一般社団法人日本品質管理学会

第47年度 自 2017年(平成29年)10月 1日
至 2018年(平成30年) 9月30日
事業計画

1.運営方針

 日本品質管理学会(以下,JSQC)は,品質管理の一層の発展と学理の探究を目指して1970年に設立されました.当時の日本は高度経済成長の後期にあり,その原動力である製造業の躍進とともに,「ものづくりの品質向上」は企業の成長戦略の中で重要な位置を占め,経営の質にまで踏み込んだTQM(当時はTQC)は,国際社会からベンチマークされる存在となり,JSQCはその発展に大きく貢献しました.
 しかし,今日の日本企業の経営戦略における「品質」の位置づけは当時から後退し,むしろ製品の質保証に限定されるかの状況を呈しており,取り組みそのものも弱くなり,活動・学理を自律的に支える中堅・若手の中核人財が産学ともに枯渇するリスクも高まっています.
 もちろん製造業は,「ものづくりの品質」が経営基盤として必要であることに変わりはなく,近年繰り返されている品質管理にかかわる不祥事は企業経営を揺るがす問題であり課題は山積しています.ただし,それだけでの成長は難しくなりつつあり,「顧客や社会が求める価値を実現するマネジメントのクオリティ向上」が重要課題となっています.また,製造業を中心に培ったTQMは,「サービス産業などへの普及」を視野に入れながらも道半ばとなっています.
  さらに,新たな産業革命と称されるIoTの普及」に伴い,ものがインターネットでつながると,ビックデータから顧客ニーズを入手し,顧客価値に結びつけることができる企業が勝ち残り,それに伴い品質管理のしくみやツールはさらなる進化を遂げると考えられます.そして,IoTがプラットフォームとなる社会では「オープンイノベーションによる価値共創」が活性化し,コラボレーションが進むに従って業界の壁が次第に取り払われていくとともに,顧客との共創活動も進展していくと想定されます.
 以上の点から,これからのクオリティを考える上での課題,即ちJSQCが進むべき道は,ものづくり・サービス・ICTなどのエクセレンスを包含したマネジメントのクオリティ向上を目指し,オープンイノベーションによる価値共創を産学が一体となって推進することに他ならないと確信しております.
 JSQCは第44年度に,第50年度(2020年)を完成年度とする中長期計画QSHIN2020を取りまとめました.第47年度はQSHIN2020にもとづき,大久保尚武第44年度会長,椿広計第45〜46年度会長のリーダーシップのもとに創生された改革プランを実行に移す,PDCAの「Do」の段階にあると認識しております.JSQC会員の皆様方におかれましては,JSQCのさらなるチャレンジに向けて,格段のご支援,ご協力を衷心よりお願い申し上げる次第です.
 第47期の最重点とする活動は,次の通りといたします.


【第47期最重点活動】

No. 課題

中長期計画
“QSHIN2020”

最重点活動

真価 進化 深化 新化
日本の成長に貢献する品質管理 品質管理の統合(JAQ) 健全な運営基盤 研究者の実践能力向上 品質誌の改革・分化 先端的管理技術の開発 研究成果の世界に向けた発信 サービス,農業等へのTQM浸透 国・自治体のサポート
1 JSQCの強みの育成 ものづくり×サービス×ICT+標準化
  • 近年繰り返されている品質不祥事の再発防止に向けた取り組み
  • 産業界の壁を超えた共創価値づくりに役立つツールの開発(医療・行政なども含む)
  • マネジメントシステム,用語などの標準化推進
  • ICTのさらなる活用
2 クオリティに関する横串機能 JAQ設立に向けた準備
  • 一企業,一業界,一団体,一学会の枠を超えて価値創造を促進する連携組織(日科技連「品質経営懇話会」と連携し構想具現化)
3 JSQCのガバナンス強化 支部・部会再編
  • 【事業】活動委員会が中心となり事業の企画・広報・学会誌掲載の連携推進(事業の活性化)
  • 【支部】各エリアの中長期的なコミュニティ強化を視野に入れた企画推進
  • 【部会】生産革新・サービスエクセレンスの部会化(47期中)
公益化
  • 47期中に公益化申請
  • 会計業務の効率化推進


【第47年度(2017.11〜2018.11)組織】



2.総合企画委員会

 三者調整委員会を,JAQ設立準備小委員会に改組し,(一財)日本科学技術連盟,(一財)日本規格協会と共に,JAQ立ち上げに必要な発起人・加盟組織の拡大を行います.
 学会活動の重点化を推進するための規程・内規の簡素化と整備を庶務委員会と一体となって行います.

