第30年度事業報告

第30年度 自 2000年(平成12年)10月 1日
至 2001年(平成13年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:狩野 紀昭)

本年度は,本学会創立30周年記念事業ということで,30周年記念事業実行委員会(委員長 山岡副会長)活動のもとに,

を企画し,実施しました.また,これに必要な資金を確保するために, をお願いする活動を開始し,目下,その途上にあり,31年度においても引き続き実行します.これまでのところ総額1,861万4,395円(2001年9月30日現在)にのぼる醵金を頂き,これらの事業の実施について,一応の目途をつけることが出来ました.

また,正会員増加のための“皆さん(33)来いよ(54)”キャンペーン(1992年のピーク時における会員数3354名を回復する)を開始し,本年4月末の在籍会員数に2598名に対して9月30日現在で3133名までに回復し,ピーク時の会員数確保も見通せるレベルにまで到達することが出来ました.

さらに,品質危機克服に向け,次の情報発信をすることが出来ました.

この他に, 等の活動を積極的に展開しました.加えて,次年度以降のさらなる発展に向けて, 等を行いました.
これらを総括すると今世紀の第1年度に相応しい活動が展開できたものと考えます.

2.長期計画委員会

今年度は,「21世紀への提言」実施の年度と位置づけ,その実施面に重点を置くとともに,31期以降における30周年事業の具体化に向け,次の2点についての企画を行いました.
2.1 次の学会30周年記念事業遂行のための特別委員会の設置(31期から活動開始)
  • インターネットを活用した会員サービスの充実及び電子化による学会事務の効率向上
  • 品質管理相談室の創設
  • 若手研究者への支援を含む研究助成の創設
2.2 社会科学ならびに医療等も含めた学際的な立場からの活動の展開を含む理事会活動の充実をめざした学会理事の創設

3.事業委員会(委員長:長田 洋)

(年次大会,研究発表会)
本学会の30年周年となる記念すべき事業は,明治大学での第30回年次大会(10月28日)で幕を開けました.266名の参加者を得て明治大学山田雄一学長の特別講演,狩野新会長の挨拶に続き,活発な研究発表と討論が行われました.

平成13年5月25日には学会30周年記念シンポジウムが早稲田大学井深ホールで開催され,品質功労者29名の表彰,日本IBM最高顧問 椎名 武雄 氏の特別講演,各分野の専門家からなる「21世紀の経営とクオリティ」のパネル討論があり,参加者一同は21世紀のTQMの役割を再認識したのでした.(参加者243名)

翌5月26日の第66回研究発表では253名の参加者でした.チュートリアルセッションでは,「品質危機未然防止」と「経験価値マーケティング」を企画し,好評を博しました.一般研究発表(45件)でも活発な討論がなされました.

(シンポジウム)
4月19日に第80回シンポジウムでは「変革するITとTQM」と題した先端的な企画を立て,学会,産業界の専門家による講演と討論で参加者125名に感銘を与えました.

第83回シンポジウムでは「小集団活動による新たなTQMの展開」をテーマに基調講演に続き多くの事例発表とパネル討論が熱心になされました(参加者156名).

(事業所見学会)
事業所見学会は3事業所(2月サンワテック梶C4月潟Wーシー,6月潟Cンクス)を見学しました(総参加者59名).いつもながらの準備万端の事業所側の受け入れ体制で,TQM,ITなどをテーマに活発な意見交換がなされ,参加者からも好評をいただきました.

(クオリティパブ)
クオリティパブは11月天坂格郎氏(テーマ:『カスタマーサイエンス』),1月鴫 和雄氏(『近江商人とその経営思想』),3月 坂 康夫氏(『マイクロソフト,ルーセント他のTQM事情』),5月 山上 隆夫氏(『企業人初の校長先生誕生』),9月 BSIジャパン 吉村 正道氏(『英国規格協会BSIのアジア拠点としての日本』)の各氏にゲストスピーカーをお願いしました.

