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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2002 11月 No.240

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■トピックス「JIS Z 9920・「苦情対応マネジメントシステムの指針」制定の経緯と特徴」
■私の提言「「医療から学ぶ総合的質経営」の意味」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news240.pdf

■ トピックス
  JIS Z 9920・「苦情対応マネジメントシステムの指針」制定の経緯と特徴

(社)消費者関連専門家会議 専務理事 小田 稔
(社)消費者関連専門家会議(通称:ACAP/エイキャップ)は、企業のお客様相談室等消費者対応部門の責任者で構成されている、内閣府認可の公益法人で、食品から金融サービス等まで消費者と直接接点のある殆どの業種に渡り、10月18日現在、449社、540名の正会員を擁しております。(創立1980年10月16日)

今号では、当会がその原案づくりに深く関与したJIS Z 9920(以下、“苦情対応JIS”と略す)の制定の経緯とその特徴について報告いたします。

1. 制定の経緯
1.1 ISO・COPOLCOの動向
1978年、ISOにCOPOLCO(消費者政策委員会)が設置され、1995年COPOLCO会議の“地球市場における消費者保護に関するワーキンググループ”で、『苦情処理を含む活動についての特定文書化を行う』等の決議がなされた。1997年COPOLCO総会で、オーストラリアが○1苦情処理○2行動規範○3裁判外紛争処理システムの三課題を提案した。1999年、COPOLCO会議で、まず「苦情処理」がISOに提案された。因みに、この段階で苦情処理に関する国家規格を持っていたのは、オーストラリアの他はイギリス。

1.2 日本の対応
上記のような形で、苦情処理の国際規格化がスタートしたのを受けて、我が国でも国内規格を至急制定し、それをもってISOの国際規格化の場で提案し、対等の立場で審議に参画する必要があった。当時の通産省工業技術院から委託を受けて、(財)日本規格協会内に“消費者保護の国際標準化/苦情処理検討委員会(委員長・松本恒雄・一ツ橋大学教授)”が設置された。同委員会は、委員18名のうち15名が当会理事長、専務理事をはじめ、各業種を代表する当会会員で構成された。2000年2月、同委員会の最終委員会で日本工業規格案として策定され、パブリックコメントを収集し、同年10月20日、通産大臣により告示され制定された。

2. その特徴〜“マネジメントシステム”という考え方
規格化に際して、まず、従来の「苦情処理」という概念から、「苦情対応」という概念へ、そして苦情対応は「消費者対応の一環である」という位置付け(再定義)を行った。

消費者から寄せられる苦情は、消費者対応部門が“現場で処理して一件落着”ではなく、“貴重な情報として経営に反映し、企業のフィードバック機能をもって消費者に還流していく”という考え方である。

これは、近年、企業経営において、消費者から寄せられる数多くの情報の中に、企業が発展・拡大していく上で貴重で価値のある情報が多く含まれており、また、消費者対応を誤ると消費者の信頼を失い、企業に大きなダメージを与えるということに経営層が気付き、消費者対応を円滑に運営していく重要さが理解されてきたものである。

“苦情対応JIS”は、上述した消費者対応部門をめぐる大きな流れの中で、「苦情対応」を人事管理、品質管理や環境管理などの経営管理システムの一つとして位置付けた上で規格化した。従って、システム全体はPDCAサイクルによって管理されることは言うまでもない。

更には、このように苦情対応を経営管理の一つに格上げすることによって、企業の最高責任者(経営層)の苦情対応に対する責務を、より明確にしたものである。

「PDCAのサイクル・管理のサイクル」

「事業とはフィードバック機構」

■ 私の提言  「医療から学ぶ総合的質経営」の意味

練馬総合病院 理事長・院長 飯田 修平

社会は閉塞感に包まれている。品質管理の世界でも同様である。TQMの体系化の遅れに起因すると考える。自問自答を提言に換えたい。

問:なぜ、私が品質管理学会の役員の重責を担うことになったのか。

これは、運命のいたずらであるが、私自身はそれほど驚いてはいない。12年前に、これと同様の経験している。すなわち、勤務医の私が、青天の霹靂といえる状況で経営の責を担うことになった。私的な繰り言ではない。

“品質管理”の問題の本質がここにあると考える。

回答1:「医療から学ぶ総合的質経営 医療の質向上活動(Medical Quality Improvement:MQI)の実践」である(品質月間テキスト312)。

大それた題名という知人の意見もある。

医療は特殊ではないが、極めて複雑で、非定型的業務・変更管理が多く、多職種・多部署の職員が交代勤務をし、社会主義的な規制(制度)に縛られ、個人の能力や努力に負っている部分が多く、組織管理が困難な分野である。しかし、組織管理の観点からは、他の産業と同様の部分の方が多い。

医療へのTQMの展開は困難である。反語的表現であるが、だからこそ、医療に品質管理の考え方が有効であり、医療でTQMが展開できれば、その方法は一般化できると考える。

回答2:非製造業および非製造部門への品質管理の展開が困難であり、かつ、十分ではないと認識していることの現れである。

“品質”を品(ひん)のない“質”と呼ぼうという議論にも現れている。 この議論の本質は、製造業あるいは製造部門で発展・展開した品質管理の方法や成果が、組織管理・組織運営には有効に役立てられていないことにある。品質問題の原因は、“もの”の質にあるのではない。“組織管理”の質が、“もの”や“こと”の質として露呈しているにすぎない。すなわち、品質管理は、“もの”の管理には成果を達成したが、組織管理には種々の問題を残している。
TQC・TQMというが、総合的質経営(TQM)が学問的にも、実務的にも体系化されていないことに問題がある。学会として体系化の活動が必要である。


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