JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2009年 6月 No.293

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス:アジアの品質管理活動の実際
・PDF版はこちらをクリックしてください →news293.pdf

■ トピックス
  アジアの品質管理活動の実際

国際委員会 委員 安藤 之裕

 改めて考えると、アジアの品質管理活動は、日本の品質管理活動と比較して特筆すべきことが思い浮かばない。逆に言えば、アジアの品質管理活動の実態とは、既に、現在の日本の実態と比較してまったく違和感が無いというのが筆者の実感である。
  ウソだと思われる方は、ANQ Congress 2009 Tokyo(9月15日〜18日)に参加し、ご自身の目と耳と体でご確認頂きたい。

 筆者のアジア諸国での品質管理体験と言えば、25年間12カ国で2000日程の現地での活動と、Asian Network for Quality(ANQ)等での交流、ならびに、日本での国際セミナー程度のことであるので、多様性がありかつ変化が激しい「アジアの品質管理活動の実際」について申し述べるなどとはまったくおこがましい次第である。
  しかし、その実体験では、現段階で日本とアジアの間では、群内変動が大きく群間に有意差が見られない。
  日本が優れているとされた点が、既に多くのアジアの企業で換骨奪胎されて広く普及している一方で、アジアではまだまだ弱いとされている点が、実は日本でも弱体化しているということである。
  例えば、デミング賞実施賞受賞会社を見れば、近年はインド・タイからの猛烈な追い上げ状態である。近年のアジアからの受賞会社の活動は賭け値無しにすばらしい。以前の世界をリードした日本のTQC先進企業の活動と比較して見劣りするものではない。更に言えば、それらは、賞狙いの活動の結果ではない。賞への挑戦という機会を使って、基本を強化し、自社の実態に合った活動の展開に成功し、確実に実力をつけた成果である。
  また、例えば、日本では消え去ろうとしている「真に役立つ管理図」も、現場力向上とともに現場に溶け込んでいる。
  一方で、アジアで遭遇する品質管理上の問題点は、そのまま今の日本でも遭遇する。
  例えば、現地社員対象の品質管理の基礎的なコースで驚かされるのは、日系企業においてもかなりのベテランでさえ基礎的な知識が極めて不足していることである。それらの企業の現場を訪問すると、品質管理とはデータを取ることだけであったり、検査をすることだけであったりする。工程管理という名のもとで行われているのは、原因追究無しの応急対策だけであったりする。当然品質など良くなるわけが無い。品質管理の基本的な活動とその能力が不足している。
  それでも、40〜50歳代の日本人現地幹部の方々は、その現状を憂い、品質管理の必要性を痛感しているのが救いである。それより若い日本人社員は、実は自分自身が教育を受けたことも無い。規定に従った仕事はこなせるが、その基本が分かっていないので、改善も出来ないし部下に教えることも出来ない。近年、それがそのまま多くの日本国内企業にも当てはまってしまう。
  なお、ANQ諸国の中には、現地の現地による現地のための教育機会が整備されつつある。しかし、どうも、日系企業からはあまり参加していない。
  アジアの品質管理活動の中で日本との違いを敢えて過大評価して言うならば、その熱意とダイナミズムではなかろうか。多くの日本人が既に失ってしまった品質に対する強烈な熱意がある。その実現に向けて我武者羅に突っ走るダイナミズムである。
  本年から、財団法人海外技術者研修協会が、日本の若手専門家を講師陣とした新規コースを開始した。その中で、講師陣が一様に驚いたのが、参加者の熱心さであり貪欲さである。講義中の積極的な質問が、山のように降ってくる。納得するまで引き下がらない。まして、講義中に寝ている者などは皆無である。日本にはこのような力が残っているだろうか。
  偏った実感からアジアを礼賛しすぎてしまったかもしれない。事実はどうか? ANQ Congress 2009 Tokyoでご確認頂きたい。
2009ANQ 公式サイト:http://www.anq2009.org/



このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--