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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2003 11月 No.248

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■トピックス:グリーン調達の共通化の動向
■私の提言:品質管理学会のこれからに期待する
・PDF版はこちらをクリックしてください →news248.pdf

■ トピックス
  グリーン調達の共通化の動向

(社)電子情報技術産業協会(JEITA)環境・安全部長 桑原 孝
 欧州の化学物質規制への対応が注目されるにつれ、グリーン調達に関わる調査が増加傾向にあります。調査内容や方法について標準化を図るため、2001年1月より、電気・電子機器メーカーの有志が集まり、部材・部品中の含有化学物質調査の共通化について、検討を始めました。この組織の拡大に伴い、2002年4月より、「グリーン調達調査共通化協議会」(JGPSSI)として活動を始めました。

1.はじめに  
 近年、グリーン調達に関わる調査、特に、部材・部品中に含有する化学物質の調査が活発になっています。このような調査は従来から実施されていましたが、欧州の化学物質規制への対応が注目されるにつれ、急激な増加傾向にあります。一方、調査内容や方法については、標準となるものが存在していないため、各社ごとに独自調査を展開されるに至り、社会全体がたいへん非効率になってきています。

  そこで、2001年1月より、電気・電子機器メーカーの有志が集まり、部材・部品中の含有化学物質調査の共通化について、検討が始まりました。この組織の拡大に伴い、2002年4月より、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)の環境・安全部に事務局をおいて運営管理を行っており、組織名称は「グリーン調達調査共通化協議会」(JGPSSI)となっています。

2.共通化ガイドライン  
 2001年から約1年の議論を重ね、2002年4月にトライアル用の「グリーン調達調査共通化ガイドライン」を発行し、準備が整った企業から順次運用を開始しました。ガイドラインの中では、主に、「共通化学物質リスト」および「共通回答フォーマット」を定義しており、各社はこのルールに則り、運用を行いました。トライアルを実施した結果、サプライヤ側の努力もあり、従来の回答期間短縮や回答データの精度向上など、概ね良好な結果が得られています。

  さらに、後述する欧米業界団体との協議をもとに、2003年7月にガイドラインを改訂しました。

 「共通化学物質リスト」は、全29物質群となっており、レベルAとレベルBに分けられています。レベルAは、国内外の法令で含有製品の販売・使用に関し、禁止または制限など受ける物質を中心に選定されています。レベルBは、リサイクル時に情報が有用な物質、環境・健康・安全の観点から影響の恐れのある物質、廃棄時の有害性に関する法令がある物質等を中心に選定されています。

 また、「共通回答フォーマット」は、トライアル時の内容に微修正を加え、データ項目と定義、データ並び順などを規定してあります。データの入力用として、推奨の「調査回答ツール」もフリーウェアソフトとして準備しました。

  なお、運用面での共通化も図るため、「調査マニュアル」の作成や解説書「グリーン調達の実務」を発刊し、普及に向けた整備を行いました。

3.欧米との共通化
 調査の共通化については、もはや国内だけの課題ではありません。そのため、JGPSSIでは早期の段階から欧米の業界団体と接触を行い、国際標準への視野も入れ、議論を重ねてきました。具体的には、欧州情報通信技術製造者協会(FICTA)や米国電子工業会(EIA)と定期的に協議を行い、2003年9月の会合において、調査対象化学物質や調査フォーマットといった内容で大筋合意が得られた段階です。三極ガイドライン案も策定され、近々発行される予定になっています。

4.最後に
 関連情報は、JEITA:環境・安全部のホームページ(http://home.jeita.or.jp/eps/)に掲載していますので、アクセス願います。JGPSSIで議論した内容は、あくまで自主的なガイドですが、共通化による効率化のためにも普及促進へのご協力をお願いします。

    

■ 私の提言
  品質管理学会のこれからに期待する

青山学院大学 教授 天坂 格郎
 国内外の製造業が生き残りをかけた熾烈な競争が進む中で、昨今の顧客満足を著しく損なう度重なる品質問題を直視するとき、“製造業の品質経営のあり方”を再認識しなければならない。グローバル生産で世界をリードすべきはずの日本企業の昨今のリコールの増加や、発展途上国の著しい品質向上などの現状を捉えるとき、日本の“品質技術力”の再強化を警鐘している。

 例えば、現場のもの造りの姿がデジタルエンジニアリングで一変してきている中で、もの造り(現場)の技術力が低下し、問題発見能力や問題解決力の低下が露呈し、品質の造りこみが脆弱になってきているのではなかろうか。製造現場からは“管理図”活用が風化している現状を見据えると、工程で品質を造り込むという、日本的品質経営の専売特許とも言える“科学的品質管理法”が希薄になってきている事象が散見される。これまでの成功体験に囚われず、旧態の品質管理に固執せず、デジタルエンジニアリングで装備された生産現場に適応する、“新たな品質管理技術”を確立することが急務であるといえよう。

 そのためには、着実な進歩を遂げてきた日本品質管理学会に対するさらなる研究と諸活動の充実への期待は大きい。ものまねを戒め、技術の進化に乗り遅れない、世界をリードできる日本独自の品質経営の原理や、次世代に通用する品質管理技術の再構築が今必要と考える。

 縁あって、日本品質管理学会の理事(第32年度-第32年度)の経験も活かし、現在は次世代の品質経営技術“ジャパンメソッド”の確立を目指して、「製造業の品質経営あり方研究会」((財)日本科学技術連盟と共催)に取り組んでいる。世界を見据え、これからも産学の協創により、“品質経営技術の体系化”に向けて深耕研究に励みたい。


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