JSQC 社団法人日本品質管理学会
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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2008 5月 No.284

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■トピックス:新版 品質保証ガイドブック」編集始まる
■私の提言:JSQCの社会的責任−品質概念の普及
■わが社の最新技術:全社に波及するワランティを管理
・PDF版はこちらをクリックしてください →news284.pdf

■ トピックス
  「新版 品質保証ガイドブック」編集始まる

中央大学 中條 武志

 日本品質管理学会では、時代に即した社会のニーズを踏まえ、学会創立40周年記念(2010年)および品質月間50周年記念(2009年)を契機として、総力をあげて「新版 品質保証ガイドブック」(B5判、1000頁)の編集に取り組むことになりました。

品質保証ガイドブック
 「品質保証は品質管理の真髄である」という言葉が使われ出してから50年近く経ちました。にもかかわらず、昨今の品質事故の事例を見ると品質保証の考え方・方法論が理解され、実践されていれば防げたのではないか、少なくとも大問題にはならなかったのではと思われるものが少なくありません。
 一つの専門分野が継続的に発展していくためには、新たな人がその分野に関心を持ち、その方法を学び、自分の仕事に活かしていくことが必要です。そのためには、当該分野の全貌について理解できる一冊の書物があるかどうかが重要です。
 品質保証に関するまとまったものがないということで、朝香鐵一・石川馨両博士によって「品質保証ガイドブック」(日科技連出版社)が編集・出版されたのは1974年です。この書籍は、品質管理に携わる者が、品質保証に関する共通の理解を得る上で、また品質保証の方法論を学ぶ上で重要な役割を果たしてきました。30年を経てもその内容は示唆に富むものが多く、貴重な書籍となっています。
 しかし、経営のグローバル化、情報技術の進展など、経営環境が大きく変わる中、「品質保証ガイドブック」に掲載されている事例が現状にそぐわないものになってきたことは否定できません。また、ISO 9000ファミリなど、「品質保証ガイドブック」が出版された以降に普及してきたアプローチ、ソフトウェアや医療など新たに生まれてきた適用分野もあります。「品質保証ガイドブック」に盛り込まれている品質保証の考え方・方法論を踏襲した上で、今の時代にあった事例を用いて、その内容を体系的に説明した書籍が強く望まれていると言えます。
 発行は2009年11月の予定ですが、既に日科技連出版社との覚え書きを取り交わし、100名を超える産学の方々のご協力を得て、執筆作業が始まっています。

編集の基本方針
 品質保証の基本、品質保証部門の人が知っておくべき基本を網羅します。今の時代における、品質保証技術のthe status quoをねらいますが、評価が固まっており、その有効性がはっきりしているものに限ります。そのかわり、参考文献を充実し、より詳細な内容、応用的内容について容易に参照できるようにします。
 対象とする読者は、品質統括部門の管理者・スタッフ、製品・サービスの提供に直接関わる部門の管理者・技術者・担当者、品質保証全般について責任を持つ経営者・事業部長です。また、メーカーだけでなく、情報システム、流通業、小売業、サービス業、医療福祉、運輸業、電力・ガス・通信、金融、教育、行政などの広い分野の品質保証・品質管理担当者が対象です。
 全体の構成は旧版の「品質保証ガイドブック」を踏襲し、
 I.品質保証の基本
 II.プロセス別の品質保証
 III.品質保証のための要素技術
 IV.主要産業における品質保証
の4部構成とします。II部では、市場調査・企画、製品設計、工程設計・生産準備、生産、調達、販売、アフターサービスなどのプロセスを取り上げ、それぞれのプロセスにおいて行うべき品質保証活動について一般的に解説します。また、III部では、品質機能展開、統計的手法、工程能力調査、デザインレビューなど品質保証で汎用的に使用される手法について解説します。最後のIV部では、30以上の産業分野における品質保証の実践例を示します。

今後の予定
 既に企画案の検討、執筆依頼を終え、今後は、執筆者と第37年度に新たに設けられた「品質保証ガイドブック編集特別委員会」が一体になって編集を進める予定です。
 学会として絶対に成功させなければならない事業の一つです。会員各位の力強いご支援をお願い申し上げます。