3.庶務委員会

 47年度からの組織改定により,庶務委員会では,本会の運営に関する庶務的事項を全て担当します.具体的には,主な計画は次の通りです.
(1) 庶務全般
  学会運営が円滑に進むよう,諸般の活動を進めていきます.また,日本品質管理学会の活動に鑑み,第47年度中に公益化申請手続きを進めます.同時に会計処理業務の効率化の検討を進めます.
(2) 選挙管理
  第45年度から導入したウェブによる選挙を継続して実施するとともに,よりよい方法を探索します.
(3) 会員サービス
会員資格審査,入退会審査について,各種規定に基づき実施します. 
学会員になることのメリットを広く発信し,これまで以上に会員数増加にむけて活動を促進していきます.
第47年度から導入された会員区分である正会員(シニア),正会員(永世シニア)に関する普及に努めます.
JSQCフェローの認定基準,プロセスを明確にし,48年度からの導入を目指します.
(4) 品質管理推進功労賞選考
    日本品質管理学会品質管理推進功労賞の選考に関する運営を,各種規定に基づき実施します.
(5) 会計
    会計に関連する業務を,各種規定に基づき実施します.
(6) 規程の制定,改定
    中長期計画「QSHIN2020」の実現を目指して,第47年度も学会活動の更なる改革を実現するため活動を深化させ,学会活動の発展に貢献すべく各委員会等と協力し,学会活動を効果的に効率良く進められるよう,活動の実態に即した適切な規程,内規等を迅速に作成,改定するように取り組みます.加えて,第47年度の組織改定に基づく規定類の整備を迅速に行います.特に,新たな部会設置に伴う内規の整備を7月までに実施します.

4.活動委員会(事業を含む)

 本部・支部・部会・研究会の事業計画を集約し,企画〜開催案内〜運営〜速報〜ルポ〜ニューズ〜学会誌掲載を一貫して取り組み,学会活動の活性化を志向します.  
 本部行事として,年次大会,研究発表会(1回),講演会(1回),部会と連携してシンポジウム(2回)を開催します.

 
研究開発
   中長期計画,および,本年度の運営方針に基づき,以下の活動を行います.
  1. @例年通り,既存の研究会における研究活動予算を検討し,配分します.
  2. A第46年度に引き続き,将来を見据えた研究分野の検討と新たな計画研究会の設置を検討します.
  3. B第46年度と同様に,研究会の研究成果や活動内容を学会誌へ掲載する活動を継続します.
  4. C第46年度に引き続き,研究活動とその成果を学会員へ広く伝え,学会員が学会の真価を享受できるようにするため,各支部とも連携を深め,学会活動委員会の実現を目指します.
学会誌編集  
   第47年度も,例年どおり,年4冊の学会誌『品質』を発刊します.
 昨年度に制定された新中期計画に学会誌再編成の指針が示されました.これに従って,昨年度から新しい編集方針のもとで活動してまいりました.今年度も,その編集方針に従って活動してまいります.特に,研究会報告や部会報告を中心に編集していきます.また,支部活動に基づく招待論説を掲載していきます.さらに,チュートリアルセミナーやクオリティトークの講演内容,学会主催の講演会での講演内容を掲載していく予定です.そして,JSQC規格の解説の連載を継続してまいります.  
 編集方針をより明確にし,学会誌の意義と魅力を高め,学会活動を的確に伝えることができるような紙面づくりを目指していきます.
広報
 
