JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2008 2月 No.282

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス:デミング賞と受賞企業における効果と課題
■私の提言:右脳思考の人財育成!
・PDF版はこちらをクリックしてください →news282.pdf

■ トピックス
  
デミング賞と受賞企業における効果と課題

サンデン(株) STQM推進室 主席 中村 充夫


 サンデン・グループでは「顧客の満足する品質」を起点とした活動の過程で、下記項目に係わる組織能力を向上出来ました。
−管理技術・手法の習得
<SQC・QC7つ道具・他>
−会社の力の結集(ベクトルの一致)
<方針管理>
−企業の質の向上(飽くなき追及)
<PDCAサイクル>
−論理的考え方、整理・整頓、改善の思想

 2007年度デミング賞本賞が牛久保雅美(サンデン(株) 代表取締役会長)に授与されました。サンデン(株)は1998年、デミング賞実施賞を受賞し、その後、2002年に日本品質管理賞を受賞しています。サンデン・グループでは、これまで、国内3社・海外2社がデミング賞実施賞を、国内2社がTQM奨励賞を受賞しています。
 サンデン・グループでは、国内3,000名、海外11,000名を越える社員が世界各国で勤務しています。言語も文化も異なる人々が自動車機器や自動販売機など流通機器の生産・販売に勤しんでいます。トップの深い思い入れの下、TQMの原点/QCサークル活動を世界23カ国・52拠点においてグローバルに展開して来ています。
  昨年10月19日、第3回STQM世界大会を仏国パリの北西で開催し、東西欧州178チーム、米州83チーム、中国・中近東を含む亜州370チーム、及び日本500チームの代表200人の社員が集い、「挑戦と改革の企業文化を基本として、人間性尊重の精神に溢れた自由闊達な組織文化を築き、成長していく」ことを再確認しました。第4回STQM世界大会は、2009年10月米国での開催を予定しています。デミング博士が、自らが教えた品質管理技術を日本の産業社会の中で日本人が、いかに実践し、後の日本の経済力を築き上げたかを観察されて纏められた「デミングの14ポイント」をサンデン米国法人で展開しています。
  当社でもピーター・F・ドラッカーの経営論を大いに参考にしていますが、ただ一点意見を異にするところがあります。氏は知識労働者(know-ledge worker)と非知識労働者(manual worker)を区別しています。マネジメント(プロセスの追及)は知識労働者の仕事であるとしているようです。当社では、全社員14,000人が知的勤労者であるとの確固たる信念を抱いて小集団活動を展開しています。ですから、QCサークルは工場・製造現場だけでなく、社長以下、取締役・経営幹部のQCサークルをMARPと称して展開しています。
  今後も当社は、デミング博士の品質管理・経営哲学を日本・米国、更にグローバルに展開して行く所存です:「TQMは人間尊重と和の精神に基づいた経営の考え方であり、QCサークル等のチーム行動により、勤労者に自己実現と仕事の喜びを享受する機会をもたらす」。このデミング博士の信念は、サンデン創業の精神
「知を以て開き 和を以て豊に」
に通ずるところがあります。
 改めて振り返ってみますと足元が覚束なくなっているのではとの危機感もあります。1998年のデミング賞実施賞受賞以来、サンデン・グループはグローバルに数々の品質に関する賞を受賞して来ましたが、現在、慢心・緩み・形骸化などによってその製品品質・経営品質の水準が下がっているのではないかと危惧しています。急速なグローバル化の進展で不透明さが増す中、企業間競争が益々激化しています。一流を極め、グローバル・エクセレント・カンパニーを目指して行くため、全社員ひとり一人が、気持ちを新たに初心に帰って次に定義しているSTQM(サンデンのTQM)をもう一度徹底し直して行く所存です。
 「個々のマネジメント品質、及び、結果品質を徹底的に向上させて、21世紀に繁栄する会社を創り上げるため、毎日、毎日の創造改革努力を積み重ねる行動である。」


■私の提言
 
右脳思考の人財育成!

 

玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授 大藤 正

 今、人間の右脳を活性化し、右脳が司る感性を磨くことが求められている。左脳は言語認識や論理的思考の部分を司り、右脳はイメージ記憶や直感・ひらめきの部分を司る。科学的管理法が提唱されて以来、左脳型の考え方が尊重され、ものづくりの世界でも重要視されてきた。
 しかし今、左脳と共に右脳を意識的に鍛錬して左脳と右脳のバランスのとれた人財が求められている。有形財である製品について、従来は機能が求められていたが、デザイン性が求められるようになってきたのである。この変化も左脳から右脳へと要望が変化していることを意味している。
  日本に品質管理が導入されてから既に60年近くが経過しようとしている。QCサークル大会も今年で5000回を迎える。この間にQCはTQCに発展し、さらにTQMへと変革した。
 作れば売れる時代ではなくなったとはいえ、QCはいつの世にも必要な活動である。そしてその活動の内容には維持のための活動と改善のための活動の両方が必要であることに関しても変わりがあるわけではない。
  さらに品質管理活動が製造現場における活動から、より上流志向して設計段階から企画開発段階にまで及んだ現在、左脳型の思考だけでは不十分であり、右脳型の思考が望まれているのである。
 気づき、直感、ひらめき、イメージといったアート的でクリエイティブな思考を育成することが求められている。育成という言葉の「育む(はぐくむ)」の語源は「羽包む(はくくむ)」だそうであるが、まさに親鳥が卵を外界から羽根で包んで守ると同時に碎啄同時(そったくどうじ)の機会を伺うことが必要である。
  山田英夫著「ビジネス版 悪魔の辞典」のブラック・ユーモアでは、QCサークルとは「本来の改善活動よりも、発表資料作りに全身全霊を注ぐグループ活動」、TQCとは「全社的品質管理水準の改善を進める過程で、人間の標準化も進め、3シグマの人間が排除されていくもの」と記述されているが、個の価値を高めるQCに関する人財の育成方法を見直す時期に来ているのではないだろうか。


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--