近年、社会構造、経済活動の複雑化に伴い組織あるいは企業がその責任と透明性を強く求められるようになってきている。CSR、コンプライアンス等の観点からコーポレートガバナンスの確立が急務となってきたのは自然の成り行きであろう。しかしながら現実の世の中を見渡すと企業の不祥事はあとを絶たない。責任放棄、責任転嫁に始まり、はては開き直り等、次の世代へ継承すべき社会人としての自覚、日本人としての誇りはどこへ行ってしまったのかと呆れるほどの破廉恥ぶりである。そんな世相を反映してかどうか定かではないが日本人が忘れて久しい「品格」という言葉が復活している。
この「品格」という言葉は物(製品)でいえば「品質、品位」であり、組織・企業であれば「体質、文化」でありまた人に当てはめれば「人格、品性」に相当するのではないだろうか。そういう意味では日頃品質活動に携っている我々にとって慣れ親しんでいる“Quality”と同義語ととらえてよいであろう。しかし「品質」は普段忘れられていたり、あるいは事が起きた時ぐらいしか意に留めない、また注目もされないといった面では極めて残念なことである。
品質マネジメントシステムの構築と実践を目指すISO規格の取得は各企業・団体にとって極めて論理的、体系的であるがために大いに活用されてきた。その意図するところは顧客視点に立ったビジネスプロセスの継続的な改善でありその結果としてのアウトプット(製品、サービス)を通して企業・組織の永続的な収益性をもたらすことにある。確かに論理的で且つ合理性を持つこのシステムは“物”と“組織”には有効であることに異論を唱える人は多くはないであろう。では “人”という観点に立った場合にはどのようなシステムを有効に適用すればよいのであろうか?
今期からの学会の中長期計画では『品質立国 日本の再生』を掲げ、運営を推進していく。その中で『人材確保と人材育成』が重要であることは言を侯たない。それは「人」の「品格」育成そのものである。そのために忘れてならないことは“Logical”なアプローチのみならずこれまでの日本の品質を支えてきた繊細な人間系の「情念」、「感性」や「忠誠心」とかいった“Mentality”の醸成からのアプローチであろう。広報委員会の一員としてその醸成の場と機会を創出することにより学会活動に貢献できればと思っている。