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JSQCニューズ 2007 11月 No.280

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■トピックス:ISQFD2007ルポ
■私の提言:日本の品質は誰が作るのか?
・PDF版はこちらをクリックしてください →news280.pdf

■ トピックス
  
ISQFD2007ルポ

山梨大学 吉川 雅修


 第13回品質機能展開(QFD)国際シンポジウムが、2007年9月7日と8日の両日、米国のヴァージニア州ウィリアムズバーグで開催された。会場は歴史地区コロニアル・ウィリアムズバーグにあるWoodlands Conference Center だった。参加者は米国、ブラジル、カナダ、メキシコ、エクアドル、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデン、中国(香港を含む)、タイ、日本から集まった。

 初日午前中はチュートリアルで、Richard Zultner氏(Zultner & Company)がAHP(Analytic Hierarchy Process)について、Greg Yezersky 氏(Institute of Professional Innovators)がGTI(General Theory of Innovation)に関して解説した。  初日午後は3件の基調講演と3件の論文発表が行われた。基調講演では、まずGlenn Mazur氏が品質革命と題して、品質向上の技術と消費者の選択可能性の進化を植民地の独立戦争の過程になぞらえて語った。次に赤尾洋二先生が指静脈認証装置の開発を題材としてQFDとナレッジマネジメントについて講演した。そして、AHPの開発者であるピッツバーグ大学のThomas L. Saaty 教授が、AHPからANPまでの展開と活用について興味深い講演を行った。Saaty 教授は、講義において学生の興味を繋ぐために用いるジョークの一端も紹介した。
 初日の最終セッションは当地コロニアル・ウィリアムズバーグにちなみものまね俳優による米国第3代大統領トーマス・ジェファーソンの『基調演説』の熱演だった。続いて赤尾賞の授賞式が行われ、Thomas L. Saaty 教授に赤尾賞が授与された。AHPを活用する多数の参加者が教授と一緒に写真に納まったり、教授の著書にサインを貰ったりしていた。もちろん報告者も例外ではなかった。また、香港理工大学のCatherine Y. P. Chan氏に対して赤尾奨学金が受給された。
  2日目は主として2会場に分かれてのテクニカルセッションだった。理論的発展や適用事例を交えた論文発表が初日に行われた3件と合わせ全体で22件行われた。発表者の所属は日本、米国、ドイツ、中国、ブラジル、スペイン、スウェーデンとなっていた。
 発表論文の分野を次のように列挙すると、研究の広がりがわかる:航空宇宙産業(1)、ビジネスプロセス(1)、教育(3)、公共事業(1)、技術革新(1)、統合的手法(3)、Kanoモデル(1)、AHP(1)、ライフサイクル管理(2)、食品加工工業(1)、ソフトウェア/IT(4)、通信産業(2)、物流管理(1)。カッコ内は件数である。国別では日本からの発表が8件で最も多かった。日本からの発表は航空宇宙産業、ビジネスプロセス、Kanoモデル、ライフサイクル管理、統合的手法、ソフトウェアの分野に含まれている。
  今回のシンポジウムの特徴としては、このように日本からの多種多様な研究発表が目立ったこともひとつであるが、分野としては近年の産業の動向に合わせて情報・通信や教育に対する理論的あるいは実践的な展開の発表が多かったことも挙げられるだろう。
 やや残念な点は最近のISQFDの中では参加者数がやや少なく感じられ、一部のセッションでは発表質疑の盛り上がりに欠けた点である。
  全セッションの終了後、Christina Campbell's Tavernでの18世紀の雰囲気が漂うディナーパーティをもって今回のシンポジウムは幕切れとなった。次回のシンポジウムは2008年9月に中国の北京で開催される予定である。


■私の提言
  日本の品質は誰が作るのか?

南山大学 数理情報学部 准教授 松田 眞一

 普通、品質を作るのは誰かと問われると「全社員」でというのがお決まりの答であろう。本当にそうであろうか?
  昨今様々な品質問題がニュースになっている。それらは大きく分けると2つの問題に分けられる。第一は機械的・システム的な問題で、改善によって作り込んでいくことで解決に向かっていくものである。第二は人為的な問題である。ニュースで取り上げられる問題では特に後者が増えている。
 第一の問題に関しては基本的に全社員が一丸となって取り組むべき問題であるので上に挙げた答に行き着く。しかし、システム的な問題に関しては多分に人為的な側面もあり得るので第二の問題と同じことになる場合もある。たとえば、情報漏洩問題ではシステムとして情報管理がよくないことが原因に挙げられるが、その状態を放置していたのであれば人為的問題でもある。
  一方、第二の問題に関しては個々人の責任に帰するものもあり、そういう場合は全社員の意識の向上という第一の問題に似た答になるが、「情報漏洩で派遣社員が…」ということになるとそもそもシステムとしての問題であり、意識の向上では済まされない構造的な欠陥があると言わざるを得ない。そして、第二の問題の多くは組織としての品質意識の欠如から来ているものであり、抜本的な改革を行わないと品質の向上は望めない。そうすると品質を作る責任はトップにあると言える。特に従来通りのこととして行ってきた方式が批判の下にさらされることが増えており、トップの責任はとても重大であろう。その上、品質問題が発覚したときにはその対応を行うのもトップであり、危機管理能力まで問われることになる。
 さて、第一の問題で結局号令をかけるのがトップであるなら、2つの問題とも品質を作るのは「トップ」という答になりそうであるが、そうではない。トップに元々品質の向上心があるなら問題など起こさないからである。トップを動かすには結局、品質問題を解決しないと儲からないという考えを起こさせることである。そのためには消費者が多少値段が高くても質のいいものを求めるという姿勢を示すことである。この提言をお読みの方には「品質は消費者が作る」という意識を是非持ってもらいたい。


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