一般社団法人 日本品質管理学会
第42年度 自 2012年(平成24年)10月 1日
至 2013年(平成25年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:中條 武志)

 本年度は第3期中期計画の2年目にあたり、中期計画の「Qの確保」、「Qの展開」、「Qの創造」と「共通領域の推進」の4本柱を継承し、更なる充実発展を図るべく運営しました。これらの4本柱の主な活動は次の通りです。
(1) 「Qの確保」
 研究会・部会が中心となって、経営環境・社会環境の変化に伴って生じているQの確保のための課題について精力的に研究を進めました。開発期間の短期化にともなって課題となっている、設計開発における品質確保については、産学協同研究プロジェクトを継続的に実施しています。また、グローバル化に対応した品質管理教育プログラムの開発を目指して、グローバル品質管理教育計画研究会が立ち上がりました。さらに、安全・安心に対する社会の関心の高まりを受けて、信頼性・安全性計画研究会が、災害や社会情勢の急激な変化にも負けない組織の構築についての研究を進め、5月にシンポジウム「震災時対応の成功事例から学ぶ−未然防止の知恵−」を開催しました。一方、Qの確保のための要素技術であるQMSについては、QMS有効活用及び審査研究部会が、QMSの有効活用と第三者審査に関する研究を進め、7月にシンポジウム「ISO 9001第三者審査の質向上と組織での有効な推進方法」を開催しました。また、統計学の品質管理の応用については、テクノメトリックス計画研究会が、実験計画法、タグチメソッド、統計的手法の理論的側面、解析事例、解析手順などさまざまな視点から研究を継続しています。さらに、先進的生産方式に対する工程管理研究会が、高度化・複雑化した生産プロセスにおいて品質を作り込むための方法論について、管理論や統計学の立場から研究を進めています。ソフトウェア化・情報化に伴って問題となっているソフトウェアの品質管理については、ソフトウェア部会が、毎月会合を開き、実践的でかつ効果的な知識の体系化に取り組んでいます。また、統計・データの質マネジメント研究会が3年間の活動を終え、4月にシンポジウム「統計・データの質マネジメント−ビッグデータ時代に問われる情報収集の質とマネジメント−」を開催しました。成果については報告書として発行される予定です。
(2) 「Qの展開」
 医療、エネルギー、運輸、教育などの社会インフラ領域への品質管理の展開を目指して、研究会・部会・特別委員会が活動を行いました。医療分野については、医療経営の総合的「質」計画研究会が、医療の質向上の事例研究、医療TQM七つ道具の開発に引き続き、電子カルテや医療アラームなどのITの活用に伴う不具合事例の調査・検討を行っています。また、医療の質・安全部会が、患者状態適応型パス(PCAPS)と医療QMSについての研究成果をまとめたシンポジウム「社会技術としての医療の基盤構築」を3月に開催しました。また、普及・啓蒙活動として、医療の質マネジメント基礎講座を継続的に開催しています。エネルギー分野・運輸分野については、安全安心社会技術連携特別委員会が、日本原子力学会等と共催で原子力の安全管理と社会環境ワークショップワークショップを3月と10月に開催しました。また、運輸安全マネジメントについてTQMの立場から研究すべき課題について発表を行いました。さらに、継続的に審議にかかわってきたISO 39001「道路交通安全マネジメントシステム−要求事項と使用のための指針−」の翻訳や認証制度の立ち上げに協力しました。初等教育分野への品質管理の普及については、TQE特別委員会が、12月に日本統計学会等との共催で第3回科学技術フォーラム「科学技術立国を支える問題解決教育―教科横断的な問題解決能力の育成とその指導力の開発―」を開催したほか、教材事例の開発を進め、7月に教員の方々を対象とするセミナーを開催しました。
(3) 「Qの創造」
 従来の延長にない、新たな品質管理技術の創造を目指しています。難しい分野ですが、サービス産業における顧客価値創造計画研究会が、家電メーカーにおけるトータルサービスを例として産学協同研究を行い、サービス産業向けの価値創造のための系統的な方法論(仮説の発掘、仮説の検証、仮説の最適化)の定式化を目指しています。
(4) 「共通領域」
 会員数については、現在(対前年同期比)正会員2310名(72名減)、準会員72名(27名減)、職域会員8名、賛助会員164社217口(7社5口増)となっています。企業を取り巻く環境が厳しく経費削減の波を受け会員数が漸減しています。会員サービス委員会と庶務委員会が中心となって、新たに導入した職域会員の制度を活用して企業に学会活動への参加を働きかけ、職域会員数、賛助会員数・口数を増やす努力をしました。また、QC検定や「JSQC認定品質技術者」制度により多くの会員の方が興味をもっていただき、自己の品質管理技術の向上に役立ててもらえるようニューズ等による呼びかけを行いました。さらに、会員データベースの更新を機に、会員の名前・所属、専門分野・興味のある分野が他の会員にわかるように改善しました。
 研究開発活動の組織的な推進については、総合企画委員会と研究開発委員会が中心となって研究開発マップのとりまとめを行いました。また、これをもとに、研究開発委員会が研究会・部会・特別委員会によるワークショップを開催し、相互の連携の必要性と研究が必要な新たな分野についての議論を行いました。また、産学共同研究の活性化については、総合企画委員会が中心となって、プロジェクト型と公募型に分けて推進を行っています。また、事業委員会が、研究発表会における研究室紹介のポスター展示を実施したほか、産から品質管理の実践状況を報告頂く場の設置について検討を行っています。
 研究成果の公表については、事業委員会・支部が研究発表の場を定期的に設けるとともに、研究会・部会等と協力してシンポジウムを開催しました。また、国際委員会が、10月にバンコックで開催されたANQ Congress 2013に協力しました。JSQCからは40件の発表がありました。論文誌編集委員会では投稿論文審査の迅速化や論文補助情報のWeb公開に取り組むとともに、ANQ発表論文の審査を行いました。また、学会誌編集委員会では、研究会・部会に研究内容を学会誌で公表してもらえる機会を増やす取り組みを行いました。
 会員の研鑽の場の提供については、事業委員会・支部が定期的に講演会、事業所見学会などを実施しました。また、学会誌編集員会が、「ソフトウェア品質技術」「医療質安全保証」「災害リスクマネジメント」「有効な審査技術とQMSの能力向上」といった会員のニーズに応える特集を組むとともに、専門分野に関する連載記事の掲載を行いました。さらに、JSQC選書特別委員会が、「信頼性・安全性の確保と未然防止」「情報品質」「低炭素社会構築における産業界・企業の役割」の3冊を発行しました。QC相談室についても、継続的に実施しています。
 品質管理技術の標準化については、標準化委員会が中心となって、原案作成委員会の開催、審議委員会の開催、パブリックコメントの募集などを行い、JSQC規格第2弾となるJSQC-Std 32-001「日常管理の指針」を発行しました。また、その内容を広く会員に知ってもらうために、講習会を9月に開催しました。なお、JSQC-Std 00-001「品質管理用語」の講習会についても5月に開催しました。
 コミュニケーションの活性化・情報発信については、総合企画委員会と広報委員会が中心となって学会活動マップをまとめました。また、これをもとに、委員会の間、外部組織との間でどのような連携の強化や情報の発信が必要かについて検討を行いました。また、学会HPをより使いやすく、有用なものにする見直しについて検討を行っています。関連学会であるFMES(経営工学関連学会)や横幹連合(横断型基幹科学技術研究団体連合)との連携についても継続的に進めています。

