様々な品質問題の社会問題化
メールニュースや、Webページを良く眺めていらっしゃる会員はすでにご存知だと思うが、あるきっかけがあり、「JSQC評論」というコーナーを学会Webに新設した。私たちを取り巻く製品やサービスの品質は、長い時間を経て熟成され、世界的に見ても、日本で入手出来る製品やサービスの品質は極めて高いと言える。消費者としての私たちは、そのような状況がごく当たり前のこととして考えており、商品に貼付されているラベルに書かれていることを全て事実として受け入れている。
その一方で、成熟した市場においては厳しい価格競争が繰り広げられ、労働単価や原料単価が安い海外の開発途上国で製造・加工された製品が大量に私たちの身の回りに存在する。それらの多くは、もちろん十分な品質管理の元で製造され、一定の品質を確保出来ているが、発注者側や消費者が想像もできないような不正やごまかしの事例もしばしばニュースに取り上げられている。国内に目を向けても、産地偽装や賞味期限のごまかしなど、品質だけでなく、倫理的にも重大な問題が散見される。
学会の社会的責任
このような中で、日本で唯一の「品質管理」を標榜する学会として、なにか社会に発信すべきではないか、学会の社会的責任を果たすべきではないのか、という議論が、しばしば理事会でも行われてきた。しかし、常に問題となるのは、「学会として」の発言は事実上不可能で、「学会長たる個人として」あるいは「学会理事を務めている個人として」の意見表明しかできないのではないか、ということであった。
また、特定の、社会的に大きな話題となった品質問題を取り上げて意見表明を行うことは、特定の企業などに対する誹謗中傷、あるいは名誉毀損になってしまうのではないか、ということも、常に議論の的であった。
今回、極めて難しい決断ではあったが、特定の企業に対する非難や誹謗ではなく、その出来事から見えてくる、日本の品質管理、あるいは世界の品質管理に関わる問題点を指摘し、今後考えるべき方向、進むべき領域を社会に発信していくことは極めて重要である、という結論に達することができた。
定期的なJSQC評論のWeb掲載とコメントのメール配信
今後も特定の事件を引き金にするのではなく、理事会などが中心となって、「このような問題について社会に発信すべきである」と考える事項について、定期的に社会に発信することを決めた。これは学会の「公式見解」ではなく、あくまでも執筆いただいた個人の見解である。しかしながら、そのような個人の見解を学会のWebページを通じて社会に発信した、という意味で責任を負うことになる。
もちろん、ひとつの事項について、様々な見解があり得る。そこで、今回のJSQC評論でも、会員からの意見やコメントを募集した。公開後すぐに何通ものコメントをいただいた。それらに対する執筆者からのコメントもいただいている。これらのコメントは、公表されることを意図して送付されたものではなく、あくまでもWebに掲載された記事に対するコメントであり、著者が目にするものと了解していただいている、と判断している。理事会としては、会員からのコメント、及び回答をWebに掲載すべきかどうか議論し、当面はメールニュースにてそれらを配信することにした。すなわち、学会のメールニュースに登録されている特定多数の方たちに、まずは開示する、ということである。
アドレス登録のお願い
現在学会のメールニュースには、全会員の8割程度の方が登録されている。今後学会からの情報発信に、ますますメールを活用することも検討されている。まだ、学会事務局にメールアドレスを登録されていない方は、是非とも登録をお願いしたい。会員番号と氏名、及び登録するメールアドレスを記載して、以下のアドレスに送付していただきたい。apply@jsqc.org
これからも会員の皆様の積極的な学会活動への参加をお願いする。