10月17日に開催されたデミング賞委員会で,本年度のデミング賞本賞を本学会会長 前田又兵衞氏に授賞することが決まりました.授賞式は11月14日に行われます.
私たちの学会の会長がデミング賞本賞を受賞されることになったことを,学会員一同,心よりお祝い申し上げたいと思います.
デミング賞委員会から発表された選考理由は次の通りです.
「選 考 理 由」 |
前田又兵衞博士は,前田建設工業株式会社の社長および会長として同社の全社的品質管理の実践に努力され,多大の成果を挙げ経営革新を果たされました.これにより,同社は1989年度デミング賞実施賞および1995年度日本品質管理賞を受賞されました.さらに前田グループ企業にもTQMの導入を薦め強力な指導力を発揮し,前田製作所,フジミ工研,ミヤマ工業がデミング賞実施賞を受賞するのに貢献されました.また,日本品質管理学会会長,日本規格協会・TQM標準化調査研究委員会委員長,日本科学技術連盟・品質管理シンポジウム組織委員,トップマネジメント品質管理大会企画委員長などを務めるとともに,多くの著作や講演を通じて,国内はもとより国際的に品質管理の発展・普及・啓蒙に尽力され,さらに日本建設業団体連合会会長,日本経営者団体連合会常務理事,「ものづくり懇談会」委員などとして,特に企業経営者へTQMの重要性を積極的に働きかけられました.
以上,氏の業績はデミング賞本賞を授与されるに十分なものであります. |
前田会長は,1999年度の日本品質管理学会副会長として,そうして,2000年度の日本品質管理学会会長として,
- 日本の品質管理の研究開発推進のために,新風を吹き込み,活性化にご尽力されるとともに,
- 積極的に社会へ発信していく
という点を含めて多大な貢献をされてこられました.具体的には,次の通りです.
- 社会的に大きな関心を呼んだ事故に対しての緊急シンポジウム,日本が立ち後れている医療の分野へのTQMの普及をめざすシンポジウム等の開催にあたってリーダシップの発揮
- 内閣総理大臣主催した「ものづくり懇談会」に日本品質管理学会会長として参画し,日本の産業競争力再生へ向けての積極的に発言ならびに具体的な提言,ならびに,前田記念工学振興財団に働きかけ,日刊工業新聞等のマスコミを通じての品質管理についての社会へ向けた発信の実現
前田又兵衞会長は,10月28日の年次総会をもって,会長を退任され,顧問に就任されます.この一年間のご尽力に対して感謝しつつ,今後も顧問として,高所からのご指導をお願い申し上げます.
本当に,おめでとうございます.
現在我が国は、安全性・空洞化・失業率をはじめとする種々の難問をかかえている。 これらの背景には、バブル崩壊後におけるコスト偏重、教育の軽視、IT革命への立ち遅れなどが挙げられよう。
一方、海外に目を向けると、例えば99年のIT貿易伸び率(輸入ベース:対96年比)は、アメリカ19.9%,東アジア24.5%,EU17.7%,そして日本は−1.2%である。
また、東アジアからアメリカへの貿易輸出額は、90年13兆円が98年には28兆円と2倍以上の伸びを示しているのに対し、日本からアメリカへは微増にすぎない。
ITにその解決を見出そうとする方向は賛成であるが、IT革命の目的と手段の混同を危惧する。
パソコンを使うことがIT革命?e-mailを使うこと?時間と距離を無くすこと?これらは全て手段であり目的ではない。 距離と時間を無くし、顧客の声と市場情報を営業部門だけでなく、企画・R&D・設計・生技・製造・購買・保全サービス等の全部門が直接に体感し、そしてこれらの全部門・全階層が互いに効果的につながり、顧客一人一人を重視したよりきめの細かい品質保証を行うことが大きな目的と考える。
QCの基本に"事実に基づく管理"がある。 IT、特にデータベースの活用は有用と考えられるが、データの量は莫大であるが、ややもすると玉石混交の山を築くのみとなる。
現場を知り、データの取り方・分析能力を磨くことなしにIT革命は難しい。 ITによる生産革命を行うためには十分な工程解析が必須である。
情報化には業務改革が前提である。 また、電子商取引やNet通販による中抜き現象が失業率をさらに悪化させるならこれこそ本末転倒である。
IT革命本来の目的は人間社会を豊かにし、誰もが情報化社会の恩恵を受けることにある。 "人を守り、育て、活かす"人間尊重を忘れてはならない。
以上に示すごとくIT革命には品質管理の基本を実行することがその前提と考える。 21世紀のIT時代における基本的インフラこそ、品質管理にあると思われる。
(電気通信大学システム工学科教授)