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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2004年11月 No.256

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■トピックス: ソフトウェア部会
−プロフェッショナルのための新しいコミュニティ−
■私の提言: 世の中に役立つ品質管理学会
・PDF版はこちらをクリックしてください →news256.pdf

■ トピックス
  ソフトウェア部
 
 −プロフェッショナルのための新しいコミュニティ−


日本品質管理学会 理事 兼子 毅
 先日の総会で、「部会」という組織を学会で持つことが承認されました。そもそも「部会」とはどのようなものなのでしょうか。

 日本品質管理学会そのものが、製品やサービスの質に関わるプロフェッショナルのコミュニティであり、プロフェッショナル同士の交流、切磋琢磨の場を作るとともに、研究の奨励、成果の啓蒙・普及、それらの標準化活動などを行う団体です。今まで、様々な分野の人たちが集まり、お互いの経験や知識を持ち寄り、コアとなる概念や手法の共有化を進めてきました。それら基本となる考え方や手法などの重要性はまったく色あせてはいませんし、その重要性はますます大きなものになっていますが、世の中の高度化とともに、別の問題が浮かび上がってきたのではないでしょうか。それは分野の特殊性です。
  例えば自動車なら、高速走行時の空力特性を評価するために粘土細工の模型を作り風洞実験を行う、あるいは、コンピュータ・シミュレーションを行う、などの技術を持っています。一方ソフトウェアの分野では、高負荷時性能を評価するための的確な「模型」を作る技術は確立していません。このような分野ごとの特殊性は、質を確保する方法や考え方の特殊性や独自性に繋がっていきます。別の言葉で言換えますと、製品やサービスの質を確保し高める手法や技術が、その製品・サービスの分野に大きく依存するようになってきたと言えるのではないでしょうか。
  今回承認された「部会」は、そのような独自性・特殊性を抱える分野ごとに、より深く質に関する議論を行い、分野の独自性・特殊性に応じた研究開発を進め、より専門性を高めていくことが設置の目標である、と私は考えています。また、それら特殊性・独自性を抱えた分野の質のプロフェッショナルたちが、専門家としての自覚を高め、その責任と重要性を理解し、自らを高めていくための積極的な活動に参画するチャンスである、とも思っています。
  この「部会」第一弾として、「ソフトウェア部会」の設置に向け、準備を始めています。私たちが手にする製品の多くには、目に見えない形でソフトウェアが入り込んでいます。高度化した製品のほとんどは、機能や性能の競争優位の中核に近いところにソフトウェアが潜んでいます。コンピュータとネットワークが張り巡らされた中で、生活の利便性の多くの部分をソフトウェアが担っているのです。ソフトウェアの質の専門家は、今まで以上に責任重大で、より、その専門性を高めていかなければならないと強く感じています。従来からソフトウェア科学やソフトウェア工学などの分野で、様々な技術開発が行われ、普及活動も行われてきています。しかしながら、「質」を中核に据え、そのマネジメントを実現するために現場だけでなくトップマネジメントに至るまでの組織、プロジェクト全体を対象とする専門家集団は今の日本には見当たりません。今回設置に向け準備を進めている「ソフトウェア部会」は、トップマネジメントからプログラマにいたるまで、ソフトウェアの質にかかわりを持っているあらゆる専門家のためのコミュニティです。
  ソフトウェア部会では、(当面は「品質誌」との合冊になると思うが)独自の論文誌の発行、独自の普及・啓蒙・交流のための行事、独自の研究活動、他団体や海外諸団体との積極的な交流、ソフトウェアの質に関わる人材の力量認定制度など、ソフトウェアの質に関わる人たちの専門性を高め、製品やサービスの質そのものを高めていくための様々な活動をしていきたいと考えています。是非、積極的にご参加ください。また、会員の身近で、ソフトウェアの質に関わる仕事をしているが日本品質管理学会の会員ではない人に、是非ソフトウェア部会への加入を勧めていただきたいと思います。
 興味をもたれた方は、是非兼子(takeshik@kaneko-lab.org)までご一報いただけると幸いです。これからすべてが始まります。積極的な参画を期待しています。


私の提言
  
世の中に役立つ品質管理学会

財団法人 日本科学技術連盟 上窪 均

 中谷宇吉郎は『科学の方法』(1958)で、“自然科学の本質と方法を分析し、今日の科学によって解ける問題と解けない問題を明らかにし、自然の深さと科学の限界を知ってこそ、新しい分野を拡大する”ことを主張した。この考えが真理の追求、学問の発展につながることは論を俟たない。企業であろうが、製品であろうが、なにごとも継続して世の中に存在し、社会の発展に寄与することなくして存在意義はないというのは言い過ぎであろうか。
  当学会の役割は、真実を明らかにすること、混沌とした状況の中から真の姿を見いだしていくこと、そのために品質・クオリティという側面で、社会のニーズや新しい経営環境に合致する方法論を研究し、社会の発展に寄与することにあると思う。社会環境、経営環境に合わせて、組織は変わらなければ衰退する。そのために自ずとマネジメントの方法を変えなければ、組織は生きていけない。その組織が品質を中核とした経営を行うためのいろいろな方法を当学会が研究し、管理技法として社会に普及すること、そして、どのようなマネジメントの方法が効率的で効果的であるかというガイドラインを示すのが、その役目ではないだろうか。
  もともと品質管理の分野は、工学的アプローチ、すなわち統計データを解析していくことにより事実を発見していく科学的方法として発展してきた。先人の卓見により広がってきたこの分野が、ますます進展することを願うのみである。
  ただ、他の方法、社会科学的なアプローチも必要であり、定量的な分析だけでなく、定性的な方法として言語データの分析も行いながら、より事実を明らかにしていく方法論の発展を願いたい。再現性が確保されなければ、学問あるいは学術論文としての価値がないのであろうか。この考えには、首肯することはできない。
  社会や組織は生き物であり、いっときとして同じ状態はない。工学系の専門家だけの研究枠を越えて、非工学系の専門家も取り込むことで、研究がより広くそして深くなり、結果的に、他分野の専門家・研修者が当学会に対する関心を高めることにつながるのではないかと感じている。世の中に役立つ学会としての、さらなる発展を期待したい。


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--------The Japanese Society for Quality Control--