挑戦する人たち
世界同時不況の震源地となった米国で、オバマ氏は“Yes, we can !”に象徴される旗印のもとで大統領選へ臨んだ。そして、100年に一度と称される経済危機打開のために超党派で景気対策に汗する人たちの姿を映しだした報道に、人材の大切さを垣間見た。
OECD(経済協力開発機構)は、国や地方自治体から教育機関へ公的に支出される予算のGDP(国内総生産)に占める割合が、加盟30カ国のうちデータがある28カ国中で日本が最下位であると2005年の調査結果を報じている。経営環境のきびしさに我を忘れそうな気配を察する昨今、“教育に始まり、教育に終わる”という文化のもとで長期的な視点から日本が拠り所とする人へ投資してきた教育の大切さを見失ってはならないと思う。
日常管理と方針管理
日常の仕事の大半は各々の人が行うべき役割をきちんと果たす日常管理という基盤のうえで、経営戦略を実現するための方針管理が活きることは周知の事実である。品質にかかわる信頼感や安全を失うようなクレームや事故は、先が見通せない経営環境において致命的であり、このような時こそ足元をしっかり固める意志と施策が求められる。
品質マネジメントの原則
品質を中核にした経営において重視する原則として、“顧客重視”、“リーダーシップ”、“人々の参画”、“プロセスアプローチ”、“マネジメントへのシステムアプローチ”、“継続的改善”、“意思決定への事実に基づくアプローチ”、“供給者との互恵関係”を世界が共有したことは重要な転換点を示唆した。この原則を、経営層から職場第一線、またすべての部署に浸透する品質管理教育を誰もが苦しいときにも忘れなければ、暗いトンネルから出たときの飛躍への強固な基盤となることは先人が教えている。
何ができるか
ケネディ大統領は、東西冷戦の緊張下で臨んだ1961年の就任演説で米国民へ“あなたの国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたがあなたの国家のために何ができるかを問おう”と呼びかけた。品質へ原点回帰し、“あなたがあなたの組織や社会のために何ができるか”を考え、そしてその志を実現できる人づくりに努めることが問われているのではなかろうか。