一般社団法人 日本品質管理学会
第45年度 自 2015年(平成27年)10月 1日
至 2016年(平成28年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:椿 広計)

 本年度は,これまでの事業を継続しつつ,第44年度に策定された新長期計画QのShinka,「真価」,「新化」,「深化」,「進化」を実現するために,学会活動の第46年度以降の重点化を目指し,新たな活動に着手するとともに,種々の企画活動を行いました.
(1) 救真2020
 日本の産業界の競争力を支えてきた品質管理,クオリティマネジメントの良き部分を継承し,新たに構築すべき活動を創生するために,大久保尚武第44年度会長が2015年6月に提言されたAll Japanの品質活動を代表し,支援する緩やかな連携組織,JAQ(Japanese Association for Quality)の2018年創設に向けて,日本科学技術連盟,日本規格協会,日本品質管理学会の3団体は,3者調整会議を行い,JAQの活動,JAQの立ち上げの方法を議論してまいりました.JAQは,Q活動やそれにかかわる教育研究活動のあるべき姿を示す提言機能,Good Quality Practiceを収集・褒賞し,広く広報する機能,そしてその種の活動を行っている組織を支援する機能を備えるものとしてデザインされました.2016年10月には,3者調整会議で,これらの機能と共にJAQが日本を代表するQの組織たることを目指すこと,さらに立ち上げ期の活動を3団体トップで確認するに至っています.
 JAQ立ち上げ後概ね2年以内には,品質に関わる様々な教育研究組織,専門家を支援する活動なども行う予定ですが,第45年度はその先駆け的活動として,平成27年11月から平成28年1月にかけて,東京大学工学部の品質管理に関する寄付講座を維持するための支援活動をJSQCがまずは行うということを行いました.その結果,トヨタ自動車,積水化学工業,デンソー,日本科学技術連盟,日本規格協会などから,東京大学工学部寄付講座維持のための寄付行為がなされ,講座が5年間維持されることになりました.
 また,TQE活動を通じて,TQMを支えてきた問題解決力育成については,文部科学省次期指導要領改訂の委員会に学会員が参画するなど,「Active Learningを通じた深い学習」という指導要領改訂の根本思想に反映されつつあります.
 さらに,昨年,設立嘆願を行った滋賀大学データサイエンス学部からは,JSQC関西支部に対して,品質管理に関する講師派遣依頼があり,客員教授1名を推薦しました.
 一方,学会の現状が,学会の真価を会員に伝えきれていないこともあり,正会員数は残念ながら2000名を切るという状況に陥っております.以下に述べる学会の組織改革方針は,学会のサービス向上というよりは,学会活動に会員が参加できる環境を強化するというものですが,JAQ創生による日本のQM活動支援環境強化とともに,長期的に学会の活性化に取り組みたいと考えているところです.
(2) 究深2020
 現在,次世代SQC活動においてIoT,Industry 4.0,Big Data,AIなどに,どう対応するかの検討が必須です.この検討のために,ビッグデータ時代のSQCのあり方や,新たなSQCに関わるシンポジウムを本部で開催しましたが,新たな研究会構築を含むロードマップ形成には至っていません.
(3) 求新2020
 品質管理の新たな分野を切り開くために,サービス学会と協働で「サービスのQ計画研究会」を立ち上げました.また,この活動には川崎市も参画いただくことができました.平成28年10月にはオールジャパン体制での第1回サービス標準化フォーラムを両学会と日本規格協会との3者共催で実施しました.日本品質管理学会一学会で解決できない新たな課題をFMES,横幹連合などとともに議論してゆくために,平成28年11月には横幹連合コンファレンスで,サービス学会との共同企画セッション,FMESとの共同企画セッションなどを立ち上げると共に,第5期科学技術イノベーション計画で提起されたSociety 5.0に対するJSQCとしての意見表明も行いました.
(4) 急進2020
 第45年度活動方針に即して下記のような検討を実施しました.  
1) 支部活動の重点化
 本学会の活動の大きな目的は,産業界QM活動への価値提供であり,産業界会員に何らかの具体的価値を与えることです.日本科学技術連盟,日本規格協会などの教育・啓発活動とバッティングしないことを両立させるために,支部活動の重点化方針を議論しました.学会の支部活動をコミュニケーションの場とともに産業界へのソリューション提供の場と位置付けるため,東日本支部創設方針,組織・規定類の見直しを行ってきました.
2) 本部事業の研究開発への重点化
 本学会の本部学術活動を研究開発委員会並びに部会長が統括する研究会活動・部会活動と位置付ける方針を固め,原則として学会誌,事業をそれらの活動を中心に構成することを決めました.会員全員が何らかの興味ある部会に加入し,何らかの学術活動に参加する方針を固めました.
3) 個人正会員のQ力量の見える化
 学会正会員の中で,優れた業績・力量を持つ方をFellowとするなどの制度設計も進め,定款変更案も議論しました.
4) 学会の社会責任の明確化
 学の果たす社会責任として,いわゆる品質不祥事に対して学会としての意思表明を行ったところです.
5) その他
 学会運営活動についても,役員選挙のインターネット投票の実現,学会本部と支部とをインターネットでつなぎ行事などを中継できる環境の整備などに着手しています.

