社団法人日本品質管理学会

第34年度 自 2004年(平成16年)10月 1日
至 2005年(平成17年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:飯塚 悦功)

わが国の品質の現状に対し,時代が求める精神構造の確立,産業競争力という視点での品質の考察,社会技術のレベル向上という3つの基本施策が必要であると認識し,これを受けて第33〜34年度の2年間に学会として,概念の発信と教育・訓練機会の提供,計画研究・公募研究の充実,視野拡大の機会の創出,会員サービスの一層の向上による会員増強という4つの具体的施策を提示し,活動を行って参りました.この中で,下記の項目につきましては成果が得られました.

(1) 概念の発信,教育・訓練機会の場として,シンポジウム,事業所見学会,講演会,クオリティパブなどの数多くの定例行事を開催いたしました.また,昨年度に引き続きISO9001審査員のためのTQM基礎講座を開催し,多くの審査員の方々に受講していただきました.定例行事の中ではシンポジウムに大変多くの関心が寄せられ,200名以上の方に参加いただいたシンポジウムもいくつかありました.新しい概念の発信については,特に重点テーマとして掲げていた「Q-Japan構想」につきましては,「品質」誌 Vol.34, No.4で「Q-Japan構想」の特集を掲載するとともに,2005年4月にはシンポジウムを,また数回にわたりワークショップも開催いたしました.
 
(2) 研究開発活動におきましては,昨年度も活動していた7つの研究会が今年度も引き続き活発な活動を行いました.また,新たに2つの研究会が活動を開始いたしました.
今年度から,新たな活動組織として部会を開始いたしました.部会は,より専門性の高い領域において,専門領域独自の研究活動の企画,運営を容易にするために設けるグループです.学会員は,2000円の部会費を支払うことで,どなたでも参加することができます.各部会は,50名以上の会員から構成されます.今年度は,「ソフトウェア部会」,「QMS有効活用及び審査研究部会」,「医療の質・安全部会」が活動を開始いたしました.
若手支援では,従来開催されてきたヤングサマーセミナーを定常的な活動とすべく,インカレゼミを開始いたしました.また,研究費,海外発表旅費の支援を実施いたしました.
 
(3) 視野拡大の機会として,(1)でも述べましたように定例行事とともに,いくつかの新規企画を提案し,実施しました.国際的な活動として,9月に台湾で開催されたThe 3rd ANQ Congress and 19th Asia Quality SymposiumにJSQCから多くの方が参加しました.JSQCはANQ議長国を務めておりましたが,その役割を台湾へ引き継ぎいたしました.日本学術会議,経営工学関連学会協議会(FMES),横断型基幹科学技術研究団体連合と連携した活動にも積極的に参画しました.
 
(4) 品質管理に関しての底辺層の底上げによる品質意識向上,製品品質の向上およびパブリシティ向上という観点から,日本規格協会との共同事業として,品質管理検定制度を開始することにいたしました.2005年12月4日に第1回の試験が行われる予定です.
 
(5) 会員サービスにつきましては,従来の活動に加えて,「会長と語る賛助会員ワークショップ」を行い,会員増強に努めましたが,会員数はほぼ横ばいで推移しました.引き続き,会員増強策を実施してまいります.
 

2.長期計画委員会(委員長:飯塚 悦功)

本委員会を2005年2月に開催し,中・長期の課題を整理いたしました.主な課題としては,1)会員増強と財政基盤,2)横幹連合,FMESなど学会連合への対応,3)国際化への対応,4)パブリシティの向上を取り上げました.

1)に関しては,会員増強のための活動は進めていきながら,事業も積極的に実施し,特に新しい質マネジメントのあり方を発信するような事業を積極的に展開する必要があります.新企画の活性化のために企画委員会を設け,新企画を定常的に検討することにいたしました.

2)に関しては,FMESでは従来通り主導的な役割を果たし,横幹連合では情報を適宜入手しながら今後の対応方針を決めることにいたしました.

3)に関しては,アジアにおけるプレゼンスを高めることが必要で,指導力を発揮すべきとの結論に至りました.AOQ,EOQとの協調関係は今後の動向を見守ることにいたしました.

4)については,出版,マスコミ対応,検定制度・資格制度などについて議論しました.検定制度については,品質管理検定制度として具現化しました.

長期計画委員会が不定期になっていたことは大いに反省すべき点であり,今後は定期的に開催し,学会の中長期の方針をローリングで実行すべきとの結論に至りました.

