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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2005 8月 No.262

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■トピックス:医療の質奨励賞第1回審査始まる
■私の提言:顧客との信頼関係の構築
・PDF版はこちらをクリックしてください →news262.pdf

■ トピックス
  医療の質奨励賞第1回審査始まる

医療の質奨励賞 運営委員会委員長・練馬総合病院院長 飯田 修平
医療における総合的質経営(TQM)の導入を推進し、医療の質向上の努力を評価し、社会への責任の一端として顕彰し、よりよい医療制度への道筋を探ることを目的に、日本科学技術連盟は2004年5月“医療の質奨励賞”を設立した。その経緯を第74回研究発表会で報告した。2005年4月第1回受審申し込みを受け付け、現在、審査中であり、11月8日、デミング賞授賞式と同じ会場で授賞式を行う予定である。

  1. 医療界と品質管理界の協力
    個々の改善の努力はおこなわれているが、組織をあげて総合的質経営(TQM)として活動している病院は少ない。したがって、2000年頃から、医療関係者と品質管理関係者が協力して「医療における総合的質経営」に関して、検討してきた。
    その1は、日本の国際競争力回復のキーとなり得るサービス産業の競争力をTQMを通して向上することを目的として、日本科学技術連盟(以下日科技連)に設立されたサービスクォリティ推進協議会(以下SQ)の第4部会(医療部門 以下SQ4)である。
    その2は、総合的質の観点から医療経営を研究することを目的に日本品質管理学会に設立された医療経営の総合的質研究会である。
    その3は、日本の再生は質にありとして、産官学が協力して設立された日本ものづくり人づくり質革新機構の第8部会(医療部会)である。
    その他にも、病院団体と品質管理関係者が協力して、質に関する講演会、シンポジウム等を開催してきた。
    筆者はこれらの活動を相互に関連させて展開してきた。その成果として、「医療の質向上への革新」を出版し、「医療の質保証事典」「医療安全管理者養成テキスト」「原点から考え直す」を出版予定である。

  2. SQ4での検討の概要
    SQ4では、医療界と品質管理界の意思の疎通、共通の理解を醸成するために、基本的用語の概念を確認した。
    医療・サービス・品質管理に関する委員間の認識の基盤を揃えておくことが必要と考えたからである。各専門的立場で意見を出した後にすりあわせを行った。
    病院機能評価と対比して、日本品質奨励賞を検討したところ、評価基準は極めて類似していることが分かった。
    日本品質奨励賞の「しおり」を医療に置き換え作業を行った。

  3. 医療の質奨励賞準備委員会
    SQは3年間の活動が終了して、発展的に解消した。SQ4のこれまでの検討を基に、日本品質奨励賞の医療版の作成を目的に準備委員会が日科技連に設置された。準備委員会はSQ4委員を中心として、病院経営者、病院管理研究者、企業経営者、品質管理実務者、品質管理研究者から構成された。
    医療の特殊性の有無や、医療関係者の受け入れやすさ等を勘案して、日本品質奨励賞の中ではなく、並列して設立することとした。

  4. 受審の対象
    ISO9000または病院機能評価の認証あるいは認定を受けており、組織の構成員全体の参画により、提供している医療の質を計画的・継続的に向上・維持している病院を対象としている。

  5. おわりに
    社会制度改革、経済停滞による経営環境の悪化は、医療界も例外ではない。質向上は重要かつ必要なことであるが、体裁を整えるだけでは社会の厳しい評価に耐えられない。原点に立ち戻って、質重視の経営、総合的質経営を導入・展開することが必要である。
    組織をあげて総合的質経営に努力し、一定の成果をあげている病院を表彰することが重要である。関係各位の絶大なるご支援とご協力をお願いしたい。


■ 私の提言
  顧客との信頼関係の構築

JSQC関西支部長
エス・バイ・エル(株)取締役相談役 中島 昭午
私が品質管理学会理事ならびに関西支部長に就任してから、3年が経とうとしている。本年6月の弊社株主総会では、取締役相談役に就任し、今までの経験を活かした経営全般の助言や業界活動を行なっている。

今般は、創業以来55年住宅一筋の私の経験から、お客様との関係構築と品質の考え方について提言をさせていただきたい。

品質管理が「品質」の概念を拡張してきてから久しく、日科技連がTQCをTQMと名称変更して9年が経つ。この間、品質の概念は様々なものを包含し、今も拡大しつづけているのではないであろうか。また、顧客との関係性においても顧客満足(CS)から顧客感動(CD)そして今では顧客信頼(CT)の実現が叫ばれている。

しかし、このような進展を正しく理解しないと、誤解した品質の追及にひた走ってしまうのではないであろうか。

JR西日本の脱線事故については様々な分析が行なわれているが、過密ダイヤを組まざるを得ない背景に、利益優先や企業間競争の激化があるのは言うまでもない。

しかし、我々が注目すべきは品質の概念を製品からサービスを含み、そのアウトプットとして利益を生むシステムを対象としてきたのではないかということである。当然、企業は適切な利益が無ければ永続的な発展は見込めない。しかし、一方でJR西日本の乗客の一部が便利さとは裏腹に、スピードに恐怖感を覚えていたという事実も見逃せない。この時点で顧客の信頼を著しく欠いている。

私ども住宅産業においても高額耐久消費財という商品特性から「家を建てる」人そのものが減少傾向にあり、かつその多くが一生に一回の買い物であるなかで、顧客との信頼関係を構築しなければ商売の広がりはない。そしてその信頼とはデザインや最新の設備だけではなく、「住まいは家族を守るシェルターである」という考えに立脚して安心・安全が優先されなければならないことは言うまでもない。

このような弊社での経験を踏まえ、筆者は品質の概念をあまりに広げすぎ、より利益にフォーカスの当たった品質を求めることに不安を感じる。今一度、「品質」の意味を正しく理解し、品質保証の重要性を再認識すべきではないであろうかと痛感する次第である。


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