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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 2009年 9月 No.295

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■トピックス:中国品質管理の今までとこれから
■私の提言:安全文化と信頼の連鎖
■わが社の最新技術:「3代目プリウスの進化」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news295.pdf

■ トピックス
  中国品質管理の今までとこれから

中国質量協会 副会長 馬 林

一、改革開放30年間における中国の品質管理
 1978年、改革開放政策の開始とともに、中国がTQMの導入・普及を開始してから30年が経ちました。中国質量協会は、全国的な品質管理団体として、政府の指示の下、品質管理に関わる多くの専門家、企業、地方品質管理団体の力を集結し、わが国の品質管理の発展に尽くしてきました。
 (一)品質に関する研修活動の大規模展開。1978年〜1999年まで、全国で約3000万人を対象に品質研修を実施しました。
 (二)QCサークル活動の展開。ここ30年間、全国で累計登録されたQCサークルの数は2802万チームに及び、その活動によりもたらされた経済価値は5,753億元に上ると推計されております。
 (三)全国範囲の顧客満足(CS)活動の展開。企業が市場や顧客の評価に関心を向け、顧客指向の経営思想樹立に大きく役立ちました。
 (四)全国品質賞の設立。2001年から2008年までの間、全国500社近くの企業が全国品質賞を申請し、そのうち、62社が受賞に至り、多くの優良企業を発掘しました。
 (五)新しい品質管理手法やツールの継続的な導入と普及。
二、中国の品質管理が直面している問題
 わが国の製品品質は過去に比べ向上しましたが、国際的なレベルと比較すると、まだまだ大きな開きのある分野があります。
 ●製品標準の水準が低く、国際標準を採用している品目は60%に満たない。
 ●品質監督機関による抜き打ち検査の合格率は80%前後で推移。
 ●品質問題に対する政府の監督管理が不十分。品質問題発生時の企業の責任も必ずしも明確化されない。
 ●特に食品の品質、安全性に関わる事故の多発。昨年発生した「三鹿」ブランドの乳幼児粉乳への有害化学物質混入事件は、深刻な社会問題を引き起こし、中国製品のイメージを著しく損ねました。
三、中国の品質管理の今後
 国際競争の激化と品質問題多発の現状を受けて、中国政府と中国企業の多くの経営者が、品質向上が中国経済の健全かつ持続的な発展を左右する重大な問題だと認識しています。
 (一)胡錦濤総書記と温家宝総理は、2008年以来、「品質は企業の死活にかかる要素であり、わが国製品の品質を新しい高レベルに引き上げるべく、絶えず努力すること」と指示を重ねてきました。
 (二)2009年3月から中国の国務院(内閣府相当)が全国範囲で「品質と安全の年」運動を展開しています。各業界に「全員、全プロセス、全方面の品質と安全管理」を要求し、以下の目標を掲げています。1.各種工業製品の品質管理に関する法規、標準、制度の整備。2.中小企業に技術的なサポートを提供するサービスプラットホーム300箇所の設置。3.重点業界に国際的ブランド力を有するモデル企業を樹立。
 (三)生命や健康に関わる製品に対する政府による強制的な認証制度を厳格化します。全生産プロセスに対する政府の監督管理を強化するとともに、品質追跡制度とリコール制度を実施します。
 (四)製品品質標準システムの整備を促進。国家標準の制定を早めるとともに、より高いレベルの自主標準を採用するよう企業に促します。特に食品安全の確保に努めます。
 (五)企業各社に「品質第一」の経営理念を持たせ、戦略的な視点に立って、全プロセスにおける品質管理システムの構築を促します。同時に、技術革新による国際的な品質競争力を高めていきます。
 (六)品質に関する法律、法規の整備。内外消費者の利益を守るために、国務院は近々いくつかの法律を公布、施行します。
 (七)重点プロジェクトに集中的に対応。特に、食品品質に対する整理整頓運動を近いうちに全国的に展開すると国務院が決定しました。問題のある企業の輸出免許取り消しや、賄賂や汚職などの腐敗行為の徹底的な取締りを行います。
 このような中で、中国質量協会に課せられている使命は、政府の品質戦略に基づき品質管理に関する宣伝、教育、イベントをより一層推進することです。
 今日のグローバル化した経済状況のもとで中国と世界は相互依存しています。中国製品の品質向上のためには、中国政府はもとより、中国社会全体の努力が必要です。同時に海外からの支援も必要です。自国の努力と国際的な協力により、中国の品質管理は必ず成功すると信じます。
 最後に、中国の品質管理活動に多大なご指導、ご支援を頂いた石川馨先生、久米均先生、狩野紀昭先生と小松製作所の河合良一元会長などの専門家、企業経営者の方々に感謝の意を真摯に申し上げます。また、中国の経済発展と日中友好に貢献された方々に深くお礼申し上げます。