3.事業委員会(委員長:神田 範明)

第34年度事業は本部(年次大会,研究発表会,ヤングサマーセミナー各1回,シンポジウム3回,講演会2回,事業所見学会3回,クオリティパブ6回),中部支部(研究発表会,シンポジウム各1回,講演会2回,事業所見学会3回),関西支部(研究発表会1回,シンポジウム1回,講演会1回,事業所見学会2回)と順調に開催され,実績を上げております.支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており,地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき,各々好評をいただいております.

本部事業も幅広いニーズに対応したタイムリーな企画を目標に実施して参りました.昨年10月12日の第92回講演会(中国の最新事情)から本年9月2日の第105回シンポジウム(企業の社会的責任を考える)まで全16回,のべ約1,500名(昨年とほぼ同様)もの多数の会員に参加いただき,お陰様でかなりの活況を呈しており,心より御礼申し上げます.以下簡単に主な行事の状況を説明いたします.

(1) 年次大会,研究発表会
第34回年次大会は昨年10月30日,電気通信大学にて開催し,研究発表52件,のべ252名の参加者がありました.東京都内ということもあって,発表件数が非常に多く,活発な大会となりました.研究発表会は本年5月27日〜28日に日本科学技術連盟本部にて初めて2日間で開催,59件もの(若手を中心とする)熱気溢れる発表があり,参加者も(昨年に比し多少減少しましたが)278名と盛況でした.今後運営方法について更に改善を進めますが,概ね満足の評価をいただいております.
 
(2) シンポジウム
以下の3回を開催,いずれも日本を代表する各界の識者の講演・発表と討論があり,好評をいただきました.
  • 2005年4月16日「Q-Japan!−品質立国日本再生への道−」
    日本科学技術連盟東高円寺ビル,参加者175名.
  • 2005年7月4日「ISO9001/9004の最新動向−次期改訂に向けて−」
    日本科学未来館,参加者209名.
  • 2005年9月2日「企業の社会的責任(SR)を考える」
    早稲田大学理工学部,参加者88名.
 
(3) 講演会
時宜を得た企画を昨年10月と本年8月に実施し,多数の参加をいただきました.
  • 2004年10月12日 「中国の最新事情」
    関満博氏(一橋大学教授),市川淳司氏(パワーアップ研究所),参加者119名.
  • 2005年8月2日 「事故・不祥事から組織を守る」
    飯塚悦功氏(東京大学教授),上野治男氏(松下電器産業(株)顧問),参加者127名.
 
(4) 事業所見学会
以下の3回を開催,いずれも個性的で優れたTQM活動を展開する事業所を見せていただきました.
  • 2005年3月10日 (株)日本航空羽田整備工場
    「航空機整備の品質保証」,参加者29名.
  • 2005年6月17日 日産自動車(株)栃木工場
    「NPW(日産生産方式)の具現化によるQCTの向上」,参加者36名.
  • 2005年7月19日 THK(株)甲府工場
    「たゆまぬ改善『めざすはグローバル10・21』」,参加者15名.
 
(5) クオリティ・パブ
ほぼ隔月に開催し,20〜30人の少人数の参加者がくつろいだ雰囲気で一流講師の講演を聞き,ディスカッションの場を提供する,本部独自のユニークで贅沢な行事です.34年度も各界から以下の多彩なゲストとテーマで5回開催し,好評をいただきました.
  • 2004年11月25日 斉之平伸一氏(三州製菓(株)代表取締役社長)
    「元気印の中堅企業を囲んで<シリーズその3>『経営革新 お客様満足をめざして』」
  • 2005年1月21日 飯塚悦功氏(東京大学教授)
    「競争優位のための質マネジメント設計」
  • 2005年3月18日 田中寿雄氏(元オムロン(株))
    「ものつくりの魂〜自動改札機の開発に携わって〜」
  • 2005年5月13日 山内 優氏(千葉ゼロックス(株)代表取締役社長)
    「千葉ゼロックスにおける経営品質向上活動の取り組み」
  • 2005年8月26日 島田憲治 氏(東武鉄道(株)分譲事業本部不動産事業部 課長)
    「戸建て住宅団地・FRANCAはなぜヒットしたか−売れない時代の商品開発を考える−」
 

4.中部支部(支部長:松浦 剛)

