日本品質管理学会の会員の皆さんは品質に関心を持ち、品質管理や品質保証の重要性を強く認識していることと思います。品質を管理する場合でも、品質を保証する場合でも、まず品質を測ることが前提になります。
品質を測るには、その品質を的確に表す品質特性の選択と、選択された品質特性の測定に関する問題が解決されていなければなりません。
一般に、測定結果には関心が高いのですが、測定方法には無関心になる傾向があるようです。テレビ番組の視聴率や、景気の動向を示す指数、入学試験の得点、顧客満足度調査の結果、各種のアンケート調査の結果など、どれについても、結果には関心を示す人が多いですが、これらがどのようにして測られているかを知っている人は少ないと思われます。無関心の結果、その種の計測では、本来の計測の目的に合致しているかよりも、コスト・手間が掛からないことが優先されがちです。
測定結果の要求品質は、その測定結果を誰が何のために用いるかという目的に従って決まります。その目的に適合する対象が選ばれているかという問題はサンプリングの問題として議論されなければなりません。顧客の使用状況の調査を本社周辺の顧客について調べたのでは使用地域による影響を無視してしまいます。ついコストや手間を考えて簡単に済ませようとすると、近場で間に合わせたくなるものです。測定方法の選択も同様で、対象とする品質を良く表現する特性よりも、手軽に測定できる特性を選んでしまう傾向は無視できません。
選択された品質特性の測定に関しては、測定の精度の問題を検討する必要があります。ここでも本来の目的を見失って、コスト優先になることや、逆に測定そのものが目的になって過剰に良い精度を追求することがあります。
データに基づく管理は、品質管理の特長の一つです。この“データ”は単なる数値という意味ではありません。客観的な事実を反映したデータであることに意味・価値があるのです。そのために、計測の品質向上は重視されなければならない課題です。
計測の品質向上は、品質に理解と関心を持つ人々が、測定の方法や測定の状況に興味を示すことによって、促進されるのです。