2.総合企画委員会(委員長:中條 武志)

 第42年度は第3期中期計画の2年目にあたります。中期計画で定めた目標とその達成のための活動が計画通りに実行できるよう、関連委員会と連携しながら次の3点に絞って推進を行いました。
(1) 産学共同研究の推進と中長期研究開発計画の策定
(2) 会員増強と品質管理人材育成
(3) コミュニケーションと連携の強化
このうち、(1)については、産学共同研究プロジェクトの活性化に向けた働きかけを行うとともに、事業委員会と連携して公募型共同研究テーマの充実と研究発表会・年次大会における産学交流の場を増やすことを検討しました。また、研究開発委員会と連携し、研究開発マップを作成し、これをもとに中長期研究開発計画の検討を始めました。(2)については、会員サービス委員会と連携し、職域会員の勧誘、品質技術者認定制度の普及につとめました。(3)については、広報委員会と連携し、学会内の活動および学会の外で行われている品質管理関係の諸活動の関連を示した学会活動マップを作成しました。また、これをもとにこれまで個別に行われてきた様々な活動をより有機的に結びつけるための施策について検討を始めました。各項目の詳細については、関連委員会の報告をご参照ください。

3.事業委員会(委員長:綾野 克俊)

 第42年度事業は本部(年次大会、研究発表会、ヤングサマーセミナー各1回、シンポジウム3回、事業所見学会4回、クオリティトーク6回)、中部支部(研究発表会、シンポジウム、講演会各1回、事業所見学会2 回)、関西支部(研究発表会、シンポジウム、講演会各1回、事業所見学会2回、 QCサロン5回)とほぼ例年通りの事業を開催しましたが、本部で企画した講演会については、講演者の体調のため中止せざるを得なくなりました。講演者の体調も回復していらっしゃいますので、時期をみて、再度企画したいと思います。また、今年度は昨年度に引き続きJSQC規格の講習会を2回実施しました。
 支部行事は基本的 に各支部の主体性にお任せしており、地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき、各々好評価をいただいております。
 今年度も多数の会員に参加いただき、心より御礼申し上げます。次年度以降もよろしくお願いします。以下簡単に 主な本部行事の状況を説明いたします。
(1) 年次大会、研究発表会
 第42回年次大会は、昨年10月26日と27日、石川県のコマツ研修所にて開催し、研究発表49件、参加者165名でした。
 第101回研究発表会は、本年5月25日と26日に日本科学技術連盟東高円寺ビルにおいて開催し、一般発表45 件、参加者154名でした。チュートリアルは次の2件の講演をお願いし、参加者83名と盛況でした。
  チュートリアル 東京大学 久米 均氏 日本の製造業−これからの経営と品質−
サンデン梶@牛久保雅美氏 サンデンの品質経営
(2) シンポジウム
 以下の3回を開催しました。参加人数は合計281名でした。
・第144回シンポジウム
  日  程: 4月9日13:00〜17:30(会場:日本科学技術連盟東高円寺ビル)
  テーマ: 『統計・データの質マネジメント ―ビッグデータ時代に問われる情報収集の質とマネジメント―』
・第146回シンポジウム
  日  程: 5月17日10:00〜17:30(会場:日本科学技術連盟本部)
  テーマ: 『震災時対応の成功事例から学ぶ―未然防止の知恵―』
・第148回シンポジウム
  日  程: 7月20日9:55〜17:00(会場:日本科学技術連盟本部)
  テーマ: 『ISO9001第三者審査の質向上と組織での有効な推進方法』
(3) 事業所見学会
 年次大会と同時開催の2か所を合わせ、合計3回の事業所見学会を実施しました。いずれもユニークで優れた活動を展開する事業所を見せていただき、参加者から高い評価をいただきました。
  ・第42回年次大会:A:コマツ粟津工場、B:渋谷工業竃{社工場[10月26日]
・第1回(第363回):キリン横浜ビアビレッジ[6月12日]
・第2回(第364回):米海軍横須賀基地 FLOY及SRF-JRMC[6月27日]
(4) クオリティトーク
 20〜30人の少人数の参加者がくつろいだサロン的雰囲気で一流講師の講演を聞き、活発なディスカッションの場を提供する本部独自のユニークで贅沢な行事です。42年度も、以下の多彩なゲストとテーマで5回開催し、好評をいただきました。
  ・第1回(第81回): 東京大学 水流聡子氏[12月21日]
『PCAPS:顧客が設計する自分の診療計画』
  ・第2回(第82回): 山梨大学 新藤久和氏[3月12日]
『組織の改革とTQM:経営側の視点から』
  ・第3回(第83回): ボッシュ梶@大島恵氏、日産自動車梶@奈良敢也氏[6月17日]
『Quick DRによる未然防止−短時間で効果的に問題を発見・解決する手法−』
  ・第4回(第84回): 東京理科大学 鈴木知道氏[7月22日]
『競技の統計学 〜一対比較法の応用〜』
  ・第5回(第85回): 玉川大学 永井一志氏[9月18日]
『マーケット・イン思考再考 ―QFDの視点から―』
(5) ヤングサマーセミナー
 2013年9月7、8日の日程で、茨城県鹿嶋市にある新日鉄住金 鹿島人材育成センターにて「統計解析」をテーマに実施し、大学院生、大学生を含め、31名の参加がありました。
(6) 講習会
 昨年のJSQC規格「品質管理用語」の発行にともなう同規格の講習会の2回目と、JSQC規格「日常管理の指針」の発行に伴う講習会を開催しました。今後各支部などでの開催も検討しています。
  ・第2回JSQC規格 「品質管理用語」講習会[5月23]
『用語の定義を通して品質管理の本質を学ぶ』
  ・第1回JSQC規格 「日常管理の指針」講習会[9月18]
『日常管理の本質を学ぶ』