(1) 基本的な考え方
◇「日本のものづくり」における競争優位を確保するため,品質管理の原点への回帰と海外への展開の方向をさぐる
1) あたり前の品質の確保  −自工程完結−
2) グローバルな品質管理活動のあり方の追求
(2) 具体的な行事のまとめ
1) 研究発表会 [計画:1回/実績:1回]
9月7日 朝日大学(岐阜県穂積)で,OR学会と経営工学会との三学会共催で開催.
『あたり前の品質を確保する品質管理の研究と実践』をテ−マとして,産学界6件,学術界8件,その他2件の計16件の事例発表と質疑が行われました.昨年度同様,発表事例間に5分の会場移動や準備の時間を設けました.
研究発表会終了後の懇親会では,発表内容や参加者からの学会への意見などについて情報交換が行われました.
2) シンポジウム [計画:1回/実績:1回]
7月13日 中電ホールにて『「品質を中核としたものづくり大国日本の復活」〜Q-JAPAN構想』のテーマで開催しました.
日野自動車椛纒\取締役会長の蛇川忠暉氏の基調講演と東京大学大学院教授で日本品質管理学会会長の飯塚悦功氏がリーダとなったパネル討論が行われました.パネル討論の前に,飯塚悦功氏,トヨタ自動車活゚浦工場 品質管理室室長の丸地敏氏,兜x士通総研経済研究所 主任研究員の前川徹氏,三重県庁 総務局組織経営室室長の福田圭司氏の4氏が講演を行い,その内容に関するフロアーからの質問に対して活発なディスカッションが行われました.
3) 講演会 [計画:2回/実績:2回]
3月19日 竃L田自動織機のシャインズホールにて,『「日本のものづくり」における競争優位を確保するために−「問題・課題解決力」「マネジメント力」の育成・強化−』のテーマで開催しました.
潟\プロ研究所 代表取締役の鈴木進氏とアイシン精機且Q与TQM・PM推進室室長の伊藤要蔵氏より講演が行われました.
7月20日 潟fンソーのD-Squareスクウェアプラザにて,『「日本のものづくり」における競争優位を確保するために−ISO9001の有効活用と改善力アップ−』のテーマで開催しました.
小田島品質経営研究所所長の小田島弘氏とケイ・イマジン代表 今里健一郎氏により講演が行われました.
4) 事業所見学会 [計画:3回/実績:3回]
4月22日 樹研工業梶w最近のナノ切削事例(超精密金型切削)』
5月27日 ヤマハ梶@『サイレント楽器の魅力的商品開発の取組み』
7月 1日 シャープ葛T山工場にて,『亀山産AQUOSの誕生』
5) 幹事研修会 [計画:3回/実績:3回]
10月26日 産業技術記念館『人偏のついた自働化』のテーマで研修.
3月30日 日本規格協会名古屋支部主催のシンポジウムに参画して,『企業の社会的責任CSR』を研修.
5月15日〜22日 タイ王国の企業8社にて,『海外への日本的品質管理のノウハウの移管』のテーマで研修.
タイ王国での研修では,日本のTQMの考え方,進め方・手法が有効であることを確認できました.後日,不参加の幹事に対する報告会を開催しました.
6) 若手研究会 [計画:6回/実績:8回]
中部地区研究会は,名古屋工業大学 仁科教授を中心とした産・学界のメンバーで構成し,計6回開催.北陸地区の研究会は,金沢工業大学 石井教授を中心とした学生主体のメンバーで構成して,計2回開催しました.

5.関西支部(支部長:中島 昭午)