   第47年度は,より一層広くJSQCの存在並びに活動への関心を高めるべく,本部・支部で主催するイベントの開催案内をマスコミ各社に発信,全国各地に新たな学会員の掘り起こしに寄与することを目指します.また,品質管理(QC)検定の試験会場などでJSQCのポスター掲示・勧誘の資料配布を行うと同時に,全国の工科系高校・大学において行事開催案内等の広報活動を展開することで学会員の増加に努めます.   
 併せて,本部・支部主催の行事を取材し,速報性のあるコンテンツを学会内外に発信することで,学会と会員との“接触機会”を増やし,学会への関心を一層高め“潜在的脱会希望者”のつなぎ止めに貢献します.  
 また,ホームページなどのWEBコンテンツの充実に向けた検討を進めます.
JSQC選書  
   「JSQC選書=品質管理に関する,非専門家向け高度教養講座」の地位を確立すべく,引き続き,品質立国日本再生に寄与するテーマで良質の書籍の発刊を目指します.
 並行して,第47年度以降の選書テーマ候補を充実させ,時宜を得た発行計画の立案を行います.その際,JSQC選書既刊本に対する読者の声の収集・把握に努め,今後のテーマ選定等に活かします.必要があれば,テーマ選定から発刊までの一連のプロセスを改善します.書籍の内容と購入者の傾向や関係を探ることも考えます.
 また,JSQC選書の知名度向上に向け,有効な広報策について検討・実践を試みます.
QC相談室  
   従来の機能からのステップアップを志向して,会員の声を吸い上げるしくみを企画・検討します.

4-1.東日本支部

 関東エリアのコミュニティ強化を目指して,活動委員会の事業担当,部会と連携の上,シンポジウムに加えて,クオリティートーク,事業所見学会を企画・推進します.
 また,東北エリア,北海道エリアなどのコミュニティ強化に資する長期ビジョンの検討を進めます.

4-2.中部支部

(1) 中部支部の基本方針
1) 本部の方針に基づいた活動を展開する
2) 研究会活動を軸として,会員の相互研鑽の場を提供するとともに,品質管理に関する先進的な情報の発信に努める
3) 品質管理の考え方・手法を,品質管理関係の諸団体との連携により,様々な業種・職種に発信して,中部地区の成長に貢献する
【中部支部のスローガン】
 品質管理の普及・浸透で,問題解決力を高めて,日本の生産性向上(成長)に貢献しよう!
(2) 行事の具体的な内容
1) 研究会  
   研究会活動を支部活動の中心と位置づけて,次世代を見据えた若手研究者の活性化と内容の更なる充実を図る
・東海地区の若手研究会(名古屋工業大学:仁科健氏)[6回/年]
・北陸地区の若手研究会(金沢工業大学:中野真氏)[発表会:1回/年]
・中部医療の質管理研究会(中部学院大学:國澤英雄氏)[6回/年]
・中部支部産学連携研究会(名古屋工業大学:仁科健氏)[6回/年]
2) 研究発表会[1回/年]  
   会員の多岐にわたるニーズに応えた幅広い研究・開発テーマで,かつ多くの企業・組織に展開できる事例発表の場を提供する
学会の新しい研究成果と一般も含めた産業界・医療界からの具体的実践事例を発表
中部支部の4つの研究会から,活動成果を発表
3) シンポジウム(基調講演とパネル討論会)[1回/年]
 
 産学界の関心が高く,一般からも多くの参加者を得られる基本方針に沿ったテーマを選定し企画する
4) 講演会[1〜2回/年]  
   会員の関心の高いテーマによる講演会を開催する(原則は会員限定(賛助会員を含む)での開催)
5) 事業所見学会[1〜2回/年]  
   先端的な企業や組織を訪問し,会員(幹事を含む)の研鑽の場の提供を企画する
6) 幹事研修会[2回/年]
   幹事間の意思疎通を図り,中部支部の活動・運営に対する議論・相互研鑽ができる研修を行う
 また内1回は北陸地区の幹事の協力を得て北陸の企業訪問を行う
(3) 中部支部の運営について
1) 上記行事の企画は,幹事会で行っていく.幹事会は2ヶ月に1回程度を目処に開催する.
開催日,場所の調整は,事務局(規格協会名古屋支部)にて行う
今年度より,幹事会は全理事,全代議員も幹事として参加する
2) 行事の運営は,昨年度作成した行事マニュアルに沿って基本的には事務局主体で行うことにするが,当面は幹事の協力も得ながら,行っていく.
3) 運営は極力効率を上げ,企画を充実させることに今後重点をおいて進めていく.

