日本品質管理学会では、時代に即した社会のニーズを踏まえ、学会創立40周年記念(2010年)および品質月間50周年記念(2009年)を契機として、総力をあげて「新版 品質保証ガイドブック」(B5判、1000頁)の編集に取り組むことになりました。
品質保証ガイドブック
「品質保証は品質管理の真髄である」という言葉が使われ出してから50年近く経ちました。にもかかわらず、昨今の品質事故の事例を見ると品質保証の考え方・方法論が理解され、実践されていれば防げたのではないか、少なくとも大問題にはならなかったのではと思われるものが少なくありません。
一つの専門分野が継続的に発展していくためには、新たな人がその分野に関心を持ち、その方法を学び、自分の仕事に活かしていくことが必要です。そのためには、当該分野の全貌について理解できる一冊の書物があるかどうかが重要です。
品質保証に関するまとまったものがないということで、朝香鐵一・石川馨両博士によって「品質保証ガイドブック」(日科技連出版社)が編集・出版されたのは1974年です。この書籍は、品質管理に携わる者が、品質保証に関する共通の理解を得る上で、また品質保証の方法論を学ぶ上で重要な役割を果たしてきました。30年を経てもその内容は示唆に富むものが多く、貴重な書籍となっています。
しかし、経営のグローバル化、情報技術の進展など、経営環境が大きく変わる中、「品質保証ガイドブック」に掲載されている事例が現状にそぐわないものになってきたことは否定できません。また、ISO 9000ファミリなど、「品質保証ガイドブック」が出版された以降に普及してきたアプローチ、ソフトウェアや医療など新たに生まれてきた適用分野もあります。「品質保証ガイドブック」に盛り込まれている品質保証の考え方・方法論を踏襲した上で、今の時代にあった事例を用いて、その内容を体系的に説明した書籍が強く望まれていると言えます。
発行は2009年11月の予定ですが、既に日科技連出版社との覚え書きを取り交わし、100名を超える産学の方々のご協力を得て、執筆作業が始まっています。
編集の基本方針
品質保証の基本、品質保証部門の人が知っておくべき基本を網羅します。今の時代における、品質保証技術のthe status quoをねらいますが、評価が固まっており、その有効性がはっきりしているものに限ります。そのかわり、参考文献を充実し、より詳細な内容、応用的内容について容易に参照できるようにします。
対象とする読者は、品質統括部門の管理者・スタッフ、製品・サービスの提供に直接関わる部門の管理者・技術者・担当者、品質保証全般について責任を持つ経営者・事業部長です。また、メーカーだけでなく、情報システム、流通業、小売業、サービス業、医療福祉、運輸業、電力・ガス・通信、金融、教育、行政などの広い分野の品質保証・品質管理担当者が対象です。
全体の構成は旧版の「品質保証ガイドブック」を踏襲し、
I.品質保証の基本
II.プロセス別の品質保証
III.品質保証のための要素技術
IV.主要産業における品質保証
の4部構成とします。II部では、市場調査・企画、製品設計、工程設計・生産準備、生産、調達、販売、アフターサービスなどのプロセスを取り上げ、それぞれのプロセスにおいて行うべき品質保証活動について一般的に解説します。また、III部では、品質機能展開、統計的手法、工程能力調査、デザインレビューなど品質保証で汎用的に使用される手法について解説します。最後のIV部では、30以上の産業分野における品質保証の実践例を示します。
今後の予定
既に企画案の検討、執筆依頼を終え、今後は、執筆者と第37年度に新たに設けられた「品質保証ガイドブック編集特別委員会」が一体になって編集を進める予定です。
学会として絶対に成功させなければならない事業の一つです。会員各位の力強いご支援をお願い申し上げます。