(1) 基本的な考え方
大変革時代において,品質管理に求められるものの追求を通じ,企業への貢献,関西支部の存在感の発揮
【それぞれの現場に密着した,新たな管理技術の再構築】
―上手な組織づくり,人づくり,ものづくり―
(1)マネジメント力の向上
(2)組織力の向上
(3)現場力の向上
(2) 活動のまとめ
1) 事業所見学会
第300回 中之島新線土木工事 2004/10/21
(地下鉄土木工事における「見せる現場作り」)中之島新線第1工区JV鴻池組を14名の参加者で訪問しました.中之島新線は,京阪電気鉄道鰍ニ大阪府,大阪市などが出資する第三セクターの中之島高速鉄道鰍ェ鉄道施設の建設・保有を行い,京阪電気鉄道鰍ェ列車を運行する玉江橋〜天満橋間複線2.9キロの地下鉄で,平成20年度の開業に向けて工事が進められています.
第304回 サントリー 京都ビール工場 2005/9/30
TPMにおけるオペレーターの自主管理活動と設備の計画保全のテーマで訪問しました.
2) シンポジウム
第102回 2005/9/10 エス・バイ・エル株~田ホール 参加者68名
テーマ: 「Q-Japan人づくりものづくりのためのヒューマン・モチベーション」
基調講演: 『モチベーションと品質』近藤 良夫 氏 京都大学 名誉教授
講 演1: 『人づくりのためのモチベーション研究』加古 昭一 氏 日本能力開発研究所
特別講演: 『ヨーロッパにおけるモチベーション研修』 ス・ミ・ダールガー氏  リンチェピン大学 教授(スウェーデン)
講 演2: 『企業内で実施したモチベーション研修』伊藤典男氏  マイスターエンジニアリング兜i質管理室長
パネルディスカッション:『ヒューマン・モチベーション』講演者全員
3) 講演会
第94回 2005/5/20 中央電気倶楽部 参加者42名
テーマ:「新JISマーク表示制度改訂の解説と新旧比較」
経済産業省産業技術環境局 片山 課長
新JISマーク表示制度では,国が登録した第三者認証機関(登録認証機関)による製品の認証及び定期的な認証維持検査が行われ,新JISマーク表示ができることなど,今年10月から認証が開始される新制度についての解説が行われました.
4) 研究発表会
第79回 2005/9/27 中央電気倶楽部 参加者15名
5) 研究会
荒木理事を部会長に,8名のメンバーで「フリーソフトウェアR品質管理への活用」をテーマに活動しました.
6) QCサロン エス・バイ・エル梶@梅田ホール
第49回 2004/12/17
「中国の技術・品質管理への雑感」貴田 捷雄 氏 三洋電機
第50回 2005/2/25
「第79回 品質管理シンポジウム(箱根・2004年12月2日(木)〜4日(土))報告」
岩崎 日出男 氏 近畿大学 教授:関西支部幹事長
第51回 2005/4/15
「フリー統計解析ソフトR 品質管理の分野への適用」
荒木 孝治 氏 関西大学教授:日本品質管理学会理事
7) 事業運営幹事会
事業運営幹事会から合同役員会として,支部長,理事,幹事長,代議員,幹事をメンバーとして2〜3ヶ月に1回開催しました.

6.投稿論文審査委員会(委員長 尾島 善一)

論文誌編集委員会では以下の活動を行いました.

  1. 前年度方針を引き継ぎ,レフリーと著者との議論に論文誌編集委員会がより積極的に関与するという姿勢で臨みました.また,このことを反映して,投稿論文審査内規(学会規則207)を改訂致しました.

  2. 19AQSの論文発表の奨励支援に関して,国際委員会の委託を受け,以下の活動を行いました.
    (1) 19AQSへJSQCから提出された全てのアブストラクト(全32本)に対する審査
    (2) 若手への参加奨励金の適用対象者の選定
    (3) 若手のフルペーパーに対するBest Paper Award with Encouragement審査

  3. 前年度に引き続き,投稿論文審査のスピード化をめざし,新規投稿へのfirst response を3ヶ月以内に行うことを目標に活動しました.結果は3ヶ月以内のfirst responseは61%(前々年度70%,前年度56%)と持ち直したものの,まだ低い水準です.

  4. 30年度の投稿論文数19本,31年度27本,32年度は20本, 33年度は29本に対し, 34年度は23本となりました.掲載論文は31年度13本,32年度16本,33年度6本に対し,34年度は復調し16本の論文を掲載することができました.
    (Vol.34 No.4: 4編,Vol.35 No.1: 3編,Vol.35 No.2: 7編,Vol.35 No.3:2編)
      10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
    30年度 19
    31年度 27
    32年度 20
    33年度 29
    34年度 23

7.学会誌編集委員会(委員長:久保田 洋志)

学会誌編集委員会は,33年度の次の編集基本方針を引き継ぎ,特集編集を中心に活動して参りました.
@特集は品質管理関連の論文とする.
A品質管理の専門家に対する情報発信で商業誌と差別化する.
B実務家の職務遂行および改善・変革に役立つ内容とする.
C論理的緻密性ではなく,提唱的ないし提案的な概念・内容・構想と説得力を尊重する.

34年度は,学会誌編集委員会を7回開催し,33年度に企画したVol.35,No.1「知識マネジメントの工学的アプローチ」,Vol.35,No.2「産業競争力と国際標準化戦略」,Vol.35,No.3「顧客価値の創造と品質経営」を掲載するとともに,Vol.35,No.4「海外に学ぶ日本のTQMの課題」,Vol.36,No.1「ものづくりにおける技術の伝承と人材育成」,Vol.36,No.2「医療質安全」およびVol.35,No.3「持続的競争優位性を実現するものづくりマネジメント技術(仮題)」を企画致しました.

また,幅広く,関係者に役立つ情報を発信して,品質管理の研究者・専門家の仲間を増やすとともに,社会に貢献するために,「特集」記事の中から抜粋した論文を中心 に構成した論文集を学会叢書として発刊することを検討しました.

8.広報委員会(委員長:山崎 正彦)

会員に対する広報活動として,以下の取り組みを行いました.

