かつての"追いつけ・追い越せ"の時代、企業は徹底したベンチーマーキングと業務プロセスの持続的改善によって競争優位を確立することができました。しかし、それだけで勝てる時代は終わりを告げつつあります。
最大の鍵は、自らを徹底的に考え抜くこと。競合や市場など「周囲」を分析する以前に、「自らがどうありたいのか?」ということを徹底的に考え抜くことがなによりも重要な時代になりました。夢と希望に満ち溢れた究極的なありたい姿を、全員一丸となった学習(組織学習)を通じて実現する……これこそが企業にさらなる飛躍をもたらす突破口なのだと考えています。
その際、私が注目しているのは、ブランドマネジメントとTQMの融合による「インターナル・ブランディング」です。それは、ブランドが目指す姿を組織内部に浸透させるための取り組みをいいます。しかしその現状はロゴやスローガンの開発に終始した1980年代のCI活動と大差がない。つまり単なるイメージ戦略や意識高揚策に過ぎないという指摘もありました。このような実態の最大の原因の一つとして、現行のブランドマネジメントは、魅力的なコンセプトをプランニングすること(What to do)に強い一方で、組織的な取り組み(How to do)に関する方法論を十分に持ち合わせていなかったことが挙げられます。
"What to do"に強いブランドマネジメントと、"How to do"に強いTQMの融合は、これからの時代に相応しい新しい経営のあり方を予感させます。それは、企業自らが掲げる"究極的なありたい姿"の実現に向けて,全員一丸となって高度な価値創造の仕組みを確立し,優れた製品・サービスという実体に結実させるというマネジメントです。競合を分析して自分の立ち位置を決めるのではなく、自らの意思をもって夢と希望に満ち溢れた究極的なありたい姿を描ききっていただきたい。己を考え抜けば、その結果は自ずと差別化されているはずです。答えは、自分たちの心の中にあるのです。