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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2007 8月 No.278

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■トピックス:JABMS100-2007の目指す審査とは
■私の提言:会員の方々からもっと広く研究開発へのご意見を
・PDF版はこちらをクリックしてください →news278.pdf

■ トピックス
  
JABMS100-2007の目指す審査とは

(株)エル・エム・ジェイ・ジャパン 永芳 稔


 (財)日本適合性認定協会(JAB)は本年4月13日、「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」と題するニュースをホームページ http://www.jab.or.jp/news/2007/070413_1.htmlに掲載した。このJABの「マネジメントシステム審査」に於けるある意味大きな方向転換について論じてみたい。

 これは、従来のISO/IEC62(品質)、ISO/IEC66(環境)二つを統合したマネジメントシステム認証機関に対する要求事項を規定するISO/IEC17021が2006年9月に発行されたこと。それによりJABは認証機関(審査機関)への認定システムを新たに構築し、2007年5月22日から適用することを通知している。さらにJABは、そのために新たな「マネジメントシステム認証機関に対する認定の基準」(JAB MS100-2007)http://www.jab.or.jp/cgi-bin/bal/ jab_bal_rb_j.cgi を制定した。
 「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」では、いままでのマネジメントシステム(MS)構築と審査の問題点を次のように指摘している。「一方、規格要求事項の視点から組織のMSを捉えるあまり、ともすると組織の本来業務(ビジネス)とは別の異なる仕組みとして、規格ごとに個別に構築、運用するケースが見られ、また第三者による認証審査も、これを看過するばかりか、むしろ助長しているとの利害関係者からの意見も見られます」、控えめではあるが、まったく本質を突いた批判であるといえる。
 MSには以下の側面があると指摘している。「a)製品(サービス)の質に関する側面、b)環境に与える影響の側面、c)組織に対する脅威の側面である」。そして、品質、環境、セキュリティーなどの「MS規格の要求事項は、各々の段階で第三者認証を受けるか否かではなく、組織のビジネスの流れに基づいた一つのMSのなかに組み込まれ、統合一体化されて、初めて有効に機能することになる」と主張している。
 結論として、新しい認証審査のあり方として、次のような問題提起をしている。

1)ビジネス全体の視点からの審査:組織のMSは基本的に一つのシステムであるから、認証審査においても、審査員の専門分野の知識のみに深入りするのではなく、ビジネス全体のニーズ(要求事項)とMS規格の要求のつながりをプロセスアプローチ的に審査し、組織とその顧客に付加価値のある認証サービスを提供することが重要である。
2)マネジメントシステムの有効性の審査:MS認証審査は、関連する規格の規定要求事項への適合、不適合の確認だけでは不十分である。MSがシステムとして有効に機能しているかどうかは、所定の(期待する)目標に向かって、そのシステムのパフォーマンスが向上しているかどうかで判断する必要がある。

 JAB MS100-2007は、上記のような考え方を実現するため、ISO/IEC 17021:2006を全面的に導入することを明記している。
 品質にせよ、環境にせよ、規格の項目番号どおり、規格の文言をコピーしたような「マニュアル」と称する実務とは何の関わりのない文書を作成させ、それに基づいて、規格の文言通りやっているかだけを見るような審査が行われているのが実情であろう。こんなこと、規格が要求していないことは自明であるのに…。
 JABが「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」で訴えている背景は、現状の審査では、このスキーム自体が崩壊するという危機感であろう。多少タイミングが遅かった感もあるが、このJABの英断にエールを送りたい。

参考文献
1)ISO/IEC 17021:2006「適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を提供する機関に対する要求事項」(英和対訳版) 2006.9月 (財)日本規格協会
2) 「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」 JABHP As of 2007/07/07
3) 「マネジメントシステム認証機関に対する認定の基準」(JAB MS100-2007) JABHP As of 2007/07/07


■私の提言
  会員の方々からもっと広く研究開発へのご意見を

電気通信大学 研究開発委員長 椿 美智子

 1992年Oxford大学統計学科(応用統計学)に訪問研究員として滞在していたとき、High Tableでの食事の際に、他分野の教授が「私はよくドキッとする質問をすると言われるのですが」と前置きをされた後で、「日本が世界をリードしてきた自然科学の分野は何ですか」とおっしゃられた。そのときのことが頭を離れないまま、今井兼一郎先生(元JSQC会長)にご紹介をされた、工学教育の国際会議にご出席されていた現JABEE会長の大橋秀雄先生(東大名誉教授(機械工学))にそのお話を致しましたところ、「あなた方の分野の品質管理などはそうなのではないの」と言われ、あらためてハッとしたことを思い出します。諸先生方の品質管理の考え方・方法論は、諸外国の言語に翻訳されていました。
 それから、15年という時が流れました。時代の中で求められるスピードが非常に速くなりました。その中で、世界をリードしてきた状況はどのように変化したのでしょうか? 国際学会に出かけて行って、他国の研究者の理論を聞いて、それをモディファイして進んでいけばよいというような状況にあるわけではない。そして、品質を管理する、向上させるというニーズは、時代の変化の中で、空間的な広がりと時間軸的な広がりを見せている。
 空間的な広がりとしては、伝統的な製造業の他に、サービス産業、ソフトウェア、信頼性・安全性、医療、教育等、時代の要請に応えている。JSQCの研究会でも、中期計画のQの展開で、現在の問題に対して真に効果のある手法・利用技術の研究開発に力を入れている。そして、周囲への対象領域の拡大(他学会との連携)や科研費等の外部資金導入による活性化にも力を入れている。実際、伝統のあるテクノメトリックス研究会を母体として科研費基盤研究(A)を獲得している。また、JSQCの各研究会での研究成果は研究発表会、シンポジウム、学会誌等でタイムリーに公表を行なっている。どうか興味のある分野に関しては、お目を通し下さい。
 また、時間的拡大としては、将来必要となる品質管理概念・手法の研究開発を目指しております。どうか、産業界会員の皆様、特に若手の皆様、新しい研究会へのご意見を頂ければと思います。そして、ご参加下さい。


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