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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2006 12月 No.273

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■トピックス:持続可能な経営のために〜グローバルな視点でのブランド力(質)向上〜
■私の提言:“不都合な真実”に勇気をもって向き合おう!
・PDF版はこちらをクリックしてください →news273.pdf

■ トピックス
  第83回品質管理シンポジウム報告
持続可能な経営のために〜グローバルな視点でのブランド力(質)向上〜

日野自動車(株) 瀧沢 幸男

 (財)日本科学技術連盟主催第83回品質管理シンポジウムが、 11月30日〜12月2日にかけて、紅葉で染まった箱根・小涌園で過去2番目に多い170名の参加を得て開催された。

特別講演1:今後の日本企業が目指す方向性とその課題

奥田 碩氏 ((社)日本経済団体連合会 名誉会長)
 世界の動向を例示しながらグローバルな活動の重要性を強調されると共に、 日本人の心のあり方として武士道精神に学ぶべきことと、和の力を最大化するよう説かれた。 さらに、品質を大切にした経営に言及され、トップ自らが現地現物で品質の状況を確認することを強調された。

基調講演:信頼こそ企業価値の原点〜CSRとサーバントリーダーシップの視点から〜

池田守男氏((株)資生堂 相談役)
 「モノから心の重視へ」「グローバルとローカルのバランス、調和を目指す」 「近江商人の三方良しという精神に学ぶ、サーバントリーダーシップ」「多様性の尊重と互恵の精神」 など多くのご示唆をいただいた。

講演1:「レクサスブランド」強化の取り組みについて

吉田 健氏(トヨタ自動車(株) 常務役員)
 2005年から国内に投入したレクサスブランドについて、ブランドとはお客様との約束として一度約束したことは守る、 ブランドづくりは人づくりであるなど、具体的行動を示しながらご紹介をいただいた。

講演2:コーセルにおけるブランド力(質)向上のための経営

町野利道氏(コーセル(株) 代表取締役社長)
 品質至上を核に社会の信頼に応えるため、TQMを中心に据え他の経営手法との関わりを明快にしたうえで、 全社でのプロセス管理の徹底を行うなど、多くの具体事例をご紹介いただいた。

講演3:優しさは心の創造〜モノ作りの心が伝わる“IBIZA”の顧客満足〜

吉田 茂氏((株)イビサ 取締役会長)
 お客様が第一、お客様との長いお付き合いを徹底して実践した結果が、 驚異的な購入履歴に結びついているということに驚嘆。さらに、経営品質賞挑戦を通して仕組み化を進めることで 人財育成にもつなげるなどの工夫をご紹介いただいた。

特別講演2:ブランドづくりと人づくり

井巻久一氏(マツダ(株)代表取締役会長 兼 社長(CEO))
 歴代の外国人経営トップとの交流を通して、協業には双方に苦労が伴うがそれを乗り越えることで 深い信頼が生まれることを先ずご紹介いただいた。最後には座右の銘とされている「無心ならば大道に帰り着く」 という言葉で講演を終わられた。

2日間にわたった講演終了後は、7つのグループに分かれて夜遅くまでグループ討論を進め、最終日に発表を行った。

ミニ講演:TQMとブランドマネジメント    加藤雄一郎氏(名古屋工業大学助教授)

ブランドマネジメントの専門家としての視点から、TQM活動とブランドマネジメントの融合について熱く語られた。 ブランドとは、顧客との長期的な約束であること。哲学に裏打ちされた組織が、 総合力を持って真の差別化を志向すべきと唱え、TQM活動関係者にも多くの共感を呼んだ。

 総合討論の後、主担当組織委員の日野自動車(株)蛇川忠暉会長から、今回のシンポジウムを通して、 いずれの講演も経営は「人間」が主役であることを強く主張されていたこと、我々の「人間性」をTQM経営の課題として 各人が各社に持ち帰り、広く行動に反映させるようまとめがあった。

 次回は、2007年5月31日〜6月2日「魅力と安全性・信頼性の実現に向けた新製品開発と品質保証」をテーマに開催が予定されている。是非ご予定おきいただきたい。


■ 私の提言 “不都合な真実”に勇気をもって向き合おう!

 JUKI株式会社 学会誌編集委員長 光藤 義郎

事務局からの原稿依頼でややバタバタしつつ、さて提言したいことにどんなものがあるかツラツラ考えてみたところ、 不易流行/本物と偽物/性善説と性悪説/宗教とQC/QC人材の育成/コンプライアンスの本質/QC文化論/ TQMの最終ゴール/弱肉強食論等々、思いの外たくさんあることに我ながらびっくりしました。今回は紙面の都合上 、話題を一つに絞って提言させて頂きましたので多くの方のご批判を頂ければ幸いです。

 最近、ゴア元副大統領が主演する『不都合な真実』というアメリカ映画を見ました。 そこでの最大テーマは“地球環境か経済発展かという本来比較できないものを天秤に掛けている現代社会の愚かさ” ということでした。確かに、掛け替えのない地球を破壊してまで自らの利やエゴを追い求める現代社会の姿は何か真に 大切なものを見失っているように思えます。

 思えば、人類の歴史の中で『お金が全て』、『金持ち=人生の成功』、『成長こそ善』等々、 利益(マネー)が全ての価値基準の中心に位置してしまったのはいつ頃からなのでしょう。 随分長く続いてきた価値基準ですが、この利益第一主義もその終焉はもう目の前に迫っているような気もします。 何百年か先、人類の歴史教科書は世界中がマネーに狂騒したこの時代をどのように表現し位置付けているでしょう。 私達は早く目を覚まし、マネーのために奔走する悪夢から脱却する必要があるかも知れません。

 元々、日本で発達したTQMの目的は良い品質の製品やサービスを社会に送り出すことによって 人類の平和と発展に寄与することであり、利益はあくまで活動の結果/後から付いてくるもの/ その活動を継続させていくための資源として位置付けていたはずでした。それがいつの間にか目的と手段がひっくり返り、 今では利益追求の手段に変わってしまった感じがします。その結果、本来出してはいけないはずの不具合が効率優先風土 の中で何となく市場に流出していってしまう、それが最近多発している品質不祥事の源泉にあるのではないかという 気もしてきました。

 品質管理に携わる私達は、早くこのことに気付き、声を上げ、勇気を持って『不都合な真実』を 主張していく必要があるのではないでしょうか。そう、あのゴア元副大統領のように。


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