4-3.関西支部

(1)運営方針
 

 日本企業は,世界経済の中で勝ち残っていくために,さまざまな構造改革や将来の成長戦略構築に頭を悩ませています.また,低炭素社会の実現に向けて,太陽光発電や電気自動車など,革新的な技術開発が求められる時代となっています.今後,日本企業がさらに成長し,グローバル競争に勝ち残っていくためには,日本企業元来の強みである「技術開発力」「品質力」ならびに,それらの元となる「人間力」がますます重要となってきます.
   このような状況の中,これまで日本の文化や産業を支えてきた“ものづくり”“ことづくり”とともに“人間力”の基盤を引き続き維持・発展させていくことが必要であり,このとき,品質管理の果たすべき役割はますます大きくなっています.
 関西支部では,品質力,組織・マネジメント力,現場力,顧客対応力の向上策について具体的に提言することにより品質管理のレベル向上に貢献することを目的に,事業活動のさらなる活性化を図り,より多くの会員が満足できる活動を展開していきます.


(2)事業内容
  1) 研究会
  @実用的統計手法研究会
 
   「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」「統計的方法論を実用普及する際のツール(教育教材等)開発・提案を行うこと」を通してSQC活動を活性化させます.旧統計的品質情報解析研究会の名称を,実用的統計手法研究会と改名し,統計的方法論の誤用の解明と防止,将来活用できる新たな統計的方法論・教材を研究し提案します.
  Aダイナミックロバストマネジメント研究会
 
   これまで研究してきた「科学的先手管理七つ道具(SE7)」と2015年改訂されたISO MS の品質,環境規格の特長,意図とを俯瞰的に融合して組織の文化へのマッチング,コミュニケーションを明確にし,従来,企業経営に有効なマネジメントシステムとして実地で検証されてきた日本的なTQMと高度な先進技術(IoTなど)との相互関係,ヒューマンエラー,モノづくりのレベルアップ策等に関して,品質管理学会が培ってきた数々のQC技術をベースにし,ダイナミックな問題解決アプローチを体系化します.
2) 研究発表会 【1回 】
  産業界や社会のニーズと学におけるシーズをマッチさせ,産学で相互に研鑽できる発表会を企画します.
3) シンポジウム 【1回 】
  社会の要求・注目しているテーマを選定し,活発な議論のできるシンポジウムを企画します.
4) 講演会 【1回 】
  “ものづくり”“ことづくり”の発展に寄与できる魅力ある講演会を企画します.
5) 事業所見学会 【 2回 】
  特色のある事業所の見学を企画します.
6) QCサロン 【 5回 】  
  会員サービスの充実を図るため,講話とざっくばらんな質疑応答ができるサロンを企画します.

(3)その他
  1) 関西支部企画運営委員会の実施
 支部運営に関する各種の検討を行い,支部事業の活性化を図ります.中国四国九州地区の会員に対しても支部事業の案内を行い,支部事業への積極的な参加を働きかけます.
2) データ管理の質的向上と定点観測
 支部活動に関する各種データ収集・管理を継続的に行い,支部活動の現状把握や活性化に役立てます.

4-4.西日本支部

 中国地方のコミュニティ強化のエポックメーキングとなるイベントを企画し,47年度中の開催を目指します.

4-5.生産革新部会

 コアメンバーを募集し,研究会設置,行事計画を含む活動計画を具体化し,2018年8月以降に学会全体から広く参加者を募ります.また,活動委員会,東日本支部と連携し,キックオフ行事としてのシンポジウムを企画・開催します.

4-5-1.信頼性・安全性計画研究会

 本計画研究会は,第36年度から10年間,四期にわたり,製品安全を中心とした信頼性・安全性の作り込み技術や,社会インフラを中心とする維持管理やBCMの問題に関して議論を続けてきました.今後も引き続き,品質関連情報の有効活用および的確な組織的意思決定の実現を目指して,下記のボトムアップとトッブダウンの両方のアプローチから,ベスト/ベタープラクティスの収集と分析,信頼性・安全性問題の事例調査,今後予想される問題と対応の提起,委員の研究成果の報告,委員間の情報共有と討議に取り組むことで,未然防止による信頼性・安全性管理の体系化を図ります.

