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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2006 3月 No.267

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■トピックス:JSQC信頼性・安全性計画研究会発足に向けて
■私の提言:“Quality”と“品格”
・PDF版はこちらをクリックしてください →news267.pdf

■ トピックス
  JSQC信頼性・安全性計画研究会発足に向けて

電気通信大学 鈴木 和幸
産学の知見を統合し、信頼性・安全性造り込みへの体系化を目指す計画研究会が発足します。

背景と目的
1999年以来、品質と安全性に関わる重大トラブルが様々な分野で頻発し、さらには、これらの事故・事件に関わる組織の不祥事も明るみに出て、社会の大きな関心を集めている。品質管理、信頼性工学、経営学、安全学、人間信頼性などの分野が、これらの品質・安全性問題への対処、組織事故撲滅、不祥事防止に関わる何らかの対応案を提示することが望まれる。
本研究会は、トラブル発生の技術要因、マネジメント要因、組織文化要因を視野に入れ、信頼性・安全性造り込みに関する技術的方法、組織的運営方法、さらにはトラブル発生時の対応計画、組織風土・文化までをも対象にし、学会加盟企業による信頼性・安全性造り込みへのベストプラクティスと大学・研究所の最新理論との融合、および関連する分野の知見の凝縮統合を通して、信頼性・安全性造り込みへの体系化を計ることを目的にする。

検討項目
検討事項の柱とその視点を以下に示す。
a) 組織における安全文化構築へのモデルの提案:トップ・部門長のリーダーシップとコミットメント、安全文化への社会システムを含むインフラ構築、全部門全階層の心のつながりとベクトル合わせ
b) 安全文化の構築を支援するツールの開発:未然防止の為の知識ベースと情報共有、組織としてのFMEA・FTA・DRの活用と徹底、安全文化の評価診断
c) 信頼性・安全性保証システムの構築と提案:縦割の部門間の水平結合と組立メーカ・部品メーカ(協力企業)との共創/垂直結合
d) 信頼性・安全性作り込み技術の提案:グローバル化の下での3H(変化・初めて・久しぶり)部位への信頼性・安全性作り込み技術、使われ方・環境条件の相違によるストレス−故障のメカニズム−故障モードの体系化、ヒューマンエラーに関わるマネジメント要因の管理技術、エラープルーフ対策の生成技術、購買部品のFMEA
e) 教育訓練方法の開発:上記のa)〜d)の成果を実践に移すための教育コースの開発とその試行、グローバル下での高度情報技術を用いた教育訓練法
f) 提案・開発したモデル、ツール、システム、技術的方法、教育訓練方法の実組織への適用

研究方法
分野別のベストプラクティスを学習し融合・体系化していく。したがって多くの分野のリーディングカンパニーより事例をご紹介頂くとともに近年の学術的成果の情報交換を行い、上記検討項目への新たな開発・提案を行っていく。
JSQC会員諸兄より、効果が出ている実施例およびベストプラクティスをご提供下さるようにお願いしたい。
なお、製造業の業種、運輸、食品、流通、小売等への領域拡大に対する研究会の分割化については、計画を煮詰める中で明確にしていく。

メンバー
近々の立ち上げに向けて2月末時点における主な準備メンバーは下記の通りである
 伊藤 誠(筑波大学)
 大田晋吾(小松製作所)
 金子龍三(日本電気通信システム)
 高橋武則(慶應義塾大学)
 田中健次(電気通信大学)
 中條武志(中央大学)
 永原賢造(リコー)
 宮地由芽子(鉄道総合技術研究所)
 鈴木和幸(電気通信大学)


■ 私の提言
  “Quality”と“品格”

キヤノン株式会社 根岸 達夫
近年、社会構造、経済活動の複雑化に伴い組織あるいは企業がその責任と透明性を強く求められるようになってきている。CSR、コンプライアンス等の観点からコーポレートガバナンスの確立が急務となってきたのは自然の成り行きであろう。しかしながら現実の世の中を見渡すと企業の不祥事はあとを絶たない。責任放棄、責任転嫁に始まり、はては開き直り等、次の世代へ継承すべき社会人としての自覚、日本人としての誇りはどこへ行ってしまったのかと呆れるほどの破廉恥ぶりである。そんな世相を反映してかどうか定かではないが日本人が忘れて久しい「品格」という言葉が復活している。

この「品格」という言葉は物(製品)でいえば「品質、品位」であり、組織・企業であれば「体質、文化」でありまた人に当てはめれば「人格、品性」に相当するのではないだろうか。そういう意味では日頃品質活動に携っている我々にとって慣れ親しんでいる“Quality”と同義語ととらえてよいであろう。しかし「品質」は普段忘れられていたり、あるいは事が起きた時ぐらいしか意に留めない、また注目もされないといった面では極めて残念なことである。

品質マネジメントシステムの構築と実践を目指すISO規格の取得は各企業・団体にとって極めて論理的、体系的であるがために大いに活用されてきた。その意図するところは顧客視点に立ったビジネスプロセスの継続的な改善でありその結果としてのアウトプット(製品、サービス)を通して企業・組織の永続的な収益性をもたらすことにある。確かに論理的で且つ合理性を持つこのシステムは“物”と“組織”には有効であることに異論を唱える人は多くはないであろう。では “人”という観点に立った場合にはどのようなシステムを有効に適用すればよいのであろうか?

今期からの学会の中長期計画では『品質立国 日本の再生』を掲げ、運営を推進していく。その中で『人材確保と人材育成』が重要であることは言を侯たない。それは「人」の「品格」育成そのものである。そのために忘れてならないことは“Logical”なアプローチのみならずこれまでの日本の品質を支えてきた繊細な人間系の「情念」、「感性」や「忠誠心」とかいった“Mentality”の醸成からのアプローチであろう。広報委員会の一員としてその醸成の場と機会を創出することにより学会活動に貢献できればと思っている。


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