夕方6時からパブ形式の雰囲気で開催され,それぞれのゲストからの話題提供のあと,熱のこもった意見交換が行われ,盛会のうちに終わりました.(参加総数124名)

(ヤングサマセミナー)
恒例になっている夏のヤングサマーセミナーは,NTTのご好意で,鎌倉にある保養施設「鎌倉ゆかり荘」を利用して31名の参加者により行われました.講師には天坂格郎氏(青山学院大学),鈴木督久氏(日経リサーチ),中條武志氏(中央大学),特別ゲストのペンシルバニア州立大学D.K.J.Lin教授の方々に参加いただき講演と各自の研究テーマの紹介と討論を行い交流を深めることができました.

以上が本年度の本部行事の開催状況ですが,昨年度に引き続きCPD(継続的専門能力開発)の証明を希望者に発行しました.

今年度の証明希望者は,会員51名,非会員3名でした.今後も引き続き会員の皆様へのサービスに努めますので,各種事業へのご参加をお願い申し上げます.

4.中部支部(支部長:太田 和宏)

4.1 基本的な考え方
魅力ある学会で 21世紀の品質管理のあり方を追求
(1)品質関連パワーの強化
  (他学会との連携強化,研究活動の活性化と普及,学会員の増加)
(2)新世紀に求められる 品質保証のための手法の研究
学会30周年行事,支部20周年行事の推進
 
4.2 具体的な行事のまとめ(中部支部として)
(1) 研究発表会 [1回/年]
7月26日,名古屋工業大学にて開催.
発表事例16件(産業界6件,学術界10件),参加者86名.
多変量管理図の活用など『管理図』に関する発表に関心が寄せられた.
(2) シンポジウム [1回/年]
8月31日,名古屋市中小企業振興会館にて開催.
日本品質管理学会30周年,中部支部20周年記念行事として開催.
テーマ『−21世紀の企業にもとめられているもの−
             ものづくり・人づくりの原点からの再出発』
東京大学 大学院 教授 飯塚悦功氏の基調講演をはじめ,事例講演3件,パネル ディスカッションの3部構成.
参加者は招待者,関係者を含め,約220名.祝賀パーティーも合せて開催.
(3) 講演会 [2回/年]
5月22日,テーマ『製造不良・事故の撲滅に向けて』,123名の参加.
6月29日,テーマ『21世紀をさぐる』(3学会共催),89名の参加.
参加人数は微増だが,内容が身近であった為,参加者の満足度は昨年度より大幅にアップした.
(4) 事業所見学会 [4回/年]
2月23日,新日本製鉄(株)名古屋製鉄所,参加 35名.
4月26日,アラコ(株)吉原工場,参加 52名.
7月6日,重要文化財 専修寺見御影堂,参加 29名.
9月18日,フタバ産業(株)緑工場,参加 40名
工夫を凝らした特色ある事業所の選定で,有益な情報交換ができた.
(5) 幹事研修会 [1回/年]
当初3回/年を計画したが,3月2日の1回開催にとどまった.
次年度はテーマと時期を工夫し活性化する.3回/年の開催を計画する.
 
4.3 本部事業への協賛
(1) 学会員新規加入促進
本部の方針に沿って学会加入促進を展開した結果,減少化傾向にあった中部支部の会員数が564名(30年度予算時)から637名(8月7日現在)に増加した.
(2) 賛助会員特別会費,寄付金の募集への協力
本部会長の方針に積極的に協力し活動を展開した結果,多くの賛助会員,正会員の方々にご理解を得ることができました.
(9月14日現在,賛助会員56社中,38社の賛同を得た.)
(3) 記念行事の開催
本部30周年,中部支部20周年を兼ねて実施.(前記U−(2))

5.関西支部(支部長:栗山 仙之助)

関西支部では,日本品質管理学会のビジョンを踏まえ,「学術・産業共同化推進の支援」「各種イベントの積極的展開」「学会自体の広報活動の強化」といった課題を念頭に活動を推進してまいりました.

また,会員サービスの一環としてのQCサロンも継続して開催しております.また,他学会との協力・交流にも取り組み,日本経営学会の大会でのワークショップに関西支部からTQMの発表者を派遣しました.

各事業の参加人数 は期待通りの数字を残すことができませんでしたが,来年度以降も,継続して関西における情報発信に努めてまいります.

6.編集委員会(委員長:中條 武志)

今年度の編集委員会では,前年度と同様に,投稿論文と特集に分けて委員会の活動をしてきました.