2.総合企画委員会(委員長:椿 広計)

 下記のような学会活動改組を目指し,学会組織・活動の見直しに関する議論を行いました.これらに伴う,定款,規定の改訂のために第46年度に臨時総会を開催する方針を固めました.
救真) JAQ設立のために行われた3者調整会議(10回開催)の報告を逐次受けて,JAQ設立宣言の推敲,JAQの初期活動方針案などについて議論を行いました.
進化) 学会員は,本部とともに,支部,部会に所属する体制を前提に,学会支部活動の重点化方針を検討するとともに,県別学会員数の把握を通じて,東日本支部・西日本支部の第47年度までの設置の可能性を検討しました.また,優れた業績のある会員のFellowへの推薦制度設立のための定款変更などを議論しました.
究深) 学会の学術活動,特に,現行支部活動も含めた研究開発活動,標準活動,事業活動,学会誌編集活動,広報活動を統合し,学会活動委員会を形成しつつ,その可能性,規定案改正などを検討しました.また,学会員は,部会・研究会に原則として属し,何らかの活動を行うという体制に変革するための規定案整備を行いました.

3.事業委員会(委員長:綾野 克俊)

 第45年度事業は,前年度の品質管理学会第2代会長の故石川 馨 先生 生誕100年に当るとして企画した講演会が繰り越しで開催されたものを含め,年次大会,研究発表会各1回,講演会2回,シンポジウム2回,講習会1回,事業所見学会3回,クオリティトーク4回の事業を開催しました.
 本部主催の講習会は,規格委員会から「JSQC規格21-001:プロセス保証の指針」についての講習会です.
 支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており,地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき,各々好評価をいただいております.
 今年度も多数の会員に参加いただき,心より御礼申し上げます.次年度以降もよろしくお願いします.以下簡単に,主な本部行事の状況を説明いたします.
(1) 年次大会,研究発表会
 第45回年次大会は,昨年11月14日,第44年度大久保会長の所属する積水化学工業の京都研究所にて開催し,研究発表40件,参加者154名でした.前日の事業所見学会は,GSユアサ 本社工場 (参加者16名),積水化学工業滋賀栗東工場(参加者17名)で開催しました.大久保会長の「わたしの仕事観 −モノの品質,経営の品質,人の品質−」と題した無料講演会を参加者150名を集めて,盛大に開催しました.
 第110回研究発表会は,本年5月28日に日本科学技術連盟東高円寺ビルにおいて開催し,一般発表43 件,参加者120名でした.チュートリアルは,デミング賞委員会の活動との連携を図るという方針のもと,受賞企業の代表者と日経品質管理文献賞受賞者による講演をお願いし,46名の参加者を得ることができました.
チュートリアルセッション
「グレイゾーンにおける現場技術者と設計推進者の協調とは」
電気通信大学 教授 田中 健次 氏
「持続的成功を目指して〜キャタラー流経営品質向上の歩み〜」
潟Lャタラー 執行役員 品質保証本部 本部長 井出 信 氏
(2) 講演会
 講演会は,故石川 馨 先生の生誕100年記念行事としての狩野紀昭先生の関西での講演会と,歴代会長の講演として,圓川 隆夫氏の講演会を開催しました.参加者数は,合計151名でした.
・第125回講演会 東京理科大学名誉教授 狩野 紀昭氏
  日  程: 10月7日13:30〜17:00(会場:積水化学京都研究所)
  テーマ: 石川 馨 先生 生誕100年記念 『これからのTQMと品質保証』 (参加者111名)
・第126回講演会 東京工業大学 名誉教授/第36〜37年度 会長 圓川 隆夫氏
  日  程: 10月15日13:30〜17:00(会場:日本科学技術連盟東高円寺ビル)
  テーマ: 『顧客満足(CS)の科学と品質経営への示唆』 (参加者40名)
(3) シンポジウム
・第157回シンポジウム(参加者103名)
  日  程: 4月23日9:55〜17:00(会場:日本科学技術連盟東高円寺ビル)
  テーマ: 『ISO 9001:2015改正に伴う第三者審査の質向上−2015年版に対応する審査技術−』
・第160回シンポジウム(参加者数61名)
  日  程: 9月10日9:55〜17:00(会場:日本科学技術連盟東高円寺ビル)
  テーマ: 『開発・設計に必要な統計的品質管理』
(4) 事業所見学会
 次の3回の事業所見学会を開催し,いずれも優れた活動を展開する事業所を見せていただき,参加者から高い評価をいただきました.
  ・第384回 [2月19日]日立オートモティブシステムズ株式会社 厚木事業所
      (参加者26名)
  ・第387回 [4月21日]宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター
      (参加者24名)
  ・第389回 [6月30日]ヤマトホールディングス株式会社 羽田クロノゲート
      (参加者30名)
(5) クオリティトーク
 20〜30人の少人数の参加者がくつろいだサロン的雰囲気で一流講師の講演を聞き,活発なディスカッションの場を提供する本部独自のユニークで贅沢な行事です.本年度も,以下の多彩なゲストとテーマで4回開催し,好評をいただきました. 100回目の記念クオリティトークを前に,現会長,副会長にもご登壇いただきました.
  ・第96回:ランスタッド EAP総研 所長 川西 由美子 氏[12月2日]
『小集団改善活動を再活性化するためのリチーミング』 (参加者11名)
  ・第97回:横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授 野口 和彦 氏)[3月16日]
『リスクの話』 (参加者20名)
  ・第98回:日本品質管理学会会長,統計センター 理事長 椿 広計 氏[6月23日]
『「英日統計科学源流談義」−幕末・明治の先駆者に多大な影響を与えた「科学の文法」のはなし−』 (参加者24名)
  ・第99回:日本品質管理学会副会長,地盤工学会第32代会長 末岡 徹 氏[8月30日]
『東日本大震災と資格制度「地盤品質判定士」−公益社団法人地盤工学会の活動と運営(2011−2015)』 (参加者17名)