(1) 信頼性・安全性作りこみ技術(ボトムアップのアプローチ)
・新規トラブル未然防止法の高度化
・次世代品質・信頼性情報システムの具体化と拡張
・ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
(2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築(トップダウンのアプローチ)
・持続可能でレジリエントな体制作り
・品質管理を重視する組織文化の樹立と継承
・ユーザ・メーカ・行政の三者協業による信頼性・安全性確保のための方法論
 本年度は第四期(45〜47年度)の後期となります.これまでに調査した社会インフラの各例を総括し,そこで得られた知見が,新規社会インフラとして現在整備が進んでいる成長野で活用されるよう展開を図ります.そして,新規社会インフラで予想される問題への提案事項をより具体化するとともに,研究発表や討論会などの場で積極的に発信するように取り組みます.
4-5-2.テクノメトリックス研究会

 テクノメトリックス研究会では,昨年度に引き続き,「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」を主軸として,「数理科学志向型・計算機志向型の統計的品質管理手法」の開発を目指します.具体的には,メンバーが興味あるテーマを持ち寄り,それについて議論を行い,品質管理の手法として確立できるようにします.多変量解析法を中心に,クラスター分析,実験計画法,統計的手法の理論的側面,解析事例,解析手順などさまざまな視点から研究をします.また,昨年度同様,おおむね3ヶ月に1度の開催を考えています.そして,研究成果については,JSQC研究発表会,年次大会や品質誌などで積極的に発表していく予定です.

4-5-3.製造業のためのビッグデータの解析あり方研究会
 本研究会は,2017年7月の理事会で設置が承認された公募研究会です.2017年8月〜9月にメンバーの公募を行い,参加メンバーが確定しました.
 近年,品質管理分野でもビッグデータを利用できる環境が整いつつあり,また,lasso回帰やサポートベクターマシン(SVM)などの機械学習手法も認知されつつありますが,品質管理分野におけるビッグデータの利活用は多くの企業でまだ試行錯誤の段階です.
このような状況を踏まえ,本研究会では,現場の技術者がSQCの一環としてビッグデータを有効に利活用するための基盤整備を目指し,下記を目標とした活動を行います;
(1) 品質管理分野での問題解決においてビッグデータが有用である課題や場面を明確にする.
(2) 現場の技術者が問題解決のためにビッグデータを解析する際の解析方法の指針を与える.
 特に(2)に対しては,ビッグデータに対する問題解決ストーリーや要因分析を目的としたデータ解析における機械学習手法の適用方法などを討議・研究することを考えています.
 本研究会では,企業での実際の課題や事例,データに基づいて討議・研究を行う予定です.また,本研究会は2ヶ月に1回の頻度で開催する予定であり,計7回の開催を予定しています.
 本研究会の成果は,研究発表会や品質誌などを通じて積極的に発信していく予定です.
4-6.サービスエクセレンス部会

 コアメンバーを募集し,研究会設置,行事計画を含む活動計画を具体化し,2018年8月以降に学会全体から広く参加者を募ります.また,活動委員会と連携し,キックオフ行事としてのシンポジウムを企画・開催します.

4-6-1.サービスのQ計画研究会
 以下の活動を展開します.
(1) サービスのQ計画研究会.
  •  サービスのQ計画研究会は,企業系の委員を増加させ月1回開催します.また,毎回の研究会と研究会の間は,ワーキング会議を実施します.サービス学会とのコラボレーションを図ります.
(2) サービス標準化委員会へのA規格・B規格の提案
  •  複数省庁・企業・学術組織に所属する約20名の委員からなる,「サービス標準化委員会」の第2回委員会(2017年10月,2018年3月)に,サービス規格の基本理念・原則 (A-Standard)・個別サービス規格開発のための指針及びサービス関連用語(B-Standard),を提案します.
(3) 第2回サービス標準化フォーラムの開催
  •  2017年11月16日に,日本橋三井ホールにて,「サービスエクセレンスの実現 ―共創を取り入れた標準化―」というテーマで,第2回サービス標準化フォーラムを,日本規格協会・JSQC・サービス学会の共催で開催します.ドイツのDINから,講演者を招待し,基調講演・パネルディスカッションを同時通訳で行います.
4-7.医療の質・安全部会

 第47年度は,研究活動は医療QMSと医療QMS監査等を中心に進めてまいります.医療QMSについては,医療における日常管理,方針管理を中心に,医療のTQMモデルの構築,導入・推進を進めています.また,医療界全体への啓発・推進が重要な課題になっており,様々な機会を通じて紹介していきます.毎年開催している成果報告シンポジウムは,2018年3月3日に開催する予定です.
 新たに立ち上げた「医療の質マネジメントシステム監査研究会(略称:医療QMS監査研究会)」では,2018年5月の研究発表会での成果発表をめざします.
 教育・啓発活動については,医療の質マネジメント基礎講座を引き続き開講する予定です.
  今年度も目白大学メディカルスタッフ研修センターとの共催で行い,医療界への普及・啓発を進めていきます.また,これまで医療の質・安全学会,医療マネジメント学会などで研究発表を行い,本部会の研究内容を医療界に広報することを行ってきました.それをきっかけに部会の活動に興味を持たれる方がかなりいますので,今年度も積極的に行っていく予定です.さらに,新たな研究成果の出版について検討します.

