平成13年9月19日、東京都芝のABCホールにおいて、第7回医療経済研究機構シンポジウム「医療制度改革のゆくえ 医療サービスの質の向上と効率化」が行われた(NHK教育テレビ放映)。
筆者は、総合的質経営の重要性を強調した。その発言要旨を紹介する。
I 患者の視点に立った医療サービスとは何か
患者中心も、医療者中心もない。同じパートナーとして考えている。
医療不信が強いが、患者も医療側も、立て前を言っている限り解決しない。相互の考え方や状況を伝え、相互に分かり合うことが必要である。東京都病院協会倫理委員会(筆者が委員長)で医療側からの意思表明として「私たちの病院の目標」を制定し公表した。倫理綱領・行動指針である。当院の倫理委員会が中心となって検討した。
II 医療提供体制のあり方
医療提供体制の要点は医療連携である。医療連携とは医療の継続性の確保を言う。医療連携が必要な理由は、専門分化により、機能分担が進んだからである。したがって、チーム医療が必要である。その実現には、標準化と情報の共有が必要である
医療提供体制を論ずるに当たり、どの範囲に関して論ずるのかを明らかにしなければ混乱する。範囲を以下の3段階に分けて考える(図1)。
A:組織としての病院内の連携、すなわち、チーム医療である。
B:地域の医療機関の連携、すなわち、病病連携・病診連携である。
C:地域の連携、すなわち、生活・行政等の社会活動としてである。
医療サービスの効率化病院には、多くの専門職種、多くの部署がある。縦割り、横割りの壁が厚い。標準化と情報の共有が困難である。したがって、従来の組織構築を超えた、縦横斜めの3次元の連携が必要である。これを横断的組織運営理論と呼ぶ(図2)。チーム医療である。
これを達成するには、継続的質向上が必要である(図3)。産業界の品質管理の経験を学んで、医療の質向上活動(MQI:Medical Quality Improvement)をおこなっている。総合的質経営(Total Quality Management:TQM)である。立て前ではなく、本音で経営を考えたときに、到達する段階である。