4.中部支部(支部長:水嶋 敏夫)

(1) 研究会活動
1) 東海地区 若手研究会[名古屋工業大学 仁科健氏主催](計画6回/実績6回)
2) 北陸地区 若手研究会[金沢工業大学 石井和克氏主催](計画2回/実績2回)
  *研究発表会;(第1回)3月2日、発表5件 (第2回)8月1日、発表7件
3) 産学連携現地現物研究会[早稲田大学 永田教授主催 学側:名古屋工業大学
    仁科健氏 産側:トヨタ自動車 渡邉浩之氏](計画4回/実績4回)
4) 中部医療の質管理研究会[中部学院大学 國澤英雄氏主催
    医療側:岐阜赤十字病院 中村重徳氏](計画6回/実績6回)
  *各部会(看護・薬剤・事務)を主管とし、テーマに基づいた活動を展開[偶数月開催]
  *第7回中部医療の質管理研究会シンポジウム [12月2日 長良川国際会議場 中部支部後援]
(2) 研究発表会(第102回)
  日 程: 8月28日13:00〜17:00(場所:名古屋工業大学)[参加者76名]
  テーマ: 『「実践的Qの確保」の拡大・深化』
  発表(14件): 産業6件(品質工学活用による最適設計・最適生産条件の追及など)
大学3件(設計最適化のためのSQCの有用性の研究など)
産学連携3件(設計最適化のためのSQCの有用性、産学連携のマネジメント研究など)
医療2件(カンバンを使った医療管理の研究など)
(3) シンポジウム(第145回)
  日 程: 9月9日13:00〜17:30 (場所:刈谷市総合文化センター)[参加者143名]
  テーマ: 『顧客満足のための新たな時代の新たな商品・サービスとは
〜過去の常識にとらわれない商品・サービスの企画、顧客価値提供のあり方を考える〜』
 
  ・基調講演   ライフネット生命保険梶@出口冶明氏 ライフネット生命の起業物語
  ・事例講演   日本マクドナルド 飯澤祥久氏 マクドナルドの人材育成 
〜CS向上はESの向上から〜
潟cルタ製作所 鶴田昌宏氏 時代のトレンドをつかむ、アイデアと企画力で勝ち残る!
トヨタ車体梶@小野山利昭氏 超小型モビリティ「コムス」が創り出す新たな社会
  ・パネル討論会   パネルリーダー:出口冶明氏 
パネラー:飯澤祥久氏、鶴田昌宏氏、小野山利昭氏
(4) 講演会(第116回)
 
  日 程: 5月28日13:00〜16:40(場所:刈谷市総合文化センター) *参加者158名
  テーマ: 『グローバル競争を見据えた、新しい「質」へのアプローチ』
 
  ・講 演: 東京大学 吉川良三氏 日本のものづくり技術神話再考〜グローバル市場で選ばれるために〜
京都大学大学院 富田直秀氏 「質」とは何か〜医療技術開発を例として〜
(5) 事業所見学会
  第1回(第365回):トヨタ車体梶@いなべ工場[4月12日 参加者45名]
テーマ:『いなべ工場 品質向上への取組み』
  第2回(第368回):潟<Cドー 三好工場 [9月6日 参加者23名]
テーマ:『継続的改善の風土とデミング賞への挑戦〜デミング賞までの道のり〜』
(6) 幹事研修会
  第1回 3月22日:名古屋工業大学 仁科教授による勉強会〔これからの統計的工程管理〕
  第2回 5月17日:未来工業竃K問 「型破り経営」をテーマとした講演と工場見学
  第3回 7月17日:名古屋工業大学 大鑄教授による勉強会〔FTAと信頼性解析〕
(7) 役員会 第1回2012年11月2日、第2回2013年9月20日
(8) 協賛行事
第10回日本OR学会中部支部シンポジウム[9月20日;愛知県立大学サテライトキャンバス]
テーマ:『機械学習とデータマイニングによる知識発見』

5.関西支部(支部長:岡田 慎也)

(1) 事業所見学会
・第1回(第366回):NHK 大阪放送局[5月17日 参加者33名]
  テーマ: 『NHKにおける災害報道の品質〜大阪放送局の取組み〜』
    通常は見学できない報道フロア、ドラマスタジオ、放送機器などを見せていただくなど、アンケート結果も大変好評であった。
第2回(第369回):潟_イヘン 六甲事業所[9月3日 参加者25名]
  テーマ: 『アーク溶接ロボットの生産(ものづくり)と品質〜潟_イヘン 六甲事業所ならではのものづくり〜』
    アーク溶接ロボットの生産工程や検査ライン、ロボットのティーチングの実際のデモを見せていただき、アンケート結果も大変好評であった。
(2) 講演会(第117回)
  日 程: 5月27日13:30〜17:10(場所:中央電気倶楽部)[参加者96名]
  テーマ: 『世界にはばたく日本型新商品開発と技術開発の実践例』
 
