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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2010年 11月 No.304

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■トピックス:ISO9000ファミリーの改正動向に伴う組織の対応
■私の提言:大学院教育の質保証にむけて
・PDF版はこちらをクリックしてください →news304.pdf

■ トピックス
  ISO9000ファミリーの改正動向に伴う組織の対応

(有)福丸マネジメントテクノ 代表取締役 福丸 典芳

 ISO9000ファミリーは、ISO9001を含む品質マネジメントシステムに関する規格であるので、組織はこれらの改正動向を把握することで、これらの規格が組織に与える影響を事前に把握し、効果的な運営管理を行うことが必要である。

1.ISO9001:2008(品質マネジメントシステム−要求事項)の動向
 ISO9001は2008年に第4版として発行されているが、現在次回の改正に向けての検討が行われており、現時点では改正時期は2015年の予定となっている。この改正では、2008年版の改正時の検討課題として、いくつかの懸案事項への対応が行われる予定である。主な検討事項は次のとおりである。
  その一つが、“Output Matters”である。これは、ISO9001が提示する品質マネジメントシステムは、要求事項を満たした製品を一貫して提供し、顧客満足を向上させるためのものであると適用範囲に規定されているにもかかわらず、現実にはISO9001に適合していると判断されていても要求事項を満たす製品を提供できないことがあるという問題提起である。
  もう一つは、品質マネジメントの8原則である。この品質マネジメントの原則は、日本からJIS Q 9005:2005(質マネジメントシステム−持続可能な成長の指針)で規定している12原則をISO9001:2008年版への改正に採用することを提案したが、2008年版は追補改正であったので、これについての検討は次回改正時へ持ち越しとなった。現在ISO9001は改正作業が開始されているので、組織はDIS(Draft International Standardization)段階で改正動向の情報を入手することで、改正への対応を迅速に行うことが可能になる。
2.ISO9000:2000(品質マネジメントシステム−基本及び用語)の動向
  ISO9000は現在改正作業を進めており、2011年には改正される予定である。主な改正点は、箇条2の構造を品質マネジメントの原則に関する内容に改正すること、顧客満足及び論争の解決、構成管理、プロジェクトマネジメントに関する用語を定義することなどである。この改正では、組織に与える影響を考慮する必要はない。なぜならば、ISO9001で使用される用語の定義は、ISO9000:2005が適用されているからである。
3.ISO19011(品質/環境マネジメントシステムの監査の指針)の動向
 この規格は、第一者(組織が行う内部監査)、第二者(顧客が組織に対して行う監査)、第三者(審査登録機関などが認証のために行う監査)に関する監査の方法について示したガイドである。しかし、第三者は認証という行為を考えた場合には、監査の方法に相違点がある。このため、第三者に関する監査の要求事項として、ISO17021-2(適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項並びにマネジメントシステムの第三者認証監査に対する要求事項─パート2:マネジメントシステムの第三者認証監査に対する要求事項)が制定される予定である。
  従って、この規格は組織が行う内部監査及び外部監査に適用するとともに、他のマネジメントシステム規格にも対応可能なように、タイトルを「Guidelines for auditing management systems」に変更することで現在改正作業が進められている。
  改正の主な変更点は、2002年版の箇条6(監査活動)の一部を箇条5(監査プログラムの管理)へ移動する、すべてのマネジメントシステムを対象とする、箇条7(監査員の力量及び評価)にマネジメントシステムの共通事項を記載する、固有のマネジメントシステムに関する事項は附属書に記載することとしている。
  この規格は要求事項ではなくガイド規格であるが、組織はこの規格を参考にして現在制定している内部監査に関する規程を見直すことが効果的である。なお、この規格のDISは2010.6.17に発行され、2011年度中にはIS発行予定となっている。



■私の提言
  大学院教育の質保証にむけて

筑波大学 リスク工学専攻 伊藤 誠

 私は、ヒューマンエラーや安全性に関する(相対的)若手研究者として本学会にお世話になっている。しかし、ヒューマンエラーや安全性という観点なら、私でなくても有益なご提言をされる先生は本学会にはたくさんいらっしゃる。せっかくの機会であるから、ここではあえて別の立場から発言してみたい。
  私は大学教員である。大学・大学院では高等教育の質をいかに保証していくかが重要な課題となっている。座学が中心となる学部教育においては、質を保証する仕組みを作りこむことは比較的容易である。本学会員の皆様には、JABEEという名前くらいは聞いたことがあるという方も少なくないだろう。これに対しMBAなどを除けば研究志向の色彩が強い大学院教育については、教育の質を保証するという議論はこれまで十分になされてはこなかった。しかし、大学院に進学する学生数が増大し、旧来のような徒弟制度的な教育ではうまくいかない事例が目立つようになってきており、大学院教育の質保証をどうするかという問題が、大学の教員に突きつけられている。数年前まではPDCAという言葉を大学の中で耳にすることはほとんど皆無であったのが、今日では毎日のように目や耳にする。
  大学・大学院における教育の質保証という問題に対しては、文科省が非常に熱心に取り組んでいる。大学・大学院の教育改革に対して予算をつけたり、大学・大学院の教育改革に取り組んでいる各機関を集めてフォーラムを開催したりしている。私の所属する専攻でも、教育改革のプロジェクトを実施したことがある。
  ところが不思議なことに、大学・大学院教育の質保証の議論の様子を見ていると、品質管理の専門家はほとんど関与していないかのように私には思える。モノ作りと人財育成とは全然別だといえばそれまでだが、これまでの日本型TQMが培ってきた考え方や手法は、うまく使えば大学・大学院の教育において有効に機能するものが少なくないのではないかと思っている。
  大学・大学院の教育の質とは何か、その質を保証するとはそもそもどういうことなのかといったことを学会で検討し、積極的にアピールしていくというのはどうだろうか。


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