4.中部支部(支部長:井川 正治)

(1) 研究会活動
  1) 東海地区 若手研究会[名古屋工業大学;仁科教授 主催]   (計画6回/実績6回)
   *SQCに関連する「深化」のための問題提起と解決方法について議論し,実践につなげる
  2) 北陸地区 若手研究会[金沢工業大学;石井教授 主催]研究発表会  (計画1回/実績1回)
   *研究発表会;(第1回)2月27日,発表件数5件
  3) 中部医療の質管理研究会[中部学院大学;國澤教授 主催
    医療側;関中央病院 齊藤院長] (計画6回/実績6回)
   *各部会(看護・薬剤・事務)を主管とし,テーマに基づいた活動を展開[奇数月開催]
 *中部医療の質管理研究会シンポジウム[日程;2015年12月13日(日) 長良川国際会議場]
(2) 研究発表会(第111回)
 日 程: 8月31日13:00〜18:20(名古屋工業大学)  参加者:102名
 発表内容 ;発表件数 17件 (産業界:9件,学術界:6件,医療界:1件,産学協同:1件)
(3) シンポジウム(第158回)
 日 程: 7月26日13:00〜17:00 (刈谷市総合文化センター アイリス)  参加者:148名
 テーマ: 『最良だから最強』な組織づくり
〜社員が共通の理念を持ち,活き活きと活動し成果を出せる組織にするには〜
我々は何をすべきかについて講演者と会場参加者で共有する〜
  ・基調講演   株式会社MATコンサルティング   社長 望月 広愛 氏  
  ・事例講演   西精工株式会社  社長 西 泰宏 氏  
  ・パネル討論会   司会;望月 氏   パネラー; 西 氏 および会場参加者
(4) 講演会(第127回)
 日 程: 5月27日13:00〜16:30(名古屋国際センター 別棟ホール)  参加者:229名
 テーマ: 『業務効率(仕事の質)向上のための論理的伝達力』
我々が日常業務で使っている「ことば」に改めて着目し,論理的な思考能力・論理的な伝達力を養成することで,コミュニケーションや業務の効率を向上させ,自ら新たな問題の解決ができる力を持ったグローバル人材を育成
(5) 事業所見学会
 
第1回(第385回):潟с}ハミュージカルプロダクツ[日程:2月3日 参加者:39名]
テーマ:『世界最高峰の楽器づくりを支える技能伝承』
第2回(第388回):潟Wェイテクト[日程:7月14日 参加者:35名]
テーマ:『大部屋活動・小集団活動』を通じて学んだ人材育成
(6) 幹事研修会
 
第1回 3月24日; アイシン精機梶@鬼頭 靖 氏 講演「アイシン精機のTQM活動」  幹事17名参加
第2回 6月24日; 神泉東酒造,コマツ粟津工場訪問,幹事の品質管理技術の向上を目指し,北陸地区の品質管理について特徴的に取組まれている企業を訪問 幹事13名参加
(7) 役員会
  第1回 H27年11月18日, 第2回 H28年9月28日
会場:ミッドランドスクエアー 豊田クラブ 特別会議室
(8) その他
 
協賛行事: 第13回日本OR学会中部支部シンポジウム
[日程;9月17日 場所;愛知県立大学サテライトキャンパス]

5.関西支部(支部長:近藤 賢)