(1) ホームページの内容の充実
今や,会員3000名のうち,E-メールを活用して連絡可能な方が約半数を占めるようになり,Webページの充実が必要となりました.JSQCのホームページには,他団体とのリンクが張ってありますが,今年度はその見直しを実施しました.今後,Webについては,広報委員会のタスクとしてその充実を計っていくこととなりました.
(2) JSQCニューズの発行
2004年11月号(No.256〜2005年9月号(No.263)の8編を発行しました.
特に,トピックスについては,QC関係の行事や学会活動の状況をみて,テーマを計画的に準備して,余裕を持って執筆者に依頼ができました.
(3) プレス,雑誌への情報発信
JR関西の脱線事故等に対し,当学会として緊急講演会を開催しました.その話題を広く記事として取り上げてもらうように,新聞社,品質管理関係の雑誌などにPRを試みました.
(4) 品質管理検定のWebリンク
今年度からJSQCと日本規格協会が共催で「品質管理検定」を実施するにあたって,その案内をWebに掲載しました.

9.会員サービス委員会(委員長:岩田 修二)

事業委員会,広報委員会と連携をとりつつ,以下の取り組みを行いました.
(1) 会員サービスの充実
中堅賛助会員企業トップを対象に,「Q-Japan構想」の具現化に向け,飯塚会長を座長とするワークショップを開催しました.5/14,7/16,8/27の3回を実施,最終回を10/30に予定しています.討議成果は今後,賛助会員品質管理推進者懇談会等に活用していきます.
推進者懇談会は今年度未実施となりましたが,このワークショップの成果を踏まえ,次年度に実施する予定です.
(2) 会員増強策の実施
個々の入退会への対応の結果として,9月末現在,名誉会員31名,正会員3,047名,準会員127名,賛助会員172社199口,公共会員22口とまりました.
ここ数年の減少傾向への対応には,組織的取り組みが必要であり,今後の課題とします.

10.規定委員会(委員長:竹下 正生)

以下の内規の改定案を作成し,理事会への報告・承認を得て施行しました.
(1)学会規則301 総会マニュアル (改定案)
(2)学会規則304 庶務理事マニュアル (改定案)
(3)学会規則305 事業委員会運営マニュアル (改定案)
(4)学会規則306 研究発表会シンポジウム関係マニュアル (改定案)
(5)学会規則311 学会誌編集委員会運営マニュアル (改定案)
(6)学会規則312 審査員謝辞の取扱いマニュアル (改定案)
(7)学会規則313 品質誌投稿要領 (改定案)
(8)学会規則315 品質依頼原稿執筆要領 (改定案)
(9)学会規則319 広報委員会マニュアル (改定案)
(10)学会規則322 クオリティレポート,レター及びQCサロン審査基準(改定案)
(11)学会規則102 委員会規程 (改定案)
(12)学会規則207 「品質」誌投稿論文審査内規 (改定案)
(13)学会規則216 最優秀論文賞内規 (改定案)
(14)学会規則217 品質技術賞内規 (改定案)
(15)学会規則218 研究奨励賞内規 (改定案)
(16)学会規則225 部会内規 (制定案)
(17)学会規則207 「品質」誌投稿論文審査内規 (改定案)
(18)学会規則226 外部表彰内規 (制定案)
(19)学会規則321 当学会への後援等依頼に対する対応マニュアル(改定案)

また,規定とは別に,「会員の倫理的行動のための指針」及び「社団法人日本品質管 理学会個人情報保護方針」の作成に携わりました.

11.研究開発委員会(委員長:田中 健次)