■私の提言
  安全文化と信頼の連鎖

関西電力株式会社 岩根 茂樹

 毎年8月9日は関西電力の「安全の誓いの日」である。平成16年8月に発生した美浜原子力発電所の重大事故を省みて、二度とこのような事故を起こさないとの決意を新たにし、全社員一丸となって「安全文化の再構築」に取り組むことにしている。
 「文化」とは空間的広がり(組織の全員が)と時間的広がり(永遠に)を持つ普遍的な概念であり、当社のDNAにしたいと考えている。しかし、「言うは易し、行うは難し」であり、まだまだ道半ばである。
 安全文化の構築で最も重要なことはトップのコミットメントであり、経営方針に掲げるだけではなく経営判断のプロセスにおいて、その趣旨が一貫していなければならない。すなわち、安全投資、組織設計、人材育成、技術伝承などにおいて、トップの一貫したコミットメントが必要ということである。
 次に、このトップのコミットメントを現場に受け入れてもらえるようにしなければならない。現場が形だけではなく真の受け入れができないと文化にはならない。そのためにトップと現場とのコミュニケーションを通じてPDCAを回していくことが重要となる。当社では、コミュニケーション強化策の一つとして「膝詰(ひざづめ)対話」と称して現場第一線の意見を経営層が直接聞く場を設けている。ここで大切なことは、現場の意見に対して必ず答えを返すということである。 「意見を言えば答えが返ってくる」ということを現場が実感することによって、徐々に現場とトップとの間に価値観の共有・信頼感が生まれてきているのではないかと感じている。
 協力会社の皆様とのコミュニケーションも同様であり、こうした相互の信頼感が結果としてプラントの信頼感につながっていくと思う。さらに、全体プロセスの見える化、システム化などを一つひとつ積み重ねていくことがプラントの安全・安定運転につながり、この安全・安定運転が地域の皆様の信頼に結びつくのではないだろうか。
 すなわち、信頼の連鎖が安全文化を創っていく。
 積み上げるには困難を極めるが、崩壊するのは一瞬というのが信頼である。肝に命じて永遠の安全文化に挑戦していきたい。



■わが社の最新技術
 「3代目プリウスの進化」

トヨタ自動車(株)トヨタ第2乗用車センター 製品企画 大塚 明彦

プリウスというクルマ
 まだハイブリッドという言葉が一般的ではなかった1993年、21世紀のクルマに何が求められるのかを探る中、初代プリウスの開発が本格化しました。以降、自動車を取り巻く環境は想像をはるかに超えるスピードで変化し、「環境問題」を筆頭に「化石燃料の安定供給」や「都市部のクルマ離れ」等、深刻な課題に直面しています。このような変化の中にあって、プリウスはその環境・燃費性能の高さ、ハイブリッド技術の信頼性で、世界中から絶大な支持をいただき、全世界累計販売台数も120万台を超えることができました。それはまた、プリウスが従来のクルマの価値感である「排気量」「サイズ」「装備の豪華さ」などからいち早く脱却し、「環境に配慮する心地よさ」という新しい価値を提示できた結果でもあります。

3代目プリウスの進化

3代目プリウスの役割
 世の中にハイブリッド車が次々と登場する中、「トヨタ=ハイブリッド」というクルマづくりへの高い評価をより確固たるものとすること。それこそが、3代目プリウスに課せられた大きな使命です。また現時点、トヨタのエントリーハイブリッドモデルとして、より幅広いお客様にプリウスを選んでいただき、トヨタのハイブリッド車を楽しんでいただきたいと考えています。

目指したもの
 そのために、プリウスの持つ価値と魅力をさらに高めるべく、すべてにわたる進化を図りました。初代、2代目プリウスが築いてきた「圧倒的ハイブリッド性能」「先進的スタイリング」「時代の先端を行く装備群」。先代の持つこれらの性能・機能を継承しつついっそうの磨きをかけ、さらに車内の広さや使い勝手、運転する楽しみといった「クルマ本来の基本性能」をも向上させることで、プリウスという先駆のハイブリッド車を、ここに大きく飛躍させました。

3代目プリウスの進化

ハイブリッドシナジードライブの進化・熟成
 「圧倒的なハイブリッド性能」と「走る楽しさ」のより高いレベルでの両立を目指し、ハイブリッドシステム全体の90%以上を新開発しました。システムの高効率化に加え、パワーコントロールユニットは、自動車への適用は世界初の直冷方式というパワートランジスタ冷却構造を開発し、約40%の小型化を実現しました。またモーターは、大きな駆動力を発生するリダクションギヤと集中巻線の採用で小型・高出力化を図りました。電池もセル以外はすべて新設計とし、電池システムのコンパクト化をすることでラゲージスペースを約30L拡大しました。これにより、システム全体で約20%の軽量化を実現しています。

3代目プリウスの進化

  エンジンについては、排気量を1.5Lから1.8Lへアップし、性能を上げるとともにエンジンの回転数を下げ、燃費を向上させました。その他にも必要な時に必要な量だけ冷却水を循環させる電動ウォーターポンプをトヨタ初として開発。またExhaust Gas Recirculationシステムも採用し排気ガスの一部を吸気経路に再循環させることでエンジンの燃焼効率を向上させています。
 ハイブリッドシステム以外にもデザインアイデア段階からミリ単位で要件をアイデアに織込み、世界トップレベルの空気抵抗係数Cd0.25を実現しました。
 このように、進化したハイブリッドシステムと車両全体でのエネルギー効率向上との相乗効果により、ガソリン乗用車世界トップとなる燃費性能38.0km/Lと2.4L車並の動力性能を実現することができました。

クルマの未来を感じていただく
 「先駆け」というラテン語由来の名前を冠するプリウスは、将来一般化されるであろう新技術をいち早く開発し、未来的かつ画期的な装備や機能として具現化するというチャレンジに満ちたクルマです。3代目プリウスにおいても世界初となる「タッチトレーサーディスプレイ」や「リモートエアコンシステム」など数々の新装備を開発しました。その名にふさわしく、これからのハイブリッド車の新たな指標となり、さらに多くの方々にお乗りいただける一台となることを確信しています。


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