去る9月27、28日の両日(29日:企業訪問)シンガポールにて、ANQ Congress 2006が開催された。
1991年に日本、韓国、台湾の参加国で始まったAsia Quality Symposium から数えて20回目、
それを発展させてAsian Network for Quality(ANQ)になってから4回目の大会であった。
ANQは、今年、ロシアの新規加入を含めて現在16組織が参加しているが、
今回はそのうちの14組織とヨーロッパ・アメリカからの参加者も含めて400名あまりが参加した。
JSQCからは、シンガポール以外では最多の41名が参加し、また、発表件数も最多の32件となり、多大な貢献が果たせた。
基調講演では、日本から、ANQ名誉会長であり、本学会元会長でもある、狩野紀昭東京理科大学名誉教授による、
アジアの近代の歴史を踏まえた「品質汗かき論」と、本学会第35年度会長の桜井正光リコー社長による、
同社の顧客満足・環境戦略に関する具体的な取り組みが紹介され、ともに非常に高い評価を得た
(基調講演概要はANQ-WEBサイト=http://anforq.orgに掲載される予定である)。
今大会で特筆されることに、発表件数が非常に多くなったことがあげられる。
今回はパネルセッションも含めると144件にものぼった。それだけ、発表の場としての認知が高まったといえよう。
また、特別セッションとして、JSQCによる「サテライトセッション」も実施した。
これは、シンガポールの会場と日本、インドとをインターネットで結び、
両国での発表にもとづいてシンガポールと議論するというものである。
日本からは、玉川大学の大藤正教授にQFDの基本についてご講演いただいた。
このサテライトセッションは、一昨年のインド大会の時は、筑波大学司馬正次教授にご出馬いただいたものの、
開始1分前に回線が遮断したり、その後も安定しなかったりというハプニングを体験したが、
今回は、武蔵工業大学の兼子毅講師による技術的向上により、実に明瞭なコミュニケーションが安価に実現できた。
これは、アジアに散在しているANQ組織間のコミュニケーションをより豊かにするものとして、今後の活用が期待される。
本大会に参加して常に感じることは、アジアの熱気とダイナミズムそして人なつこさである。
戦後の復興期から高度成長そして品質で世界のリーダーシップを取ったといわれる90年代半ばまで、
日本を支えていたあの熱気と品質に関する情熱である。それが、発表や討論のみならず、会場全体に彷彿としており、
人なつこい参加者と触れ合うことにより、非常に心地よいのである。
大会を締めくくる、Farewell Dinnerの中では、若手発表者の中から優秀論文が選ばれて表彰された。JSQCからは以下の3名であった(敬称略)。
加藤省吾(東京大学)
栗原一馬(早稲田大学)
奥田道明(東京理科大学)
来年は、10月16・17日(18日企業訪問)に韓国ソウル近郊で開催が予定されている。是非、今からご予定いただき、アジアのダイナミズムを実感していただきたい。
なお、本大会はANQ Wayにもとづき、質実剛健に運営されるために、
他の国際大会と比較して参加費用が大変安く設定してある。これを可能にしたのが、経済的にご支援いただいた企業各社である。
最後に、改めてお礼申し上げる次第である。