■トピックス JABEEの最近の動向
成蹊大学工学部 渡辺一衛(FMES/JABEE委員会委員長)
JABEE(日本技術者認定機構)ではWA(Washington Accord)の暫定資格を得て、本格的に活動をスタート
JABEEに関する経営工学分野についての取り組みは、FMES/JABEE委員会を中心に行っている。 FMESとはJapan Federation of Managerial Engineering Societies(経営工学関連学会協議会)の略称である。 1984年6月5日、日本品質管理学会、日本経営工学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会の3学会で発足。 その後、日本開発工学会、日本信頼性学会、研究・技術計画学会、日本設備管理学会、経営情報学会、プロジェクトマネジメント学会の9学会が久米均会長の下で活動を行っている。 構成メンバーは原則として、日本学術会議第5部の経営工学研究連絡委員会および経営管理工学専門委員会と兼務している。 本学会からは久米均委員、棟近雅彦委員が参加され、FMES/JABEE委員会には、棟近雅彦委員、山田秀委員が出席され活躍している。
JABEEは本年6月に、念願であったWashington Accord(WA)の暫定資格を得た。 現在、WAには米国、英国、カナダ、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、香港、南アフリカの8カ国の認定組織が調印団体として加盟し、技術者教育の相互の連携をとっている。 この中に、英語圏ではない日本が加盟したことは、準備を進めている他のアジア諸国に大きな影響を与えると思われる。 ただし、あくまでも暫定資格であり、2年後に正式な調印団体となるべく、今後の活動を進めていく必要がある。 その中の最大の要因は、プログラムの本格認定であろう。
昨年度、JABEEでは9つの分野(材料、機械、土木、化学、電気、情報処理、通信、地球・資源、農業工学)で20プログラムの認定を試行した。 本年度は新規分野(工学、応用物理、経営工学、農学、森林)をはじめ、51プログラムの認定を試行する。 経営工学分野ではFMESが担当学協会(幹事学会:日本経営工学会)となり、早稲田大学理工学部経営システム工学科、鳥取大学工学部社会開発システム工学科を対象に認定を試行する。 本学会からは大滝厚氏、加藤治信氏の2名の審査員が参加されその活躍が期待されている。 本格認定の場合には、認定中のプログラム名は一切公表されず、最終的に認定されたプログラム名だけ公表される。
試行では、対象校にご協力を頂き、認定審査の方法、認定基準の適用方法、認定の運営方法、審査員の認定能力などについて検討する。 対象校では、本格認定に向けての不足部分の整備を行うことができる。
なお、本年度に限り認定のための調査にかかる基本的な費用は、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)より出資される予定である。
認定基準は、JABEEのホームページ(www.jabee.org)に掲載されている。 昨年度との違いとして、(1)基準の内容と順序をいわゆるPDCAのサイクルが反映されるように変更した、(2)認定基準1の学習・教育目標の内容と順序を変更した、(3)分野別基準を分野別要件と改め、認定基準1の(d)の中に含めた、(4)分野別要件について、表現の統一を図った、などがある。 認定方法についても、昨年の試行の結果を反映させ、改善を図っている(HPの「認定および審査方法」、「自己点検書作成の手引き」、「実地審査の手引き」、「プログラム点検書」など参照)。
また、昨年度は主としてカリキュラムベースでの認定方法が中心であった。 本年度はアウトカムベースの審査方法により、新基準に基づいてプログラム独自の学習・教育目標をどのように設定しているか、その目標を満たしていることをどのように評価しているかを中心に審査を行う。 試行した結果を認定基準や分野別基準、さらにその他の審査書類に反映させていくため、常に最新の情報を参照されたい。
■ 私の提言 明日の経営を創る構造革新
MIT客員教授 司馬 正次
「明日の経営を創る構造革新」を品質月間テキストとして村川賢司氏と共に出版したのは、わずか一年半前だ。 それが、いま小泉内閣のもと改革と革新が日本社会の共通言語となっている。 それ位世の中の変化は激しい。
変化の時計が早く回る時代の経営にとって何が最も重要であろうか。 それは変化をリードするアッパーマネジャの「質」の良否につきる。 その質の第一は、自己の専門職能の自覚である。 経営には、コントロール、改善、構造革新(ブレークスルー)の、三側面がある。 どのような職能でもこの三者を必要とする。 しかし、アッパーマネジャに特に求められるのは、新しいビジネス価値創造のための構造革新をリードすることである。 これにどれ位時間をつかい、インボルブしているかが質をはかるひとつの尺度となる。
第二は、外に向かっての窓の開き方である。 革新は、内部からでは困難である。 自分と組織を常に外と結びつけておかなければならない。 それは、ビジネス環境変化の兆候をとらえるためだけではない。 むしろ、いま現在のビジネスのアイデンティティを外の目で常に確認するためにこそ必要なのである。
第三は、ブレークスルーのための組織づくりへの努力である。 ひと昔前は、一生の間に一度ビジネスの大きな変更があるかどうかであった。 いまは、それを何回もおこさなければならない。 つまり、ビジネス自体の革新が常のこととなった。 この事実を共通認識として組織に定着させることが必要である。 それは、改善活動を浸透させるとき、改善はエクストラ・ジョブではなく、本来業務のひとつであることを徹底したのと同じである。 いまは、革新を何回も行なうことが本来業務となったのである。
経営は理論ではない。 現実の中での実践によってコンセプトや手法がつくられる。 米国のビジネス・スクールには、構造革新の成功および失敗事例がいかに多く集まっていることか。 製品の質のみならず経営、さらには経営者の質向上のための産学の創造的な連携をさらに速度をあげ効果的に進めるときである。
なぜ米国製造業が強くなったのか?我々は80年代"モーニングコールを聞いた時のような驚きがあった"それは、自分達よりも競争力のあるものを作っている国があることに気が付いた事である。 そこから、我々の学ぶ事が始まったのである。 これは、昨年米国のレイセオン社(防衛用機器)を訪問したとき、その副社長が説明した言葉である。
昨年、マイクロソフト、ルーセントテクノロジーズ等を訪問し、QMの話しを聞いた。 一方、MB賞(米国国家品質賞)を過去に受賞した15社の要約版申請書をTQMの視点で分析してみた。 これらの結果から、共通点はQM活動の中で活用されている技法は方針管理、QC的問題解決法、チーム活動等で、日本的TQMの技法と変わらないことである。
最近、新聞で米国流のシックスシグマを「直輸入」しようとして断念した企業も少なくないと言う記事があったが、米国企業も日本的TQMをそのまま使っている事はなく、カスタマイズしている。 大事なことは成果を上げている技法にのみ着目するのではなく、その成果を上げている企業の enabler (可能にしているもの)にも学んで欲しいものである。
|