社団法人日本品質管理学会
第40年度 自 2010年(平成22年)10月 1日
至 2011年(平成23年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:鈴木 和幸)

 当学会が設立40周年を迎えた本年3月11日に未曾有の東日本大震災が発生しました。品質に関連し当学会HPに復旧支援のための情報サイトを即立ち上げ、支援MAP等による情報提供・震災支援懇談会の開催・安全確保に向けた7つの提言をまとめました。
 本年度は第2期中期計画の最終年にあたり、中期計画の「Qの確保」、「Qの展開」、「Qの創造」と「共通領域の推進」の4本柱を継承し、これらを総括すると共に更なる充実発展を図るべく運営しました。これらの4本柱の主な活動と総括は次の通りです。
(1) 「Qの確保」では、産学連携の更なる強化を図るため、協同研究テーマ一覧表の作成と周知、賛助会員へのアンケート調査等、ニーズとシーズの明確化と情報交換に努めました。信頼性・安全性計画研究会は、災害リスクへの備えという視点を重視し、リスクマネジメントのフレームワークの再構築、ベストプラクティスの調査分析を行いました。統計・データの質マネジメント計画研究会では、ISO20252に基づく市場調査サービスの品質保証、公的統計・新医薬品開発分野の品質マネジメントについて検討しました。両研究会の成果は10月の年次大会にて発表されます。
(2) 「Qの展開」では、当学会は原子力特別委員会を設け2007年より関連学会と「原子力発電の安全管理と社会環境に関するワークショップ」を定期的に開催し、安全・安心への発信を行って参りましたが、この度の震災を受けて今後の更なる活動を検討中です。医療の質・安全部会では、患者状態適応型パス(PCAPS)、医療の質マネジメントシステムを中心に研究し、その成果を研究発表会等にて発信しました。初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、TQE特別委員会は初等中等向け問題解決ステップの検討とその普及をWEB・県庁訪問活動を通して行い、また、平成23年度より統計グラフ全国コンクールに日本品質管理学会賞を制定し問題解決力向上に努めました。この結果、東京都グラフコンクール入賞作品44点中、7点が問題解決の作品となりました。運輸安全特別委員会ではISO 39001「道路安全マネジメントシステム−要求事項と使用のための指針−」の国内審議委員会(自動車事故対策機構)などへの参画・協力を行うとともに、品質管理分野から研究すべき課題の検討を開始しました。
(3) 「Qの創造」では、サービス産業における顧客価値創造研究会を中心に活動を行い、G社との共同研究を開始しました。また、新サービスのための仮説発掘調査を設計し、実査を行いました。
(4) 「共通領域」では、設立40周年記念シンポジウムを開催(2011年5月27日)し、 記念誌「あゆみ」を作成致しました。また、一般社団法人への移行に向けて、定款変更、公益目的支出計画の作成など、内閣府への移行認可申請準備を完了しました。移行認可の決定は41年度、登記の時期は42年度になる見込みです。一方、前年39年度の会員満足度調査の分析をもとに、海外学術誌掲載の論文紹介コーナーを品質誌に設けました。また、賛助会員へのサービス向上策の検討、会員情報データベースの構築を行いました。さらに、昨年度の「新版品質保証ガイドブック」刊行に続き、「日本の品質を論ずるための品質管理用語Part 2」をはじめとするJSQC選書を累計16冊発刊するとともに、JSQC規格第一号となる「品質管理用語」発行準備を完了しました。また、ANQベトナム大会開催への支援を行い大会の成功に役割を果たしました。なお、若手人材育成の為に本大会での発表支援とともに、さらに、本年度よりJSQC Activity Acknowledgment賞を創設しました。
以下に上記の詳細を記します。

2.総合企画委員会(委員長:鈴木 和幸)

 40年度は第2期中期計画の最終年にあたり、中期計画で策定した目標達成のための取組みが計画通りに進展するように関連委員会や支部と連携しながら推進しました。主な活動事項は下記の通りです。
(1) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、日本品質管理学会賞を制定し平成23年度より統計グラフ全国コンクールにおいて表彰することになりました。さらに、TQE特別委員会を中心に、問題解決事例の作成とWEBへの公開などを行い、教科書・指導書への統計的問題解決法の導入に向けた活動を押し進めました。
(2) 東日本大震災(平成23年3月11日)に対する復興支援の取り組みとして、品質関連支援MAPを作成、支援情報のWEBサイトを開設すると共に、応用統計学会と共催で震災支援懇談会を開催し7つの提言をまとめました。
(3) JSQC40周年記念事業として、平成23年5月27日に40周年記念シンポジウムを開催、品質誌に「あゆみ」を掲載致しました。
(4) 産学連携活動推進WGを中心に、研究テーマ一覧表の作成やアンケート調査等によるニーズとシーズの明確化を図ると共に、産学連携の強化・拡大のための仕組みづくりを積極的に進めました。
(5) 会員情報データベースをWEB上に構築、会員のアクセスを可能にすることで、産学連携にも活用できるようにしました。
(6) 若手の人材育成を目指して研究支援を実施、JSQC Activity Acknowledgment賞を創設しました。
(7) ANQベトナム大会の成功ならびにJSQC国際活動の積極的推進として、若手へのANQ旅費支援を継続して実施しました。
(8) QC検定合格者に対してJSQC入会の誘致を行い、品質管理の啓蒙・普及に努めました。さらに、QC検定に合格した会員に対する「品質技術者」認定の制度導入を検討し基本指針を作成しました。
(9) 公益法人法改正への対応に向け、定款の変更案の作成および内規の修正を進め、経理処理を新・新会計基準に変更しました。40周年記念シンポジウムにて、法人化の方向を宣言し、第42年度より一般社団法人となるべく準備を整えました。