■私の提言
 JSQCの社会的責任−品質概念の普及

東京大学 飯塚 悦功

 私は最近とみに、品質や質がますます好きになっている。2006年度のデミング賞本賞受賞を契機に、それまで何となく感じていた品質という概念の深遠さを明確に認識するようになり、思いは募るばかりである。
 品質概念の本質は目的志向にある。30年以上前に、品質の善し悪しは顧客が決めると教わった。そのときは何の疑問もなく納得した。しかし、なぜそうなのかと真正面から質問されて、あなたは即答できるだろうか。私はそういう目にあった。ある医療関係者と対談をしたときに、患者すなわち顧客の期待を第一に考える根拠は何かと静かに質問されたのだ。
 私は禅問答を持ち出した。誰もいない森で木が倒れてバサッと音がした。これを音がしたというか、という問答がある、とかわしたのである。絶対的存在を認める立場なら、音がしたとなる。だが認知されないなら存在しないも同然という考え方もある。品質論とは、そのような、相対的認知に基づく考え方なのだと答えたのである。内的基準でなく顧客の価値観という外的基準で考える品質概念は、目的志向に他ならない。私が好きな「品質」の定義は「ニーズに関わる対象の特徴の全体像」である。ニーズに関わる、というところがポイントで、だから顧客志向になり、目的志向になる。
 だから、品質管理の方法論は、目的を達成するために有効な考え方や手法に満ちている。目的を分解する、手段に展開する、原因・結果の関係を考察する、ことが起きたとき深く分析して本質知を得て再利用するなどは、これらが目的達成に有効だからである。
 頭が良いとはどういうことか考えてみたことがあるだろうか。私は正月に卒業生が来たときに痛飲しながら議論したことがある。目的が分かる、因果を考える、本質を理解する、などがその側面であることは賛成していただけるだろうか。
 品質管理はこれらの能力のいずれをも向上する思想であり、方法論と言える。人も組織も賢くする方法論、それが品質アプローチなのである。その概念構築、開発、普及という社会的使命を持つ品質管理学会には、この正義の思想・方法論を社会に広める責任がある。日本を賢くし、そして強く尊敬される存在とするために、今まで以上に積極的に発信していきたい。


わが社の最新技術
  全社に波及するワランティを管理

SAS Institute Japan(株) 山田 和昭


ワランティは企業の死活問題に
  近年報道される品質関連の事件では、対策の遅れと被害拡大が度々指摘されています。しかし、膨大な量のクレームや修理依頼に追われる中、その原因を瞬時に判別できるでしょうか?判断の遅れは、補償コスト・製造コストを増し、品質改善の遅れ、ブランド滅失を招きます。ワランティは、日本企業にとっても死活問題となりつつあるのです。本稿では、訴訟社会の米国で実績を持つ、ワランティ管理の最新技術をご紹介します。皆様の品質管理で培ったご経験が、この最新技術により、全社的に活用される助けになれば幸いです。

ワランティの改革
  先進企業ではワランティを「義務」ではなく、顧客満足度を高め、顧客流出を防ぐ、「収益源」とする改革も始まっています。しかし、ワランティのコストは安くなく、米国の製造業では売上の平均1.8%をも占めています。顧客満足度向上と同時にコスト削減を実現するためには、製造プロセス以外の営業や開発、マーケティングといった全社的なプロセスを含めた幅広い経営的な視野が必要になります。なぜなら多くの日本企業の場合、製造品質が十分に高いため、製造のみへの追加投資は効果が限定されてしまうためです。

WCM:全社的な情報流通概念
 「ワランティ・チェーン・マネージメント(WCM)」は、販売後に市場で起こる事象を全社の各プロセスからデータとして蓄え、経営に役立てる情報流通の概念です。WCMには自動的にデータを蓄積、統合し淀みなく行動につなぐ仕組みが必要となります。なぜならデータ処理を人手に頼ると、(1)情報が歪み、事後のトレース、対策リソース投資の適正化が難しくなり、(2)情報の流れが滞り、対策遅延、被害の拡大、顧客満足度の低下、担当者の意欲低下などを招いてしまうからです。

WCMを実現するソフトウェアSAS Warranty Analysis4.1最新版の特徴
●不具合情報、コールセンター、技術ホットライン、フィールド性能データ、販売情報、製品情報、修理情報など、市場不具合に関連する情報を統合し、一貫した包括的な視点を即座に提供


図1.一貫性のとれた統合データモデル上に各種機能を実装

●製造時点と販売時点とのラグや稼動状態の分布、技術的成熟度など時間的変化を考慮した演算、季節調整などのビジネスルール適用などにより、ワランティデータの変化や複雑さに対応
●計器盤のごとく最新のワランティ指標リストを俯瞰し、実績トレンドなどの詳細情報を即座に入手
●経営層や企業全体、ディーラ、サプライヤーへの配信レポートを自動生成
●アーリーワーニング。製造時期、稼動期間、発生時期を同時にモニター。単なるランキングでは発見できない不自然な増加傾向を自動検知し、優先対策対象の特定を短縮
●ワランティに特化した分析メニュー、プロジェクト単位での管理に便利なデータ抽出ルール、要約レポートを動的に操作して、根本要因の調査に必要な詳細レポートを即座に生成
●高度で豊富な統計解析は、柔軟かつノンプログラミングでSAS Systemを利用


図2.開発中画面

主な導入成果
・ ワランティ・コストの削減
・ 優先課題への認知を数ヶ月短縮
・ 不具合要因特定時間の大幅な短縮
・ リコールの規模・コストの削減
・ 問題解決効率の改善による品質と顧客満足度の向上

※1. 2007年9月時点Warranty Week調べ

 


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