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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 2002 5月, 6月合併号 No.236-237

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■トピックス「2001年度『日本経営品質賞』を受賞して」
■私の提言「品質管理教育(人材育成)に思う」
■我が社の最新技術「ISO9001:2000に適合する品質マネジメントシステムへの経営品質の視点に基づく成熟度判定基準の導入」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news236-7.pdf

■ トピックス
  2001年度『日本経営品質賞』を受賞して

第一生命保険相互会社 品質向上委員会事務局課長 吹野 浩久
第一生命は「生涯設計」という独自の戦略に一貫して取組んできたことが評価され、2001年度の『日本経営品質賞』を金融・保険分野で初めて受賞することができました。

『日本経営品質賞』は、日本企業の競争力向上を目的として、お客さま視点に立った企業革新を実現し、卓越した業績を生み出す「経営の仕組み」を持つ企業を表彰する制度です。同賞は、米国の競争力回復の要因になった「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)」を範として、(財)社会経済生産性本部が主体となり1995年12月に創設されました。これまでに82社が応募申請し、11社が受賞しています。

  1. 『日本経営品質賞』に取組むこととした理由
    『日本経営品質賞』の基本理念は、同賞の基本的な価値、態度、信念や行動規準を意味しており、「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」の4つから構成されています。

    この基本理念は、当社の「経営基本方針(社会からの信頼確保、最大のお客さま満足の創造、職員・会社の活性化)」にまさしく合致するものであることから、当社は『日本経営品質賞』の経営品質プログラムを活用して「経営品質の向上」に向けた取組みを開始することとしました。

  2. 「経営品質の向上」と「生涯設計の完成」を2大戦略化
    1992年から顕著になってきた生命保険業界全体の業績停滞からの回復は、従来からの「死亡保障中心の単品販売」では困難であり、死亡保障に加えて、老後、介護、医療等の分野の新しい需要に応えていくしかない、そして、そのための実効性のあるニーズ喚起は、個々のニーズへの散発的なアプローチではなく、トータルな生活設計を語ることでしかできない、という判断から、当社は「生涯設計」という新たな戦略を1997年に打ち出しました。

    そして、「経営品質の向上」と共に、「生涯設計の完成」を基本戦略の両輪として進めていくことを決めました。なぜ両輪かと言うと、相互が同じ指向性であるからです。お客さま志向から生まれた「生涯設計」を全社に徹底、実践させる改革プロセスは、まさに経営品質向上の取組みと一致するものでした。

  3. 当社の取組
    当社は、経営品質向上に向け様々な取組みを推進してきましたが、中でも今回の受賞ポイントとなった取組みを、以下のとおりご紹介します。
    「生涯設計」の展開による一貫性ある優れた経営構造の構築
    4つの基幹プロセス(商品・サービス開発、販売・維持・深耕、アンダーライティング、資産運用)に独自性を発揮
    戦略を担う人材育成に向けた、積極的かつ多彩な職員の能力開発
    管理者と現場職員が一体化した活力ある組織風土の定着
    価値創造プロセスの展開を支える、優れた情報マネジメントの運用
    コンプライアンスへの徹底した取組みと社会貢献活動への先駆的な取組み
    全組織におけるアセスメントの確実かつ真摯な取組みによる経営改革・体質改善の実現

  4. 今後の取組み
    当社は、本年9月15日に創立100周年を迎えます。

    現在、社会・お客さまへの感謝と、職員と共に祝うことをコンセプトとして100周年記念事業を進めておりますが、経営品質向上に取組むにあたって、創立100周年までの『日本経営品質賞』受賞を目指すこと、そして受賞に相応しい「お客さまから選ばれ続ける会社」になることを、当面の目標としてきました。その意味で、今回の『日本経営品質賞』受賞は、100周年記念事業に“大きな華を添える”ものとなりました。

    但し、今回の受賞が取組みのゴールを意味するもの、とは全く考えておりません。というよりも、むしろ本当の取組みはこれから始まるものであると考えています。また、当社は受賞企業として範たる会社でなくてはならず、より一層経営品質向上に向けた取組みが求められます。従って、受賞はひとつの通過点であり、我々全員が従来以上に襟を正し、「お客さま志向」の取組みに邁進するつもりです。これからは、「Quality Journey」を合言葉に、第一生命の更なる経営品質向上への旅をスタートさせたいと考えています。

■ 私の提言  品質管理教育(人材育成)に思う

財団法人 日本科学技術連盟 理事 事務局長 三田 征史
私は1964年に入社以来38年間、その大半を品質管理の教育と普及事業に携わってきました。そのおかげで、日本のものづくりの現場で、先人や先輩諸兄の汗と努力によって、戦後の荒廃の中から必死になって品質管理を取り入れてこられた姿を目のあたりにしてきました。