投稿論文については,Vol.30 No.4で4編,Vol.30 No.1で4編,Vol.30 No.2で4編,Vol.30 No.3で2編となっています.また,国立情報学研究所電子図書館サービスへの加盟,著者の希望により論文別刷りに表紙を付けることを認めるなど,投稿者および読者が品質誌を研究成果発表の場として活用しやすい環境を整える活動を積極的に進めるとともに,レフリー候補者リストの整備などを通して投稿論文審査の質の維持・向上に努めてきました.

特集の方については,品質管理に関するマネジメント技術の体系化を促進することをねらいに,「マネジメントにおける質の変化・拡大−21世紀の管理技術の体系化をめざして−」,「組織の変革・改善のためのマネジメント技術」,「21世紀の経営を支える顧客主義を見据えたCRM」,「技術開発−コアコンピタンスとコアテクノロジーの確立」の4つを取り上げました.

7.広報委員会(委員長:鈴木 和幸)

WWWの普及の下,以下の広報活動および会員サービスへの支援を行いました.

7.1 メイリングリスト活用による情報提供
800件のe-mailアドレスからなるメイリングリスト(以下ML)を作成し,e-mailによる情報発信を開始しました.現在1500名を越える同時情報提供が可能となりました.

7.2 Home Page(HP)充実へ向けての取り組み
1) 各種行事案内のHPへの掲載およびその中身(研究発表会の詳細プログラム等)のWebからの参照
2) 品質誌掲載記事の文献検索用コンテンツの作成とその検索システムの運用
3) 入会申し込み・行事参加・会費振り込み等に必要なフォーマットのWebよりダウンロード
4) HP英語サイトの新設準備完了:学会概要・組織・沿革・入会案内および品質誌文献のタイトル・著者の掲載
5) 学会として組織的情報収集とタイムリナーな発信を行うため,広報コレスポンデント(情報提供者)制度を設けました.情報提供は,理事・代議員・広報委員が担当します.

7.3 JSQC NewsのA4版化
保管性の向上とより大きい活字へ30年度5月号より全体の構成と版組みを再構築しました.また,“世界のQCの動きに関するトップ向けの記事”の連載を開始しました.これらのWebからのダウンロードを可能としました.

7.4 学会のリーフレットの作成
A4サイズ3つ折りのリーフレットを作成致しました.海外にてもご利用いただけるよう日本語と英語を併記しました.

7.5 プレスへの発信
品質管理推進功労賞の紹介と受賞者氏名一覧(受賞者29名)が,日経産業新聞(2001年5月17日朝刊)・日刊工業新聞(同21日朝刊)に掲載されました.

8.会員サービス委員会(委員長:山崎 正彦)

ここ数年,JSQCの正会員委員及び賛助会員は減少し続ける.特に,正会員は新規登録が少なく自然減が続き,毎年約100名の脱会があり,ついに2,600名を割り,減少傾向が止まりません.また,賛助会社数も200社を割り,同じく漸減傾向にあります.

そこで,今年度は広報委員会との連携を深め,「会員へのサービス向上」を基本に会員数及び賛助会員の増加策を講じてきた.具体的な施策として
  (1)ISO9000審査員(約7,000名)に対するダイレクトメールによる勧誘
  (2)理事,代議員,JSQC会員への会員紹介のお願い(約3,000名)
  (3)QC関連図書を割引特典確保(日科技連出版図書 20%引き)
などにより,平成13年9月30日現在,名誉会員30名,正会員 3,133名,準会員 108名,賛助会員会社 195社 219口,公共会員21口と急増する結果となりました.これは平成12年9月30日(文部省届出数)と比較して正会員 440名増,準会員17名増,賛助会員1社1口増となっております.理事,代議員,JSQC会員の方々のご協力に深くお礼申し上げます.

9.規定委員会(委員長:中泉 純)

制改定した内規
1) 役員候補者選任方針(改定)
2) 投票用紙様式(改定)
3) 謝礼,手当,旅費等支払基準内訳(改定)
4) 最優秀論文賞内規(改定)
5) 品質技術賞内規(改定)
6) 研究奨励賞内規(改定)
7) 学会理事内規(制定)

10.研究開発委員会(委員長:山岡 建夫)

第30年度の研究開発委員会は,以下の4項目を中心に,事業活動を展開しました.