3.事業委員会(委員長:兼子 毅)

 第40年度事業は本部(年次大会、研究発表会、ヤングサマーセミナー各1回、シンポジウム2回、講演会1回、事業所見学会2回、クオリティパブ5回)、中部支部(研究発表会、シンポジウム各1回、事業所見学会2回)、関西支部(研究発表会1回、シンポジウム2回、事業所見学会2回)とほぼ例年通りの開催実績を上げています。しかしながら、東日本大震災の影響により、事業所見学会など、いくつかの行事が日程変更、あるいは中止となってしまいました。支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており、地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき、各々好評をいただいております。
 今年度も多数の会員に参加いただき、心より御礼申し上げます。次年度以降もよろしくお願いします。以下簡単に主な本部行事の状況を説明いたします。
(1) 年次大会、研究発表会
 第40回年次大会は昨年10月30日、東京都の成城大学にて開催し、研究発表60件、212名の参加者があり、昨年より発表件数は5件増でありました。
 第95回研究発表会は本年5月28日に東京都の電気通信大学において開催され、一般発表で59件(昨年54件)、参加者も210名と盛況でした。通常午前中に開催されるチュートリアルを、今年は「東日本大震災のチャリティー」とし、講演料、参加費などを日本赤十字社に寄付いたしました。皆様のご協力を感謝します。
(2) シンポジウム
 以下の2回を開催しました。参加人数は合計で308名と、回数は一回減少しましたが、参加人数は昨年度の水準を維持しました。
2011年5月27日 40周年記念シンポジウム
 「グローバリゼーションを見据えたものづくりと人づくり」(電気通信大学)
2011年7月2日 第135回シンポジウム
 「第三者審査の質と品質マネジメントシステムの向上」(日本科学技術連盟本部)
(3) 講演会
 以下の1回を開催し、参加人数は52名でした。次年度も、時宜を得た企画の実施を目指します。 
2010年10月15日 第106回講演会
 「インターナル・ブランディング:魅力的な製品を次々と生み出す組織の源として「究極的なありたい姿(ビジョン)」を何よりも大切にすべき時代の到来」
(4) 事業所見学会
 合計3回の事業所見学会を計画しましたが、東日本大震災の影響で、1件が中止、2件が日程変更となりました。いずれもユニークで優れた活動を展開する事業所を見せていただき、参加者から高い評価をいただきました。
2011年6月13日 (日程変更) 第352回 ニチレイフーズ 船橋工場
「ニチレイフーズの品質保証 原料のこだわり、工程のこだわり」
2011年5月18日 (中止) 東京電力 横浜火力発電所
2011年8月31日 第355回 日産自動車 追浜工場
「今こそものづくりの底力を ロボットを活用した生産ライン」
(5) クオリティパブ
 ほぼ隔月に開催し、20〜30人の少人数の参加者がくつろいだサロン的雰囲気で一流講師の講演を聞き、活発なディスカッションの場を提供する本部独自のユニークで贅沢な行事です。40年度も以下の多彩なゲストとテーマで5回開催し、好評をいただきました。なお、諸般の事情により、次年度以降は「クオリティートーク」と名称を変更して継続する予定です。
2010年11月29日 第72回 梅室 博行氏(東京工業大学)
「何が製品やサービスをアフェクティブにするのか」
2011年2月17日 第73回 大藤 正氏(玉川大学)
「品質機能展開(QFD)の真実」
2011年5月12日 第75回 吉野 睦氏(デンソー)
「設計最適化技術の最新動向 応答曲面法を中心として」
2011年6月29日 (日程変更) 第74回 中條 武志氏(中央大学)
「人に起因する事故・トラブルの未然防止とRCA」
2010年9月15日 第76回 鈴木 和幸氏(電気通信大学)
「源流管理による信頼性・安全性の確保とトラブルの未然防止」
(6) ヤングサマーセミナー
 2011年9月3、4日、千葉県勝浦市にある日本武道館研修センターにて「失敗学」をテーマに実施し、大学院生、大学生を含め、34名の参加がありました。

4.中部支部(支部長:山内 康人)