4-7-1.医療経営の総合的「質」研究会

 従来までの研究活動を継続して,第47年度もわが国の医療の質向上への貢献を図ることを目的とし,医療関係者と品質管理関係者(アカデミック,産業界双方)及び産業界トップマネジメントの相互交流を通じて,医療における品質管理を基盤とした総合的「質」経営に関する検討を進める予定です.
(1)「医療のTQM七つ道具」の広報・周知
  1. @七つの道具(手法)に関する各種講演会,講習会を通じて,本ツールの具体的な現場 での活用方法を周知します.
  2. A七つ道具に加えて,特性要因図も医療現場で十分活用できていないことから,各種講 演会・講習会を通じて,業務フロー図,根本原因分析,故障モード影響解析等とリンクした形の具体的な活用方法を周知します.
(2)医療機関におけるTQM普及を促進する医療制度・政策のあり方を提案
  1. @既に施行されている医療事故調査制度に関して,各種講演会を通じて,制度の概要と実際運用上の課題等を周知するとともに,院内事故調査制度に対する質専門家の係わり方を検討します.
  2. A医療の質の向上に資する医療における無過失補償制度のあり方を検討・提言します.
(3)国内外の医薬品・医療機器メーカー等におけるTQM実施状況とそれに関連する制度・政策に関して調査し,その結果を学会発表・論文投稿していきます.
  1. @我が国の電子カルテ構築方法について,米国SAFERガイドと比較し,効率的な電子カ ルテ導入に向けた指針や薬剤業務に関する詳細な業務フロー図などを作成します.
  2. A 機器に関するJIS T 60601-1-8副通則の普及啓蒙を今年度も続行し,医療機器の病院 安全体制の見直しに関する提言を行なって参ります.
  3. B 医療アラームに付随した不具合事例の検討と医療機器使用者のための警報装置(アラ ーム)ガイドラインの改訂と米国ECRIのアラームハンドブック,ワークブックの啓蒙を行なって参ります.
  4. C ナースコールの不具合事例を検討し,ベンダとともに効率的なナースコールの運用を 啓蒙して参ります.
  5. D 病棟看護師業務の可視化と業務改善に関して,動線分析を含めて実施します.

4-8.ソフトウェア部会

 第47年度は前年度に引き続き,以下のことを行います.
ソフトウェア技術者の教育プログラムに関する議論をまとめ,新たなテーマの抽出,また,議論を行うことで,より活発な活動を行います
 前年度までの議論をまとめるとともに,新たなテーマを抽出し,議論を始めます.前年度同様,一ヶ月に1回程度の会合を開催しながら,議論を進めていきます.また,アウトプットを意識した活動を行い,研究活動の活性化を図ります.さらに,これらのことより,部会メンバーへのサービスの向上を図ります.
メーリングリストやSNSを利用した情報交換及び情報発信を積極的に行います.
  メーリングリストを利用した部会メンバー間の情報交換をより積極的に行うとともに,ソフトウェア部会の活動を理解していただくために,SNSを利用した情報発信を行います.
ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援します.
  他団体の開催するソフトウェア開発関連の各種行事に協賛・後援することで,部会メンバーの便宜を図るとともに,ソフトウェア部会活動の活性化を図ります.

