JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2007 2月 No.274

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス:中期計画を骨格とした学会運営へ
■私の提言:「データ解析力」を活かした産学連携研究の推進を!
・PDF版はこちらをクリックしてください →news274.pdf

■ トピックス
  中期計画を骨格とした学会運営へ

理事 永原 賢造

当学会の運営単位は単年度計画を基本とし、総会で前年度の実績と当年度の計画を報告 ・審議・承認を以って運営されてきている。
会長副会長を含む理事の任期は2年で、毎年半数が入れ替わり、会長は産学交代 (産会長1年、学会長2年)で運営されているが、重点施策は単年度で終ることは少なく、 連続性を確実にして成果に結び付けていくことが課題としてあった。

■中期計画立案にいたる背景
 さて、日本の現状の品質管理に関係した課題としては次の事項が挙げられる。
1)低迷する日本企業の国際競争力
2)社会の安全や安心を脅かす企業の不祥事や重大事故の多発による社会問題
3)'70年代後半から80年代に築き上げられた“品質世界一”という信頼の日本ブランドの再構築
 これらの課題に対して、ものづくり立国を再生復活させ、“品質世界一”の日本ブランドの再構築に 当学会が関与していこうとの意向と、このような考えで品質立国再生を推進していくために本格的な中期計画 (3年後に目指す姿をはっきり描き)を立案共有化して、単年度計画に落とし込むプロセス整備の必要性が 35年度の桜井前会長から示された。

■総合企画委員会設置による検討
 前年の総会で、“総合企画委員会は、本会の目的を達成するために、3年先を見据えた中期計画を立案すること、 及びこの中期計画を単年度運営方針に反映する”役目を果たすために設置が承認されてスタートした。 '05年12月から活動をはじめ、ほぼ毎月の検討会と理事会への途中報告を行い、35年度計画への途中反映も含め、 '06年8月に中期計画として発行し、36年度の運営方針に本格的に反映する運営が始まった。

■中期計画の構成とその骨子
 品質立国再生に当たって、その構成を4分類、すなわち「品質の確保」「品質の展開」「品質の創造」 及び「共通」として合わせて30項目を展開している。
 「品質の確保」は、言うまでもなく顧客及び社会に約束した質と価値を守り 、安全と安心を確保するための諸施策のくくりであり、信頼性・安全性研究会のスタート、 テクノメトリックス研究会、ソフト部会等の研究の拡大、産学連携の産における実践トライアル などの継続拡大が主たる項目である。
 「品質の展開」は、ものづくり企業で創り出し工夫改善を積み上げてきた実績のある品質の確保に関する考え方、 理論、ツール、マネジメントシステム等をサービス産業へ広く展開することであり、医療関係の拡大策としての、 医療研究会、医療部会による研究の質と量の拡大、原子力関係への関与開始、シミュレーションとSQC研究会、 QMS部会等の一層の研究拡大が主たる項目である。
 「品質の創造」とは、顧客や社会への新しい価値を創造していくことであり、 価値と品質の二元関係の研究発信、サービス業における顧客価値創造の方法論研究等をその主たる項目としている。
 「共通」には単独事項ではなく、文字通りの「共通」項として、学会からの発信力向上として論文の質量の拡大、 同産業界での活用度の向上、学会員・賛助会員の質量の拡大、国際連携の強化等がその主な項目である。
 各々の項目について、3年後の目指す姿としてのできる限りの定量化目標を掲げ、年度ごとの目標とそれを 達成するための主要施策を検討記載することが中期計画の骨子である。
 しかしながら、まだスタートしたばかりで項目毎に検討を重ねて質を高める必要があり、 年度計画を立案する折に中期計画をローリングして新たな環境変化を取り込みながら年度計画として 展開することになる。
 36年度の運営方針は35年度の中期計画に準じて立案され、理事会運営も中期計画を柱として 常に勘案しながら運営していくと圓川会長が宣言されており、一層の目標達成型の運営になっていく ことが期待されている。


■私の提言
 「データ解析力」を活かした産学連携研究の推進を!

筑波大学 大学院システム情報工学研究科 助教授 鈴木 秀男

 品質管理分野の研究発展のためには、産学連携の研究が重要な課題と考えております。 ご存知の通り、JSQCの中期計画が策定され、Qの確保、Qの展開、Qの創造という視点から様々な施策が計画されました。 そのうち、Qの確保の中では、産学連携をベースにした研究プロジェクトが重要な役割を担っております。
 学界に身をおく立場から、JSQCの学の方々の強みというのは、昔も今も「データ解析力」ではないかと思います。 「データ解析力」とは、理論・方法論の知識・スキルはもちろんですが、データの集計・分析に対する興味・ 熱意(どれだけエネルギーや時間を割けるか)も含みます。そのことを再認識して、 産学連携の研究としても活かしていくべきではないかと思います。
 例えば、半導体業界では、デバイス・メーカと装置メーカが品質および装置データを共有し、 さらに第三者機関(大学やその他の独立行政法人)が主にデータ解析を行うという構想があると聞いております。 このような組織の壁を超えた取り組みにより、装置性能の改善が効率的・効果的に実施され、 リモートセンシング技術や大量のプロセス・品質データを活用した状態予測のための方法論の開発といった 研究成果も期待されます。
 また、私の研究室においては、最近、あるプロ野球球団と連携して、球場来場者を対象にしたマーケティング調査、 サービス品質および顧客満足度測定の研究を行っております。当方の研究室の「データ解析」 の従来研究の成果から得たノウハウを十分に活用して、大学と球団(企業)の両者にとって非常にメリットのある 取り組みになっているという感触を得ております。
 一方、データ解析を中心とした産学連携の研究実施で問題となるのが、企業側の機密保持です 。企業の機密情報の漏洩は絶対に避けなくてはなりませんが、それを恐れるあまり、必要以上にデータの提供 ・共有を拒むケースが珍しくありません。このことが、産学連携研究の阻害要因となっております。 機密保持契約など適切な契約を結び、両者の信頼関係を築くことを前提として、 産業界の皆様には柔軟な対応をお願いしたい次第です。


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--