本年度は2つの研究会「中部医療の質管理研究会」と「価格対応品質実践研究会」の新設を承認しました.
(1) テクノメトリックス研究会(主査:山田 秀 17名)
テクノメトリックス研究会では,品質管理に役立つ手法,考え方を幅広く探索,確立するべく,メンバーが興味あるテーマを持ち寄り,それについて議論を行いました.取り上げたテーマの例として,非心度とサンプルサイズの設計,ホットスポットによる平面領域クラスタリング法,半導体製造工程における初期流動管理,Compositional dataに関する変数選択,楕円母集団における多変量分散分析の次元検定,コンピュータ実験における多峰関数の近似,Fisherの正確検定の多元分割表への拡張,クロスオーバーデザインで得られる従属な2×2分割表,混合分布モデルの分散パラメータの選択,グレブナ基底の実験計画法への応用,などがあり,さまざまな視点からの議論を行いました.おおむね3ヶ月に1度の開催でした.
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:池田 俊也 18名)
1) 33年度からの研究活動を継続し,34年度では以下のテーマに取り組ました.
2004年10月(第51回): 「医療のQCを別の視点から考える」,「手術の技術展開」
2004年11月(第52回): 「水戸総合病院におけるTQMの取り組みについて」「改正薬事法の概要について」
2005年 1月(第53回): 「病院探検隊の視点と病院経営への活用」「医療機器事業の可能性とリスク」
2005年 2月(第54回): 「医師と看護師の役割期待関係におけるコンフリクトとその役割遂行への影響に関する研究結果」
2005年 4月(第55回): 「フリーディスカッション」
2005年 5月(第56回): 「標準的電子カルテにおけるフローモデルの意義/中規模医療機関の業務フローモデル」
2005年 6月(第57回): 「個人情報保護法について」「有害事象カルテレビュー研究」
2005年 7月(第58回): 「クリニカルパスを用いた質マネジメント」「質安全保障を実現する患者状態適応型パスシステムの開発」
2005年 9月(第59回): 「医療におけるエラープルーフ化と未然防止」
2) 本研究会の研究成果として,日科技連出版社より「医療の質向上への革新−先進6病院の事例研究から−」を出版しました.
(3) 環境マネジメント研究会(主査:岡本 眞一 19名)
本年度は諸般の事情により,平成17年7月8日(金)の開催のみとなりました.
ここでは
 1.来年度の研究活動について
 2.今後の開催予定について議論しました.

その結果,
 @研究会としての会員向けのアンケートを実施する.
 A環境マネジメントシステムについてのアンケート調査はJABですでに実施しているので,重複は避ける.
ことを方針として,了承されました.

この後,環境マネジメントシステムの有効性の検証とは何かということについて議論して終了しました.
(4) デジタルエンジニアリングと品質保証研究会(主査:金子 龍三 7名)
前年度までに産業界中心に現実の問題を把握し,課題を定義し,関係者・関係性,環境条件課題について研究しました.研究員の業界が電気・電子・ソフトウェア関係に限られているため研究結果が限られていたので,確定法則(シューハート)に基づく品質保証について検討しました.統計法則に基づく品質保証は自動車等の機械産業界の関係者の参加がなかったので中止しました.

デジタルエンジニアリングのプロセス別適用可能性の研究を含むISO9004:2000に示されているプロセスネットワークの研究を行い,学会の大会で報告しました.その他に妥当性確認の技術をまとめ,設計用のテンプレートを開発しました.さらに最近発生している慢性的品質問題についての研究を行い,講演他を行いました.

今後の課題は慢性的問題を解決するためのISO 9001,MB賞,成熟度モデルの日本での適用の限界の分析と実践的で継続的繁栄のための日本的アプローチに基づく品質保証の研究です.しかし,今年度にて研究を終了し,研究報告書をまとめました.
(5) シミュレーションとSQC拡大研究会 第1部会(主査:仁科 健 16名)
シミュレーションにおけるSQCの活用について以下に示すCAEの現場からの問題点の抽出とそれに対する提案を検討しました.
 @合わせ込みの効率化と妥当性評価
 A最適化のためのパラメータのスクリーニング
 Bロバスト最適化のための計画と解析
 C複雑な物理現象に対する近似モデル
 Dソフトウェアの現状と問題点

第34回年次大会,International workshop on The Grammar of Technology Development −Accelerating New Technology Development by Statistical Thinking−,および,第77回研究発表会において研究成果を報告し,研究活動の中間報告を小冊子にまとめました.
(6) シミュレーションとSQC拡大研究会 第2部会(主査:山田 秀 10名)
34年度には,筑波大学東京キャンパスにて,The grammar of technology develop-mentという国際ワークショップが開催され,このワークショップには当分科会から4件の発表を行いました.また,当分科会はこのワークショップ運営に積極的にかかわり,海外の招待講演者との討論などを積極的に行いました.さらに,数理的側面の研究について成果をあげました.
(7) シミュレーションとSQC拡大研究会 第4部会(主査:天坂 格郎 8名)
本拡大計画研究会は,横幹連合“技術開発促進のための統計科学体系とそれに基づく情報システム開発”の枠組みにした,『自動車関連産業における数値シミュレーションに必要な設計品質保証体系』と連携した活動です.第4部会では,『自動車産業のCAE*SQCの品質保証体系に関する調査研究』を行なっています. 本研究会は,“品質保証体系の理念的検討を行う研究会”として位置づけ,本年度はディジタルエンジニアリングを前提とした自動車産業界全般のQA体系について研究を進めました.具体的には,CAE*SQCにかかわる品質保証(QA)に視座し,自動車産業(車両メーカー*部品メーカー)の業務フローを整理し,CAEの活用実態,問題点・有効性などを可視的技術も援用してMAP化を実施しました.本年度の研究成果を踏まえ,第35年度は“自動車開発設計の高品質保証モデル”の提案を行ない,その有効性について具体的な検証を行なう予定です. 本年度の主な研究成果は,以下のように実施しています.
(1) 国際会議:Establishment of Process Layout CAE System “TPS-LAS”, Proc. of the International workshop on the Grammar on Technology Development (2005/01/18,筑波大).
(2) JSQC: 自動車を例とした品質保証体系の理念的研究」中間報告(1),JSQC,No.77研究発表会 (2005/5/28).
(3) 「JSQC拡大計画研究会&科研費集会」合同研究会:第4分科会中間報告(1) “自動車を例とした品質保証体系の理念的研究(2)”,(2005/8/26,筑波大).
(8) 中部医療の質研究会(主査:國澤 英雄 17名)
「中部医療の質管理研究会」は2005年4月に発足して以降,以下の目的および特徴を持って研究活動を行って参りました.
 @医療の分野での医療ミスその他の医療に関する問題に関する研究
 A企業で使われている様々な管理手法を医療に適用する研究
 B中部圏の病院において経営管理にたずさわっている医師および医療関係者を中心にした研究会
 C中部圏における医療の経営管理に重点を置いた研究会

