2002年11月のANQ創設後に、シンガポール、ドバイが加盟し、目下、パキスタンとバングラデッシュから出されている申請が承認されれば、14カ国の組織となる。まずまずのスタートと喜んでいる。8月中旬にインドのニューデリーで開催されるSecond ANQ Congress/18AQS(アジア品質シンポジウム)には、全ての加盟組織から発表がなされるとの由。JSQCからは、発表件数24件、参加者も約40名に及び、開催国インドに次ぐとのこと。ANQ議長国として面目を施すことが出来そうである。JSQC会員の皆様のご協力に感謝の意を表したい。
ANQ創設のねらいの中で一番大事なことは、アジアの品質管理専門家の相互交流によるクォリティの発展にある。アジアは、世界中の人々が日常使う製品の大半を生産している「世界の工場」にも関わらず、品質の仲間が連絡を取るためのこれまでの手っ取り早い方法は、アメリカやヨーロッパの品質関連の国際大会に出席することであった。
ANQにおける人的交流のもっとも重要な場は、毎年開かれるAQSにある。これが、マス交流プログラムとすれば、個人をベースとしたミクロ交流プログラムが必要となる。この推進について、昨年の北京で提案され、今年の春の台北での理事会で確認された。ANQの加盟組織の会員であれば、各組織が主催する年次大会等に、その組織の会員と同じ条件で参加し、英語での発表が出来るようになった。また、これらの大会の開催日、場所等についての情報提供は、韓国、インドの協力で急速に進められているANQのHPを見てもらえれば、分かるようになる。
JSQC会員がANQ加盟組織での発表会に出かけていき、逆に、JSQCの年次大会、研究発表会、あるいは、支部の研究発表会に他の加盟組織から発表にやってくることになる。JSQCの若い会員に勧めたいコースは、まず、JSQCの研究発表会・大会で日本語発表し、その後に、ANQ加盟国の大会で英語発表する。このようにして、毎年2回ずつ日本語と英語で発表すれば、相当に研究の進展が図られるとともに、国際的な場でのコミュニケーション能力が向上する。
今日グローバル化時代を迎え、英語によるコミュニケーション能力の向上が極めて重要になってきている。この能力の向上のためにもっとも有効なことは、場数を踏むことである。このミクロ交流プログラムが、この面で飛躍的に役立つことを祈っている。
この交流計画は、決してバラ色ばかりではない。JSQCの発表会に日本語を理解しない参加者がやってくるので、誰かが、会場でささやき通訳(whispering)をすることになり、他の参加者にとっては耳障りとなり、クレームが出てくる可能性がある。もちろんこの問題は、ブース付き会場で同時通訳を導入することが出来れば、解決できるが、そのためには、相当な費用が必要になる。行動指針ANQ Wayに、“質素(austerity)”というキーワードがある。質素な方法で実質を深めるのがアジアのやり方である。ただ、このやり方では、ささやき通訳が発する雑音を許容していくことが必要となる。ご理解とご協力を願いたい。
蛇足ながら、JSQCを含めて財政的に乏しいアジアで大会参加費が20万円を超えるEOQ、10万円近いASQに対して、AQSの参加費は、1万5千円前後でやっていこうとしている。運営がなんとかこれまでやってこられたのは、JSQCの30周年記念事業からの拠金をはじめとして、日本、台湾、韓国、インド、アメリカの企業からの寄付があったからである。日本企業で、これまでにご協力頂いたのは、昨年の中国での積水化学工業、イーピーエス、今年度はインドに関係の深いトヨタ自動車、デンソー、ブリヂストン、サンデンの各賛助会員会社である。この場をお借りして感謝を表したい。
上述のようなミクロレベルでの交流の実現のためには、ささやき通訳に対する会員の協力に加えて、渡航費の問題がある。この点について、台北での理事会で、AQSの大会に対する寄付金に余剰が生じた場合には、その余剰金をサポート費用とすることが出来ることになったことは、誠に喜ばしいことである。
上記のようなANQを通しての活動が、アジアの若い人たちの交流に役立ち、その輪が年々広がっていくことを期待している。
以上