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JSQCニューズ 2005 3月 No.259

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■トピックス:「変化に対応するスピードをアップ/進化する小集団活動をさぐる」
■私の提言:情報の見極めと予測のチャンス
・PDF版はこちらをクリックしてください →news259.pdf

■ トピックス
  「変化に対応するスピードをアップ/進化する小集団活動をさぐる」
−第6回小集団活動実態調査より−

QCサークル本部指導員・「QCサークル」誌編集委員 松田 啓寿
日本の「品質」を担う第一線職場ではいま、「現場力の再生」に向けて様々な知恵を絞り、企業をとりまく環境変化へ対応するスピードを加速している。既に成果を享受している職場が着実に増えてきている一方、次の飛躍に向けて努力を続けている職場も多いようである。

QCサークル本部では、職場や組織をとりまく環境の変化に応じたより良い活動のモデルとして、「e-QCC:進化したQCサークル活動」の目指すべき姿として次の3つの考え方を示している。
a)個の価値を高め、感動を共有する活動
b)業務一体の活動の中で自己実現をはかる活動
c)形式にとらわれない、幅広い部門で活用される活動

QCサークル本部は昨年、全国QCサークル支部の協力を得て、8年ぶりとなる「第6回小集団活動実態調査」を実施した。そこで、経営者・管理者の皆さんに組織に貢献できる小集団活動推進のヒントを提供したい(調査の内容は2004年品質月間テキストNo.328「進化する小集団活動をさぐる−第6回小集団活動実態調査より−」で報告)。

調査結果全体を通した結論としては、小集団活動の「進化」は着実に進んでいることが挙げられる。その事例のいくつかを次に示す。
1)「小集団活動の狙い」では「企業業績の向上」をトップに挙げる比率が増加した
2)テーマを選定する際、「メンバーと相談」を抑えて、「上司・スタッフ・リーダーと相談」が大幅に増加した
3)「この活動を進め良かったと思う」と感じているリーダーの比率は91%であり、リーダー・メンバーともに自分自身が成長したと実感している

一方「困っていること」の上位に「時間的余裕がない」があり、その結果を受け小集団活動の活発度が低下した。リーダーの思いから管理者、推進者が受け止めるべき課題としては、適切な教育の機会を与えること、テーマ選定の時点から支援すること、活動環境の整備を積極的に行うことである。

今回の調査結果から、e-QCCの目指すものが、着実に行動につながってきている様子をうかがうことができた。QCサークル支部長を通して各地区の幹事会社に調査依頼をしたという調査の特徴があるので、QCサークル本部が提唱しているe-QCCが相応に浸透していることは、ある意味当然とも考えられる。何れにせよ環境変化への対応を迫られている組織では、それぞれの生き残りをかけて経営者のリーダーシップのもと、「現場力」を醸成しさらにパワーアップする必要性を認識していることと想像できる。現場力をアップさせるための重要なツールのひとつが小集団活動であり、これの再活性化は組織の要求であると同時に、時代の要請でもあろう。

小集団活動実態調査結果に最も関心をもつ読者はどのような立場の方々だろうか? 察するに企業・組織の推進事務局、或いは現場力向上の必要性を認識している熱心な経営層・管理者であろう。「ウチ(の職場)は世間(他所)と比較するとどのレベルだ?」というのが本音かと思われる。

本調査は「当社の位置づけはどの辺りか知りたい」という疑問に対する情報も提供している。

例えば、テーマ解決件数の分布から、自職場の実態と世間レベルとの比較を行うことができる。「テーマ解決件数の平均は2.5件/年」これよりも多ければひとまずは世間並み以上といえる(前回調査平均は3.4件/年で、今回は低くなったように見える。前々回調査は2.7件/年であった)。

リーダーに対する「今後も小集団活動を続けたいか?」の設問に対して「活動を続けたい」が83%と非常に高く、リーダー自身の強い活動に対する意欲を感じることができた。これからの新しい展開に大いに期待したい。


■ 私の提言
  情報の見極めと予測のチャンス

電気通信大学大学院 情報システム学研究科 教授 田中 健次
日本国産のロケット打ち上げが成功しました。数度の失敗の後、多くの問題を克服しながら成功に至った技術力とマネジメントは評価に値するものでしょう。地上では、三河島事故の反省から開発されたATSやATC装置が、鉄道の安全運転に寄与しています。過去の失敗が様々なシステムの成功の原動力となっていることは今さら特筆するまでもありません。

しかし、ヒヤリ・ハット情報を集め立派なデータベースは構築したけれども設計に活用されていない、という声は、今でも多く聞かれます。

単にインシデントを集めただけでは無用の集積物であり、そこから普遍性、水平展開可能な故障メカニズムやパターンを見つけるなど、裏のメカニズムを見出して知識化しなければ応用が利きません。そこには、「なぜか」を問う姿勢と、洞察力、少しばかりの想像力が必要です。

確かに、最近のシステムや製品には、内部のメカニズムが把握しにくい、スピードが速くて追いつかない、など人間の認識能力を超えた様々な要因があり、現象の想像を難しくしていることは事実です。しかし、注意深く「視れば」予兆を観測できることがあるし、事故が起こると新聞が過去に発生した類似の事故を並びたてる状況は、事前に予想するチャンスが結構あるということを示唆しています。

スペースシャトルの爆発事故や新幹線のトンネル内コンクリート崩落事故は、専門家により予測された出来事であり、原子力の蒸気噴出事故も検査漏れが担当者から指摘されながら放置され続けた結果起こった事故です。

このように、事故に結びつく情報は探せば見つかるものです。重要なことは、これらの情報を如何に見極め、重大事故の予測に繋げるかにあります。それは決して雲をつかむような話でも、想像力だけの世界でもなく、ロジックと不確実性への洞察、判断の世界であり、一寸の想像力が必要になるだけでしょう。どのような環境のもとで、どのような人がどのような心理状況で作業するのか、製品やシステムがどのような変化を引き起こすのかをじっくり考えれば、起こり得る事象を予測するチャンスは十分にあるはずです。

そして、知識や数少ない情報を如何に現実の現象と結びつけるか、その強化こそが今、必要ではないでしょうか。


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