4-9.管理技術部会

 第47年度は,「QMS有効活用及び審査研究部会」から「管理技術部会」に名称を改め,QMSのみならずマネジメントシステムを含む管理技術への適用拡大を志向した検討を開始します.QMS有効活用及び審査研究については引き続き,継続又は新規テーマで研究活動を行い,年次大会,部会メンバーへのメルマガなどで活動状況を報告する予定です.また,WGの活動は次の通りです.
・WG1:要求事項の本質的適用
 前年度に引き続き,ISO 9001をベースとし他の規格やガイドラインも含め,要求事項を本質的に適用することを工学的アプローチから考察し,学術的提言を行う予定です.
・WG2:MS要求事項に影響されない業務マニュアルの構造設計の研究
 組織の品質マニュアルは,ほとんどがISO9001要求事項に沿って作成しているため,要求事項変更の都度品質マニュアルの構造を変更するという作業が発生します.このため,組織の品質保証システムが効果的に表現できているとはいいがたいため,ISO 9001の構造に左右されない品質マニュアルのモデルを研究します.
・WG3:組織経営に役立つマネジメントシステムの構築・運営
 前期活動に参加できなかったメンバーと情報を共有し更なる充実を図ること,及び「ISO認証に満足していない中小組織の経営者や従業員が“ISOの有効性”に納得し,理解し,且つ組織経営に役立つマネジメントシステムの構築・運営すること」についての実践研究を継続します.
・WG4:QMSリスクマネジメントツールの開発
 前年度に引き続き,研究を継続し,とりまとめを行う予定です.年次大会で研究の途中経過を発表します.
・WG5:アウトソーシングマネジメントの効果的運用方法の研究
 2015年版は,組織と外部提供者との相互の能力に応じた管理の程度を決めることが大切であり,「アウトソーシングの品質改善」(特殊工程:溶接/熱処理/表面処理/コーティングなど)に対する解決策の事例研究をもとに改善のポイントについて研究を行います.
・WG6:ISO 9001:2015対応の中小企業向けQMSモデルの研究
 前年度に引き継き,継続して,業種別QMSの研究及び最先端企業の研究を行います.
・WG7: 「ISO9001とTQMのシナジー効果」によるQMS能力支援向上支援のための審査・内部監査技術の開発」の研究
 第47期でとりまとめた方法論に関する検証データを収集し,方針管理・日常管理でのPDCAの対応と関連づけて,QMSの有効性を高める審査・内部監査技術の開発の研究を行います.

5.標準委員会

(1) 第46年度に引き続き,JSQC規格の制定を推進します.
「品質管理教育の指針」ならびに「新製品・新サービス開発管理の指針」の制定を推進します.
(2) 既発行のJSQC規格の定期見直しをします.
今年度見直しの年となるJSQC Std 32-001日常管理の指針の見直しを行います.
(3) 新しいJSQC規格の制定を推進します.
各委員会,部会または研究会からの提案を受け入れて検討します.
(4) JSQC規格のJIS化を推進します.
「プロセス保証の指針」のJIS化,「方針管理の指針」のJIS改定化を推進します.
(5) 原案作成団体として移管された以下のJIS規格の見直しを推進します.
  1. @JIS Q9024:2003 マネジメントシステムのパフォーマンス改善―継続的改善の手順及び技法の指針
  2. AJIS Q9025:2003 マネジメントシステムのパフォーマンス改善―品質機能展開の指針
(6) JSQC規格の普及活動を継続して推進します.
  1. @規格制定後の講習会を引き続き実施します.
  2. A個別の要請に基づくJSQC規格講習会の開催を検討します.
  3. B規格講習会の定期開催を実施します.

6.学術委員会

6-1. 論文誌編集,表彰(学術)小委員会
論文誌編集  
1) 従来からの方針を引き継ぎ,論文審査において,査読意見を参考にしつつも論文誌編集委員会の主体的な判断に基づき採択の可否を決定していきます.また,「著者責任」を基本とし,新規性・価値のある主張を含む論文については原則として掲載する方針についても,変更ありません.年間の掲載数15本をめざします.
2) 規定された方法に従って,投稿論文審査の質の向上と迅速化を図っていきます.
3) 国際委員会と協力して,ANQ Congress 2018への論文発表促進,特に若手研究者への支援を積極的に行います.
4) 国際委員会と連携して,ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行に向けて活動します.47年度はVol. 3 No. 1及びNo.2を発行する予定です.
5) 論文掲載には相当なコストがかかるため,学会の財政状況を鑑みますと,論文掲載料の徴収は避けらない状況です.会員の理解を得つつ,引き続き検討いたします.
6) 学会誌編集委員会と連携して,品質誌の電子ジャーナル化について,J-Stageでの発行形態等に関し,引き続き検討を続けます.
7) 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)でのシステムを参考にしながら,「品質」論文誌においても,論文審査プロセスの効率化を目指し,電子投稿・審査システム導入に関して,引き続き検討いたします.
 