1) 昨年度,新規に立ち上がった『医療経営の総合的「質」研究会』(計画研究会,主査:練馬総合病院 飯田修平氏),『複合技術領域における人間行動研究会』(公募研究会,主査:中央大学 中條武志氏),及び『ナレッジマネジメントとQFD研究会』(公募研究会,主査:玉川大学 永井一志氏)に対して更に積極的な支援を行い,各活動が軌道に乗るよう強力に推進しました.
その結果,何れの研究会も,ほぼ毎月のように会合を持ち,医療経営の総合的「質」研究会が5月の研究発表会にて中間報告を行う一方,複合技術領域領域における人間行動研究会は,研究内容を更に深めるため,もう1年の期間延長を行いました.更に,ナレッジマネジメントとQFD研究会は,1年間の研究活動終了後,ほぼ同じメンバーにて引き続き『知的創造実践研究会』(公募研究会,主査:サンマックス 長澤重夫氏)を新たに立上げ,研究活動の継続性を図りました.
2) 近年,活動がやや停滞していた『品質教育研究会』(計画研究会,主査:明治大学 大滝厚氏)については活動内容を再評価し,今後の活動の方向性を明確化しました.その結果,当研究会は,2001/2月より再度,研究活動を再開し,以後,ほぼ月1回のペースで研究活動が進むようになりました.
3) 昨年度,期間延長した『TQMにおけるビジョン経営研究会』(公募研究会,主査:小浦孝三氏)は,今年度始めに活動が終了したので,品質誌にその活動結果を報告し,本研究の成果を広く会員に開示しました.
4) 企業や世の中のニーズにマッチする重要なテーマを積極的に取り上げ,研究活動の奨励を強力に推進しました.具体的には,ISO9000の普及・拡大に伴い審査上の問題・課題が顕在化してきたことを受け,学会の計画研究会として,2000年10月に『ISO99000's審査研究会』(主査:NTT−ME 福丸典芳氏)を新たに立上げました.

(1)テクノメトリックス研究会(主査:仁科 健 20名)
主査が交代して第1年度を終了しました.“統計学における理論と応用の総合的研究(科研費基盤研究)”とのジョイント研究会,2日間にわたる名古屋での研究会など,計4回(第30回〜第33回)の研究会を開催しました.
“因果推論の品質管理への応用”に関するテーマでは,グラフィカルモデリングのソフトのバージョンアップ,処理変数の総合効果の推測などを進めました.“主変数法など結果系変数の選択問題”では,MTS法の定式化,連鎖独立グラフにおける変数選択,主変数法のソフトのバージョンアップなどを行いました.その他,選挙結果に関するデータ解析など応用事例に関する議論も行いました.

(2)品質教育研究会(主査:大滝 厚 20名)
今年度の当初計画として,
1) 企業における品質教育の方法と実態調査,
2) 教育機関における品質教育の実態調査と課題の抽出,
3) 教育機関の品質経営に関する研究
を掲げ,前半,研究の方向を探ってまいりましたが,後半は,前年度以来の課題である「中間まとめ」を優先的に進め,ほぼ年度内に収束する見通しが立ちました.その内容は,「企業における今後の品質管理教育」及び「教育の質の評価と改善」となる予定です.
なお,本研究会は1994年(24年度)に計画研究会として設置され,現在まで同一メンバーで進められてきましたが,今年度をもって現メンバーによる研究を終了する手続きを取りました.