<事業内容>
(1) シンポジウム(第136回)
日 程: 7月13日13:00〜17:00、場所:刈谷市総合文化センター、参加者:237名(計画1回/実績1回)
テーマ; 「新たな時代を見据えた新たな成長力の確保」
〜『ありたい姿』が『なりたい姿』、その創造と実現に向けてのマネジメントを考える〜
  基調講演  リコージャパン :田村 均 氏;日本経済における『量』の変化と『質』の変化
  事例講演 ①マツダ 青山 裕大 氏;マツダの商品・技術戦略〜ありたい姿の実現に向けての取組み
      ②万協製薬(株) 松浦 信男 氏;成功する会社の心のスイッチの入れ方
      B鎌倉投信(株) 鎌田 恭幸 氏;鎌倉投信が目指す個人参加型の金融像と“いい会社”を観る視点
  パネル討論会 リーダー;田村 均 氏  パネラー;上記講演者各氏
(2) 講演会(第111回、支部30周年記念講演会)
日 程: 6月28日13:30〜16:35、場所:刈谷市総合文化センター、参加者:158名(計画1回/実績1回)
テーマ; 『新たな時代を見据えた新たな成長力の確保』
祝 辞; 日本品質管理学会 会長 鈴木 和幸 氏
講 演; 東京工業大学大学院 教授 長田 洋 氏;イノベーションによる顧客価値創造
トヨタ自動車(株) 常務役員 奥平 総一郎 氏;ハイブリッド車と日本創造
(3) 研究発表会(第96回)
日 程: 8月31日12:30〜17:50、場所:名古屋工業大学 参加者:128名](計画1回/実績1回)
テーマ; 「『実践的Qの確保』の普及・拡大」
発表(16件)内容
  産業界 - 8件(SQC活用による最適設計・最適生産条件の活用、スタッフの業務・教育改善など)
学 界 - 5件(日独国民性の差異に関する考察、HOPEにおける超設計など)
医 療 - 2件(オムツ使用患者の爽快感を目指して、医療管理システム構築に際しての問題解決)
産学連携 - 1件(設計制約の発見に関する提案)
(4) 事業所見学会 (計画2回/実績1回)
  1) 第1回:中止(東日本大震災の影響による)
  2) 第2回(第353回):アイホン(株) 豊田工場[日程:9月13日参加者17名]
テーマ; 「生産リードタイム短縮のための段取り時間短縮活動」
(5) 幹事研修会 (計画2回/実績2回)
  1) 第1回 4月22・23日;支部活動活性化の方策検討
  2) 第2回 8月24日  ;職場における品質管理活動の振り返り・討議
(6) 研究会活動報告(研究会活動から研究発表会のテーマを出せるように活動)
  1) 東海地区 若手研究会[名古屋工業大学;仁科教授主催](計画4回/実績5回)
  2) 北陸地区 若手研究会[金沢工業大学;石井教授主催]研究発表会(計画2回/実績2回)
研究発表会; (第1回)3月5日、発表件数9件 (第2回)8月4日、発表件数5件
  3) 産学連携現地現物研究会[早稲田大学;永田教授主催 学側;仁科教授 産側;渡邊技監](計画4回/実績4回)
  4) 中部医療の質管理研究会[朝日大学;國澤教授主催 医療側;松波総合病院 山北病院長](計画6回/実績6回)
各部会(看護・薬剤・事務)を主管とし、テーマに基づいた活動を展開[偶数月開催]
第5回中部医療の質管理研究会シンポジウム[日程;10年12月12日 中部支部後援で開催]
(7) その他
 
協賛行事: 第8回日本OR学会中部支部シンポジウム
[日程;9月9日 場所;愛知県立大学サテライトキャンパス]
テーマ;「身近にあるスケジューリング問題」

5.関西支部(支部長:岡原 邦明)

(1)
事業所見学会
第354回5月18日(水)ジェイテクト 奈良工場(奈良県橿原市)[参加者40名]
「ジェイテクトにおける品質管理の実践〜 システムサプライヤーのものづくりから学ぶ〜」
 40名を超える申込。製造現場での改善事例の説明をいただくなど、充実した見学会となりました。
第357回8月5日(金)積水ハウス総合住宅研究所 納得工房(京都府木津川市)[参加者29名]
「積水ハウスの納得の住まいづくりへの取り組み〜住まい品質の見える化と住まい体験の実践〜」
丁寧な対応で見学会を受入れていただき、アンケートも大変好評であり、充実した見学会となりました。
(2)
講演会
第110回6月6日(月)(会場:中央電気倶楽部)[参加者104名]
テーマ:「こだわりのモノづくり〜京都の企業に学ぶ〜」
 講演①: 『月桂冠 〜374年ものづくりへのこだわり〜』
川戸 章嗣 氏(月桂冠(株) 専務取締役 製造本部長)
 講演②: 『オムロン「ものづくり」へのこだわり〜』
石田 勉 氏(オムロン(株)グローバルプロセス革新本部生産プロセス革新センタ長)
 企業を中心に100名を超える申し込みがありました。「京都企業のこだわり」というテーマに対し、経営層、経営幹部の参加が従来より多く見られました。
(3)
シンポジウム
第133回 2010年10月8日(金)(会場:大阪大学中之島センター)[参加者134名]
〜(社)日本品質管理学会40周年〜 関西支部20周年記念シンポジウム
テーマ「環境を重視した品質経営戦略を考える」
  講演①: 稲垣 道世 氏(パナソニック(株)技術品質本部 理事)
  講演②: 中村 義和 氏(三菱自動車工業(株)常務執行役員 EVビジネス本部長)
  講演③: 楠  正吉 氏(積水ハウス(株)コーポレート・コミュニケーション部 次長(CSR担当))
パネル討論:司会:岩崎 日出男氏(近畿大学 教授)、メンバー:講演者3名
第138回 8月23日(火)(会場:中央電気倶楽部)[参加者138名]
テーマ「今、再び、日本品質・現場力を問う」
  講演①: 遠藤 功 氏(ローランド・ベルガー日本法人会長 早稲田大学大学院教授)
  講演②: 吉川 良三 氏(東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任研究員)
パネル討論:司会:今野 勤氏(神戸学院大学 教授)メンバー:講演者2名、岡田 慎也 氏(ダイキン工業(株)常務執行役員)
 多くの参加者を得て、“元気の出る”シンポジウムとなりました。多様な講演者・パネラーにより、多くの視座を得ることができました。
(4) 研究発表会
第97回 9月16日(金)(会場:大阪大学中之島センター) [参加者51名]
特別講演:  「企業間連携における内示情報を用いた生産計画モデル」上野 信行 氏(県立広島大学 教授)
 発表件数は22件(研究14件、事例8件)。最優秀賞、優秀発表賞及び学生を対象とした優秀発表の表彰を行いました。
(5) 研究活動報告
1) 統計的品質情報解析研究会
「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を行いました。
2) 科学的先手管理アプローチ研究部会
マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのア プローチを体系化しています。
3) 品質管理教育教材開発研究会
学生が、モノづくりやそれを支える品質管理に対して興味が持てるように、学校・企業の教育分野で使える品質管理教育の教材を開発し、教育の仕方やマニュアルも併せて提案しました。
(6) QCサロン
第80回 2月17日(木)鴫 和雄 氏(品質文化塾)[参加者18名]
  「品質とチームワーク」
第81回 4月14日(木)福田 正大 氏((財)計算科学振興財団)、松崎 太亮 氏(神戸市産業振興局)[参加者22名]
  『次世代スーパーコンピューター』とFOCUSのご紹介〜なぜ2番じゃダメなのか〜
「スパコンで加速する神戸バイオメディカルイノベーションクラスター」
第82回 6月 9日(木)小田 容三 氏(ニプロファーマ)[参加者 21名]
  「医薬品業界における製品認証および品質保証システム」
第83回 8月25日(金)赤木 文夫氏(パナソニック(株)アプライアンス・ウエルネスマーケティング本部)[参加者21名]
  「走破!東海道五十三次!! 〜充電式エボルタで、61日間完全走破〜」
(7) 合同役員会 2010年10月7日(木)、12月27日(月)、2011年2月17日(木)、4月14日(木)、6月9日(木)、8月25日(木)

