JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2010年 8月 No.302

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス:統計・データの質マネジメント研究会発足
■私の提言:JSQCの今後の国際化
・PDF版はこちらをクリックしてください →news302.pdf

■ トピックス
  統計・データの質マネジメント研究会発足

統計・データの質マネジメント研究会 主査・統計数理研究所 椿 広計

 JSQCは、内閣府統計委員会からの要請に応え、「統計・データの質マネジメント研究会を3年間設置することを3月理事会で決定しました。去る7月13日に第1回の研究会を開いたところです。統計委員会は、国勢調査などわが国の公的統計の整備計画などについての司令塔機能を果たす委員会ですが、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月閣議決定)に盛り込まれた統計の見直し・効率化を効果的に進めるために、関連学会に協力を呼び掛けたのです。

 基本計画の中で、統計の品質評価研究は、品質の設計、改善、評価研究に実績を有するJSQCへの依頼となったわけです。その際、統計委員会からは、JSQCが日本統計学会や各府省の専門家との連携も留意して欲しいとの意向も表明されました。このため、当研究会開始に当たって、近年統計教育分野でも連携を強めている日本統計学会の美添泰人会長(青山学院大学)や総務省、厚生労働省などにもJSQCに入会を呼びかけ、研究会に参画いただいたところです。
 筆者は、これまで応用統計家として品質管理分野に携わってきましたが、実は2つのやりたい活動がありました。一つは、自分の職業が教育・研究者であることから、教育研究分野の品質マネジメントを実践したいということで、これは経営専門職大学院の教育研究質保証活動である程度実現しました。もう一つが、やはり自分が統計家であるという事に関わっていて、データや情報の質マネジメント、更にはそれら収集情報に基づく意思決定の質マネジメントといった活動への貢献です。従って、この研究会開始に当たっても、単に公的統計の質改善だけでなく、広く職業としてデータ収集に当たっている分野の専門家に参加を呼びかけようと考えました。そこで、(社)日本マーケティングリサーチ協会、日本製薬工業協会医薬品評価委員会生物統計・データマネジメント部会、臨床試験のデータマネジメント受託会社であるEPS−Japanの厳浩社長(JSQC会員)にも参画を呼び掛けました。
また、わが国では丁度今年から、ISO 20252に基づく、市場調査、社会調査の質に関する製品(サービス)認証制度が立ち上がったところで、(財)日本適合性認定協会にも当研究会に参加を呼びかけました。このISO20252による調査の質保証の重要性をいち早く発信した吉澤正元JSQC会長を始めとして、当研究会には兼子毅氏、山田秀氏といった統計と質マネジメントのエキスパートも快く協力してくださり、主査としては、産官学のエキスパートがデータの質マネジメントについてフランクな議論をする場は世界的にも類例がなく、万全の態勢で研究会活動を開始できたものと自負しています。
 今後、当研究会では、(1)個々のデータの質、データから計算される「一次統計」あるいは「試験結果」の質、更には統計量などを意思決定のために加工した「二次統計」など情報プロダクトの質評価の方法、(2)情報プロダクト作成プロセスの質とそのマネジメントシステム、(3)情報プロダクトの設計品質の定義、設計品質質確保のための方法論などを政府統計調査、マーケティング調査、医薬品臨床試験などの様々な分野で明らかにし、その共通点などを明らかにしたいと考えているところです。
 一定の精度を有する個々の統計調査結果を数式的に組み合わせて作成される「二次統計」は、政策的意思決定に用いられる重要な指標なのです。しかし、この精度については殆ど議論されたことがないのです。この二次統計の設計・作成をどのように行えば、より安定的な品質を示すようになるかという研究課題は、個々の統計調査の結果を部品、二次統計やそれに基づく意思決定を製品と考えれば、モノづくりにおける設計技術と極めて類似しているように見えます。情報の価値が高まった現在こそ、情報の質マネジメントについて、JSQCが諸分野の実践の知を統合し、チャレンジすることについては是非会員のご理解とご支援を賜りたいと考えております。



■私の提言
  JSQCの今後の国際化

東京理科大学 鈴木 知道

 昨年の9月にANQ(アジア品質ネットワーク)の東京大会が行われ、多くの国内外の品質の専門家が参加した。それからもう1年が経つ。今年のANQ大会は10月にインドで行われる。JSQCからは35件の応募があり、ANQの中でも主催者以外では、最多の参加数を送り続けている。これらを含め、JSQCの国際化は十分であろうか。私見では、合格点は与えられるかもしれないが、まだまだ出来ることは沢山あると感じる。今後は、どのような方向に向かえばよいのであろうか。学会としての立場、そして会員の立場から考えてみる。
 学会の立場から、現状の課題を検討すると、一つ目は国際学会への参加者にかたよりがあることが挙げられる。その数は圧倒的に学の会員が多く、昨今の経済状況を考慮しても、少なすぎるといわざるを得ない。対策として、簡単な解決方法はないと思うが、何よりも参加してメリットがあるような国際学会を提供することが一番であろう。JSQCが一層ANQ内でのリーダーシップを発揮して、そのような大会を実現できるようにすべきであろう。
 二つ目に挙げられるのは、ANQ以外のイベントへの参加がほとんどないことだ。世界的には大小様々な国際学会が開催されているが、ANQを除けばEOQやASQへの参加は散見されるものの、その他学会への参加はほとんど聞かない。対策としては、ANQ以外の団体との連携を強くするとともに、一層の参加支援等が必要になろう。
 会員の立場からは、どんな課題が挙げられるか考えてみる。一つ思いつくのは、国際化への取り組みが本当に自主的な参加になっているかという点である。同じような問題意識を持っている人達と接し、そこで様々な意見や考えを交換できることは、非常に有意義なはずだ。現実的には言語の問題もあって簡単ではないと思うが、だからこそ得られるものも大きいと思う。国際学会への参加は、その第一歩だと思う。参加して、勇気をもって一言声をかけてみてほしい。
 国際学会への参加の観点から国際化について考えた。今後は一人でも多くの会員に積極的に国際的に活躍してほしい。そのためにも、学会としては、支援体制を作るとともに、国際的に活動できることがJSQCに参加する魅力の一つになるのが理想である。


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--