(3)医療経営の総合的「質」研究会(主査:飯田 修平 16名)
第30年度は前年度に引き続き,同様の主旨の活動を行った.
1) 研究会は原則として毎月1回,千駄ヶ谷日科技連会議室において,下記のごとく開催した.
2) 第66回発表大会において活動の中間報告をした.
医療経営の総合的「質」研究会 中間報告(第1報)
―医療経営の構造― 報告者:飯田修平,光藤義郎
3) 研究会の活動報告として,医学雑誌「病院」に,医療経営の総合的「質」の検討を連載執筆している.2001年1月から2002年3月までの予定である.
4) 医療経営の総合的「質」に関する出版準備を開始した.医学書院と交渉中.
5病院の事例報告と質の観点からの分析
5) 東京都病院協会主催 シンポジウム 医療における信頼の創造 〜医療における質向上活動〜 に研究会委員が参加した.2000年10月17日 日本青年館
講演:一般企業から学ぶ医療の質向上活動(QFDの医療への展開) 赤尾 洋二氏
パネルディスカッション:医療における質向上活動
  1. ISO14001環境マネジメントシステム認証取得について 冨田 信也氏
  2. MQI(Medical Quality Improvement)医療の質向上活動について
    高原 哲也氏  練馬総合病院医師 MQI推進委員会委員長
  3. パネルディスカッション 司会 飯田修平
6) 四病院団体協議会主催 医療安全パネルディスカッションに研究会委員が参加した.2001年3月2日 東医健保会館 信濃町
品質管理研究者(品質管理学・産業界から医療界への提言) 久米 均 氏
病 院    (病院界の取組み・自院の取組み) 尾形逸郎 氏
                       (研究会オブザーバー参加者)
企画・司会 飯田修平

(4) ISO9000's審査研究会(主査:福丸 典芳 25名)
前期の活動計画の具体化を行い,学識経験者,審査機関,及び審査員研修機関の代表者からなる研究会を2000年12月から発足し,活動を開始致しました.今期は9回開催し,その中間報告として2001年10月開催の年次大会に2件発表予定です.
この活動は来年度も継続して実施する予定です.

(5)複合技術領域における人間行動研究会(主査:中條 武志 16名)
昨年度に引き続き,1ヶ月に1回の頻度で会合を開き,メンバー各自が進めている人間行動に関する研究についての発表・議論を行ってきました.取り上げたテーマとしては,人的エラーや標準不遵守の組織要因の分析,トラブル事例を活用した人間行動の予測手法,事故やインシデントの報告システム,未然防止から見た人間の特性などがあります.また,2001年3月3日(土)に開催された第5回信頼性とシステム安全学シンポジウムを共催し,研究会メンバーによる8件の発表を行いました.

(6)ナレッジマネジメントとQFD研究会(主査:永井 一志 21名)
本研究会では2000年3月より,2001年2月までの一年にわたり,ナレッジ・マネジメントとQFDの関連性を研究した.ナレッジ・マネジメントとQFDそれぞれの原理や原則を調査した結果,両者には共通点が多いことに着目し,ナレッジ・マネジメントの具体的実践方法をQFDの各種展開表によってサポートするための方法論の研究を主たるテーマとしている.
研究会のスタート初期は,主としてナレッジ・マネジメントにおける重要な概念である,SECIモデル,イネブラー,ケアについてメンバーの見識を確認し,研究会後半からはQFDとの具体的関連を調査・研究した.2001年10月からの主たる研究テーマを以下に示す.

第9回(2000年10月): ナレッジ・マネジメントとQCサークル
第10回(2000年11月): ナレッジ・マネジメントと設計不具合の減少
第11回(2001年1月): 知識創造による価値創造
第12回(2001年2月): 今後の研究会について(まとめ)

最終回の研究会において,一年の活動をもってナレッジ・マネジメントとQFDに関する研究は終了することになった.ナレッジ・マネジメントの具体的実践について, QFDを限定するよりも,むしろ他の技法も含んだ形で検討することが望ましいと考えた.このような結論を踏まえ,本研究会の発展形として“知識創造実践研究会”(主査:長澤重夫氏)を立ち上げる運びとなった.
最後に,本研究会の基本ポリシーとして,研究成果は学会等でオープンにし,様々の分野から意見を頂戴するとした.一年の活動で6編のテーマについて学会発表を実施できたことは非常に有意義であったと考える.
参考までに,本研究会の主要アウトプットを示す.

