いつの時代も、品質問題は発生するものであり、パーフェクトな活動は非常に難しい。しかし、ここ10年間ほどひどい事態は過去にはなかったのではないだろうか。なぜそのような事態が頻発するのか、その原因は品質の軽視に起因していることに疑う余地はない。
「風が吹けば桶屋が儲かる」は、話の展開に意味のない単なるこじつけと受け取れるが、なかなか面白いストーリーである。しかし、「桶屋が儲けたければ、どんどん風が吹けばよい」という論理は成り立たない。論理に無理があり、非常に飛躍している。風刺的な笑い話と聞き流せばよい。
この話で、「風」=「品質」、「桶屋」=「企業」と置き換えれば、「品質を改善すれば企業は儲かる」と表現でき、この展開は非常に論理的である。品質が消費者にとっても生産者にとっても、その重要性を考えれば疑問の余地はない。
にもかかわらず、近年多くの企業が品質問題を頻発し、消費者や社会を裏切る結果となり、企業の存続すら危ぶまれる事態が発生している。「品質を改善する」ことは、すなわち「後工程、お客様に安心と信頼を得る」行為につながる。
品質は生産者と消費者のお互いが共通の認識として理解しあえる思想であり、共通語である。企業不祥事を発生させている企業の経営者の多くは、品質を軽視した結果といえる。品質を軽視することは、すなわち消費者を軽視していることである。
「全ての経営者は、今一度、品質を第一とするマネジメントの重要性に気づこう」
経営トップから現場の第一線までが品質を第一とする考え方を実践できる経営体質を確立しなければならない。
私は、永年品質管理の教育と研究を通して、多くの企業のTQM活動の実践の場に参加させていただく機会に恵まれた。その間の時代の流れの中で、変わらぬものは品質の大切さと、それをお客様の視点で考えることができる人の大切さである。人を育てる努力はどの企業もそれぞれの思いで取り組んでいるが、その育てる方向が品質第一、お客様第一のベクトルにあっているかどうかが重要なのである。この視点に立ったTQMを実践してきた企業は、社会での存在感を勝ち取った成功企業となっている。