(1) 事業所見学会
第383回 11月27日(金)D-egg〔同志社大学連携型起業家育成施設〕[参加者 14名]
「D-egg(同志社大学発インキュベーション施設)における産官学連携による起業支援を通した新規産業創出と地域経済発展への取り組み」
 実際に入居している企業2社の紹介と研究室を見学させていただくなど,丁寧な対応で大変充実した見学会となった.
第386回 5月10日(火)川崎重工業梶@車両カンパニー[参加者 46名]
「川崎重工業 車両カンパニーにおける品質向上への取組み 〜 鉄道車両の耐衝突性能の向上と製造現場での品質向上活動について 〜」
 40名を超える申し込みがあった.車両設計時の考え方や製造現場における品質向上の取り組みを説明いただき,通常は見学できない鉄道車両の生産工程を見せていただく など,アンケートも大変好評であった.
(2) 講演会
第128回 7月4日(月)13:15〜16:55(会場:大阪大学中之島センター)[参加者53名]
「お客様によろこびと感動を与えるモノづくりとTQM」
講演@ 「TQM本格導入による経営体質の強化と現場力の向上」
田淵 淳 氏(絵Sユアサ 産業電池電源事業部 産業電池生産本部 本部長)
講演A 「島津製作所のモノづくり」
榎本 晋虎 氏(鞄津製作所 広報室 課長)
 同じルーツを持つ企業から顧客と社会からの要求に応え続けるためのTQMとモノづくりについて,実例を交え,わかりやすく講演いただき,アンケート結果も上々であった.
(3) シンポジウム
第159回 9月7日(水)13:00〜17:00(会場:大阪大学中之島センター)[参加者52名]
「元気なゲンバを創るための視点」
講演@ 「職場に活かすベストコミュニケーション 〜ゴードンメソッドが人生を変える〜」
  瀬川 文子 氏 (親業訓練協会 企画室主任,ゴードンメソッド「親業」シニアインストラクター)
講演A 「製造業の若手採用応援PRJゲンバ男子にみる「ものづくりはひとづくり」」
  山野 千枝 氏 (大阪産業創造館 チーフプロデューサー)
パネル討論 「ものづくりの原点は,人づくり,職場づくり」
司   会 高木 美作恵 氏(クリエイティブ マインド 代表)
メンバー   瀬川 文子 氏(講演者), 山野 千枝 氏(講演者)
 組織の生産性や安全性向上につながるコミュニケーション・メソッド,日本の製造業の競争力を支えるひとづくりについて実例を交え,またロールプレイを行うなど,わかりやすく講演いただいた後,「ものづくりの原点は,人づくり,職場づくり」をテーマにパネル討論を行った.アンケート結果は上々であった.
(4) 研究発表会
第112回 9月2日(金)(会場:大阪大学中之島センター)[参加者49名]
 発表件数は13件(研究8件,事例5件).最優秀発表賞,優秀発表賞,及び学生を対象とした優秀発表の表彰を行った.
(5) 研究活動報告
1) 統計的品質情報解析研究会
  「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を行った.
2) 科学的先手管理アプローチ研究部会
   マネジメントの課題を階層別に取り上げ,日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性,IE,OR等を含む)技術をベースにし,科学的な先手管理,源流管理へのアプローチを体系化している.また,これらの成果を出版化し公表した.
(6) QCサロン
第104回 10月15日(木)常木 美幸 氏(サンデンホールディングス梶j[参加者26名]
   「「挑戦と改革の企業文化の醸成を目指す」〜表彰制度改革の取組み〜」
第105回 2月4日(木)今里 健一郎 氏(ケイ・イマジン)[参加者48名]
   「新QC七つ道具を活用した問題解決のパターン分析」
第106回 4月20日(水)荒木 孝治 氏(関西大学)[参加者16名]
   「関西大学商学部で推進する産学連携・文理融合プロジェクト」
第107回 6月8日(水)志村 一隆 氏(メディア研究家(元 ヤフー梶j)[参加者33名]
   「欧米におけるVR(Virtual Reality)の動向からQCの役割を考える−ネットとリアルの融合−」
第108回 8月18日(木)梶原 武久 氏(神戸大学大学院)[参加者37名]
   「品質コストによる戦略的品質マネジメント」
(7) 合同役員会
2015年10月15日(木),2016年2月4日(木),4月20日(水),6月8日(水),8月18日(木)

6.論文誌編集委員会(委員長:鈴木 知道)

 論文誌編集委員会では以下の活動を行いました.
(1) ほぼ,毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました.論文誌編集委員会の責任に基づき,査読意見を参考にしながら,編集委員会が掲載の可否を判断してきました.また,「著者責任」を基本とし,新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました.
(2) ロシアのウラジオストクで開催されたANQ Congress 2016にあたり,国際委員会の委託を受けて,以下の活動を行いました.
1) JSQCから提出された全てのアブストラクト(全42本)に対する審査
2) フルペーパー(全39本)に対するBest Paper Awardの審査
(3) 投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果,大幅に遅れるものはなくなっています.さらに迅速に審査が進むように,次年度以降も管理を徹底いたします.
(4) 国際委員会と連携して,ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行を行いました.45年度はVol.2 No.1とVol.2 No.2を発行しました.論文数は年間10報と,目標通りの数を掲載できています.
(5) 45年度は,昨年度に引き続き論文掲載料の検討をいたしました.論文掲載には相当なコストがかかるため,学会の財政状況を鑑みますと,論文掲載料の徴収は避けらない状況です.会員の理解を得つつ,引き続き検討を続けます.
(6) 学会誌編集委員会と連携して,品質誌の電子ジャーナル化(J-Stageでの発行)を検討しました.詳細につきましては,引き続き検討を続けます.
(7) 表1に過去5年間(41年度〜45年度)の月別投稿論文数を,表2に過去5年(40年度〜44年度)の投稿区分別採択数を示します.45年度は審査中のものがありますので,採択数は40年度から44年度を示しました.一度却下されたものが再投稿される場合もあるため,単純に採択率を計算することはできませんが,おおむね4割程度が採択されています.
 