[1] 永井一志・大藤正・田中孝司・斎藤忠(2000):「品質機能展開とナレッジ・マネジメントの共通点(第1報)」,日本品質管理学会第64回研究発表会要旨集, p113-116.
[2] 西原良治(2000):「リフレクターによる知識創造」,日本品質管理学会第30回年次大会研究発表会要旨集,p69-72.
[3] 長澤重夫(2000):「現場における知識創造支援手法」,日本品質管理学会第30回年次大会研究発表会要旨集,p77-80.
[4] 永井一志・大藤正(2000):「品質機能展開とナレッジ・マネジメントの共通点(第2報)」,日本品質管理学会第30回年次大会研究発表会要旨集,p65-68.
[5] 田中孝司(2000):「ケア・システムによる知識創造」,日本品質管理学会第30回年次大会研究発表会要旨集,p73-76.
[6] 永井一志(2001):「ナレッジ・マネジメントとQFDの関連に関する研究」,「品質」,Vol.31,NO.2,76-81.
[7] ナレッジ・マネジメントとQFD研究会(2001):「ナレッジ・マネジメントとQFD研究会報告」,日本品質管理学会.(研究会最終報告書約200頁)

(7)知識創造実践研究会(主査:長澤 重夫 11名)
2001年6月より活動を開始し,現在まで月1回の会合を計4回行っている.本年3月に終わった“ナレッジマネジメントとQFD研究会”の後を受けて,知識創造の仕組の解明とその実践方法構築をめざし新しい研究会として発足しまた.現在までの研究経過を以下のとおりです.
第1回: 2001年6月12日 研究会の方向づけと研究内容検討
知,知識,知恵 についての定義の必要性など.
第2回: 2001年7月24日 自由討議.研究を進めるにあたって何らかの実用ツールの設定も一つの目標とする事の確認.
第3回: 2001年8月21日 西原委員から”ナレジマネジメントと感性“について発表,付成因のチャートと共に検討.
第4回: 2001年9月18日 藤の委員よりシステム設計におけるKMの問題点について発表,討議.
なお,今後,ツールの設定と共に目的を決める能力開発についてもテーマとし組織構造にあうツール及びその応用方法も研究する事にします.

11.国際委員会(委員長:司馬 正次)

30年度の国際委員会では,主に次の3点を行った.

(1) 第14回Asia Quality Symposium共催と第15回開催準備
Korea Society for Quality Management, Chinese Society for Qualityと日本品質管理学会では,Asia Quality Symposium (AQS)を開催している.第14回AQSは,2000年11月2,3日に台北にて開催された.日本側からの十数件の発表があり積極的な参加となった.また,第15回は韓国で開催され,これについての参加準備を行った.
 
(2) 国際委員会方針の探索 AQSの順調な活動になりつつあり,次の活動の方向を探索するべく,合計4回にわたる国際委員会開催しその方針を策定しまた.この内容については,何らかの形で会員に報告する予定です.
 
(3) 国際活動の推進
3.1 台湾ハイテク研修チームの派遣
2000年11月2,3日のAQSに開催をあわせ,台湾ハイテク研修チームの派遣を行った.この内容については,品質誌に掲載済みです.
3.2 海外研究者の招聘
海外交流の第一歩として,2001年ヤングサマーセミナーにて,ペンシルバニア州立大学Lin教授に講演をしていただきました.

12. 標準委員会(委員長:福丸 典芳)

今年度は,ISO9000シリーズが改訂されたことを受け,これに関わる事業を中心に活動を推進して参りました.その中核となる活動は,品質管理学会30年周年記念に伴う会員増強施策の一環として,ISO9000に関わる審査員,コンサルタント等の会員増加に対する会員サービスの向上として,マネジメントシステムの現状及び活用に関する公開講座を8回計画し,今期は2回開催致しました.また,品質誌に標準委員会活動の概要を掲載し,会員に情報公開を行いました.

また,今後の活動に向けての課題を検討し,次年度以降の活動に活かしていく予定です.

13.日本学術会議 経営工学関連(担当理事:圓川 隆夫)

学術会議には本学会として,経営工学研究連絡委員会および人工物設計・生産研究連絡委員会経営管理工学専門委員会(実質的に合同で活動)にそれぞれ委員を派遣し,FMES(経営工学関連協議会)と連携のもとで活動をしています.本年度の活動としては,第17回研連シンポジウム「ビジネスモデル特許のゆくえ」(平成13年6月15日,於:工学院大学)を開催しました.また経営工学関連の科学研究費補助金の現在の申請枠である分科細目「社会システム工学」について,この枠への申請学会の拡大から細目の新設(2つ)の要求を出しているところです.またFMES/JABEE委員会を中心に進めている経営工学の認定については,本年末から2大学の試行を予定していますが,それを睨んで本学会からも,大学,産業界から各1名審査員として参加しています.