6.論文誌編集委員会(委員長: 山田 秀)

 論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。
(1) 前年度方針を引き継ぎ、毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が主体的に掲載の可否を判断してきました。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました。
(2) ベトナムで開催されるANQ 2011にあたり、国際委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。
1)9thANQへJSQCから提出された全てのアブストラクト(全42本)に対する審査
2)フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3) 投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果、大幅に遅れるものはなくなりました。しかし、さらに迅速に審査が進むように、次年度以降に新たな対策を実施する必要があります。
(4) 読者にとって有益な論文補助情報をwebに掲載するべく、基本的な方針を定めました。この情報の例として、論文に掲載しきれない適用事例の詳細、事例における全データ、詳細な数理的な証明が挙げられます。
(5) 表1に過去5年間(36年度〜40年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(35年度〜39年度)の投稿区分別採択数を示します。40年度は審査中のものがありますので、採択数は35年度から39年度を示しました。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。
 

表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
36年度 4 1 1 1 4 3 4 4 8 1 4 2 37
37年度 1 1 3 1 2 0 6 5 3 0 2 3 27
38年度 1 3 2 0 4 3 1 2 2 0 4 0 22
39年度 4 5 2 1 0 2 1 4 1 2 3 0 25
40年度 1 2 2 4 2 2 2 1 1 2 2 3 24
 

表2 過去5年間の投稿区分別採択数

  35年度 36年度 37年度 38年度 39年度 5年間合計 採択率
  投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択
  27 8 37 14 27 8 26 8 23 11 140 49 0.350
報文 11 3 17 4 6 3 8 3 9 6 51 19 0.373
技術ノート 3 2 5 2 6 3 5 3 2 2 21 12 0.571
調査研究論文 7 1 2 1 4 2 8 2 6 1 27 7 0.259
応用研究論文 3 0 4 3 3 0 1 0 5 1 16 4 0.250
投稿論説 2 1 6 2 7 0 3 0 0 0 18 3 0.167
クオリティレポート 1 1 3 2 0 0 1 0 1 1 6 4 0.667
QCサロン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.000
レター 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0.000

7.学会誌編集委員会(委員長:福丸 典芳)

 学会での研究活動や現在の企業などで課題となっている品質管理に関わる内容を掲載し、学会員への情報提供のため、以下の方針に基づいた編集活動を行っています。
(1) 学会での研究結果の情報発信
(2) 企業等での特徴のある品質保証に関する活動の情報発信
(3)ISOマネジメントシステム規格の制定・改正動向の情報発信
(4)事業環境を考慮した組織の品質保証の課題についての取組みに関する情報発信
 これに基づき、第40年度はVol.40,No.4、Vol.41,No.1、Vol.41,No.2、及びVol.41,No.3までの特集を1回/2か月程度のペースで継続的に検討してきました。
 本年度品質誌に掲載された特集のテーマは、以下の通りです。
  Vol.40,No.4(2010年10月発行): 『製品・サービスの質を支える品質技術者の育成』
  Vol.41,No.1(2011年 1月発行): 『環境経営と品質』
  Vol.41,No.2(2011年 4月発行): 『審査登録制度の課題及びその解決法』
  Vol.41,No.3(2011年 7月発行): 『(社)日本品質管理学会のあゆみ(2001年から2010年まで)−グローバリゼーションを見据えたモノづくりと人づくり−』

8.広報委員会(委員長:西 康晴)