表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
41年度 1 8 2 3 0 1 2 0 4 0 1 1 23
42年度 2 2 1 1 2 1 1 3 5 3 1 1 23
43年度 0 1 3 3 1 4 4 5 4 1 2 2 30
44年度 2 1 2 5 0 0 1 2 1 0 1 1 16
45年度 0 0 1 2 1 3 0 1 0 1 0 1 10

 

表2 過去5年間の投稿区分別採択数

  40年度 41年度 42年度 43年度 44年度 採択率
  投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択
24 11 24 10 23 10 30 5 16 9 0.38
報文 16 9 11 7 8 4 14 3 5 1 0.44
技術ノート 3 0 6 0 2 3 2 0 1 1 0.29
調査研究論文 2 0 1 0 4 0 2 1 2 2 0.27
応用研究論文 2 2 3 1 3 2 4 1 5 4 0.59
投稿論説 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0.00
クオリティレポート 1 0 3 2 6 1 4 0 3 1 0.24
QCサロン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -
レター 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -

7.学会誌編集委員会(委員長:永田 靖)

 第45年も例年どおり,年4冊の学会誌『品質』を発刊しました.特集企画は以下のように構成しました.
  Vol.46, No.1(2016年1月発行): 『社会の安全・安心を確保するための行政による規制と事業者による自律的マネジメントのあり方』
  Vol.46, No.2(2016年4月発行): 『TQM推進部門の役割とこれからの課題』
  Vol.46, No.3(2016年7月発行): 『日本企業の海外進出とマザー工場の果たすべき役割・意味』
  Vol.46, No.4(2016年10月発行): 『価値共創時代の新たなブランドマネジメント』
 また,連載『経営トップ:私のTQM事始め』や連載『研究紹介コーナー』も掲載を続けてまいりました.さらに,後半からは,新中期計画の編集方針の変更に伴い,それに対応できる編集委員会の体制を整えてまいりました.

8.広報委員会(委員長:前川 恒久)

 できることから始めるべく,理事会,委員会,クオリティトーク,シンポジウムなどで参加を許されたものの略報づくりから着手し,略報35本を制作,理事並びに関係者に送信しました.
(1) 開かれたJSQCを目指し,学会員に対しては理事会,合同委員会,総合委員会などについては略報のようなものを発信すべきではないかと考え,略報制作の助走を開始しました.昨年9月のワークショップ以降,理事会,合同委員会,総合企画委員会,TQE特別委員会,シンポジウムなどの略報を35本制作し,理事会内には発信しました.
(2) 事業委員会の協力を得て,6月以降,クオリティトーク,シンポジウムなどを取材させて頂き,略報を作成し,送信,配布した結果,未参加者からも参加したかったとの反応があり,情報が十分行き届いていないことが判りました.
(3) TQE特別委員会の略報などは委員会関係者だけではなく,広く情報発信し,毎年開催のフォーラムでは全国からの参加者があることから,同様の情報発信を行う必要性を検討しています.

9.会員サービス委員会(委員長:河村 敏彦)

 会員数(括弧内昨年度末比)は,現在,名誉会員22名(2名減),正会員2043名(98名減),職域会員38名(10名増),準会員57名(2名増),賛助会員152社197口(3社3口減), 公共会員17口(1口減)となっています.
 会員数増加に向けて,第45年度も「JSQC認定上級品質技術者」および「JSQC認定品質技術者」に関して認定証を発行し,同制度の認知度を高める取り組みを行いました.
 また,例年通りQC検定1級および2級の合格者に対しては年会費が割引となるキャンペーンを行いました.

10.規定委員会(委員長:藤本 眞男)

 第45年度も引き続き学会活動の拡大と財政基盤の確立を図るため,関係する委員会と協力して,1件の新規内規作成を行いました.
  ・学会規則第244 特定個人情報取扱内規
 一般社団法人 日本品質管理学会が「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)及び「特定個人情報の適正な取り扱いに関するガイドライン(事業者編)」に基づき,学会の取り扱う特定個人情報等の適正な取り扱いを確保するために作成致しました.

11.研究開発委員会(委員長:安井 清一)

 研究開発委員会では,以下の活動を行いました.
・例年通り,各研究会の活動予算を審議し,各研究会に配分しました.また,新規研究会ための予算も計上しました.
・信頼性・安全性計画研究会において第3期(主査:田中健次)が終了したため,主査の交代について審議しました.当委員会において満場一致で可決,理事会においても承認され,第4期(主査:岡部康平)の活動が開始されました.
・今年度は1件の新規計画研究会,「サービスのQ計画研究会」が発足しました.第45年度活動計画に折り込まれています求新事業(質マネジメントの新たな分野への展開と浸透)の一つで,サービス産業における質マネジメントを推し進めることを実現するために企画された研究会です.当委員会においてメンバー,活動内容等を審議し,満場一致で可決,理事会においても設置が承認されました.
・第45年度活動計画に基づき,研究会の研究成果や活動内容など,学会誌を通じて積極的に伝えるために,当委員会と学会誌編集委員会と協働して学会誌の編集方針を議論し,具体化されました.品質No.4(10月発行)からスタートし,テクノメトリックス研究会からの記事が掲載されました.
・計画研究会であるテクノメトリックス研究会において,新規メンバーの入会審議を行いました.当委員会において満場一致で可決,理事会においても承認されました.
 各研究会の具体的な活動内容は以下の通りです.