研究会は,以下の内容で実施いたしました.
  • 4月19日(火)18:00〜20:30
    「関中央病院運営の現状と課題」(斉藤雅也氏:関中央病院院長,中村秀博:関中央病院事務長),「身近な病院アンケート調査結果(1)」(木村茲氏:朝日大学大学院),「手術におけるQFD」(小澤雪絵氏:愛知きわみ看護短期大学助教授)
  • 5月17日(火)19:00〜21:15
    「松波総合病院の病院経営」(山北宜由氏:松波総合病院病院長,松波和寿氏:松波総合病院副病院長),「総義歯品質工学入門」(杉山哲郎氏:中部品質管理協会専務理事),QFD概要(稲吉哲:朝日大学講師)
  • 6月21日(火)19:00〜21:00
    「品質管理から見た医療現場の混乱(杉山哲郎氏),「身近な病院アンケート調査結果(2)」(木村茲氏)
  • 7月19日(火)19:00〜21:00
    「活力と生産性の高い職場づくり」(國澤英雄),「変化点管理の進め方」(田中征夫氏:朝日大学教授)
このように医療現場での品質管理活動,医療に効果があると思われる品質管理の手法紹介などを中心に発表・討議を行い,品質管理に関する理解を深めることができました.
(9) 価格対応品質実践研究会(主査:大藤 正 17名)
研究メンバーの一人である持本志行先生は価格対応品質に関する私論として「市場価格対応の品質展開実践手法QDm」を世に発表しており,この実践を通して同理論の有効性ついて検証研究することを目的に,4月20日から研究会をスタートしました.前半の3回は「市場価格対応の品質展開実践手法QDm」に関するメンバーの知識のすり合わせに費やしました.

後半の3回の研究会では「市場価格対応の品質展開実践手法QDm」におけるツールとして提唱されているQDm表は,単に現存製品や企画製品,対抗製品の市場価格目安数値が算定できるだけでなく,市場価格を考慮した企画品質の設定をシミュレーションによって行える可能性を秘めていることが判明しました.さらに研究メンバーの一人であり,品質展開の創始者の一人でもある赤尾洋二先生もQDm表を製品企画に適用することを研究会に提案しています.

以上のことからQDm表の様々な事例に応用して実践するグループと,QDm表の新たな適用に関する研究を進める2つのサブ・グループを構成して研究を進めています.

12.国際委員会(委員長:安藤 之裕)

第34年度の国際委員会は,第33年度の活動を継承し,主に以下の事業を実施しました.

(1) 第3回ANQ(Asian Network for Quality)会議・第19回AQS(Asia Quality Symposium) の共催,支援,および積極的参加
2005年9月20日〜23日に台北で開催された第3回ANQ会議・第19回AQSの共催,主催機関CSQ(Chinese Society for Quality (Chinese Taipei))の要求に応じた支援,およびJSQCからの積極的な参加者の勧誘をしました.その結果,32件の論文発表と,41名の参加者を得ました.更に,狩野紀昭前会長の基調講演をはじめ,飯塚悦功会長をリーダーとするパネルディスカッション,昨年度に引き続き本年度も日本と現地をつなぐサテライトセッションなどを行い,8名の座長を派遣するなど,多大な貢献を果たしました.
また,従来,当学会のみが行っていた若手研究者に対する最優秀論文賞企画をANQ全体の企画に発展させることができました.
(2) ANQの基盤確立のための調整
2004年末を持ってANQ議長国の任期を満了し,CSQ(Chinese Society for Quality (Chinese Taipei))に引き継ぐことができました.
2005年3月25日,26日に東京で開催されたANQボードメンバ会議のホスト国として必要な調整・取りまとめ役を務めました.その中で,ANQの設立以来の功績により,狩野紀昭前会長がANQ 名誉会長に就任されました.
(3) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について検討しはじめました.
特に,ANQ関係団体と交流しはじめ良い関係を作りはじめました.