(1) 学会として東日本大震災の復旧・復興に寄与できるよう、学会長や理事会等と 協調しながら、学会員から広く復旧・復興のための情報や知見、技術を募るとともに「東日本大震災に関係する支援情報」というWebページを学会のWebサイト内に開設し広く公表いたしました。
(2) 講演会やシンポジウムの様子、研究会活動、部会、委員会活動などの議論や成果を積極的に掲載していくべく、新たなスキームの検討を行いました。資料の掲載や画像・映像配信を将来的に行っていくために、電子媒体への掲載許諾・配信許諾の枠組みを定めました。
(3) TQE特別委員会などを中心に、学会長のTV出演や新聞媒体への掲載などが増加しました。また企画記事の方向性も検討を始めました。

9.会員サービス委員会(委員長:神田 範明)

会員数について(かっこ内は昨年度末比)
 現在、名誉会員30名(2名増)、正会員2453名(98名減)、準会員93名(12名増)、賛助会員153社184口(6社1口減)、公共会員23口(1口減)。
経済不況や大震災による経費削減の波を受け、今年度も正会員や賛助会員退会(特に電力関係)の残念な動きが続いています。
ただ、退会のペースは減少しております。これは団塊世代の定年退職・役職離脱に伴う退会が終わり、中核として品質管理を支えておられる30〜40代の退会は少ないことによります。
当委員会では、今後を見据えて、以下の施策を鋭意検討して参りました。
(1) 賛助会員にとってのメリットを増強する。
 賛助会員の特典を増やし、入会のメリットをわかりやすくすべく検討中です。例えば正会員と同様に研究発表や品質誌へ投稿、研究会参加が可能、などです。
(2) フェロー会員(仮称)制度やQC検定と連動した資格制度の導入
 永年正会員として活躍して来られ、高い実績を持つ方々を「フェロー会員(仮称)として優遇する制度や、40年度もQC検定合格者の入会が多いことから、検定合格者が社会的地位を誇れる「JSQC認定・品質技術者(仮称)」の資格制度の導入について、検討しました。

10.規定委員会(委員長:平岡 靖敏)

 JSQC活動の拡大に合わせて関係する委員会と協力して、新たな規程の制定(1件)及び既存規程の改定(1件)に向けて案の作成を行いました。また、一般社団法人移行に関連して、選挙管理規程の見直し案の作成を行いました。
 併せて、関連する3件の「内規」を理事会での審議・承認を経て制定し、2件の「内規」を理事会での審議・承認を経て改定しました。
(1) 学会規則第109規格管理規程(制定案)の検討
 学会規格の作成・制定・維持管理に関する枠組みを定めることを目的に、審議案の検討・作成を行いました。
(2) 学会規則第108表彰規程(改定案)の検討
 当学会の社会的プレゼンスの向上、及び学会内若年層の活動活発化を目的に、改定に向けた案の検討・作成を行いました。
(3) 学会規則第101選挙管理規程(改定案)の検討
 当学会の一般社団法人への移行に向けた定款変更に合わせ、代議員及び役員の選出方法変更が必要となるため、改定案の検討・作成を行いました。改定は2段階に分けて行う必要があり、2つの段階ごとの改定案を検討・作成しました。
(4) 学会規則第238 JSQC Activity Acknowledgment賞内規(制定)
 若手の学会員の参加・活動を推進するため、委員会、研究会での活動が評価された若年会員を表彰するため制定されました。
(5) 学会規則第239 JSQC規格管理内規(制定)
 (3)の規程(案)に基づき、学会規格の作成、管理の手順を定めたもので、標準委員会の活動に合わせて制定されました。
(6) 学会規則第240日本品質管理学会賞内規(制定)
 文部科学省、統計学会が行っている統計コンクールにおいて、問題解決に関する優れた作品を表彰するため制定されました。
(7) 学会規則第234 品質管理推進功労賞積立資金の使途に関する内規(改定)
学会規則第237 40周年記念事業積立預金の使途に関する内規(改定)
 これら2つの内規は学会の40周年事業での積立金利用方法の変更に伴う改定を行いました。

11.研究開発委員会(委員長:椿 広計)

 今年度は、「テクノメトリックス研究会」、「安全性・信頼性計画研究会」、「医療経営の総合的「質」研究会」、「サービス産業における顧客価値創造研究会」、「統計・データの質マネジメント研究会」の5計画研究会ならびに、産学が品質管理問題について気楽に議論できる場であるワークショップ「多品種少量生産に対する工程管理に関するワークショップ」が、毎月ないしは4半期に1回研究会を開催し、活発な活動を展開しました。

