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『品質オールジャパン連合:JAQの発足に向けて』連載記事

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連載記事その5『Quality Management はビジネスの文法』椿 広計 氏(RQES)

2021年06月15日 『品質オールジャパン連合:JAQの発足に向けて』連載記事, トピックス, JAQ活動行事

「Quality Management はビジネスの文法」

情報・システム研究機構理事・統計数理研究所長
筑波大学ビジネスサイエンス系名誉教授、(一社)品質工学会長
(一社)日本品質管理学会第45・46年度会長 椿  広計 氏

 私は、大学や研究所から禄をもらう統計家として人生の大半を過ごしました。データに基づいて問題をどのように解決するかを学に提供することが主業でした。 2015年から4年間アカデミアを離れ800名ほどの行政執行法人統計センターの常勤理事長として法人経営に専念しました。閣議決定による定員350名削減圧力の最中で、時代に即した新規事業を興して新たな定員予算を確保し、定員削減カーブを解消する方針を実現できました。理事長就任後、部課長と方針管理のキャッチボールを開始したのです。

 私のようなアカデミアの人間が曲がりなりにも、経営の真似事ができたのかを考えると第一は同僚の支援です。もう一つは、30年前に池澤辰夫先生(早稲田大学)や久米均先生(東京大学)のご指導で、いすゞ自動車、NTTデータ(通信)、日産自動車でTQC指導講師を10年近く経験させていただいたことです。特に、NTTデータ通信産業システム事業本部で、方針管理と日常管理のあるべき姿を手探りで多くのミドルマネジメントの方と共に検討したこと、これが貴重な経験でした。往時の日本が、アカデミアの若手を育成するPDCAサイクルを有していたことに感謝するしかありません。しかし、私のような統計家に納得感を与えたのは、これらの活動の合理性・科学性です。ビジネスも科学の対象としてモデル化できると感じたのです。

 TQMでは、科学的プロセスに則って困難な問題解決や課題達成が可能な人財を育成することが肝要です。しかし、私が統計家として実感したのは、そもそもTQMに埋め込まれた方法論が、極めて科学的だということです。誰を顧客と考え、何を価値の源泉である質と捉え、価値の実現に向けて適切なプロセスを事実に基づいてトップのリーダーシップのもと全組織一丸となって実装するというのが、ISO 9000のQuality Management Principleです。しかし、ビジネスを意味のあるコトとして生成する文法が、QMであることは、統計家からは当然に思えます。元々、近代統計科学は、事実に基づく知識獲得のための「科学の文法」として19世紀末に誕生しました。品質管理学を確立したShewhartは、それを1930年代にマネジメントの文法(Plan Do Check)に進化させました。第2次大戦後Demingや日本の品質管理第一世代の産学指導層は、更にマネジメントとソリューションの文法に昇華させました。

  科学的マネジメントを行うことが常に効率的とは限りませんが、必要に応じてそのプロセスを起動できる組織能力が産業界に求められるの時代によりません。単なる流行であってはならないのです。国際的には、科学的問題解決はSixSigmaへ方針管理はBalanced Scorecardと理論武装され展開されました。1980年代の日本の産業界にあって欧米になかったこと、現在欧米の産業界にあって日本で弱くなったことが、方針管理や科学的問題解決を基軸とする質を対象としたマネジメントと言わなければならないのは残念です。

 こういう難局にこそ、JAQを設立し、日本のQMを再活性することが喫緊の課題だと信じます。また、JAQが品質工学会、品質管理学会あるいは経営工学関係の学会が一丸となって、ビジネスの文法を更に進化させる場となることにも期待するものです。