(1) テクノメトリックス研究会(主査:黒木 学 12名)
   テクノメトリックス研究会では,「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために,手法,考え方,事例などについて幅広い視点から研究してきました.研究会はおおむね3ヶ月に1度の開催で,メンバーが上記の手法,考え方,事例などについて紹介し,メンバー間での議論により研究成果を練り上げていきました.議論したテーマは因果推論,クラスター分析,実験計画法,Deep Learningなど多岐にわたっています.また,JSQC研究発表会や品質誌をはじめとするさまざまな学術雑誌をとおして,研究成果を報告しました.
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:永井 庸次 18名)
  医療事故調査等の活動と医療のTQM七つ道具,医療機関のTQM普及に関しては,
全日本病院協会の医療の質向上委員会に参加  一部委員(飯田,永井)
厚労省研究会に参加  飯田委員
  医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する研究会
  医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会
定期的に研究会でも議題に取り上げ検討しました.
特性要因図に関する講演会を開催(2016年8月2日)しました.
業務フロー図に関する講習会を開催(2016年5月19日)しました.
ECRIの電子カルテ導入事故チェックリストを翻訳中です.
医療アラームに関する検討では,
生体情報モニタに関する講演会を開催 (2016年8月18日)しました.
生体情報モニタの2施設モニタシステム改善と取り組み(練馬総合病院,ひたちなか総合病院)
2003年以降改訂のない「医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドライン」改訂を検討中です.
ECRIのアラーム安全ハンドブック・ワークブックの翻訳中です.
   
(3) 信頼性・安全性計画研究会(主査:岡部 康平 13名)
 第四期の初年度であり,昨年より注目してきた老朽化の安全性問題に関連して,社会インフラ全般が備えるべき品質およびその管理の視点から,安全性問題の根本的課題を掘り下げ,未然防止への展開を検討しました.専門家による講演や,委員の研究・調査発表をベースに討議を行いました.
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術
 製品安全における未然防止を目指し,ネットワークを介して製品等の状態を監視することで,信頼性・安全性を管理する技術に注目しました.モニタリング情報の有効活用として,長寿命設計と過剰品質との関係やビックデータへの期待,モニタリングセンサの不確実性の影響などを多角的に議論しました.
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
 第三期に引き続き,老朽化の安全性問題に着目し,新規発展分野の社会インフラにおける安全設計から管理体制にいたる品質管理の現状と動向を調査しました.自動車の自動運転技術やドローンの次世代運送システムにおける安全管理問題を鉄道運送管理などの既存の技術・体制と照らして検討しました.
 レジリエンスな組織,事業継続の実現については,第三期で提起した社会品質という新たな概念の観点から議論を進めました.自動車のリコールの変遷やガラパゴス化など,グローバル化と技術深化・特化の在り方について,経営の観点からも広く議論いたしました.
  3) 研究成果のとりまとめと情報発信
 第四期の初年度であり,早期情報発信を目指して,第三期からの継続課題に加えて,早期提言課題の設定を検討しました.次年度の年次大会研究発表会を目標に情報発信すべく,第四期における主題の検討と成果の達成目標を討議しました.また,新規発展分野における社会インフラの専門家と連携して成果をまとめられるように取り組みました.
   
(4) サービスのQ計画研究会(主査:水流 聡子 12名)
 3月30日の理事会で,設置が承認された計画研究会である.「エクセレント・サービス」の再現可能性を高め,多様性と共存する標準化を目指す.サービスの標準化を,科学化・標準化・実装化のフェーズですすめ,実装により得られるデータに基づく科学化へのフィードバックをかけていくCASDの順にまわるSDCAサイクルを実現・強化する研究活動を推進する.3つのフェーズの中で,サービスのQ計画研究会がもつ重要な役割は,「科学化」と「標準化への橋渡し」の部分であることを確認した.今年度は以下の活動を行った.
  1) 組織設計・組織化と関係組織との関係構築
 サービスのQ計画研究会(JSQC)・サービス標準化委員会(サービス標準化協議会)・個別サービス実現標準化分科会(複数)・産業界という4つの組織活動を実現し運営することの必要性を導出した.サービスのQ計画研究会は,サービス学会・日本規格協会・日本品質管理学会のサービスにかかる主要研究者に加え,国際標準化関係者・主要国内認証組織関係者・自治体関係者・企業関係者に参画していただき,4月から9月にかけて,6回の研究会を,主として東京大学で開催した.また主査がリードするワーキング会議を2週間に1回のペースで実施し,素材収集・関係者間の調整・サービス標準化推進立ち上げ3団体の首長への報告と意見交換を実施した.また経団連・標準化優先順位が高いと判断される企業へのフォーラムを通した関係構築を実施した.
  2) サービス標準化スキームの提案
 科学化フェーズは,@サービス類型 A概念モデル B評価方法論の開発の3つのコンポーネントから成る.標準化フェーズは,C標準化優先順位 Dサービス類型モデル標準の開発・管理 Eサービス実現標準の開発・管理 からなり,実用化フェーズでは,Eサービス実現標準の開発・管理,からF社会実装・運用へすすめる.科学化のフェーズから人財育成活動に向けてアウトプットする.
  3) 第1回サービス標準化フォーラムの企画
 2016年10月14日,経団連会館ダイヤモンドルームにて,サービス学会・日本規格協会とともに,サービス標準化の意義,企業事例3件,パネルディスカッション(話題提供3件,3つのテーマに関する討論)を行うべく,議論の整理と今後の方向性について,7月〜9月までに企画・準備・調整・依頼・印刷資料準備・申し込み受付を実施した.