(1) テクノメトリックス研究会(主査:山田 秀 20名)
   テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために、手法、考え方、事例などについて幅広い視点から研究しています。研究会では、今までにおおむね3ヶ月に1度の開催で、メンバーが上記の手法、考え方、事例などについて紹介し、メンバー間での議論により研究成果を練り上げていて、今年度も同様に開催しました。議論したテーマの例として、次があります。これらの成果は、研究発表会などで報告されています。
  1) タグチメソッドの検討
・タグチのT法とその改良手法と重回帰分析の性能比較
・単位空間が変化する時系列データに対するMT法
・時系列データに対する自己相関補正累積MT法
・タグチメソッドの理論的側面のまとめ(科学研究費まとめ)
  2) 統計手法の理論的側面
・グレブナー基底理論の実験計画法への応用
・弱併合可能性に関する検討
・条件付き独立性とimset(いむせっと)について
  3) 解析事例の検討
・「ばらつきの大きさの管理」から「ばらつきのパターンの管理」へ
・亜鉛膜厚の規格外品低減事例
・利用履歴データからの理想点空間の推定による対象推奨法
・市場不具合情報に基づくデザインレビュー項目構築
・半導体製造プロセスのパターンに基づく管理
・経営品質向上活動で得られる成果生成プロセスについて
  4) 解析手順の検討
・GM→パス解析の手順再考
・エクセル2010の統計関数
・離散変量と連続変量が混在する場合の統計的異常検出法
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:永井 庸次 18名)
 従来までの研究活動を継続しました。
  1) 月1回の研究会を実施し、常時10〜15名の委員等の出席がありました。
  2) 「医療TQM七つ道具」(仮称)の完成と周知
    医療のTQM七つ道具に関して最終検討し、各委員の持ち寄った原稿を討議・修正しました。
    その結果、2011年12月に日本規格協会から「医療のTQM七つ道具」に関する単行本の出版が決定しました。
    執筆者は、飯田委員、光藤委員、中條委員、赤尾委員、永井委員、その他です。
  3) 医療機関におけるTQM普及を促進する医療制度・政策のあり方の提案
    TQMに関する基本的な考え方を含めて、品質管理学会、医療マネジメント学会を含めて、各種学会で発表しました。
    永井委員が「付加価値を高める業務改善の進め方」の連載を産労総合研究所「師長主任業務実践」紙上に執筆しました。
    飯田委員がRCA,FMEAに関する単行本の改訂版を発行しました。
    飯田委員、中條委員、永井委員が全日本病院協会主催の医療安全管理研修会に講師として参加しました。
  4) TQMに基づく病院建築に伴う質保証の現状の把握
    東日本大震災があり、ひたちなか総合病院の被災状況について、永井委員が産労総合研究所「師長主任業務実践」に執筆しました。
    飯田委員が定例研究会において、練馬総合病院における危機管理対策について発表しました。
   
(3) 信頼性・安全性計画研究会(主査:伊藤 誠 18名)
 第一期(36-38年度)と39年度の成果に基づいて、下記の項目に関し、分野ごとのベストプラクティスの収集と解析、ケーススタディ、委員の研究成果の報告、委員間の情報共有と討議を行い、QRISフレームワークの具体化・深化に取り組みました。また、3月に震災が発生したことにより、災害リスクへの備えという視点を特に重視し、リスクマネジメントのフレームワークの再構築や、ベストプラクティスの調査分析を行いました。活動状況は、[1]によって学会内外に報告します。
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術
    新規トラブル未然防止法の高度化
    次世代品質・信頼性情報システムの具体化と深化
    ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
    品質と安全を重視する組織文化の確立
    ユーザ・メーカ・社会行政の三者の協業による信頼性・安全性確保のための方法論
    信頼性・安全性作りこみの視点からの管理職教育と品質管理教育の高度化
  3) 研究成果のとりまとめと情報発信
    研究会での成果のまとめ
    学術講演会、シンポジウム等での積極的な情報発信
  [1] 伊藤誠他(2010):「第2期信頼性・安全性計画研究会報告 第3報−災害に負けない未然防止のための課題について−」,JSQC第41回年次大会研究発表会
       
(4) サービス産業における顧客価値創造研究会(主査:石川 朋雄 15名)
 当研究会は学会中期計画における「Qの創造」をサービス産業において展開すべく設置された計画研究会で、2007年1月から活動を開始しました。サービス産業における実践的な顧客価値創造のシステムを提案し、製造業を含めた全産業でのQの創造を可能ならしめるのが目標です。
 第40年度の主な成果は以下の通りです。
  1) サービス産業(販売業)G社との共同研究を行いました。
 実践的研究を推進するため、G社と当研究会の間で研究を始めました。販売業の課題の抽出、顧客価値を追求するために2010年11月、12月に2回インタビュー調査を実施しました。インタビューの結果から現状把握するアンケート調査の設計に取りかかり、実査の設計を行いました。さらに新サービスのアイデアを出し、ポジショニング分析を行うべくアンケート調査設計を行いました。
  2) 2011年8月に新サービスのための仮説発掘調査を設計し実査を行いました。
 サービス産業における仮説発掘の試みとして、従来のインタビュー調査に代わるアンケート方式での方法を研究しました。実査が終了し分析作業に取りかかりました。
       
(5) 統計・データの質マネジメント計画研究会(主査:椿 広計 20名)
 大震災の影響を受けた3月、4月を除いて概ね毎月の研究会、並びに研究会の間の4回のワーキンググループ、2府省、1自治体への3回のヒアリングなど積極的な活動を展開しました。
 40年度は、12月まで39年度から実施を開始した、ISO20252に基づく市場調査サービスの品質保証、公的統計・新医薬品開発分野の品質マネジメント活動に関する現状把握を継続し、1月にこれらを受けて、「ISO20252の公的統計分野への適用可能性」、「GUM(計測の不確かさに関わる国際指針)による統計・データの質評価」についての2点を研究テーマとして活動することとしました。
 ISO20252の公的統計分野への適用可能性を議論するために、まずISO20252を公的統計の現場で理解できる読み替え版チェックリストの作成を認証機関、公的統計関係者、学からなるワーキンググループで行いました。このチェックリストを基に、調査企画部門である2つの省の特定の調査担当者、調査を実施する地方自治体1か所、合計3つの部門をヒアリングし、ISO20252が公的統計の問題点を検出する能力があるか、あるいはISO20252が公的統計の品質保証に用いる場合の問題点は何かを検討し、ISO20252には一定の検出能力があることを実証しました。これらの成果は、九州大学で行われた統計関連学会連合大会と10月の日本品質管理学会年次大会で報告しました。
 このほかにも、8月の研究会では国連統計委員会で9月末に始まる公的統計データの品質マネジメントに関する議論なども検討しています。
 GUMについては、2月の研究会でどのようなものであるかについてメンバーで共有し、データマネジメント全般のプロセス品質評価、特に非標本誤差に起因する報告品質の劣化の評価への適用とその問題について議論しました。