  ・講 演: ダイキン工業梶@岡田慎也氏 日本生産にこだわった新商品開発の実践例
椛コ田製作所 吉川浩一氏 一輪車型ロボット「ムラタセイコちゃん○R」の開発
    企業、大学から幅広く申込があった。関西のものづくり企業の新商品開発と技術開発の実践例を講演いただき、アンケート結果も上々であった。
(3) シンポジウム(第147回)
  日 程: 7月23日13:00〜17:30(場所:大阪大学中之島センター)[参加者63名]
  テーマ: 『ビジネス,ヒット事業の作り方』
 
  ・講 演: 同志社大学大学院 藤原浩一氏 グローバル競争における競争優位性の実現方法:製品設計思想をどこに求めるか?
潟Lャリアファーム 松岡保昌氏 人と組織から考える、ヒット事業の作り方
  ・パネル討論:
パネルリーダー: 近畿大学 岩崎日出男氏
パネル: 藤原浩一氏、松岡保昌氏、
大阪市立大学大学院 太田雅晴氏
ダイキン工業梶@原田俊光氏
    “製品設計思想をどこに求めるか?”、“人と組織から考える”という異なる視点から、ヒット商品・事業の作り方について講演が行われ、パネルディスカッションでは講演内容を更に深化させる質疑や追加事例の紹介があり、多くの示唆に富む話を伺うことができた。
(4) 研究発表会(第103回)
  日 程: 9月13日9:30〜17:30(場所:大阪大学中之島センター)[参加者52名]
  特別講演: Goldratt Consulting Japan 飛田甲次郎氏 流れをつくる
発表(22件):研究15件、事例7件
    最優秀発表賞、優秀発表賞及び学生を対象とした優秀発表の表彰を行った。
(5) 研究活動報告
1) 統計的品質情報解析研究会
  「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を行った。
2) 科学的先手管理アプローチ研究部会
  マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのアプローチを体系化している。
3) 品質管理教育教材開発研究会
  学生が、モノづくりやそれを支える品質管理に対して興味が持てるように、学校・企業の教育分野で使える品質管理教育の教材を開発し、教育の仕方やマニュアルも併せて提案した。
(6) QCサロン
第1回(第90回): 流通科学大学 野口博司氏[2月20日 参加者16名]
『テーマ解決の道のりについて≪ピレネー・ストーリー≫』
第2回(第91回): 大和ハウス工業梶@本多正幸氏[4月17日 参加者25名]
『流れが品質を改善する』
第3回(第92回): ユニチカ  松本哲夫氏[6月12日 参加者24名]
『研究開発におけるチームマネジメント』
第4回(第93回): (独)製品評価技術基盤機構 弘田貴巳氏[8月7日 参加者14名] 『ISO 10377 製品安全ガイドライン』
第5回(第94回): 潟買@イナス 藤川泰彦 氏[10月23日(予定))
『京をはじめとした、クラウドコンピュータの産業への実利用方法』
(7) 合同役員会
2012年10月25日、12月19日、2013年2月20日、4月17日、6月12日、8月7日

6.論文誌編集委員会(委員長:鈴木 秀男)

 論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。
(1) ほぼ、毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が掲載の可否を判断してきました。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました。
(2) タイのバンコックで開催されるANQ 2013にあたり、国際委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。
1) JSQCから提出された全てのアブストラクト(全38本)に対する審査
2) フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3) 投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果、大幅に遅れるものはなくなりました。さらに迅速に審査が進むように、次年度以降に新たな対策を実施する必要があります。また、審査に関連することとして、論文審査を審査員に依頼する際に添付する「論文審査ガイドライン」を整備しました。
(4) 著者が投稿する際に利用できる投稿テンプレート(TeX暫定版)を作成しました。
(5) 表1に過去5年間(38年度〜42年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(37年度〜41年度)の投稿区分別採択数を示します。42年度は審査中のものがありますので、採択数は37年度から41年度を示しました。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。
 

表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
38年度 1 3 2 1 3 3 1 2 2 0 5 2 25
39年度 6 0 3 0 1 2 0 4 1 2 3 1 23
40年度 1 2 2 4 2 2 2 1 1 2 2 3 24
41年度 1 8 2 3 0 1 2 0 4 0 1 1 23
42年度 2 2 1 1 2 1 1 3 5 3 1 1 23

 

表2 過去5年間の投稿区分別採択数

   37年度 38年度 39年度 40年度 41年度 5年間合計 採択率
投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択
  27 8 25 8 23 11 24 11 24 10 123 48 0.390
報文 6 3 8 3 9 6 16 9 11 7 50 28 0.560
技術ノート 6 3 5 3 2 2 3 0 6 0 22 8 0.364
調査研究論文 4 2 6 2 6 1 2 0 1 0 19 5 0.263
応用研究論文 3 0 3 0 5 1 2 2 3 1 16 4 0.250
投稿論説 7 0 2 0 0 0 0 0 0 0 9 0 0.000
クオリティレポート 0 0 1 0 1 1 1 0 3 2 6 3 0.500
QCサロン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.000
レター 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0.000

7.学会誌編集委員会(委員長:田村 泰彦)

 第42年度では、Qの確保,Qの展開,Qの創造の学会中期計画の方針を踏まえ、産業界で課題となっている品質管理に関わる内容を取り上げ、特集を企画しました。また、前年度に設置した連載企画に新しいテーマを追加しました。
 研究紹介コーナ(若手研究者からの情報発信)も継続しました。本年度は特集、連載などの企画について、1回/2か月程度のペースで委員会を開催し、継続的に内容を検討しました。
 本年度品質誌に掲載された特集のテーマは、以下の通りです。
  ・Vol.42,No.4(2012年10月発行): 『我が国のソフトウェア品質技術の潮流』
  ・Vol.43,No.1(2013年01月発行): 『医療質安全保証に向けた臨床医たちの視座』
  ・Vol.43,No.2(2013年04月発行): 『災害リスクマネジメントの理論と実践』
  ・Vol.43,No.3(2013年07月発行): 『有効な審査技術とQMSの能力向上のためのツール』
  また、Vol.43,No3から以下のテーマについて連載を開始しました。
  ・連載:変化の時代を生き残る中小・中堅企業の得意技を探る