研究助成  
   第47年度も引き続き若手研究者に対する研究助成を行います.募集要項の主な内容は以下の通りです.助成金額は1件5万円で4件以内.対象者は,日本品質管理学会の正会員もしくは準会員,申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者,留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者(年齢制限はありません)とします.すでに2回採択された者は選考対象から外し,助成対象は品質管理に対する研究全般およびANQ以外の国際会議での研究発表への旅費支援も含めます.期間は1年間(2017年10月から2018年9月)です.研究成果を品質誌へ投稿,あるいは,研究発表会などで発表することを奨励します.
6-2. 国際交流,学会間交流小委員会
国際交流  
  第47年度は,第46年度の活動を基盤に,主に以下の事業を実施します.
1) ANQ 2018への協力
 カザフスタンのアルマティで,2018年9月19-21日に,ANQ(Asian Network for Quality)総会の開催が予定されています.現在,ANQ会長であるProf. Azat Abdrakhmanovが,カザフスタンKOQIMの主催で自国で開催することになりました.大会開催の支援やアドバイスを,JSQCとして継続的に行っていきます.また日本からの参加者についても,ANQでのリーダーシップを発揮できるよう,引き続き多くの参加者を募る予定です.
2) ANQの安定的発展のための調整
 2018年の春にはホーチミン,秋にはアルマティで,ANQ理事会の開催が予定されています.JSQCとしてANQの発展に積極的に関与し,ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会),Ishikawa Kano Award委員会には,委員を派遣する予定です.財務委員会では,JSQCが委員長を務めており,2018年春の理事会では,委員長からの財務報告を行います.
 カトマンズのANQ理事会では,担当国の順番として 2019年春のANQ理事会を開催する可能性が強くあり,JSQC理事会での承諾の元,理事会開催を引き受けることになります.
3) 英文電子ジャーナルの刊行
 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の刊行の4年目が開始されます.会員ニーズである国際学会発表(ANQ)と,英文電子ジャーナル投稿(TQS),を満たすことができるよいコラボレーションを今後とも継続強化してまいります.
4) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討します.特に,ANQ関係団体と交流し良い関係を作り,特に若手会員が交流する際の支援ができるようなプログラムを検討します.
学会間交流  
   47年度も引き続き,FMES代表者会議,FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画し,経営工学関連学会との交流,JABEEの審査活動,FMESシンポジウム等の活動に,中核団体として協力していきます.また,JABEEの役割についても変革が求められており,FMES代表者会議やFMES/JABEE委員会を通じて,今後のあり方について意見を述べていきます.第33回FMESシンポジウムは日本経営工学会を中心に企画され,2017年11月3日に開催が予定されています.


7.安全・安心社会技術連携特別委員会

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等との共催の安全・安心のための管理技術と社会環境」シンポジウムを,引き続き積極的に推進します.また,自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力していきます.ISO 39001についても,認証制度の普及,支援規格の開発などについて引き続き協力していきます.

8.TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会

 全ての人々が各人の能力を発揮し,生きがいのある楽しい生活を送り,幸福になるための問題解決教育を初等中等の学校教育にて為しうるよう,過去8年間の活動を継承し,以下の取組みを行って参ります.
(1) 問題解決教育を通して,自己啓発・相互啓発が為され,一人ひとりの潜在的能力を引き出し,自らが主体性を持って行動し,人に優しく,社会に貢献しうるように,人間的成長を図るべく,TQE委員会の活動のさらなる活性化を図ります.特に,具体化しつつある次期高等学校学習指導要領での問題解決教育実効化に資する活動を行います.
(2) 次期指導要領で重視される“Active Learning”において,上記(1) の問題解決教育が充実されるように普及に努めます.
(3) 上記(1), (2) の為に,学校現場での問題解決教育に資する目的設定の方法を研究・開発し,JSQC研究発表会にて発表致します.
(4) 上記(1), (2), (3) に関連し,問題解決プロセスの普及・啓蒙のために,問題解決に資する科学技術教育フォーラムを平成30年3月24日に開催致します.
(5) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として,40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り,その質の向上に努めます.