メイドインジャパンは“いわゆる安かろう悪かろう”のイメージでありましたが、今では全く逆で、高くても良い製品だという評価になりました。自動車、各種電気製品をはじめ、工業製品 を扱う技術の分野では日本は立派な管理システムを実現し成功しています。品質管理の教育・普及に携わってきたものとして少しはお役に立ててきたのだとうれしく思います。

ところが最近、食品業界の様々な不祥事や原子力施設での放射能漏れの事件、衛星打ち上げの失敗などが連続して起きています。

これらの実体を知りますと、現場では品質管理の発想とは違った原因の事件が起きているように思います。“キチットした品質管理を実施していれば”と言う気がして残念でなりません。

石川馨先生の「品質管理は教育に始まり教育に終わる」という名言を思い出します。「ものづくり 人づくり 継続的改善、企業は人なり」をこの言葉で強調されたのだと思います。改めて、今こそ品質管理教育の必要性・重要性を再認識する時であると思います。

昨今、企業の人の入れ替わりが激しく、日本的な終身雇用にも大きな変化があらわれている状況では、新たな取り組みが必要になってきたのではないでしょうか。

スピードと変革、選択と集中といわれる今日、お客様と品質という面から教育(人材育成)のあり方を見直し「必要な時に必要な人材を必要に応じて即効性を重視し、スピーディに教育する」ことが大事な着眼点になってきていると思います。

過日、某大学の先生と数人で夕食をともにする機会があり、そこでの話題は最近のTQMの各社の取り組みやデミング賞の応募状況、各種品質問題の不祥事についてでありました。話がはずんだところで、先生から、三田さん永年多くのデミング賞の審査や企業を見てきた経験をもとに「品質管理の面から見た 良くなる会社 悪くなる会社」(仮称)とでも題した本をまとめてはどうですか、今、こういう本が必要な時ではないですか、と言われました。

地道な品質管理の基本的な取り組み、改善の継続が人材の育成につながり、これが不祥事や失敗の防止につながるのではないでしょうか。

最近のマスコミなどで報じられている、品質に関する不祥事に接するにつけて、改めて品質管理と人材育成の必要性、重要性を痛感している今日この頃です。

■ わが社の最新技術
ISO9001:2000に適合する品質マネジメントシステムへの経営品質の視点に基づく成熟度判定基準の導入

横河電機(株) 法務品証部 品質保証室長 野中 富夫
はじめに
当社は1992年にISO9001認証を初めて取得し、昨年には2000年版による3回目の認証更新を達成した。ISO9001認証取得の経緯は、欧州でビジネスを行う上でのパスポート取得であり、当初は一種のステータスでもあった。しかし、今や認証登録は国内で3万件に近づき、世界では40万件を越したとのことである。一方、この10年間における当社のISO9001認証維持活動は、ISO9001規格の1987年版/1994年版/2000年版への変遷と共に、単に受動的な立場で適合してきた感は否めない。当社では、今回の2000年版認証更新達成を機に、経営品質の視点を導入した能動的な自己変革を目指そうとしている。

成熟度判定基準の導入の目的
経営品質の視点に基づく成熟度判定基準の導入の目的は、健全で利益ある経営の実現を目指し、品質マネジメントシステムの成熟度を継続的に改善することにある。今回導入を目指す成熟度判定基準とは、用語はISO9004から引用し、骨子はJQA(日本経営品質賞)審査基準を参考にしている。ISO9004とは、2000年版ISO9000ファミリー規格として発行された"品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針"である。

ISO9004を用語の引用に留める主な理由は、次による。
@ISO9001は2000年版になって大きな変貌を遂げたが、1987年版を元祖とする適合/不適合志向は健在で、ISO9004は性格が異なるもののファミリー規格として同種の遺伝子を有している。AISO9000ファミリー規格は、これまで同様に経営層や上級マネージャ層にとって馴染み難く、品質保証部署が主導する従来型の品質保証活動の規格とのイメージが払拭されていない。

JQA審査基準を骨子の参考とする主な理由は、次による。
@当社では昨年度に初めて、全事業部と本社機構を対象に2000年版JQA審査基準による自己診断を実施した。その際、各組織の品質保証部署のキーマンも15名が修得者として、自組織の強みと弱みを自己診断し成果を出した。AJQA審査基準はISO9000ファミリー規格とは異質の遺伝子を有し、両者の融合が変革の切札となり得るとの結論に達した。BJQA審査基準は、経営層や上級マネージャ層にとって馴染み易く関心度も高い。

成熟度判定基準の導入の計画
成熟度判定基準は、全社プロジェクトにて本年9月に完成、来年3月までに全社でトライアル導入する計画である。既に2000年版を基にJQA審査基準のフレームワーク毎の方法/展開と着眼点をISO9001要求事項に完全照合させる作業が完了し、現在は内部監査とマネジメントレビューへの導入方法の検討段階に入った。導入実現の暁には、その詳細を紹介させて頂く機会を賜れば光栄です。

JQA審査基準フレームワークとISO9001要求事項の照合例


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