8.広報委員会(委員長:大藤 正)

(1) 学会の目的が新たな方法論の研究開発と実践、それを支える専門家の育成であることを考慮し、会員および非会員の学会活動へのより深い「参画」を促進することをねらいとした広報活動を行うべく努力しました。
(2) 対象とするのが技術系の人であることを考慮し、IT媒体(HPやe-mailなど)を活用した広報活動を行ないました。具体的にはWebサイトのアクセス数の増大をはかるために、閲覧性を高めるべく内容の整理などを行い、品質管理一般および学会の最新動向を迅速に掲載するよう努めました。
(3) 会員にとって学会で行っている内容がわかりにくいという認識にたち、また中長期の取り組みが重要となることを考慮し、学会の活動の「全体的なマップ」や「相互関係」を明確にすべく、広報委員会で検討を重ねました。

9.会員サービス委員会(委員長:渡辺 喜道)

 会員数(かっこ内は昨年度末比)は、現在、名誉会員27名(3名減)、正会員2310名(72名減)、準会員72名(27名減)、賛助会員164社217口(7社5口増)、公共会員20口(2口減)となっています。また、新設された職域会員の数は8名となっています。
 相変わらず長引く経済不況などによる経費削減の波を受け、今年度も正会員の退会の残念な動きが続いています。新たな会員の資格である職域会員を新設し、歯止めをかけるような活動をしていますが、会員の減少には歯止めが掛っていません。このままの状態が継続すると、学会の経営が危うくなりかねない危機的状況となっています。このため、今後を見据えて、以下の施策を検討してきました。
(1) 職域会員の宣伝
 主に企業に所属する方に適用する会員資格で、職場の職域に対して会員の資格を提供する制度として昨年度に新設されました。この制度を宣伝し、今年は8名の会員を確保できました。今後は、さらに会員増加につながる活動を実施することが大切と思います。
(2) QC検定と連動した資格制度の導入
 QC検定合格者が社会的地位を誇れる「JSQC認定 上級品質技術者」及び「JSQC認定 品質技術者」の資格制度を昨年度に確立しました。今年は、7名の上級品質技術者、4名の品質技術者の認定を行い、認定証を発行いたしました。
(3) フェロー会員(仮称)制度
 永年正会員として活躍して来られ、高い実績を持つ方々を「フェロー会員(仮称)」として優遇する制度について、継続的に検討中です。
(4) 賛助会員にとってのメリットを増強
 賛助会員の特典を増やし、入会のメリットをわかりやすく説明できるような項目を検討中です。例えば、正会員と同様に研究発表や品質誌への投稿、研究会への参加が可能となる、などです。
(5) 入会パンフレットの刷新
 入会のお薦めやパンフレットの更新版を作成いたしました。また、学会のことをうまく説明できるための要員を確保する活動を開始しました。

10.規定委員会(委員長:平岡 靖敏)

 学会活動の拡大及び役員・代議員の選出方法の変更に合わせて、関係する委員会と協力して、新規内規案2件の作成を行いました。
(1) 品質技術者資格制度内規
 資格認定規程により定められた品質技術者(品質技術に関する高度な能力を備え,品質技術向上に努めている学会員)の認定手続きを定める内規案の作成を行いました。
(2) 代議員・役員選挙に関わる理事会の運営内規
 一般社団法人への移行に伴い、代議員・役員選出に際して理事会の役割が大幅に変更となったため、運営方法を見直して内規案を作成しました。

11.研究開発委員会(委員長:永田 靖)

 今年度は、既存の「テクノメトリックス研究会」、「信頼性・安全性計画研究会」、「医療経営の総合的「質」研究会」、「サービス産業における顧客価値創造研究会」、「統計・データの質マネジメント研究会」、「先進的生産方式に対する工程管理研究会」の6計画研究会のうち、「統計・データの質マネジメント研究会」がその目標を達成して終了しました。一方で、「グローバル品質管理教育研究会」を新たに立ち上げました。いずれの研究会も、毎月ないしは4半期に1回程度の割合で開催し、活発な活動を展開しました。さらに、上記7つの計画研究会に2つの特別委員会と3つの部会を加えて、各主査が一同に集まり、研究方針・研究成果・将来への展望を公開し、討論するワークショップを開催し、品質管理学会の研究課題の確認と研究の新たな分野や方向性を検討しました。

(1) テクノメトリックス研究会(主査:永田 靖 20名)
   テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために、手法、考え方、事例などについて幅広い視点から研究しています。研究会はおおむね3ヶ月に1度の開催で、メンバーが上記の手法、考え方、事例などについて紹介し、メンバー間での議論により研究成果を練り上げています。議論したテーマは因果推論とタグチメソッドを中心として,多岐にわたっています。これらの成果は、研究発表会や品質誌などで報告されています。
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:永井 庸次 18名)
  1) 月1回定期的に研究会開催(日本科学技術連盟本部、練馬総合病院)
   
メンバー: 飯田、永井、山岡、橋本、槇、光藤、久米、中條、赤尾、小浦、中村、栗原、尾形、小平、山田、日高、上村等
    「医療ITと患者安全」に関する検討、翻訳読み合わせ
    欧米の諸事情(前原委員、飯田委員)
    医療ITの不具合事例(医療機能評価機構、PMDA安全性情報、Health IT Hazard Manager)の検討
    医療アラームに関する検討
    実態調査(練馬総合病院、ひたちなか総合病院、久米委員)
    アンケート調査内容討議(中條委員)
    米国アラームサミットの実情(永井委員)
    欧米の諸事情(前原委員、日本光電越後氏)
    我が国の医療機器警報装置に関する法規制、JIS副通則(同上)
  2) 学会発表・講演
    日本品質管理学会研究発表会・年次大会(5月、10月)
    全日本病院学会(9月)
    医療の質・安全学会(11月)
    医療マネジメント学会(10月)
  3) 講習会・セミナー
    全日本病院協会医療安全管理者養成講座講習会(7月)
    富山県医師会医療安全セミナー(8月)
    医療機能評価機構業務工程図研修会(12月)
    医療機能評価機構クオリティインディケータフォーラム(1月)
    医療機能評価機構クオリティマネージャー養成セミナー(3月)
   