12.国際委員会(委員長:鈴木 知道)

(1) 第9回ANQ(Asian Network for Quality)大会への協力、参加
 2011年9月25日〜30日に、ベトナムのホーチミン市にて、VQAH主催で第9回ANQ大会が開催されました。JSQCとして、主催であるVQAHに対して、様々な面から支援を行いました。また、日本から39件の発表を行いました。今後もANQでのリーダーシップを発揮できるよう、引き続き多くの参加者を募る予定です。また、若手研究者の育成を目指した、若手研究者への旅費支援援助を継続します。
(2) ANQ活動への積極的な支援・参加、ANQの基盤確立へ
 ANQの活動に積極的に参画しました。2011年4月にシンガポール、そして9月にベトナムでのANQ理事会に出席しました。また、ANQ理事会に先立って行われたANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会)にも委員を派遣しました。9月に行われたANQホーチミン市大会の運営方針等について、積極的に議論をリードしました。また、アジア品質管理賞や品質管理検定についても健全な発展を期すよう検討を深めました。そしてANQそのものの基盤の充実にむけて積極的に取り組みました。
(3) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 ANQ内の各組織を重点として、幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について検討し、関係学協会と積極的に交流し、本会会員に有用な国際活動を展開できるように務めました。具体的な実現方法については、今後の課題となります。

13.標準委員会(委員長:中條 武志)

 2011年5月に「日本の品質を論ずるための品質管理用語Part 2」(日本規格協会,p.158)をJSQC選書として発行しました。参考文献からの引用部分を含めた報告書を会員へ提供するための作業を行いました。
 JSQC規格管理規定および関連する内規の整備を行いました。JSQC規格は、①品質誌、②研究発表会・シンポジウムに加え、オリジナリティは高くないものの、広く社会で活用いただける内容を学会として発信する上で、重要な役割を果たすものと考えています。また、JSQC規格第一号となる「品質管理用語」の作業原案を作成し、審議委員会の設置、パブリックコメントの募集などを行い、発行の準備を進めました。さらに、他の委員会/部会と連携を取りながら、品質管理の普及・発展のために標準化が必要な領域について検討を行いました。

14.FMES関連、横幹連合関連(棟近 雅彦)

 40年度も引き続き、FMES代表者会議、FMES/JABEE委員会、FMESシンポジウムに参画し、経営工学関連学会との交流、JABEEの審査活動、FMESシンポジウム等の活動に、中核団体として協力してまいりました。FMES代表者会議は、9月に開催され、積極的に意見交換を行いました。FMESシンポジウムは、「危機に強い製造業のマネジメントと設備管理」というテーマで10月に開催されます。
 横幹連合に関しては、積極的に参画することができませんでした。活動内容自体が、本学会の活動と重複する点もあり、横幹連合との関わり方について、方針を定める必要があります。次年度に検討する予定です。

15.研究助成特別委員会(委員長:仁科 健)

 学会創立30周年記念事業として第31年度より開始された当該事業は10年目となります。今年度より1件5万円で4件以内(昨年度までは1件10万円で5件以内)の助成となりました。応募者は9名(内留学生1名)でした。応募者から提出された申請書(研究課題、研究目的、研究実施内容など)を委員6名により審査し、4名(内留学生1名)を選考しました。

16.QC相談室特別委員会(委員長:猪原 正守)

 品質管理に関する相談窓口として会員相互の学習を図るべく運営していますが、質問の登録実績は数件にとどまりました。
 寄せられた質問の内容はレベルの高いものであり、学会員の相談室に対する意識レベルの高さを象徴しています。逆説的にいえば、本相談室の敷居の高さが問題かもしれません。本年度は、相談室の機能について学会主催のシンポジウムや発表会を通じて積極的に広報活動を展開しましたが、その成果は十分であるとはいえません。
 相談室の運営は、学会員のボランティア精神に基づいているため、相談室(委員会)運営に関わる実質的な費用は発生しませんでした。次年度に向けた重点活動として、本相談室の広報活動のあり方を検討する必要性を痛感しました。

17.原子力安全特別委員会(委員長:中條 武志)

 原子力安全・保安院の後援を受け、日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等と共催で「原子力発電の安全管理と社会環境に関するワークショップ」を2011年3月と9月の2回開催しました(テーマは「手順書・マニュアル」と「ヒヤリハットと危険予知」)。これらの詳細は、講演・討論記録として公開されています。
 また、原子力安全基盤機構や社会安全研究所が中心となって進めている「ヒューマンファクターを主体とした安全管理技術に関する課題の整理と戦略マップの作成」、日本原子力学会の「地層処分対象放射性廃棄物の品質マネジメント特別専門委員会」などへの参画・協力を行いました。これらの詳細は、報告書として公表されています。

18.運輸安全特別委員会(委員長:中條 武志)

