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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2004 9月 No.255

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■トピックス:環境関連規格の動向
■私の提言:ソリューションビジネスにおける品質保証の要諦
・PDF版はこちらをクリックしてください →news255.pdf

■ トピックス
  環境関連規格の動向
〜ISO14001改訂版いよいよ発行へ、そのインパクトは?〜

TC207/SC1対応国内委員会委員長
三菱電機梶@環境推進本部長 吉田 敬史
ISO14001の改訂版が今年末に発行される予定である。今回の改訂は、2000年に抜本改訂されたISO9000及び9001との両立性の向上と要求事項の明確化に限定して実施し新たな要求事項の追加は行わない。

しかし「両立性向上」と「明確化」という趣旨でほとんどの要求事項がより厳格に規定され、安易な方向の解釈を許さないような表現に改められているため、ユーザ企業も審査機関も既存のシステムの再点検が必要である。

両立性向上については、「文書化」、「文書管理」、「記録の管理」、「内部監査」、「マネジメントレビュー」の各項でタイトルの表記から規定内容までほぼISO9001と整合したものとなった。また用語の定義でも是正処置、予防処置、不適合など7つの定義がISO9000から移植された。

今回の改訂にはTC176からリエゾン委員が一貫して参画し両立性向上に貢献した。こうして現行規格に比べると両立性はかなり改善されたが、依然として大きな違いも残されている。

たとえばISO9000では「製品」は「サービス」を含むものと定義されているが、ISO14001では「製品」の定義はなく、「製品及びサービス」というように別の言葉として扱われている。

ISO9000で定義されている「プロセス」という言葉もISO14001では通常の言葉として使用されている。こうした違いが残されているものの今次改訂によって品質と環境システムの統合が従来より容易になり、審査の統合化も促進されると思われる。

要求事項の明確化では、規格の社会的信用を維持するために安易な解釈を防止するという観点から改訂がなされた。ISO14001の認証取得に当たって、重要な環境側面を除外した形でシステムを構築し、あたかも全てが認証取得したかのようなアピールをすることを防止するため、規格の適用範囲が厳密に規定されることになった。環境マネジメントの対象として従来「活動、製品またはサービス」という表記がなされていたが、「または(or)」が全て「及び(and)」に変えられ、「活動、製品及びサービス」とされた。組織は環境マネジメントシステムの適用範囲を定義し、その範囲内の「活動、製品及びサービス」の全ての環境側面を考慮しなければならないことが明記された。

「環境側面」の中で、「組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる」と記載されていた部分が、「組織が管理できる環境側面、及び組織が影響を及ぼせる環境側面」という表現に改訂され、直接管理できなくとも影響を及ぼせる環境側面がマネジメントの対象となることが明確化された。これは従来規格ではあいまいであった製品のライフサイクルマネジメントや、サプライチェインマネジメントを要求するものである。付属書における環境側面の例示などを通じて環境マネジメントの対象としての「製品」に一層焦点が当てられ、欧州で先行する「製品指向の環境マネジメント(POEM:Product-Oriented Environmental Management)」の方向性が明らかになった。

今後「製品」を通じて現場での品質システムとの統合が実質的に進展する可能性もある。

今回の改訂によって「紙・ゴミ・電気」だけを対象としたシステムでは規格に適合しているとはいい難くなるだろう。ISOマネジメントシステムの表層的で安易な審査登録によって制度全体の社会的信用が失われる恐れがあるとの警鐘が出始めているが、今回の改訂はこうした状況に歯止めをかけ、ISO14001の実質的な有効性を維持・向上するものとして時宜を得たものである。


■ 私の提言
  ソリューションビジネスにおける品質保証の要諦

日本電気株式会社 藤原 庸隆
昨今、新たなビジネス手法として「ソリューション」を掲げる企業が多い。ソリューションビジネスは付加価値創造型であり、そのような企業は、単品販売ではなく、顧客の業務内容を分析し、顧客が抱える問題・課題解決に資する情報システムを提供すべく、システムの企画・立案からプログラムの開発、必要なハードウェア・ソフトウェアの選定・導入、完成したシステムの保守・管理までを総合的に行なう。

例えば、従来、コンピュータメーカは、情報システム開発に際して、必要なハードウェア・ソフトウェアを独自に賄ってきた。しかし、最も市場に受け入れられる製品(デファクト製品)だけが生き残れる状況になった今日、コンピュータメーカは、デファクト製品にソフトウェア開発やシステム構築などの独自の付加価値(例えば、高信頼性や高可用性)を加味することで競合他社との差異化を図っているのである。

このような付加価値創造型のビジネスにとって、品質保証上の要諦は何であろうか。

その第一は、システムインテグレーション技術力である。すなわち、個々の製品の機能・性能を最大限に引き出し、なお且つシステムインテグレータが創造した付加価値機能との整合を図り、全体として機能的・性能的に満足できるシステムを構築する力量である。

第二は、プロジェクト管理力である。ソリューションビジネスにおいては、ソフトウェア開発やシステム構築が付加価値として中心的位置を占める。それらはプロジェクト体制の下で遂行され、さらにプロジェクトを動かしているのが「人」であることを考えれば、品質確保におけるプロジェクト管理力の重要性は一際である。

これらの要諦の「質」そのものを向上させるために、これまで多くの手法・技法・技術・ツールが編み出されてきた。例えば、QC七つ道具、多変量解析、品質機能展開、実験計画法などの伝統的なものから、プロジェクト管理のためのPMBOK、CMMI、EVMなど。

しかしながら、元来ソリューションビジネスにおける付加価値製品は「工業生産物」として捉えがたく、なおまた製品のオープン化および開発・設計のグローバル化が品質リスクの複雑化・拡散を助長している昨今、「リスク管理力」こそが、ソリューションビジネスにおける品質保証上の第三の要諦と心得ている。


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