12.国際委員会(委員長:水流 聡子)

 第45年度の国際委員会では,以下の事業を実施しました.
(1) ANQ 2016への参加
 ロシアのウラジオストクにて,2016年9月21-22日に,ANQ(Asian Network for Quality)総会が開催されました.ANQ理事会会長のユーリ氏が所属する組織であるロシアのROQ(Russian Organization for Quality)が主催し,ウラジオストクにある大学(Eastern Federal University)が,会場および推奨宿泊ホテルとなりました.参加総数は約250名(1日目ユーリ氏よりの情報),そのうち120名がロシアからの参加者,JSQCからは発表約40件,参加者総数60名前後と,ANQ参加組織中,最大の発表件数と参加者でした.ANQという国際会議での発表の場を若手に提供できていることで,以前に比べると若手の発表の質が向上してきており,JSQCにとってANQは人材育成のひとつの有用なツールとなっているように思われました.
(2) ANQの安定的発展のための調整
 2016年の春には北京,秋にはウラジオストクで,ANQ理事会が開催されました.JSQCとしてANQの発展に積極的に関与しています.ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会),Ishikawa Kano Award委員会,に委員を派遣しています.財務委員会では,JSQCが委員長を務めております.
(3) 英文電子ジャーナルの刊行
 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の2年目の刊行が完了し,TQSへの投稿に対する期待もあり,ANQ発表件数は増加し続けています.
(4) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討しています.

13.標準委員会(委員長:住本 守)

(1) JSQC規格の制定:
1) 「プロセス保証の指針」を制定しました.
2) 「公的統計指針のプロセス−指針と要求事項」を制定しました.
3) 「品質管理教育の指針」の2017年春の完成を目標に,原案作成を推進しています.
4) 「方針管理の指針」英語版の2017年7月の完成を目標に,英文化の作業を開始しました.
(2) JSQC規格のJIS化:
1) 「プロセス保証の指針」のJIS化提案が承認され,JIS原案作成を開始しました.
2) 「方針管理の指針」のJIS化提案を規格協会宛て提出しました.(具体的には,現 JIS Q9023「マネジメントシステムのパフォーマンス改善−方針によるマネジメントの指針」の改正提案となる.)
3) JIS Q9024「マネジメントシステムのパフォーマンス−継続的改善の手順及び技法の指針」及びJIS Q9025「マネジメントシステムのパフォーマンス−品質機能展開の指針」の両JIS規格の主管を規格協会から品質管理学会への移管を行いました.
(3) JSQC規格の定期見直し:
「品質管理用語」の定期見直しの作業を開始しました.
(4) JSQC規格の普及活動:
1) 「プロセス保証の指針」の制定を受け,事業委員会等と連携し,7月1日に「プロセス保証の指針」の講習会を開催しました.参加者は63名,アンケートの回答では,「プロセス保証について理解が深まった」「本質的な説明を分かりやすくして頂き感謝します」「定期的な講習会の開催を望む」 等の声がありました.
2) 賛助会員企業における,JSQC規格の常備化のお願いを行いました.

14.FMES関連,横幹連合関連(兼子 毅,関 庸一)

 45年度も引き続き,FMES代表者会議,FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画し,経営工学関連学会との交流,JABEEの審査活動,FMESシンポジウム等の活動に,中核団体として協力してきました.FMES代表者会議は,2016年5月11日に開催され,主にFMESの今後の活動について議論しました.また,FMES事務局は,正式にJSQCへ引継ぎが行われました.
 横幹連合に関しては,2016年8月24日に横幹連合執行部とJSQC役員との懇談会が行われました.また,FMES各学会による企画セッションを2016年11月に開催予定の横幹連合コンファレンスで開催することも決まりました.

15.研究助成特別委員会(委員長:國澤 英雄)

 本事業は学会創立30周年記念事業として第31年度より開始されたものです.助成金額は1件5万円で4件以内.対象者は,日本品質管理学会の正会員もしくは準会員,申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者,留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です.今年度の応募者はありませんでした.

16.QC相談室特別委員会(委員長:猪原 正守)

 第45年度も,学会ホームページ上でQC相談室の運営を行いました.今年度も,統計教育や品質管理検定などに関して,コンスタントに質問が投稿されました.44年度より投稿件数と意見交換の件数は,若干減少したものの活発な意見交換の場を提供することができました.

17.安全・安心社会技術連携特別委員会(委員長:伊藤 誠)

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム研究部会/社会・環境部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」ワークショップを,2016年12月23日実施に向けて準備を行いました.また,自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力しています.特にISO 39001の普及をめざし,ISO TC241/WG 4 marketing committeeに参画しています.

18.JSQC選書特別委員会(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として,品質マネジメントに関わる,基本的考え方,マネジメントシステム,手法・技法,推進・運用,さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました.
 同委員会を2回開催し,発行書籍候補の列挙,短期(1年程度)的な発行計画(主題,著者,発行時期など)を審議し決定しました.決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い,結果的には,2016年5月下旬に第13弾として,(第25巻)『QCサークル活動の再考 ―自主的小集団改善活動』を発行しました(出版社:日本規格協会).