(3) 信頼性・安全性計画研究会(主査:田中 健次 18名)
 第一期(36-38年度)と第二期(第39-41年度)の成果に基づき、下記の項目に関して、分野ごとのベストプラクティスの収集と解析、ケーススタディ、委員の研究成果の報告、委員間の情報共有と討議を行いました。大震災における成功事例に関しては、5月17日にシンポジウムを開催し、直前の数回の研究会にて徹底討論した論点の解説と事例発表をペアにした新しい枠組みでの研究報告を試みました。その結果、参加者に論点が伝わり、フロアとの議論が盛り上がりました。同時に、前期主査の伊藤氏を中心に、それらの内容を品質誌の特集号にて公表する準備を進めました。後半は、最近、社会で発生している多くの問題について議論し、今後の研究会で議論を進める方向性を絞りました。
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術
    新規トラブル未然防止法の高度化
    次世代品質・信頼性情報システムの具体化と深化
    ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
    品質と安全を重視する組織文化の確立
    ユーザ・メーカ・社会行政の三者の協業による信頼性・安全性確保のための方法論
    信頼性・安全性作りこみの視点からの管理職教育と品質管理教育の高度化
  3) 研究成果のとりまとめと情報発信
    研究会での成果のまとめ
    学術講演会、シンポジウム等での積極的な情報発信
第146回シンポジウム: 『震災時対応の成功事例から学ぶ〜未然防止の知恵〜』(5月17日 日本科学技術連盟本部)
       
(4) サービス産業における顧客価値創造研究会(主査:石川 朋雄 15名)
 サービス産業(家電メーカーにおけるトータルサービス)B社との共同研究を進め、9月10月には同社の問題点と課題の抽出、今年度の進め方について討議しました。12月〜3月にはトータルサービスの仮説案の発掘を研究会メンバーとB社担当者を中心に行いました。4月〜9月にはトータルサービス仮説案の検討と精査を精査した仮説案と調査設計を行い、ターゲットユーザーに500名のインターネット調査を実施し、仮説案の評価を行いました。
       
(5) 統計・データの質マネジメント研究会(主査:椿 広計 20名)
 2013年4月に最終報告シンポジウムを開催し、公的統計、マーケティング、医薬品開発分野のデータ質マネジメントの現状と今後について報告を行い200名以上の参加がありました。
 その後、7月に最終報告の方向性を議論する研究会最終回を開催し、主要な活動は終了しました。これまでの研究を基に、「公的統計に対するISO20252を適用する指針」をJSQC規格とすることし、JSQC標準委員会に規格作成を2013年9月に申請しました。このほか、海外の公的統計の質マネジメント状況のとりまとめ、加工統計に対する不確かさガイドライン適用事例の開発、医薬品データマネジメントプロセスなどに関する意見交換を研究会の中で行いました。本研究会の報告書は2014年3月ころまでに作成することにしています。
   
(6) 先進的生産方式に対する工程管理研究会(主査:安井 清一 9名)
 本研究会は2012年6月から活動を開始し、ほぼ月1回のペースで会合を開催し、8回の会合を開催しました。研究会の目的は、高度化生産ラインにおいて、よく知られている工程管理の方法では管理が難しい問題について、統計的工程管理の方法を中心に、それに付随する事柄まで視野に含めて、品質管理における工程管理の体系を研究することです。第42年度は以下に示す3つのテーマについて検討し、研究会発表会および品質誌において報告しました。
  1) 相似形をモニタリングするための管理図の開発
 これは研究会のメンバーによる事例をベースに、これまでにない状況について新たな統計的工程管理を研究したものです。相似形であれば問題なく、非相似形を検出することが目的の管理図を提案しました。
  2) Webアンケート調査による工程管理の現状把握とこれからの課題の考察
 2013年2月28日から3月15日まで、品質管理学会メーリングリスト登録者を対象に、Webにて工程管理についてのアンケートを実施しました。品質管理の標準的なテキストでは対応が困難であった経験をご回答いただき、整理し、今後の課題をまとめました。
  3) 回帰残差に基づく統計的工程管理の整理
 第41年度での議論の結果、回帰残差を用いて工程管理することは実務上において重要な意味を持つことが示唆され、普及まで含めた研究活動の重要性を確認しました。過去の研究会、文献等を調査し、事例をまとめました。
     
(7) グローバル品質教育研究会(主査:大滝 厚 11名)
 本研究会は、産学連携WGが第40年度に実施した賛助会員会社に対するアンケート結果を参考に、強い要望があったグローバル化に対応した品質管理教育を実践できる人財開発のためのプログラムを計画期間2年から3年かけて開発することをねらいに42年度からスタートしました。その最終目標は、「品質管理教育プログラムの標準化」に置いています。具体的には、参加企業のケーススタディ及びアンケートを通して、これまでの品質管理教育の問題点と求められている教育担当者と教育対象者の人材像(コンピテンシー)を分析した上で、グローバル化する品質管理教育プログラムの一般要求事項と個々の企業が求める要求事項に分け、前者の一般要求事項を中心にJSQC標準を開発します。第42年度(初年度)は、以下のことを実施しました。
  1) ケーススタディ(4件)による教育プログラムに求められる要求事項の研究とアンケート調査についての検討
 海外品質教育経緯マトリックスを作成し、研究会に参画した賛助会員会社4社の海外進出初期、発展期、定着期にどのような品質管理教育を階層別に実施したか、どのような成果と問題があったかを紹介していただき検討しました。これらの事例を参考にして、賛助会員企業へのアンケート質問内容の枠組みを検討し、現在実施に向けて準備中です。
  2) ゲストスピーカーによる講演(2件)
 1件は、発展途上国の産業発展の礎となる技術者・経営者を受け入れ永年研修事業を行っている団体、他の1件は、インター/イントラネットを活用した生産系の技能教育の事例です。前者からは、学界と研修関係機関との連携の強化策の検討の必要性が、後者からは、e-learning/e-training教材開発の方向性が示唆されました。
  3) 個人研究発表
 社内外の品質管理教育に造詣の深いメンバーから、教育を仕掛ける側と受ける側の狭間に生じるギャップを整理しその処方箋の提示があり、海外の現地企業における品質管理教育の方法と教材開発の方向性が示唆されました。