 ISO 39001「道路安全マネジメントシステム−要求事項と使用のための指針−」の国内審議委員会(自動車事故対策機構)、国土交通省の「運輸審議会運輸安全確保部会」などへの参画・協力を行いました。ISO 39001については、DIS段階に進み、2012年に発行が予定されています。
 運輸安全マネジメントの実践において品質管理分野から研究すべき課題を明らかにするために、運輸安全の専門家と特別委員会の委員による検討会の開催を計画しました。

19.JSQC選書特別委員会(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として、品質マネジメントに関わる、基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました。
 同委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、結果的に、計画に従って、2011年5月下旬には、第5弾として3冊『FMEA辞書』『サービス品質の構造を探る』及び『日本の品質を論ずるための品質管理用語 Part2』を同時に発行しました(出版社:日本規格協会)。

20.公益法人法対応特別委員会(委員長:鈴木 秀男)

 一般社団法人への移行に向けて、定款変更案、公益目的支出計画の作成、その他の提出書類の作成を終了し、2011年7月1日に臨時総会を開催して「移行登記を条件とする定款変更」の承認を得ました。その後、内閣府に移行認可申請いたしましたが、いくつかの指摘事項に基づき、申請書内容の変更、定款変更案の修正、役員等選挙規程の変更作業等を行いました。移行認可の決定は41年度中、登記の時期は42年度開始時になる見込みです。

21.TQE(問題解決力向上のための初等中等統計教育)特別委員会(委員長:渡辺美智子/鈴木和幸)

 初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、39年度の活動を継承し、以下の取組みを行いました。
(1) 産官学協力の下に JSQC主催第1回科学技術教育フォーラム「科学技術立国を支える問題解決教育−世界トップレベルをめざす産官学共創の人材育成−」を2010年12月27日(月)に成城大学にて開催しました。文科省科学技術・学術総括官の常盤 豊氏をはじめとする教科調査官・総括研究官・指導主事ならびに総務省、NHKなどより約160名が参加し初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、情報共有と討議を行いました。
(2) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、39年度に企画した表彰制度をさらに検討、統計グラフ全国コンクールに日本品質管理学会賞を新たに設け、問題解決力向上に寄与する作品を表彰し、さらに、受賞者が高校以下の児童・生徒によるチーム活動(合作)の場合、所属する学校に盾を贈呈することを決定しました。
(3) 初等中等教育における問題解決のステップを検討し、
1) データにより現象を正しくとらえる
2) 現象の因果・メカニズムを究める
3) 対策を実施する
の3ステップを提唱しました。
(4) 上記の問題解決のステップを普及すべく、事例を作成し、JSQC HPへのWEB公開を行い、また、このWEBを通して統計グラフ全国コンクールへの問題解決への取り組み増加をはかり、問題解決力向上に貢献すべく活動を行いました。
(5) 第2回科学技術教育フォーラムをJSQC第41年度に開催すべく議論と企画検討を行いました。

22.部会

(1) ソフトウェア部会(部会長:渡辺 喜道 81名)
 ここ数年継続して議論している、ソフトウェア開発のノウハウ集を作成する会合を定期的に開催しました。過去のソフトウェア開発の経験から有用であった「形式知」の収集、分類を行うとともに、その結果をWebサイトで公開しました。
 また、その形式知を充実させるために、新たな形式知を発掘する活動を実施しました。さらに、他団体との連携も、昨年度と同様に行い、各種行事の後援などを行いました。
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会(部会長:福丸 典芳 134名)
 第3期研究活動の推進及び研究成果の報告
 39年度から引き続き次の6つの研究テーマに関して1回/月の頻度で研究活動を行い、第3期研究活動を5月で完了しました。
    WG1:適合性を証明する審査の研究
WG2:審査員の専門性による効果的な審査の研究
WG3:受審組織のQMS大改造への提案
WG4:次世代対応のQMS構築と審査技法の研究
WG5:マネジメントの原則から見た統合審査技術の研究
WG6:経営に貢献するISO9001推進の研究
 研究成果は、次に示す機会で発表を行いました。
・品質誌Vol.41.No2 特集「審査登録制度の課題及びその解決法」
・第3期研究報告書の発行(2011.6)
・第135回シンポジウムの開催(2011.7)
 
(3) 医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 188名)
 当部会は、活動開始後約6年が経過し、部会員数は横ばいが続いています。今後も部会員増加に向けて努力してまいります。
 今年度の研究活動としては、厚生労働科学研究費、文部科学研究費の研究グループ、およびQMS-H研究会と共同しながら、患者状態適応型パス(PCAPS)、医療の質マネジメントシステム等について研究してまいりました。
 これらの研究成果の公開の一環として、2011年3月に、患者状態適応型パスの研究班、QMS-H研究会との共催で、「医療社会システムの確立に向けて」と題するシンポジウムを開催しました。大変多くの方が参加し、活発な議論が行われました。さらに、2011年9月には、科研費研究グループとの共催で、PCAPS中間成果報告シンポジウムを開催いたしました。研究発表も、JSQCはもちろん、医療の質・安全学会、日本医療・病院管理学会、EOQ、ANQ等で、部会員の研究発表を行っています。
 教育・啓蒙活動については、QMS-H研究会、医療QMS研究会での成果を生かし、2011年6月から9月まで、全14回の「医療の質マネジメント基礎講座」を昨年度に引き続き開催し、延べ500名近くの参加者がありました。昨年度の内容をさらに改訂し、充実した内容にすることができました。