19.TQE(問題解決力向上のための初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木 和幸)

(1) 品質誌第45巻4号に「初中等教育における問題解決力育成へ向けて」を特集し,TQE委員3名の執筆を含む5件の論説を寄稿した.
(2) 文部科学省中央教育審議会・教育課程部会・算数・数学ワーキンググループに平成28年1月から5月まで委員が参画し,問題解決教育の必要性・統計教育の充実などの意見表明を行い,次期指導要領に取り込む審議とりまとめに反映させた.
(3) 総合的な学習の時間におけるアクティブ・ラーニングに資する教材開発を行った.その成果は,日本教材学会誌に採択された(山下,新井,西村,鈴木(2015)「データに基づく問題解決プロセスとその教材の開発」).本論文は,日本教材学会平成27年度研究奨励賞を受賞した.
(4) 平成28年3月31日に筑波大学東京キャンパスで第5回科学技術教育フォーラムを文部科学省・総務省・日本科学技術連盟・日本規格協会・諸学会などの協賛を基に開催した.「産官学共創のアクティブ・ラーニング」をテーマに開催し(80名定員),北海道や九州を含む全国から定員を超える参加者を得た.
(5) 平成28年8月8日に富山県統計教育研究会からの要請に応え,前川委員が品質管理基礎講座“折り紙を用いたデータの採り方”「データを採れば問題が統計る」を指導した.
(6) 統計グラフコンクール日本品質管理学会賞受賞作品を選定し,平成28年11月16日全国統計大会において学会賞を授与します.

20.部会

(1) ソフトウェア部会(部会長:長坂 康史 76名)
第45年度は以下のことを行いました.
 
ソフトウェア技術者の教育プログラムを主テーマとして活動しました.
ソフトウェアの品質向上に関する議論の中から,参加者が共通して感じている課題である高い品質のソフトウェア開発を行うことのできる人材育成をテーマとして議論を行いました.
メーリングリストやSNSを利用した情報交換及び情報発信を行いました.
部会メンバー間の情報交換をメーリングリストで行うとともに,SNSを利用した情報発信を行いました.
ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援しました.
昨年度同様,他団体との連携を行い,各種行事の後援などを行いました.
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会(部会長:福丸 典芳 142名)
1) 第45年度活動報告(2015年10月1日〜2016年9月30日)
7つのワーキンググループで研究活動を実施しました.
  WG1: 審査の視点での改正ISO 9001の研究
前期に引き続きISO 9001:2015を組織の視点で検討し,組織がどの様に取り組むのが望ましいかについて研究を行いました.
  WG2: 改正ISO 9001の意図及び審査員の力量の研究
前年度検討した結果を基にISO 9001:2015の要求事項の意図及び力量を明確にし,その結果のとりまとめを行いました.
  WG3: ISOに振り回されるな〜2015移行では組織用語を活かそう〜
モデル組織1社に対し共同研究を行いました.
  WG4: 会社を強くする「効果的なQMS診断アプローチ」の研究
QMS自己適合宣言プログラム及び評価ツールを開発し,ISO 9001:2015への対応を行うと共に,組織で試行・検証・効果確認を行い,評価ツールの活用法についてとりまとめを行いました.
  WG5: 外部委託管理の研究
「外部委託管理の指針(案)」に関して,JSQC標準化への提案を行いましたが,規格化は困難であると判断されたので,これについては研究報告書として作成し,2016年6月に発行しました.
  WG6: ISO 9001(2015年版)対応−中小企業向けQMSモデルの研究
ISO 9001:2015を中小企業向けにどのように展開するかについて,研究テーマの深耕を行いました.
  WG7: 「あるべき姿」「ありたい姿」のQMSを想定した審査技術の開発
審査事例研究を行い,組織のQMSの「あるべき姿」「ありたい姿」を想定して審査する技術について研究を行いました.
   
(3) 医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 130名)
 今年度の研究活動としては,従来から引き続き,PCAPS(患者状態適応型パス)研究グループ,およびQMS-H研究会と共同しながら,PCAPS,医療の質マネジメントシステム等について研究してまいりました.また,例年開催している最終成果報告シンポジウムを,2016年2月27,28日に早稲田大学で開催しました.総合テーマは,「医療への質マネジメントアプローチ」で,100名以上の方が参加し,活発な議論が行われました.研究発表も,本学会はもちろん,医療の質・安全学会,日本医療・病院管理学会,ANQ,QMOD,等で,部会員の研究発表を行っています.
 アウトリーチ活動の一環として開催している「医療の質マネジメント基礎講座」は,今年度から本学会と目白大学メディカル研修センターとの共催にし,会場も目白大学に移しました.2016年5月から8月にかけて実施し,受講生の数は,昨年度より80名ほど増えて,延べ約630名でした.受講生数としてはそれほど大きな伸びではありませんでしたが,目白大学は医療系学部を持つことから,医療者への広報チャネルが広がり,QMS-H研究会以外の病院からの参加者が大幅に増えました.全講座終了後に講師会を開催し,来年度に向けての改善を行いました.
 部会員数については,現在130名であり,減少傾向が続いています.基礎講座を通じて医療者の勧誘を行っていく必要があります.また,新たな研究会の立ち上げによる会員増も重要と考え,新研究会の設立準備を行い,来年度からの開始を目指します.