「QMS(ISO9001)構築の効果が出ていない」と感じている組織が増えているようである。これにはいろいろな要因が絡んでいると思われる。ある講習会で「本業が忙しくてISOをやっていられない」という声を聞いた。思わず耳を疑ったが、本末転倒なこの嘆きは多くの組織の実態を表しているようである。
「どのようにすればQMSの効果が出るのか」への答えは、ずばり「効果が出るQMSを構築する」ことに尽きる。何か禅問答のようであるが、QMSは活用する人の「ニーズと期待」に合致すれば必ず効果が出るものである。
筆者の調査によるとトップマネジメントのQMSに対するニーズと期待は「顧客価値創造の向上」であり、ミドルマネジメントのニーズと期待は「計画通りの業務推進」であった。また、一般従業員のニーズと期待は「仕事が楽になる」ことであった。
QMSというシステムの中に浸かっている組織全員は、QMSからインセンティブを得ることができるならば、必ずや有効にQMSを活用し、その結果QMSは組織にとって不可欠なものになる。その成果として、組織のプロセスとその結果(提供する製品/サービス)は良好なパフォーマンスを示すことになるであろう。
ISO9001:2008「序文 0.1一般」には次の記述がある。
「組織における品質マネジメントシステムの設計及び実施は、次の事項によって影響を受ける。
a)組織環境、組織環境の変化など
b)多様なニーズ
c)固有の目標
d)提供する製品
e)用いるプロセス
f)規模及び組織構造」
現在QMSの効果が出ていないと思う組織は、早急にQMSを再設計すべきである。QMSの再設計は、組織全員の「ニーズと期待」を吟味し、インプット事項に採用することによって従来よりも効果の上がるシステムを構築できる。 特に次の2ステップを推奨する。
(1)QMSへの「ニーズと期待」を調査する。
(2)得られた「ニーズと期待」からQMSへのインプット事項を明確にする。