12.国際委員会(委員長:山田 秀)

 第42年度の国際委員会は、主に以下の事業を実施しました。
(1) ANQ (Asian Network for Quality)2013年バンコク大会への協力
 2013年10月14日から17日に、タイのバンコクでANQ 2013大会が開催されます。これは、ANQ理事組織であるタイのSQATが主催します。大会開催の支援やアドバイスをJSQCとして継続的に行いました。日本からの参加者についても、ANQでのリーダーシップを発揮できるよう、引き続き多くの参加者を募り、その結果として38件の発表が行われます。また、若手研究者の育成を目指した、若手研究者への旅費支援援助を実施しました。
(2) ANQの安定的発展のための調整
 2013年3月に、韓国で理事会が開催されました。また(1)のANQ総会と合わせ、ANQ理事会が予定されています。JSQCとしてANQの発展に積極的に関与しています。ANQ理事会に先立って行われるANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会)にも委員を派遣し、良い方向に導けるよう議論をリードしました。また、ARE-QP(Asian Recognition for Excellence in Quality Practice)では、JSQCが議長を務めています。ANQの参加組織も着実に増加し、アジア以外の組織も参加する情勢にあり、その中でリーダーシップを発揮しています。
(3) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討しました。その結果、ANQ関係団体と交流し良い関係を作りはじめました。今後はこれをさらに発展させ、ANQ関係団体以外に対しても若手会員が交流する際の支援ができるようなプログラムを検討します。

13.標準委員会(委員長:平林 良人)

 2013年5月に、審議委員会での議論、パブリックコメントの募集などを経て、学会規格2番目のJSQC規格「日常管理の指針」を制定、発行しました。同じく2013年5月に、事業委員会と連携し、第2回JSQC規格「品質管理用語」講習会を「用語の定義を通して品質管理の本質を学ぶ」と銘打って行いました。「日常管理の指針」についても事業委員会と連携し、講習会を計画し9月18日に実施しました。
 JSQC規格については、今後次のような規格の制定を目指して議論が進んでいます。
(1) 小集団改善活動の指針
 小集団改善活動に関わる重要な概念および推進方法に関して、学会として統一的な見解を示し、TQMのさらなる普及・発展のための基盤を提供することを目的とする。
(2) プロセス保証の指針
 製造、サービス提供を中心に標準化されたプロセスを順守することで、製品・サービスの品質が保証されるにはどのような活動(工程能力調査、QAネットワークなど)をしなければならないかについての指針を作成する。
(3) ISO20252を公的統計の質の保証に利用する指針
 政府が、公的統計調査のプロセス保証をすすめる方針を固めつつあるのに対応し、ISO20252:2012「市場・世論・社会調査−用語及びサービス要求事項」をどのように適用するかについての指針を作成する。

14.FMES関連、横幹連合関連(棟近 雅彦)

 42年度も引き続き、FMES代表者会議、FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画し、経営工学関連学会との交流、JABEEの審査活動、FMESシンポジウム等の活動に、中核団体として協力してきました。FMES代表者会議は、2012年10月と2013年4月に開催されました。また、FMES事務局は、予定通りOR学会から経営工学会に引き継がれました。FMESシンポジウムは、2013年7月に研究・技術計画学会担当で「自己・事業・企業の変革による新領域への挑戦 ─イノベーションの実現に向けて」というテーマで開催されました。FMES/JABEE委員会とFMES代表者会議では、JABEEの情報専門系学士課程審査の件やJABEEの今後について,主に議論されました。横幹連合に関しては、これまでの活動を継続し、特に積極的な参画には至りませんでした。

15.研究助成特別委員会(委員長:國澤 英雄)

 本事業は学会創立30周年記念事業として第31年度より開始されたものです。助成金額は1件5万円で4件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です。今年度の応募者は5名でした。応募者から提出された申請書(研究課題、研究目的、研究実施内容など)を委員6名により審査し、4名を選考しました。

16.QC相談室特別委員会(委員長:橋本 紀子)

 第42年度も、学会ホームページ上で、相談室の運営を行いました。今年度も、例年と同じくレベルの高い質問が寄せられ、ボランティアによる回答がなされ、一定数の閲覧者を獲得しました。
 今年度も、以前に生じた「あらし」の問題は生じませんでした。再開設以降行っている、1)トップページから直接相談室をリンクせず、相談室に関する説明ページを経由、2)質問、回答の際は、相談室に掲載されているパスワードの入力が必要、という一手間の効果が続いていると思われます。
 質問件数は、残念ながら第38年度をピークに減少していましたが、第41年度は増加に転じることができました(第40年度が底)。本年度はさらなる質問件数増をめざしましたが、第41年度とほぼ同水準の達成となりました。

17.安全・安心社会技術連携特別委員会(委員長:伊藤 誠)

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム研究部会/社会・環境部会)等との共催の「原子力の安全管理と社会環境に関するワークショップ」に継続して参画し,ワークショップを2回開催しました。また、自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力しています。昨年10月に発行されたISO 39001の日本語訳の策定に協力し、翻訳と解説をまとめた書籍『ISO 39001:2012 道路交通安全マネジメントシステム 日本語版と解説』が本年10月に日本規格協会から発行されました。
 また,運輸安全の専門家と特別委員会の委員による検討会の結果を踏まえ、運輸安全確保のために品質管理の視点から取り組むべき課題を整理しました。この結果については、5月の研究発表会で発表を行いました。

18.JSQC選書特別委員会(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として、品質マネジメントに関わる、基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました。
 同委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、結果的には、2013年5月中旬に第7弾として、(第19巻)『信頼性・安全性の確保と未然防止』、2013年6月中旬に第8弾として、(第20巻)『情報品質 −データの有効活用が企業価値を高める−』、2013年9月上旬に第9弾として、(第21巻)『低炭素社会構築における企業・産業界の役割』を発行しました(出版社:日本規格協会)。

