ストレスの最適試験計画の研究など多くの研究成果がある。学からはこれらを情報提供し、産はこれらの財産を活用頂きたい。
 次に、我々が為すべきことは、東京直下型地震、東南海沖地震へのクライシスマネジメントであろう。クライシスマネジメントにおいて特に大事なことは平時における有事への事前準備である。例えば、プラントであればFMEA、FTA、ETA、PDPCを事前に構築し、これに基づく非常時への訓練を行う。これと並行し、地震予知へのモニタリングと予知システムの充実[発見]、そして[影響防止]を検討する。また、高速道路、新幹線等の利用者への影響、並びにこれらのインフラ機能が途絶えたときの物流への影響の事前評価とこれに基づく事前アクションが重要である。
 今回の大震災では、東北新幹線は50本以上もの列車が運行中であったにもかかわらず、安全を維持した。また被災したF社の工場の復旧の早さには目を見はるものがあった。これらをはじめとして成功事例分析をしなければいけない。この情報共有が未来への大きな安全性の作り込みと未然防止へとつながる。
 今回、無念ながら未然防止が出来なかった多くの点に関しては、自戒の念を込めて検討をしていきたい。
 例えば、これまで信頼性工学は、機械・電子などの分野と協力し、故障現象への因果メカニズムの解明のもとに技術的な知見を究明し、これを開発の源流につなげ品質保証を行ってきたが、今後は、上記の分野以外の土木・建築・気象・歴史など、横断的な枠組みでの研究により信頼性・安全性の確保と確証をなしうる理論と体系を構築して行きたい。
 産学連携を特徴とする当学会、そして日本が生み出したTQMが果たしうる役割は上記以外にも数々のものがある。これらを支援サイトに寄稿下さることを切にお願いする。また、5月28日第95回研究発表会(於電通大)終了後、同会場にて午後6時より8時まで大震災に関しての懇談会を開催する。これから生じうるリスクへの未然防止を皆が一同に会して考えるスタート点としたい。ふるって参加下さることをお願いする。



私の提言
日本の復興、「現場力」を信じて

財団法人日本科学技術連盟 中島 宣彦

 3月11日の東日本大震災から2ヵ月が経過しました。被災された多くの方々に、謹んでお見舞いを申し上げ、被災地域の一刻も早い復興をお祈りいたします。
 突然の巨大地震、そして想定外の大津波は、被災地に深い爪痕を残し、日本を痛めつけました。被災地の様々な社会的基盤や生産拠点が大きな打撃を受けただけでなく、原子力発電所の事故に伴う放射線漏れの被害、電力不足、農作物や工業製品への風評被害など、複合的な危機の様相を強めています。これは、東日本のみならず、日本全体にその影響が波及し、さらには、サプライチェーンのグローバル化により、海外にも瞬く間にその影響が広がっています。海外からも一刻も早い日本の再起が期待されています。過去いくつかの苦難の時においても、極限状態での日本では、多くの企業の「現場力」に、海外から驚嘆と称賛の声が多く聞かれました。
 “技術立国日本”と称されたように、日本は世界で冠たる高水準の技術力を持った現場を有しています。中でも日本の産業を支える中小企業の技術力には高い定評があります。部品・素材などの多くを東北地方の企業に支えられているメーカーが多く、今回の大震災は、日本の産業の根幹にも影響を及ぼす事態となっています。日本のものづくり再生へ向け、この東北地方の中小・部品産業への支援・復旧は急務であると同時に、各社ではこれまで培ってきた「現場力」を発揮し、この難局に立ち向かい一日でも早い復興を願うばかりです。
 まさに、「現場力」が復興の鍵となると言っても過言ではないと思います。教育水準の高い日本では、現場に優秀な人材が育つ土壌があります。日本の「現場力」の特徴として、小集団改善活動や多能工に見る、幅広く柔軟な役割分担と改善意欲の高さ、目標へ向けて確実にPDCAを回す計画実行性、勤勉でチームワークを重んずる意識の高さなどが挙げられます。
 復興を機会に、個々人の発想を転換し、現状打破そして創造的な「現場力」を発揮し、必ずや復興を果たすものと確信しています。


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