シンポジウム第5回「信頼性とシステム安全学」が、2001年3月3日に電気通信大学にて開催された。
昨今、原子力発電所、医療現場、航空機運航を始めとして、ヒューマンエラーを引金とする事故が注目されてきている。昨年の春に、当学会の主催で緊急シンポジウムが開催されたが、学界・産業界ともヒューマンエラーに関する関心が高まって来ている。このシンポジウムの前日にも四病院団体協議会の主催で、医療安全の確保をめざした医療と組織管理の質の向上について議論をするシンポジウムが開催されている。
本シンポジウムは、電気通信大学大学院情報システム学研究科の田中健次研究室と鈴木和幸研究室が毎年主催しているシンポジウム「ヒューマンマシンの安全性と信頼性」を、本年度は当学会の平成12〜13年度の公募研究会「複合技術領域における人間行動研究会」との共催で、より幅広い領域からの発表を募って開催されたものである。
また、公募研究会「複合技術領域における人間行動研究会」は、人間行動に関する研究についての発表・議論を通じた、未然防止のための方法論の研究・体系化をねらいとして設立され、現在まで一ヵ月に一回の頻度で会合を開いて、人間行動に関する研究についての発表・議論を行って来ている。
発表内容は、理論研究・事例を含む適用研究など幅広く、自動化と安全(4件)、医療の安全(2件)、リスクマネジメントと未然防止(6件)、ヒューマンファクターと安全文化(5件)、の4つの観点から合計17件の発表があった。共催する研究会のメンバーの発表もこれらに含まれている。
当日は、大学関係・産業界・医学界など幅広く、約100名の参加があり、関心の高さが伺えた。各発表とも、時間を大きくオーバーして発表者とフロアとの活発な質疑と意見交換がなされ、特に学界の発表者の研究に対して、現場を良く知る産業界の参加者からの有益な提言や質問と、それに引き続く議論が多く交わされ、発表者・参加者の双方にとって有益なシンポジウムであったという印象を受けた。
多くの活発な討議の中で、最後にフロアから黒田先生(日本ヒューマンファクター研究所)の「これまで安全学は事例を検討して問題点を指摘するレトロスペクティブな研究が中心であったが、今後は事故を防止できるよう、プロスペクティブな研究をしていかなければならない」というお言葉がとても印象に残った。
今後もこのような、関心が高まりつつ重要度が認識された問題に関する議論の場を積極的に設けていくよう、学会に期待したい。
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talk by Prof.Nakajo |
フロア全体の雰囲気 |
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管理の方式には「性善説的管理」(方式1)と「性悪説的管理」(方式2)とがあります。方式1は人の性は善なりを基本とし、人間は正義を愛し、向上心があり…
不正を憎み、嘘も云わないことを前提とする方式で、この考えに立てば、管理の手間も少なく、そのシステムも簡便で済みます。
一方、方式2では人の性を本来ずるく、怠惰で…とするのですから、きちんと細部まで管理の網の目を設定しておくことになり、複雑で莫大なシステムとその運用の手間は大変なものになります。しかし何処まで細かくしても信用出来ない人間がシステムを動かすのですからやはり問題は残ります。
従って、管理は性善説的を基本とすべきで、それに拘わる人々が性善なる人に近づくように常に仕向けてゆくことがキーでしょう。
その為には
- システムを運用する人を信用すること。
- そのシステム(例;業務管理システム)を正しく機能させることの重要さを繰返し説くこと。
- 個々のルール(例;技術標準、出入金手続)について、それが決められた理由、守られなかった場合の不具合をきちんと理解させること。
- そのルール(例;作業手順)をどうすれば守れるかをやれるまで指導し続けること
が大切と思います。
そして
- 組織として前述・〜・をきちんとやることをルール化、更には、風土化
してゆけば、かなりしっかりとした運営が出来ます。しかし一方人間は弱いものです。つい心のゆるみから安易に走り、ルール違反などをしがちです。この弱さをどう見つけ、トラブル発生を防ぐか、即ち「性弱説的管理」(方式3)が必要となります。方式3は方式2とは異なり、あくまで方式1に則りつつ人間の持つ弱さの出るのを見出し、防ごうと云うものです。従って個々の人の自主性を尊重しつつ「ゆるい」けれども肝心な所はきちんと締めようと云うものです。
この方式3は日本ならこそ出来ると思います。ぜひ充分な組織体をつくり上げ再び世界に誇れる日本の品質体質にしてゆきたいものです。
「チーズはどこへ消えた?」の爆発的な売れ行き、小泉新内閣への高い期待、いずれも「変革」の質やプロセスに社会の関心が集っていることを示している。
私の周囲にいる米国の経営者の関心も同様である。変革実現のため、組織がかかえる「イノベータズ・デイレマ」をいかに克服するか?そのプロセスは?もし自己の組織内のイノベーションの速度が遅いなら、いかに組織外から新しい血を入れるか?ブレークスルーが生じたら、いかに速やかにそれを製造プロセス化するか?未来のお客を組みこんだ製品化のプロセスは?などなどである。
しかし、ブレークスルーは常に辺境で生じることも事実である。ということはいま世の中で関心が高いトピックや手法は、未来の経営の質を真にブレークスルーするものでないのかもしれない。
変革へのリーダーシップの質を強く問われる“時代の風”を十分受けとめながら、現在のポピュラーなトピックにとらわれず自分なり、自社なりのユニークさをとことんつきつめる時に、始めて次の時代を拓くことができるのであろう。