13.標準委員会(委員長:山田 秀)

14.日本学術会議 経営工学関連(担当:棟近 雅彦)

日本学術会議には,本学会として経営工学研究連絡委員会と人工物設計・生産研究連絡委員会経営管理工学専門委員会の合同委員会に委員を派遣し,現在9つの学会から構成されるFMES(経営工学関連学会協議会)の連携のもとで活動を行っています.この合同委員会は,FMESの代表者会議を兼ねており,FMESの最高決議機関になっています.日本学術会議の改組にともない,研究連絡委員会,専門委員会は本年9月で廃止されることになりました.詳細は未定ですが,今後は別の形態で各学会と学術会議が連携することになります.FMESとしての活動は必要ですので,当面はFMES代表者会議を開催して,種々の課題に対応していくことになります.なお,FMES事務局は,2002年8月からOR学会が務めていましたが,事務局は持ち回りで受け持つとの申し合わせから,2005年6月より,本学会が事務局を引き継ぎました.

FMESには,JABEE関連の業務を行うFMES/JABEE委員会と,シンポジウムを開催するためのFMESシンポジウム実行委員会があり,いずれにも本学会から委員を派遣しています.JABEE関連では,2003年度に経営工学分野の本審査を開始し,2003年度には2大学2プログラムを,2004年度は1大学2プログラムを認定しました.本審査の審査員,審査結果を検討するFMES/JABEE審査委員会にも本学会から推薦された方が参画しています.

FMESシンポジウムは,今年度の幹事学会を研究技術計画学会が務め,2005年6月に「世界のMOT,日本のMOT」をテーマに開催いたしました.シンポジウム当日には,FMES学会長会議を開催し,意見交換を行いました.

15.Web特別委員会(委員長:兼子 毅)

昨年度同様,各種事業の申込をオンライン(Web)で行えるようにするとともに,リスト作成作業の容易化を図りました.
8月に実施された会員アンケートをオンライン(Web)で実現し,回答データの集計をサーバ上で行うことにより,回答の入力作業などの省力化を図りました.
従来各種通知にメーリング・リストを利用していましたが,対象者個人に個別の通知を容易に発送できるシステムを導入しました.これにより,回答率の向上などが期待されます.

16.研究助成特別委員会(委員長:國澤 英雄)

研究助成の募集を行った結果,応募は5名ありました.そこで審議委員で審査した結果,これまで2年間にわたり助成を受けている理由などによって選考からもれる者はいませんでしたので,応募のあった5名全員に研究助成を行うことに決定いたしました.
なお,審査委員の研究室からの申請者については,当該先生を除く先生により審査をいたしました.また,1研究室から複数の申請が出されている点に関しては,申請内容が研究助成にふさわしい内容であれば差しつかえ無いのではないかとのことになり,特に審査時に制約を加えませんでした.

17.QC相談室特別委員会(委員長:荒木 孝治)

2003年10月より,品質管理学会のWebページにて品質相談室を開室してまいりました.相談室の34年度の活動結果を報告致します.ご協力頂きました委員他の方々にお礼申し上げます.

1 統計データ
質問・解答件数

2 内容
質問・回答等の総件数が33年度は72件でしたが,34年度に145件と約2倍になり,確実に利用者が増加しました.相談内容に関しては,「コンサルティング会社の基礎調査の道具として使われ,本来のあるべき姿から離れつつあるように感じられる」傾向が33年度の後半に見られましたが,34年度に関しては,日常の業務の中での疑問や困ったことなど,本来の相談室のあり方に戻ったと評価できます.反面,安易な相談も増加しています.
また,ボランタリに回答してくださる方が数名あらわれ,回答の幅,深さが広がりました.

18.ソフトウェア部会(部会長:兼子 毅 54名)

5月のキックオフミーティング以降,月1回,部会メンバーによるサロンを開催し,意見交換,情報交換,人脈作りに寄与しました.
また,他組織が主催するソフトウェア関連の各種事業に協賛しました.