19.TQE(問題解決力向上のための初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木和幸)

 初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、41年度の活動を継承し、以下の取組みを行いました。
(1) 産官学協力の下に JSQC主催第3回科学技術教育フォーラム「科学技術立国を支える問題解決教育−教科横断的な問題解決能力の育成とその指導力の開発−」を2012年12月26日(水)に成城大学にて開催しました。JSQC/中央大学 中條武志氏、日本情報科教育学会/電気通信大学 岡本敏雄氏、文部科学省初等中等教育局 長尾篤志氏をはじめとする教科調査官・総括研究官・指導主事ならびに総務省、NHKなどより約200名が参加し初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、情報共有と討議を行いました。
(2) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、統計グラフ全国コンクールにおける問題解決力向上に寄与する作品に対し、40年度に新たに設けた日本品質管理学会賞の第2回目授賞作品として東京大学教育学部附属中等教育学校1年 山川 哲哉さんを選出し、2012年11月16日に表彰を行いました。また、この作品を通して問題解決教育に関する普及啓蒙活動を展開しました。
(3) 40年度に提唱した 初等中等教育における問題解決の基本3ステップ、
1) データにより現象を正しくとらえる
2) 現象の因果・メカニズムを究める
3) 対策を実施する
を普及すべく、引き続きJSQC HPへのWEB公開を行い、また、このWEBを通して統計グラフ全国コンクールへの問題解決への取り組み増加をはかりました。
(4) 初等中等教育への問題解決力育成支援の一環として、教師自らが問題解決プロセスを修得することを目的とし、自らがデータを取り、主体的に問題解決を行うためのプログラムを富士ゼロックス 鈴木洋司氏より提供頂き、サマーセミナーを電気通信大学にて開催しました。文科省の教科調査官をはじめとする産・官・学より30名が参加し、問題解決プロセスを修得するためのグループワークを行ったほか、情報共有と討議を行いました。
(5) 第4回科学技術教育フォーラムをJSQC第43年度に開催すべく議論と企画検討を行いました。
(6) TQEの4年以上にわたる全活動を示すTQEニュースを本学会HPに掲載し、初等中等における問題解決力向上への啓蒙・普及を図っています。

20.部会

(1) ソフトウェア部会(部会長:渡辺 喜道 79名)
 ここ数年継続して議論している、ソフトウェア開発のノウハウ集を作成する会合を定期的に開催しました。過去のソフトウェア開発の経験から有用であった知識の収集、分類を行いました。今年度は、今まで抽出した知識を形式知化する活動とその知識を読みやすい電子書物にする活動を行いました。また、整理した知識の一部を品質誌Vol. 42, No.4, pp.63-69(特集『我が国のソフトウェア品質技術の潮流』物語形式による教訓の蓄積)で公開しました。さらに、この活動の集大成として、部会で得られた成果を基に、シンポジウムを開催する計画を立てました。2015年1月31日(金)に実施する予定です。
 また、他団体との連携も、昨年度と同様に行い、各種行事の後援などを行いました。
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会(部会長:福丸 典芳 158名)
 41年度から引き続き次の7つの研究テーマに関して1回/月の頻度で第4期研究活動を行いました。
  ・WG1: 適合性を証明する審査の研究2、マネジメントシステム共通テキストの研究
−組織の視点から考える−
  ・WG2: 第3期のWG1の研究成果「適合性を証明する審査」の検証 完了済み
  ・WG3: ビジネスプロセスにおけるQMSの位置付け −持続的成功型新QMS−
  ・WG4: 会社を強くする「自己適合宣言」の研究
−形骸化ISOから、儲けるISOへの革新−
  ・WG5: 次世代対応の第二者監査技法の研究 −第二者監査のガイドライン−
  ・WG6: 中小企業経営者が使いたくなるISO9001推進の研究−QMS運営管理のためのガイドライン−
  ・WG7: 有効性を高める審査活動のための審査技術の標準化
−審査技術基本ガイドブック−
 研究成果の経過報告として次に示す機会で発表を行い、参加者から多くのご意見をいただきました。また、研究活動状況を品質誌の特集で報告しました。
 
第148回シンポジウムの開催(2013年7月)
品質誌Vol.43, No.3, 特集『マネジメントシステムの審査活動及び組織での運営管理上の課題に関する解決法』
   
(3) 医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 167名)
 今年度の研究活動としては、従来から引き続き、厚生労働科学研究費、文部科学研究費の研究グループ、およびQMS-H研究会と共同しながら、患者状態適応型パス(PCAPS)、医療の質マネジメントシステム等について研究してきました。
 これらの研究成果の公開の一環として、2013年3月に、患者状態適応型パスの研究班、QMS-H研究会との共催で、「社会技術としての医療の基盤構築」と題するシンポジウムを開催しました。大変多くの方が参加し、活発な議論が行われました。また、2013年9月には、科研費研究グループとの共催で、「PCAPSの実装と臨床分析」と題してPCAPS中間成果報告シンポジウムを開催しました。研究発表も、JSQCはもちろん、医療の質・安全学会、日本医療・病院管理学会、ANQ、QMOD等で、部会員の研究発表を行っています。さらに、研究成果を広めるための出版を企画しました。
 教育・啓発活動については、従来から開催してきた「医療の質マネジメント基礎講座」の事務局を潟eクノファに移管して、JSQC主催のセミナーとして2年目の講座を開講することができました。昨年度から、厚生労働省より示された「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」に準拠した内容の、医療安全管理者養成研修として厚生労働省に確認され、全日程を修了した方は、医療安全管理者としての要件を満たすことになりました。この要件を満たした方が、30名弱修了しました。全14回の講座を通じて、昨年度より1講座あたり約10名増加しており、延べ800名以上の方が受講しました。基礎講座のカリキュラムを改善するための、講師会の立ち上げなども行いました。このセミナーを受講するために部会員に申請する方もいますが、部会員数としては横ばいであり、引き続き部会員増加に向けて努力していきます。